「ここがアベルさんが指定した場所ですか……」
(久々に来たな、この屋敷……)
アベルの導きにより、翔一、ロイド、ヨル、アーニャ、ボンド、ユーリ、フリッド、フィオナ、ダミアン、グリムが屋敷に集まった。
すると、屋敷の扉が開き、中から皆を呼んだ張本人アベルが現れた。
「全員来たな、こっちだ。」
全員集まったのを見て、アベルは淡々と中へ誘った。
皆は言われるがまま中に入っていった。中に入り、書斎へ進むと、アベルは床にある取っ手を引いた。すると床が開いて地下への階段が現れた。
「隠し階段?」
「こんなものが隠されていたのか……」
階段は奥深くへと続いていた。それを見て、ユーリは声を上げた。
「……入っても大丈夫かな?一応、何があってもいいようにG3-X装着してきたけど……」
ユーリはG3-Xを装着して屋敷に来ていた。もし、戦闘になっても対処できるようにするためだ。
すると、グリムはニヤリと笑った。
「その時はここにいるオールスターで相手すりゃあいいだろ。行こうぜ。」
そう言ってグリムは我先に下に降りて行った。ロイド達もそれに続いていった。
中は床も壁も固いコンクリートが打ちっぱなしでできていて、それが奥まで続いていた。
「ここは昔、超能力研究の一環で作られた施設の一つだ。」
「なるほど、でもなんで地下に?」
「あらゆるものから隠すためだ。……ここだ。」
アベルはとある部屋の中に入った。
そこは様々な機械が設置された研究室のようだった。
「さて……君達を集めたのは他でもない。最悪の事態が起きることを、伝えるためだ。……ドノバンが、来る。」
その一言に、全員がごくりと唾を飲んだ。しかしただ一人事態が飲み込めない者がいた。
それはダミアンだ。ダミアンだけは知らなかった。父親、ドノバンがアンノウンの大元、黒テオスと一体化したということを。
そんなダミアンに、アベルが冷たい言葉を放つ。
「ダミアン君、君の知るお父さんはもういない。君のお父さんは・・・ドノバンはアンノウンの親玉になった。」
「え・・・!?」
「待ってください!いきなりそんな……!」
いきなり真実を話すアベルに、フリッドは止めようとした。しかし、アベルは構わず続けた。
「ドノバンは人間であることを捨てた。神の力を手に入れるためにな。」
「そんな……!そんなの嘘だ!」
ダミアンは信じることができなかった。敬愛する父親が、世間を騒がせ皆を傷つけているアンノウンの親玉という事実を受け入れられなかった。
その時、ダミアンはフリッドとグリムの顔を見た。
「叔父さん!アニキ!嘘、だよね……?」
「……本当だ。」
「そいつの言った通り、化け物どものボスになったんだよ!あのクソ親父はな!」
二人の言葉を聞き、ダミアンは絶望した。アベルの言葉が真実だと知り、ダミアンはその場に膝をついた。
「・・・で、あのクソ親父が来るってどういうことだよ?」
そんなダミアンを横目に見ながら、隠し子であるグリムがアベルに尋ねた。
すると、
「私が説明しましょう。」
部屋の隅から声が聞こえ、そこに目を向けると、リョーマことテオスが立っていた。
「リ、リョーマさん!」
「もう私はリョーマではありません。」
いまだに「リョーマ」と呼ぶユーリに、テオスは首を横に振った。そして話を続けた。
「全てはもう一人の私……黒テオスの時間稼ぎにすぎませんでした。」
「時間稼ぎ?」
「そう。ロード・・・アンノウンを街にばらまいたのも、エル・ロード達をあなた方にけしかけたのも、アーニャを暴走させたのも、全ては力を蓄えるためでした。」
「なんだと……?」
白テオスのその言葉にロイドは声を上げた。アンノウン達の親玉であるテオスは相当の強さを持っているだろう。何せ神なのだから。それが力を蓄えていると知り、動揺してしまう。
そして、今までの出来事が時間稼ぎであったことが驚きだった。この事実から導き出されるのは、自分達はずっと、テオスの手の上で踊っていた、ということになる。
しかし、一つ疑問が浮かんだ。
「あの、どうしてそんなことが分かるんですか?」
ヨルが白テオスに尋ねた。ロイドが聞きたかったのはまさにそれだった。テオスは白テオスと黒テオスに分裂した。そのため、黒テオス及びドノバンの情報を知るすべはないはずだ。
「それは……ッ!?ぐっ!!」
その時、白テオスは突然頭を抑えて苦しみ始めた。
「どうした!?」
「もう一人の、私の力が……!強まる度に、頭が……!!」
「うっ!!?」
その時だった。翔一も頭を抑え始めた。
「ぐ、うああああああっ!!」
「津上く……うっ!!?あああぁぁぁ……!!」
「な、なんだこれ……!!?」
翔一に続いてフリッドとグリムも頭痛に苛まれた。まるで、頭の中を掻き回されているようだった。
「三人とも、大丈……ッ!!」
そして、ロイドはその瞬間、全身に寒気を感じた。ロイドだけではなく、他の皆も同様だった。
寒気だけでなく、汗まで出始めた。皆が感じたのは、圧倒的な恐怖心。
意識しただけでも、即座に殺されてしまいそうだった。それが、少しずつ、少しずつ……近づいていた。
「まずい……!」
その時、アベルは研究室の機械を操作した。すると、床がせり上がり、細長い柱が出てきた。さらにその柱の中からガラスケースが現れた。
アベルはそのガラスケースを手に取り、ふたを開けた。中には細長い水晶が入っている。
「津上君、これを!」
「それは……!?」
頭痛に苛まれながら、翔一はその水晶を見た。
その形には見覚えがあった。
「
「ソニアさんが……!?」
「ママが……!」
アーニャの本当の母親…死んだソニアが最後に遺したもの……それを聞いて翔一とアーニャは食い入るようにその石を見つめた。
すると、アベルは翔一の肩を掴んだ。
「津上君っ!こいつでさらなる進化を果たすんだ!!」
「えっ!?」
「ソニアは死に際のこれを遺した……遺したことには意味がある!君が進化を果たし、最後の切り札になること……!それがソニアの意思のはずだ!!」
「ソニアさんの、意思……!」
差し出された
翔一は思った。ソニアの意思を尊重したい、ソニアの死を報いたいと。
だからこそ、叫んだ。
「変身ッ!!」
翔一は叫び、アギトへと変身した。そしてガラスケースを割って
それを自身の胸に、胸元にある同じ石に近づけた。
(ソニアさん……俺に、力を……!)
アギトは念じながら石を近づける。石同士が近づいていく度にアギトと他の皆に緊張が走る。
そして、二つの
「……えっ……?」
アギトは声を上げた。希望であるはずの石が、ソニアが遺したものが、最後の希望が砕けたのだ。
粉々になった石は床に散らばった。アベルはその場に跪き、震える手で粉々になった石を拾い上げた。
「嘘だ……嘘だッ!!」
アベルの慟哭が響き渡った。目の前で起こった光景に、他の皆はただただ呆然とするしかなかった。
と、その時……
「最後の希望が砕けたか。」
男の声が響いた。
『!!?』
その声はその場にいる誰の者でもなかった。しかし一つ分かるのは、先ほどのように寒気と冷や汗……さらに圧倒的な恐怖心……それが今、背後にいる。
皆は一斉に後ろを向いた。
そこには、ドノバンが立っていた。
「ドノバン……!!」
(これが、あのドノバンだというのか……!?前に会った時と、全然違う……!!)
ロイドは一度ドノバンと顔を合わせたことがある。その時と今のドノバンはまるで別人のようだった。少なくとも、ここまで恐怖を感じることはなかった。
その時、ロイドの横で同じく恐怖していたヨルはスティレットを手にしていたが、持つ手が震えていた。
(何故でしょう……急に、死んだ両親に会いたくなりました……)
ヨルの脳裏に死んだ両親の顔が走馬灯のように浮かんでいた。
すると、ドノバンは白テオスの方に顔を向け、静かに口を開いた。
「まさかまだ生きていたとはな……」
「くっ……!」
「だが、終わりだ。今度こそ貴様を取り込み、私は完全体になる。そして、この老いた体とも別れを告げる。」
ドノバンは自分の身体を見た。ドノバンは黒テオスと一体化している。しかしどうやら、白テオスとも一体化しようとしているようだ。
その時、
「お、おい!」
先ほどまで震えていたダミアンがキッと睨みながらドノバンに向かって叫んだ。
「お、お前……父上に憑りついてるんだろ……!返せっ!父上の身体!!」
ダミアンは叫んだ。泣きたくなるほど恐怖に駆られているにも関わらずに叫んだ。父を思う子の心……それだけでなく、ダミアンは信じたかった。目の前にいるは父の偽物だと。
すると、ドノバンはフッと笑った。
「そうか、貴様はこの老いぼれの息子だったな。身体を返せと言われてもな……お前の父が望んだことだ。」
「嘘だっ!!」
「そうだ、この老いぼれを依り代にして、分かったことがある。この男が、お前ら家族をどう思っているのか……な。」
「!!」
ドノバンの言葉にダミアンは目を見開き、動揺した。心臓がバクバクと脈打つ。ドノバンが自分のことをどう思っているのか、ダミアンはずっと気になっていた。だが、嫌な予感がして冷や汗が滝のように流れ出る。
すると、ドノバンはニヤリと笑った。
「何も思っていなかったな……お前達家族のことなど、微塵も考えていなかったぞ……フハハハハハ……!!」
ドノバンは高笑いを上げた。その笑みはとても邪悪だった。口は耳まで裂け、両目はひどく歪んでいた。
それを見た瞬間、ダミアンは絶望した。
「嘘だ……嘘だぁぁぁぁ……!!」
父親が家族のことを考えていなかったこと、自分の知る父親はもういないことを知り、絶望に打ちひしがれた。
「貴様ぁぁぁぁ!!!」
その時、フリッドは怒りのあまり叫んだ。ダミアンを泣かせたことが許せなかったのだ。
「変身ッ!!」
フリッドはギルスに変身し、ドノバンに飛び掛かった。すると、ドノバンは右手を前に突き出した。その瞬間、ギルスは空中で静止した。
「なにっ……!?」
ドノバンはそのまま腕をブンッと振るうと、ギルスは何か強い力に引っ張られ、壁を貫通して部屋の外に放り出された。
「くっ……!」
ギルスは床に転がり、そこにドノバンが近づいてきた。
「待てやゴラッ!!」
その時、グリムが叫んだ。
「てめぇに用があんのは、俺もなんだよ……!ようやく来たぜ、この時が……!!変身ッ!!」
グリムにとって、ドノバンは父親であり復讐の相手だった。今この場で復讐を果たす時が来たとばかりに、グリムはルデスへと変身した。
「そうか、貴様もこの老いぼれの出来損ないの息子か……」
「なんだとコラッ……!!」
「貴様らは何も知らない……真の絶望が、どういうものか……変身。」
ドノバンは小さく呟いたかと思うと、突如全身が紫色の炎に包まれた。炎に包まれる中、ドノバンは両手を振るった。
するとドノバンを包んでいた炎は消え、ドノバンは姿を現した。
「なっ……!?」
「嘘、だろ……?」
「あれは……!」
「そんな、はずは……!」
「アギ、ト……?」
ドノバンの姿は変わっていた。それは、翔一のアギトと同じ姿だった。だが、翔一とは何もかもが違っていた。黒と金色の身体は白と銀色に変わり、両腕からは鋭い刃が生え、首筋には白いマフラーをたなびかせ、真っ赤な瞳は紫色に変わっていた。
「そうだ……私はアギトへと変身できるようになった。名付けるならば、ミラージュアギト……とでも呼ぶべきか。」
ドノバン……ミラージュアギトは名乗りを上げると、倒れているギルスに向かって右手を前に突き出した。
その瞬間、ギルスの身体に突然紫色の炎が燃え広がった。
「なっ!?」
「ぐっ、ぐああああああああああっ!!!」
「フリッド!!」
突然炎が襲い、ギルスは炎に焼かれて悶え苦しんだ。咄嗟にフィオナが来ていたコートを脱ぎ、それを使って炎を消そうとしたが、炎は消えない。不思議なことに、炎はコートには燃え広がることはなく、ただただギルスのみを焼いていた。
「だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
その時、ルデスは雄たけびを上げて背後からミラージュに襲い掛かった。しかし、次の瞬間フッと閃光がルデスの前を通過した……と思いきや、ルデスの左腕は切断された。
「は……?」
一瞬何が起こったのか分からなかった。見れば、ミラージュは左腕を振り上げている。ルデスが襲い掛かったあの一瞬、ミラージュは光とも呼べる速さで腕を振り上げ、腕の刃でルデスの左腕を切り飛ばした。
「うっ、がぁぁぁぁぁ……!!」
「グリム君!」
ルデスは斬られた左腕を抑え、その場で悶えた。
ヨルは咄嗟に助けようとしたが、動けなかった。初めて水のエルと対面したとき、恐怖を覚えたが、今回のこれはその比ではなかった。少しでも戦おうものなら、死ぬのは確実にヨルの方だった。
「クソっ!」
ユーリはミラージュに向けて銃を乱射した。しかし、銃弾はミラージュに着弾する前に静止し、粉々に砕けた。ユーリはならば、とガトリング砲「GX-05」を取り出し、番号を入力した。
『カイジョシマス』
その音声とともにガトリング砲を構えた。しかし、構えた瞬間にミラージュはユーリの眼前まで近づいていた。
「!!」
気づいたときにはもう遅かった。ミラージュは左手をユーリの、G3-Xのマスクに押し付けた。
「母さん……」
ユーリは思わず母の名を呟いた。近くにいるヨルではなく母を呼んだのは、死を直感したからだった。
「やめてーーーーーーっ!!!」
その時、アーニャは叫んだ。ここまで、ボンドが視た未来と同じだった。ギルスは火炙りにされ、ルデスは左腕を切り飛ばされ、そして今度は、ユーリが氷漬けにされる。
しかし、その未来は破られた。
「……させないっ!!」
ユーリが氷漬けにされる瞬間、シャイニングフォームへと姿を変えたアギトがミラージュの腕を掴んだ。そして、そのまま拳を叩きつけ、ミラージュを殴り飛ばした。
「むぅっ!!」
吹き飛ばされたミラージュだったが、即座に体勢を立て直した。
「……なるほど。確かに一度は私に傷をつけたことはある……他のアギトとは別格だな。」
「……俺だけの力じゃない!」
何事もなかったかのように振る舞うミラージュに、アギトは拳を握って構えた。
「みんなの居場所は奪わせないっ!みんなの居場所は俺が守るっ!!」
そう言って構えたアギトに、他の皆の表情が若干明るくなった。まるで、希望を抱いたかのように。
(みんなの恐怖心が薄れている……?津上君、やはり君は……!)
アベルはその様子を固唾を飲んで見守っていた。その時、ふと床に目をやった。そこには先ほど砕けた
「こ、これは……!?」
アベルは思わず粉になった石を拾い上げた。それと同時に、頭の中に声が響いてきた。
「うっ……」
『みんな……仲良く……』
「ソニア……!?」
それは今は亡きアーニャの実の母親、そしてアベルの妻であるソニアの声だった。石からその声が頭に響いてきた。
(ソニアの声……!?)
『仲良くしなきゃ、ダメよ……みんなで、手を……取り合って……』
それは
(……そうか、そういうことか……)
「フッ、フハハハハハ……」
(何故石が砕けたのか、ようやく分かった……)
残留思念の声を聞いたアベルは笑った…かと思いきや、ポケットからティッシュを取り出してその上に粉になった石を拾い上げて回収し始めた。
残留思念を、ソニアのメッセージを聞き、アベルは全てを理解した。
なぜ石が砕けたのか、ソニアのメッセージの意味が、そして、
(津上君……!やはり君は、この世界の最後の希望だっ!!)
翔一が全ての鍵であることを……
おまけ「アンケート結果」
「フリッドさん!人気投票1位、おめでとうございます!」
この度、フリッドとグリム……どちらが人気かを決めるアンケートの結果、見事フリッドが1位に輝いた。
フリッドは照れくさそうに笑っていたが、対しグリムは部屋の隅で体育座りをしていた。
「だ、大丈夫ですか?グリム君……」
「うるせぇ……!」
ヨルが慰めようとすると、グリムは今にも泣きそうな声で顔を隠しながらヨルの手を振り払った。
投票に負けたショックもあるが、何よりも言い出しっぺの自分が大差をつけられたのがショックだった。
「だ、大丈夫ですよ!ほら、グリム君に2票も入れた人がいますよ!?」
「そ、そうそう!愛されてるよ、グリム!」
「グスッ……慰めんな、バカァ……!」
その時、グリムは顔を上げ、目に涙を浮かべながらキッと二人を睨んだ。その顔を見た瞬間、キュンっと二人の胸が高鳴った。
(……刺さりますね、グリム君の泣き顔……)
(奇遇ですね、俺もです……ヨルさん、実は俺、こんなものを持ってまして……)
(実は私もこんなものを……)
二人はひそひそ話しながら、フリッドは懐から赤ん坊を寝かしつける時に使うガラガラを取り出した。同じくヨルもおしゃぶりを取り出した。
それを手にした二人は、チラリとグリムの方を見た……
(……あの二人、なんかヤバい性癖に目覚めたか?)
そんな二人の様子を、ロイドはただただ傍観したのだった。
その後、グリムがどうなったかは誰も知らない……
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ネタバレ:この後フリッド"だけ"ぶん殴られた
アンケート結果ですが、フリッドが12票、グリムが2票ということで、意外(?)にもフリッドが10票ほどぶっちぎりで1位でした!やっぱり序章から長いこと出てたからかなぁ……それともギャグシーンの壊れっぷり?
何はともあれ、アンケートにご協力いただきありがとうございました!
ミラージュアギトは「S.I.C HERO SAGA」にて登場したオリジナルのライダーです。見た目は大体同じですが、ラスボスにするにあたって色々と脚色が加えられています。
やっぱり神様が変身するし、最強クラスにしないと!