絶賛夏バテ状態になりまして……食事もおにぎり一個だけとか、アイスだけとかの状態になりまして…
まぁ、言い訳になっちゃいますがね。
「よし……これでいいわ。」
「へへっ、サンキュ。」
あれから3日が経過し、グリムは保安局を訪れ、G3トレーラーの中に入っていた。
そこであるものを受け取っていた。それは、グリムの新たな左腕……義手だった。
銀色と黒色が目立つ機械仕掛けの腕……外から見ればすぐにわかってしまうが、長袖を着て、手袋をつければ問題ない。
「意外にしっくりくるな……」
グリムは試しに腕を曲げたり、指をシャカシャカと動かしてみる。動きには特に問題はなかった。動き出すタイミングにラグがあるが、それは慣らしていけばいい。
すると、アイネはフフッと笑い始めた。
「それには仕掛けがあるの。腕の関節部分にレバーがあるでしょ?それ引っ張ってみて。」
「これか……よっ!」
グリムは言われた通り、関節部に搭載されたレバーのロックを解除し、強く引いた。
すると、手のひらからバチバチと火花が走ったかと思いきや、その直後、バンッ!!とい音とともに左手に高圧電流が流れ、青色の閃光が走った。
「名付けて『ボルトアーム』。尋問用に使う電磁警棒をベースに、出力を100倍に引き上げた小型電源回路を搭載したの。」
「へぇ・・・こりゃあますます俺好みだ!」
「あ、言っとくけど簡単に人殺せる出力だから、誤作動とか起こさないでね。」
アイネの忠告を聞きながら、グリムはボルトアームのロックを掛けなおした。
「ありがとよ、二人とも。」
その場にはアイネとグリムの他にもう一人いた。それはフランキーだった。フランキーも義手制作に協力していた。
しかし、フランキーはどこか暗い顔をしていた。
「なによ、暗い顔して。」
「暗くもなるだろうが……!あのアギトが……仮面ライダーがやられたんだろ!?しかもその相手が神様って
……そんなの相手に、俺らができることなんてないだろ!」
「………」
ロイドから話を聞いたフランキーは、軽く自暴自棄になっていた。それもそのはず、戦う相手が神だと知れば、戸惑いもすれば怖がりもするだろう。
すると、アイネはフランキーの隣の椅子に座った。
「フランキー君、絶望はよけいに人をダメにするわ。希望を持ってた方が楽よ。そのために人間には知恵と勇気があるのよ。」
「希望……?馬鹿馬鹿しい!神様相手に何したって、無駄!無駄!無駄だろ!」
慟哭し、フランキーは叫んだ。その叫びに、強がっていたアイネも自身がなくなってきた。
すると、グリムが舌打ちを打った。
「チッ……だったらてめぇだけ勝手に絶望してろ!意気地なしが!」
「お前はなんとも思わないのかよ!?怖いとか、死にたくないとか!」
フランキーは悪態をついて睨んでくるグリムを睨み返した。しかし、グリムは淡々と答える。
「怖いさ。でも、だから戦うんだろ。生きたいって思うから。」
「生きたいから戦う」……その言葉に、フランキーは何も言えなくなった。
すると、グリムは急に笑い始めた。不思議に思ったアイネは首を傾げた。
「いや……よく考えたら、俺……最初から生きるために戦ってたのかもしれない。頼れる親なんていなかったしな……」
グリムは頭の中で、今までの自分の人生を思い返していた。父親、ドノバンに捨てられ、母親も死に…それからグリムは生きるために必死だった。それからグリムの戦いは始まったのだ。
「でも……今はもっと生きたいって思ってる。…そう思わせてくれた、大切な人がいるから。」
さらにグリムの脳裏に一人の女性の姿が浮かんだ。綺麗な黒髪に、眩しい笑顔・・・溢れるやさしさで自分を包んでくれる、大切な人。
ヨル・フォージャー。ヨルの存在が、グリムの「生きたい」という気持ちをさらに強くさせた。
「義手……ありがとな。」
グリムは捨て台詞のように礼を言うと、トレーラーの中から出て行った。
「……フランキー君。あの子はまだ子どもよ。それなのに、必死に戦おうとしてる。あなたはどうなの?」
「……」
フランキーは何も言わなかったが、悩んでいるようだった。本当は、自分はなんて情けないんだと思っていた。自分よりも遥かに年下の少年が、生きようと必死に戦おうとしているのに、自分は自暴自棄になっている。これ以上情けないことはない。
「元気出しなさいっ!!」
「イッテ!!?」
フランキーの心情を理解したアイネは、笑ってフランキーの尻を思い切り叩いた。
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そのころ、
「もういいの?」
「ああ、もうすっかりいいよ。」
フリッドはあの時の戦いで全身に火傷を負ったが、この3日間ですっかり治っていた。
フィオナもホッと胸をなでおろしたが、すぐに浮かない顔を見せた。
「どうした?」
「別に……」
そう言いながら、フィオナはフリッドの胸に手を触れた。
「ただ……いつもケガしてるわね、あなた。」
「……そうかも。」
フィオナの言う通り、フリッドは事あるごとにケガをしていた。その中には、フィオナがつけた傷もあった。
「でも、ケガをするのも悪くない。ケガをした分だけ、人の痛みが分かる気がするんだ。」
「バカ……」
「そうだ……昨日、ダミアンから電話があったんだ。」
暗い雰囲気になるのを察し、フリッドが話題を変えてきた。
「ダミアン・・・メリンダさんに、お母さんに全部話したらしい。」
フリッドの一言にフィオナは驚き、目を見開いた。全て・・・ということは、ドノバンが黒テオスと一体化したことも話したということだ。
「そしたら・・・メリンダさん、すぐさまダミアンのところに飛んでって……抱きしめてくれたらしい。」
「どういうこと?」
「メリンダさんは最初から知ってたんだ。ドノバンが・・・夫が別人になってしまったことに。でも、奴がダミアンに危害を加えるかもしれないって、思ってたらしい。」
「じゃあ、今まで冷たい態度をとってたのは……」
その時、フリッドはコクリと頷いた。
「ああ、ダミアンを守るためにわざとやっていたんだ。……正直、ホッとしたよ。」
フリッドは言葉通りホッと胸をなでおろしていた。フリッドはダミアンの親子関係が気掛かりだった。ダミアンの親は、息子のことを愛していないのではないか・・・とずっと考えていた。しかし、今回のことで愛していたことが分かり、フリッドは喜びを感じていた。
「後は……黒テオスだけだ。奴を倒さないと……死んでも死にきれない……!」
「そんなこと言わないで!」
フリッドは覚悟がこもったセリフを吐いた。しかしすぐさまそれに反論するようにフィオナが声を上げた。
フィオナの顔を見ると、怒りと悲しみがこもったような目でフリッドを見ていた。
「死ぬなんて……言わないで。」
「フィオナ……」
フィオナは泣きそうになっていた。そんなフィオナの手をフリッドはギュッと握った。すると、途端にフィオナの顔は赤くなった。
「わ、私はあなたのことを全部知り終えてない……それだけよ。」
「フフッ……」
「わ、笑うなぁっ!」
不意に笑ったフリッドに、フィオナは顔を真っ赤にして怒った。しかし、すぐさまフリッドが顔を近づけてきた・・・かと思いきや、唇を重ねてきた。
「んむっ……!」
「ぷはっ……大丈夫。覚悟を言ったまでだ。俺は・・・不死身だ!生きてここに戻ってくる。君とずっと一緒にいたいから……」
「……もう、不意打ちばかりして……」
フィオナは赤くなった顔を、下を向いて隠しながら、フリッドの後頭部に手を回した。対し、フリッドはフィオナの頬に触れた。
「……こっち向いて?」
「ヤダ。」
「そうか。じゃあ……勝手にするよ。」
フリッドはそう言うと、下から覗き込むようにうつむいたフィオナの顔に近づき、そのままもう一度キスを交わした。そしてそのまま、二人はベッドに寝転がった……
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「・・・ここにいたんですか。」
一方そのころ、ユーリは高台にある公園である人物と会っていた。
「ユーリ君、でしたね。」
相手は白テオス・・・黒テオスの片割れだ。どうやら白テオスは、柵越しから街を見下ろしていたようだった。
「何してたんですか?」
「見ての通り、街を見ていました。」
「人間観察……ですか?リョーマさんらしいや。」
街を見下ろし、人間を眺める白テオスを見て、ユーリはフッと笑った。
「私はリョーマではありません。」
「分かってますよ。でも・・・僕にとっては、あなたはリョーマさんです。」
白テオスは認めなかったが、ユーリにとって白テオスはリョーマだ。今更呼び方を変えるつもりはなかった。
白テオスもそれを分かっていたのか、ため息をついた。
「……好きに呼びなさい。それより、例の件は?」
「はい……要望通り、リョーマさんの死亡届……無事に保安局に受理できました。」
白テオスはユーリに頼み事をしていた。それは、白テオスが演じた「リョーマ・シン」を亡き者にして欲しい、というものだった。
「リョーマさんは任務中に事故死……ということになりました。」
「ありがとう。これで後腐れないでしょう。」
これは白テオスなりの気遣いだった。戦いが終わり、白テオスが元の世界に帰れば、リョーマという人間は行方不明になる。そうなれば捜索願を出す知人もいるだろう。それならば、最初から死んだことにすれば、諦めもつくと思ったのだ。
しかし、頼まれたユーリの方はなんとも言えない気分になっていた。白テオスは、リョーマは確かにここで生きているのに、それを死んだことにしてほしい・・・などと言われてしまったことが、納得できなかった。
「……寂しくないんですか?」
思わず聞いてしまった。神様相手に。
「ないですね。そういう感情は希薄なので。」
ポーカーフェイスでスンとした態度で淡々と答える白テオス。しかし、次の瞬間、白テオスはフッと笑った。
「ですが……この世界に来て、私はよく笑いました。あなたとアイネと、私の3人でバカ騒ぎして、共に食事をし、共に酒を飲みました。正直……楽しかったです。」
「リョーマさん……!」
白テオスはそう言って笑った。その笑顔を見た途端、ユーリは涙腺が緩むのを感じた。目の前で見た白テオスの笑顔は、ユーリがよく知る、リョーマの笑顔そのものだった。
「……また、会えますよね?」
「どうでしょうね。」
白テオスは特段何も言わなかったが、笑っていた。その顔を見て、「またいつか会える」とユーリは思った。そして、白テオスはその場を立ち去ろうとした・・・が、途端に足が止まった。
「言い忘れていました。もう一人の私のことですが……」
「?」
「彼と戦う時、気を付けてほしいことがあります……決して、憎しみや怒りを抱いたまま戦わないように……」
「どういうことですか……?」
ユーリは白テオスが何を言っているのか分からず、首を傾げた。
「それはあなた方人間が答えを見つけ出してください。」
困惑するユーリに、白テオスは一言だけ言って、その場から立ち去ってしまった。
────────────────────────
そして・・・
「フンフンフンフ~ン♪デートデート~♪」
アーニャは鼻歌を歌いながら翔一と手を繋いで歩いていた。あんなことがあった後だったが、アーニャは翔一とのデートを楽しんでいた。しかし、肝心の翔一は笑顔ではあったが、どこか思いつめた顔をしていた。
「ショーイチ?おなかいたい?」
「え?あ、いや・・・大丈夫だよ!俺は元気だから!」
そう言った翔一だったが、やはりどこか暗い顔をしていた。すると、アーニャは翔一の腕を引っ張り始めた。
「アーニャ、うみ、みたい!うみみにいく!」
「う、海?あ、ちょっ、引っ張らないで……」
そのまま二人は海を見に行ったが、この日はバイクに乗ってきていなかったので、最寄りの海が見える倉庫群に立ち寄った。
二人は倉庫の壁を背もたれ代わりにして、その場に座り込んで海を眺めた。
「うみ、キレイ。」
「うん……あ、あのね、アーニャちゃん。」
海を眺めながら、翔一は苦笑いのような表情を浮かべ、アーニャに話しかけた。
「ソニアさんのこと……ごめんね。俺、ソニアさんを助けられなかった……守ってあげられなかった……!」
翔一はソニアを、アーニャの母親を助けられなかったをずっと悔いていた。しかし、それだけではなかった。
「アベルさんも……俺が弱かったから……!」
アベルのことも、父親のことも助けられなかった翔一は、自分が情けなくなった。すると、アーニャは翔一に抱き着いてきた。
「ショーイチ、わるくない・・・!わるいのアンノン!」
アーニャは「アンノウン」と言ったつもりだったが、舌が回らず「アンノン」と言ってしまった。
「…プッ、アハハ……!」
それを聞いて、翔一は思わず笑った。対し、アーニャは恥ずかしくなって顔を真っ赤にした。そして恥ずかしいのをごまかすためなのか、小さい拳でポカポカと殴ってきた。
「あははっ、ごめんごめん!でも、ありがとうアーニャちゃん。おかげで元気出たよ!」
記憶を取り戻してから、翔一はずっとアーニャを、ソニアとアベルのことをずっと考えていた。ずっとアーニャに謝りたいと思ってきた。大事な人の両親を殺してしまったのは自分だと、自責の念に捕らわれていた。
しかし、アーニャはそんな自分を励ましてくれた。それだけでも、翔一にはありがたいと感じていた。
「えへへ……」
翔一が笑ったのを見て、アーニャも笑った。
その後、二人は手を繋いで帰路についた。
「ん?」
その道中、とある電気屋の前で人だかりができていた。二人はその中に紛れ込んだ。
「何があったんですか?」
「いや、なんかテレビが変なんだよ。ここだけじゃなくて、家のテレビもおかしくなって……」
野次馬の一人に話しかけたのも束の間、電気屋に並べられたテレビの映像が変わった。そこに写ったものに、翔一は目を見開いた。
テレビに写っていたのは、ドノバン・・・黒テオスだった。
『この世界に生きる人間達よ……此度は大事な報告がある。』
ドノバンのその言葉に、その映像を見ているもの・・・さらにはその映像を撮ったスタッフ達も困惑していた。
ドノバンがいるのは議事堂・・・会議室のような場所だった。
すると、
『変身』
ドノバンは突然、ミラージュアギトへと変身した。
当然、その姿を見た街の人々は困惑した。
「な、なんだあれ!?」
「白いアギト!?」
『諸君、ドノバン・デズモンドという人間は……死んだ。殺したのはこの私だ……』
さらに続けてミラージュは告白し始めた。確かに黒テオスはドノバンの意思を乗っ取った。ある意味ではドノバンは黒テオスに殺されたようなものだ。しかし、なぜそれをテレビで国民に報告する必要があるのか……
ミラージュは続けて言った。
『ドノバンに成り代わった私は、この世界をつぶさに見て回った。……なんとも愚かな世界だ。争いは絶えず、皆、本性を隠し人を騙す。なんとも愚かしい世界だ。故に、私は決意した。この世界を、創り直す。』
ミラージュはそう言うと、両手を広げ、天を仰ぐように顔を上に向けた。それと同時に、ミラージュの周りにアントロード達が床の下から這い出るように現れた。
それだけでなく、以前倒したはずの水のエル、風のエル、地のエルまでもが姿を現した。
「きゃあっ!!」
「ア、アンノウン!?」
「あいつ、アギトだよな……?なんでアギトがアンノウンといるんだよ!」
テレビを見ていた民衆は困惑していた。民衆にとってアギトとはアンノウンと戦う正義のヒーロー・・・それがアンノウンと並んでいる。恐怖と混乱が渦巻いていた。
『我は、貴様ら人間がアンノウンと呼ぶ者達を創り出した創造主……!テオスである!!』
ミラージュアギトは、テオスは名乗りを上げた。もはや、ドノバンという仮初の姿は必要ない。自身が神であることを知らしめさせるように。
『明朝、我らはこの東国を破壊する。世界を創り直すには、破壊が必要だ……逃げ惑うがいい、人間よ。』
テオスはそう言い渡すと、テレビの映像はそこで途切れ、画面は真っ暗になった。
映像が終わり、街の人々はただただ戸惑っていた。
「い、今のは……?」
「映画の宣伝じゃないの?」
「で、でも、アンノウンが……!」
皆が戸惑い、声を上げる中、翔一とアーニャは真面目な顔つきになっていた。
「アーニャちゃん、戻ろう!」
「うぃっ!」
二人は確信した。最後の戦いがいよいよ始まってしまうということに……
おまけ「ボルトアーム」
ボルトアーム
左腕を失ったグリムの新たな左腕。アイネとフランキーが共同開発したもので、ある意味、東国と西国の共同開発ともいえる。
最大の特徴は高圧電流を流して攻撃できることであり、その電力は500万~1000万Vに及ぶ。並の人間ならば即死させることができる。怪人相手なら、雑魚怪人ならば一撃で倒せる。
「義手か……使うには慣れがいるけど、やるしかねぇか。ん?」
グリムは視線を感じ、振り向いた。するとそこには、同じく武器腕を持つライダーマンが電柱の陰に隠れてグリムの方をじっと見ていた。
すると、ライダーマンはニッと笑いながら右手の親指をグッと上げた。
(……なんか同類を見てる目で見てるな……)
関わるのも厄介なので、関わらないようにしたグリムだった。
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長くなりそうだったので前後編に分けました。
やりたかったシーンもあるので……