日曜の朝……
謹慎中のフィオナは言った。
「フリッド、私の旦那さんになってくれない?」
「……え?えっ!!!?」
突然のフィオナの一言にフリッドは声を上げ、食べていた朝食をこぼしてしまった。
「う、嬉しいっ!!すごく嬉しいっ!!何っ!?どういう心境の変化!!?」
「シュミレーションしたい。家族がどういうものなのかのシュミレーション。」
興奮気味に問いただすフリッドだったが、フィオナの続く一言を聞き、萎えたかのように落ち着きを取り戻していった。
「な、なんだ……そっかぁ……シュミレーションとはいえ、嬉しいよ……」
「あ、それで相談なんだけど。」
見かねて落ち込むフリッドに、フィオナはさらに続けていった。
「息子役にダミアンを指名していいかしら。あの子あなたに懐いてるし。」
「まぁ、大丈夫だと思うが……」
その後すぐ、フリッドはダミアンと連絡を取った。そして3人はイーデン校の寮の前で待ち合わせることになった。
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イーデン校学生寮の前……ダミアンは綺麗な私服に身を包み、二人が来るのを待っていた……が、その体はガタガタと震えていた。
(ど、どうしよう……!滅茶苦茶緊張する……!おかしいな……叔父さんとはもう何回も会ってるし、お姉さんとも顔見知りのはずなのに……)
ダミアンはひどく緊張していた。電話でフリッドから「1日親子になってくれ」と言われたからだ。もちろん、ダミアンは1日だけとはいえ、フリッドが親になってくれるのは嬉しいと思っていた。しかし、いざとなると緊張してしまい、心臓が止まりそうになっていた。
「ダミアン。」
「ひ、ひゃいっ!!」
突然名前を呼ばれ、ダミアンは裏返った声で返事をし、声がした方に顔を向けた。
そこには笑顔で手を振っているフリッドと仏頂面のフィオナが立っていた。
「お、叔父さん……」
「今日はよろしくな、ダミアン。」
「私達のこと、気軽に『パパ』と『ママ』って呼んでいいわよ。」
「え!?そ、そんな……!!」
途端にダミアンの顔は赤くなった。すでに顔見知りの二人に対して「パパ」「ママ」と呼ぶなど、恥ずかしすぎたのだ。
しかし、二人の厚意を無下にするわけにはいかず、ダミアンは勇気を振り絞った。
「マ、ママ……パパ……」
『!!!』
ダミアンが二人を呼んだ瞬間、二人はまるで雷にでも打たれたかのように目を見開いた。そして、フリッドは・・・思わずブッ!と鼻血を噴き出した。
「わーーーーーーーっ!!?お、叔父さーーーんっ!!?」
「大丈夫…!ダ、ダミアン……『パパ』じゃなくて『お父さん』って呼んでくれないか?」
(そっちの方がダメージ少ないはずだ……しかし、パパと呼ぶだけでこの破壊力……!はぁ~~~っ、ダミアンかわいい!やべっ、可愛すぎてゲロ吐きそう……)
恥じらいながら自分のことを「パパ」と呼んでくるダミアンに愛しさが抑えきれず、フリッドは鼻血を噴き出して悶えた。加えて吐き気まで催していた。
それに対し、フィオナは二人に背を向けていた。
「……ほら、バカやってないで行くわよ。」
そう言ったフィオナだったが、破顔しかけていた。
(み、耳がくすぐったい……!胸がキュンってなった……!落ち着きなさい、落ち着きなさい私……)
フリッドと同様に子どもの愛らしさにあてられたフィオナは、破顔してたまるか、と言わんばかりに歯を食いしばっていた。
その後、3人は一緒に出掛け、色々な場所へいったが……その間、会話
(き、気まずい……)
(アレ?会話ってこんなに難しかった?俺達こんな高度なこと毎日やってたっけ!?)
(こんな高度なミッションを毎日やってたなんて……さすがは"元"黄昏先輩……)
昼食を食べるために訪れたレストランでも、会話が出ず、静まり返っていた。すると、その沈黙を破るようにフリッドが口を開いた。
「じ、実はな!俺、最近勉強を始めたんだ。」
「勉強?」
「ああ……実は、教員免許を取ろうと思ってるんだ。」
フリッドは微笑みながら語り始めた。
「俺、昔は教師になりたかったんだ。でも、母さんのことでいろいろあって諦めてな……」
今となっては昔の話だが、フリッドは教師を志していた。しかし母親の入院費と手術代を稼ぐため、給料が高かった出版社に入社したが、それでも足りずに地下格闘技の世界に足を踏み入れた。
「でも、ロイド君とヨルさんを見てたら……『今度は俺の番だ!』って思ってさ。諦めかけていた夢を、もう一度目指してみようと思うんだ。」
ロイドとヨルは第2の人生のスタートを切ろうとしていた。それを見て、フリッドは勇気をもらったような気になっていた。
諦めた夢をもう一度……と思いながら。
「フフッ、いいんじゃない?」
その時、フィオナは珍しく笑みを浮かべた。
「あなたらしいわ。子ども好きのあなたが教師って。」
「……キレイだ。」
「なっ……う、うるさい。」
フィオナが笑ったのを見て、フリッドは思わず呟いた。珍しく笑ったフィオナの顔に見惚れてしまったのだ。
すると、フィオナは頬を赤らめ、そっぽを向いた。
「お、叔父さんとお姉さん、イチャイチャ……?」
「してません。」
「そ、そうそう!してないぞ!」
ダミアンの一言に慌てて否定した。と、その時……
「すいませーん!お客様の中にフリッドという方はいらっしゃいますかー!?」
店の店員が大声でフリッドの名を呼び始めた。フリッドは何故唐突に自分の名を呼ばれたのか分からず、不思議に思いながらも、その店員の元に歩み寄った。
「フリッドなら私です。」
「あ、お客様!お客様にお電話が……」
「電話……?」
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一方そのころ……
「はぁ……」
「浮かない顔~!何かあったの?」
ユーリは久々に会った新聞記者のノエルと再会し、談笑していたのだが、ユーリはため息をついていた。
そんなユーリに、ノエルは顔を近づけて覗き込んできた。
(ち、近い……)
「い、いや、別にそんな大したことじゃ……」
「あ、ユーリさん!」
その時、たまたま通りがかった翔一がユーリに声をかけた。
「つ、津上!」
「あれ?もしかしてお邪魔でした?チューしちゃうとこでした!?」
「違うよ!はぁ……」
怒鳴り声を上げたユーリだったが、すぐにため息をついた。
「どうしたんですか?」
「……二人とも聞いてくれる?情けない話かもしれないけど……」
ユーリは二人に屋台のアイスを奢り、ゆっくりと話し始めた。
「僕さ、なんか……絶賛モヤモヤ中っていうか、納得できてないっていうか……」
「何がですか?」
「姉さんとロッティのこと。僕……いまだにあの二人が喫茶店やるってこと、納得できないんだよ。」
ユーリは喫茶店をやるというロイドとヨルの背中を押した。しかし、心の中ではいまだに納得できていなかった。
「なんで安定しなそうな仕事を選んだんだよ……そのまま精神科医と公務員続ければよかったじゃん!そっちの方が安定してるじゃん!」
ユーリは愚痴をこぼしながら、持っていたアイスのコーンをギュッと握りしめた。握ったことでコーンはバキッと砕け、アイスが地面に落ちた。
「おまけにグリムの奴、落ち着きやがって……」
「グリムがどうしたんですか?」
「アイツだって、姉さんのこと好きなはずなのに……あんなに落ち着いて二人のこと受け入れてた。悔しいんだよ……僕より背小さくて生意気なあのガキが、大人みたいに落ち着いて……これじゃ、納得できてない僕が子どもみたいじゃないか……」
ユーリは自分とグリムを比べた。二人とも互いにヨルのことが好きだった。故にユーリはロイドとヨルが喫茶店をやることが許せず、認められなかった。対しグリムはあっさりと認めた。しかも落ち着き払って、大人のような反応だった。
それと比べると、自分がいかに小さい男か見せつけられているようだった。
「はぁ……笑っちゃうよな。姉さんの幸せが一番だと思ってるはずなのに……」
ますます落ち込んだのか、ユーリはうつむいた。すると、翔一が口を開いた。
「いいんじゃないですか、納得できなくて!」
「は……?」
「納得できないことって、いっぱいあるじゃないですか。例えば……俺、スーパーで買い物してたんですけど、税金上がって商品高くなってたんですよ!俺、それがどうしても納得できなくて……でも、怒ってもどうしようもないから、仕方なく買い物したんですよ。そしたら……そのうち値上げが気にならなくなって……だから、ユーリさんもそのうち気にならなくなりますよ!」
翔一はにこやかに笑って言った。しかし、それを聞いたユーリは「なんか違う気がする」と思っていた。
ノエルも同じことを思ったのか、
「津上さん、なんかそれ……違くないですか?」
「えっ?そうかなぁ……同じことだと思うんだけどなぁ……』
翔一は首を傾げ、うーんと唸り声を上げた。
すると、ユーリは急に笑い出した。
「まったく……本当にバカだよなお前!少しは学を身に着けろっての。」
「たはは……」
「……ありがとな。」
その時、ユーリは翔一に礼を言った。しかし、恥ずかしくなったのか顔を赤らめ、そっぽを向いてしまった。
すると、今度はノエルが笑い始めた。
「フフッ、なんかいいなぁ二人とも。」
「え?」
「なんか……親友!って感じ!」
ノエルは二人の顔を交互に見ながら微笑んだ。
「は、はぁっ!?ぼ、僕がこいつと!?親友!?冗談やめてよノエルさん!」
ノエルのその一言に、ユーリは顔を真っ赤にして否定した。ユーリ自身、翔一のことを友人だとは思っていたが、それを他人に言われてしまうと途端に恥ずかしくなった。
対し、翔一は笑っていた。
「俺は嬉しいですよ!親友っていいもんですよね!」
「ぐっ、ううっ……フ、フンッ」
翔一は何の恥ずかし気もなく笑っていた。ユーリはそれと自分を比べてしまい、また子どもみたいなことをした、と思っていた。
と、その時、バイクのエンジンが聞こえ、翔一達に近づいてきた。
「よぉっ、ようやく見つけたぜ!」
そこに現れたのはグリムだった。
「グリム、どうしたの?」
「探してたんだよ、アンタらを。アベルのジジィが俺らに召集かけやがった。すぐに来いとさ!」
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そのころ、ロイドとヨル、アーニャ、ボンドは外出していた。
訪れていたのは喫茶店設立のために購入した土地だった。一家の傍らには建築会社の人間が何人かいた。
「えー、1階を喫茶店スペース、2階を住居にする……ということでしたね。」
「ええ、まず店の入り口の隣に家の玄関を……」
ロイドと建築家が相談をしている中、アーニャは嬉しそうな顔で土地を見回していた。
すると、隣にヨルが座り込み、アーニャと視線を合わせた。
「どうしたんですか?アーニャさん。」
「ここ、アーニャのあたらしいウチになる?」
「フフッ、そうですよ。ここから……この場所から、私達の新しい人生が始まるんです。」
「ショーイチも?」
「もちろんです!」
ヨルは笑い、アーニャを抱きしめた。正直言えば、翔一がいつまでいるか分からなかった。翔一は別の世界の人間……いつ元の世界に帰るかも分からない。それでも、いつか……いつか翔一がいなくなってしまうその時まで一緒にいようと決めた。
ロイドもその気持ちは同じだった。
「あの、間取り図なんですが……やはり、寝室が一つ多いのでは……」
その時、建築家の一人が声を上げた。部屋の間取り図には寝室が描かれていたが、数が多かった。夫婦の寝室と子ども用の寝室、そこにもう一つ寝室があった。
「いえ、いいんです。実は、ここには来てませんけど……もう一人家族がいるんです。」
ロイドは翔一用の寝室も作ろうとしていた。たとえ住む世界が違っても、翔一は家族も同然。部屋を作るのは当たり前だ。それにもし、翔一が元の世界に帰っても、またこっちに戻ってきた時に、いつでも帰ってきてもいいように部屋を作るのだ。
(ちち、はは、うけいれてる……)
二人の心を読んだアーニャは、二人が翔一がいついなくなってもいいように覚悟を決めていた。アーニャも覚悟を決めて、いるつもりだったが、やはり納得できなかった。
「はは……アーニャ、ショーイチとずっといっしょがいい……」
「アーニャさん……」
アーニャの気持ちは痛いほど伝わってきた。アーニャはロイドやヨルよりも長く翔一と一緒にいた。それこそ兄弟のように仲が良かった。
アーニャは今でも翔一のことを兄のように慕っていた。
「アーニャ……アーニャ……」
その時、隣からアーニャを呼ぶ声が聞こえた。男の声だが、ロイドのものではなかった。傍らにいる建築家達のものとも違った。
それはアーニャの隣にいた、ボンドから発せられていた。
「アーニャ…聞こえるか?」
「ボンド?」
「ボ、ボンドさんが、喋ったっ!!?」
いきなりボンドが人語を発し、ヨルは声を出して驚いた。すると、ロイドと建築家達もボンドに気が付いた。
「あれ?今、犬が喋ったような……」
「あーーーーーーっ!!じ、実はですね!僕ら家族、全員腹話術の練習をしてるんですよ!ねっ!?」
ロイドはなんとかその場をごまかそうとヨルとアーニャの方をチラチラと見ながら語り出した。それを理解した二人はなんとか合わせようとした。
「そ、そうなんですよ!ほ、ほら!『こんにちは、ぼく、ボンド君だよ!』」
ヨルは恥ずかしさを感じながらも、ボンドの後ろに隠れ、裏声を使って腹話術をし始めた。
さらに続けてロイドもボンドの後ろに隠れ、
「『ぼくと仲良くしてね♪』…ほ、ほら!うまいでしょ!?」
「は、はぁ……」
ロイドも同様に腹話術をし始めたが、建築家達は明らかに、「なんだこいつら」という目でロイド達を見ていた。しかし恥ずかしい思いをした甲斐があってか、なんとかごまかすことができた。
「な、なんでボンドが急に人語を……!?」
ロイド達はいったんその場を離れてボンドを取り囲むようにその場に座り込んだ。
「私だ……アベルだ。」
「ち、長官!?」
「今、この犬の精神と体を借り、お前達に話しかけている。」
アベルがボンドの身体を借りているという事実に、ロイド達は驚いた。しかし同時に怒りも覚えた。
「なんでこんなタイミング悪い時に話しかけてくるんだよ、この野郎。ぶっ飛ばすぞ。」
……と、思っていた。
しかし、こうまでして自分達に話しかけている、ということは緊急事態であることも予測できた。
「一体何があったんですか?」
「黄昏…いや、ロイド。前に任務で私と会った時の屋敷……覚えているな?そこに来てくれ。」
アベルに言われ、ロイドは以前、アベルがDr.イワークと名乗っていた時に初めて出会った時のことを思い出した。その時は確かに古びた屋敷で出会った。
「しかし、何故……?」
「お前達に、特に津上君には伝えなければならないことがある。時間がない……急いでくれ!」
アベルは捨て台詞のように吐き捨てる。すると、ボンドはガクリと頭が下に下がった。しかしすぐに頭が上がり、いつものように「ボフッ!」と吠えた。
アベルの言葉に、ロイド達は不安を覚えた。思えば、最近どうも平和すぎたと思っていた。
あの騒動から何日か経つが、あれ以来アンノウンが現れなかった。今思えば、これは何かの前触れなのかもしれない……
「・・・行ってみましょう。」
ロイドがそう言うと、ヨルとアーニャはコクリと頷いた。
何が起きるのかは分からないが、とにかく行くしか選択肢はなかった……
しかし、ロイド達は……仮面ライダー達は知ることになる。真の絶望というものを……
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そのころ、アベルは屋敷の中にいた。書斎の床に敷いたカーペットをはがし、床を探る。すると取っ手のようなものを引っ張った。
すると、ガコンッ!という音とともに床が観音開きのように開き、地下への階段が現れた。
(ドノバンがここに気づいた……!)
早歩きで地下へと降りていき、とある一室に入った。そこは様々な機械が設置された研究室のようだった。
アベルは機械を操作し始めた。すると、床がせり上がり、細長い柱が出てきた。さらにその柱の中からガラスケースが現れた。そのガラスケースの中には細長い水晶が入っていた。その水晶は、アギトの胸元にある水晶と同じものだった。
「津上君、急いでくれ……これを君に渡さなければ……!君は、さらに覚醒しなければならない……!」
おまけ「どっちが人気?」
「なぁ、フリッドのおっさん。」
「どうしたんだグリム。」
「俺ら二人ってさ……所謂オリキャラって奴だよな。ぶっちゃけ原作ファンからしたら邪魔者だよな。」
「・・・まぁ、そうだな。」
「で、ぶっちゃけ……どっちが人気なんだ俺ら二人。」
突然の一言に、フリッドは目を見開いた・・・が、すぐにニコッと笑った。
「そりゃあ俺だろ。だって序章から出てるんだぞ?」
「でも、最近のアンタほとんどギャグキャラじゃねぇか!その内『吐血おじさん』って呼ばれるぞ!」
「いいんだよ!読者にウケれば問題無いんだよ!」
「こいつ、プライド捨てやがった……!だったら投票で勝負だ!俺とアンタ……どっちが人気か勝負だ!」
「いいだろう!」
二人は拳を握り、互いに拳をぶつけ合った。それは戦いのゴング……どちらが読者の人気を得ているかを示すための勝負の始まりだった……!
それを傍目から見ていたロイドは思った。
「もう最終章なのに、今更人気投票するのか?人気投票しても結末変わらんぞ。」
と思ったが、口には出さなかった。ロイドは空気が読める男なのだ。
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……というワケで、人気投票をしたいと思います。いや、フリッドとグリム、どっちが人気かなーと思って、気になったので……
結果は次回発表します。
フリッドとグリム、あなたはどっちが好き?
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仮面ライダーギルス、フリッド・リード
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ルデスことアナザーアギト、グリム