SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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更新が遅くなって申し訳ありません。
絶賛夏バテ状態になりまして……食事もおにぎり一個だけとか、アイスだけとかの状態になりまして…
まぁ、言い訳になっちゃいますがね。




第58話「決戦前夜(前編)」

 

「よし……これでいいわ。」

「へへっ、サンキュ。」

 

あれから3日が経過し、グリムは保安局を訪れ、G3トレーラーの中に入っていた。

そこであるものを受け取っていた。それは、グリムの新たな左腕……義手だった。

銀色と黒色が目立つ機械仕掛けの腕……外から見ればすぐにわかってしまうが、長袖を着て、手袋をつければ問題ない。

 

「意外にしっくりくるな……」

 

グリムは試しに腕を曲げたり、指をシャカシャカと動かしてみる。動きには特に問題はなかった。動き出すタイミングにラグがあるが、それは慣らしていけばいい。

すると、アイネはフフッと笑い始めた。

 

「それには仕掛けがあるの。腕の関節部分にレバーがあるでしょ?それ引っ張ってみて。」

「これか……よっ!」

 

グリムは言われた通り、関節部に搭載されたレバーのロックを解除し、強く引いた。

すると、手のひらからバチバチと火花が走ったかと思いきや、その直後、バンッ!!とい音とともに左手に高圧電流が流れ、青色の閃光が走った。

 

「名付けて『ボルトアーム』。尋問用に使う電磁警棒をベースに、出力を100倍に引き上げた小型電源回路を搭載したの。」

「へぇ・・・こりゃあますます俺好みだ!」

「あ、言っとくけど簡単に人殺せる出力だから、誤作動とか起こさないでね。」

 

アイネの忠告を聞きながら、グリムはボルトアームのロックを掛けなおした。

 

「ありがとよ、二人とも。」

 

その場にはアイネとグリムの他にもう一人いた。それはフランキーだった。フランキーも義手制作に協力していた。

しかし、フランキーはどこか暗い顔をしていた。

 

「なによ、暗い顔して。」

「暗くもなるだろうが……!あのアギトが……仮面ライダーがやられたんだろ!?しかもその相手が神様って

……そんなの相手に、俺らができることなんてないだろ!」

「………」

 

ロイドから話を聞いたフランキーは、軽く自暴自棄になっていた。それもそのはず、戦う相手が神だと知れば、戸惑いもすれば怖がりもするだろう。

すると、アイネはフランキーの隣の椅子に座った。

 

「フランキー君、絶望はよけいに人をダメにするわ。希望を持ってた方が楽よ。そのために人間には知恵と勇気があるのよ。」

「希望……?馬鹿馬鹿しい!神様相手に何したって、無駄!無駄!無駄だろ!」

 

慟哭し、フランキーは叫んだ。その叫びに、強がっていたアイネも自身がなくなってきた。

すると、グリムが舌打ちを打った。

 

「チッ……だったらてめぇだけ勝手に絶望してろ!意気地なしが!」

「お前はなんとも思わないのかよ!?怖いとか、死にたくないとか!」

 

フランキーは悪態をついて睨んでくるグリムを睨み返した。しかし、グリムは淡々と答える。

 

「怖いさ。でも、だから戦うんだろ。生きたいって思うから。」

 

「生きたいから戦う」……その言葉に、フランキーは何も言えなくなった。

すると、グリムは急に笑い始めた。不思議に思ったアイネは首を傾げた。

 

「いや……よく考えたら、俺……最初から生きるために戦ってたのかもしれない。頼れる親なんていなかったしな……」

 

グリムは頭の中で、今までの自分の人生を思い返していた。父親、ドノバンに捨てられ、母親も死に…それからグリムは生きるために必死だった。それからグリムの戦いは始まったのだ。

 

「でも……今はもっと生きたいって思ってる。…そう思わせてくれた、大切な人がいるから。」

 

さらにグリムの脳裏に一人の女性の姿が浮かんだ。綺麗な黒髪に、眩しい笑顔・・・溢れるやさしさで自分を包んでくれる、大切な人。

ヨル・フォージャー。ヨルの存在が、グリムの「生きたい」という気持ちをさらに強くさせた。

 

「義手……ありがとな。」

 

グリムは捨て台詞のように礼を言うと、トレーラーの中から出て行った。

 

「……フランキー君。あの子はまだ子どもよ。それなのに、必死に戦おうとしてる。あなたはどうなの?」

「……」

 

フランキーは何も言わなかったが、悩んでいるようだった。本当は、自分はなんて情けないんだと思っていた。自分よりも遥かに年下の少年が、生きようと必死に戦おうとしているのに、自分は自暴自棄になっている。これ以上情けないことはない。

 

「元気出しなさいっ!!」

「イッテ!!?」

 

フランキーの心情を理解したアイネは、笑ってフランキーの尻を思い切り叩いた。

 

────────────────────────

 

そのころ、

 

「もういいの?」

「ああ、もうすっかりいいよ。」

 

フリッドはあの時の戦いで全身に火傷を負ったが、この3日間ですっかり治っていた。

フィオナもホッと胸をなでおろしたが、すぐに浮かない顔を見せた。

 

「どうした?」

「別に……」

 

そう言いながら、フィオナはフリッドの胸に手を触れた。

 

「ただ……いつもケガしてるわね、あなた。」

「……そうかも。」

 

フィオナの言う通り、フリッドは事あるごとにケガをしていた。その中には、フィオナがつけた傷もあった。

 

「でも、ケガをするのも悪くない。ケガをした分だけ、人の痛みが分かる気がするんだ。」

「バカ……」

「そうだ……昨日、ダミアンから電話があったんだ。」

 

暗い雰囲気になるのを察し、フリッドが話題を変えてきた。

 

「ダミアン・・・メリンダさんに、お母さんに全部話したらしい。」

 

フリッドの一言にフィオナは驚き、目を見開いた。全て・・・ということは、ドノバンが黒テオスと一体化したことも話したということだ。

 

「そしたら・・・メリンダさん、すぐさまダミアンのところに飛んでって……抱きしめてくれたらしい。」

「どういうこと?」

「メリンダさんは最初から知ってたんだ。ドノバンが・・・夫が別人になってしまったことに。でも、奴がダミアンに危害を加えるかもしれないって、思ってたらしい。」

「じゃあ、今まで冷たい態度をとってたのは……」

 

その時、フリッドはコクリと頷いた。

 

「ああ、ダミアンを守るためにわざとやっていたんだ。……正直、ホッとしたよ。」

 

フリッドは言葉通りホッと胸をなでおろしていた。フリッドはダミアンの親子関係が気掛かりだった。ダミアンの親は、息子のことを愛していないのではないか・・・とずっと考えていた。しかし、今回のことで愛していたことが分かり、フリッドは喜びを感じていた。

 

「後は……黒テオスだけだ。奴を倒さないと……死んでも死にきれない……!」

「そんなこと言わないで!」

 

フリッドは覚悟がこもったセリフを吐いた。しかしすぐさまそれに反論するようにフィオナが声を上げた。

フィオナの顔を見ると、怒りと悲しみがこもったような目でフリッドを見ていた。

 

「死ぬなんて……言わないで。」

「フィオナ……」

 

フィオナは泣きそうになっていた。そんなフィオナの手をフリッドはギュッと握った。すると、途端にフィオナの顔は赤くなった。

 

「わ、私はあなたのことを全部知り終えてない……それだけよ。」

「フフッ……」

「わ、笑うなぁっ!」

 

不意に笑ったフリッドに、フィオナは顔を真っ赤にして怒った。しかし、すぐさまフリッドが顔を近づけてきた・・・かと思いきや、唇を重ねてきた。

 

「んむっ……!」

「ぷはっ……大丈夫。覚悟を言ったまでだ。俺は・・・不死身だ!生きてここに戻ってくる。君とずっと一緒にいたいから……」

「……もう、不意打ちばかりして……」

 

フィオナは赤くなった顔を、下を向いて隠しながら、フリッドの後頭部に手を回した。対し、フリッドはフィオナの頬に触れた。

 

「……こっち向いて?」

「ヤダ。」

「そうか。じゃあ……勝手にするよ。」

 

フリッドはそう言うと、下から覗き込むようにうつむいたフィオナの顔に近づき、そのままもう一度キスを交わした。そしてそのまま、二人はベッドに寝転がった……

 

────────────────────────

 

「・・・ここにいたんですか。」

 

一方そのころ、ユーリは高台にある公園である人物と会っていた。

 

「ユーリ君、でしたね。」

 

相手は白テオス・・・黒テオスの片割れだ。どうやら白テオスは、柵越しから街を見下ろしていたようだった。

 

「何してたんですか?」

「見ての通り、街を見ていました。」

「人間観察……ですか?リョーマさんらしいや。」

 

街を見下ろし、人間を眺める白テオスを見て、ユーリはフッと笑った。

 

「私はリョーマではありません。」

「分かってますよ。でも・・・僕にとっては、あなたはリョーマさんです。」

 

白テオスは認めなかったが、ユーリにとって白テオスはリョーマだ。今更呼び方を変えるつもりはなかった。

白テオスもそれを分かっていたのか、ため息をついた。

 

「……好きに呼びなさい。それより、例の件は?」

「はい……要望通り、リョーマさんの死亡届……無事に保安局に受理できました。」

 

白テオスはユーリに頼み事をしていた。それは、白テオスが演じた「リョーマ・シン」を亡き者にして欲しい、というものだった。

 

「リョーマさんは任務中に事故死……ということになりました。」

「ありがとう。これで後腐れないでしょう。」

 

これは白テオスなりの気遣いだった。戦いが終わり、白テオスが元の世界に帰れば、リョーマという人間は行方不明になる。そうなれば捜索願を出す知人もいるだろう。それならば、最初から死んだことにすれば、諦めもつくと思ったのだ。

しかし、頼まれたユーリの方はなんとも言えない気分になっていた。白テオスは、リョーマは確かにここで生きているのに、それを死んだことにしてほしい・・・などと言われてしまったことが、納得できなかった。

 

「……寂しくないんですか?」

 

思わず聞いてしまった。神様相手に。

 

「ないですね。そういう感情は希薄なので。」

 

ポーカーフェイスでスンとした態度で淡々と答える白テオス。しかし、次の瞬間、白テオスはフッと笑った。

 

「ですが……この世界に来て、私はよく笑いました。あなたとアイネと、私の3人でバカ騒ぎして、共に食事をし、共に酒を飲みました。正直……楽しかったです。」

「リョーマさん……!」

 

白テオスはそう言って笑った。その笑顔を見た途端、ユーリは涙腺が緩むのを感じた。目の前で見た白テオスの笑顔は、ユーリがよく知る、リョーマの笑顔そのものだった。

 

「……また、会えますよね?」

「どうでしょうね。」

 

白テオスは特段何も言わなかったが、笑っていた。その顔を見て、「またいつか会える」とユーリは思った。そして、白テオスはその場を立ち去ろうとした・・・が、途端に足が止まった。

 

「言い忘れていました。もう一人の私のことですが……」

「?」

「彼と戦う時、気を付けてほしいことがあります……決して、憎しみや怒りを抱いたまま戦わないように……」

「どういうことですか……?」

 

ユーリは白テオスが何を言っているのか分からず、首を傾げた。

 

「それはあなた方人間が答えを見つけ出してください。」

 

困惑するユーリに、白テオスは一言だけ言って、その場から立ち去ってしまった。

 

────────────────────────

 

そして・・・

 

「フンフンフンフ~ン♪デートデート~♪」

 

アーニャは鼻歌を歌いながら翔一と手を繋いで歩いていた。あんなことがあった後だったが、アーニャは翔一とのデートを楽しんでいた。しかし、肝心の翔一は笑顔ではあったが、どこか思いつめた顔をしていた。

 

「ショーイチ?おなかいたい?」

「え?あ、いや・・・大丈夫だよ!俺は元気だから!」

 

そう言った翔一だったが、やはりどこか暗い顔をしていた。すると、アーニャは翔一の腕を引っ張り始めた。

 

「アーニャ、うみ、みたい!うみみにいく!」

「う、海?あ、ちょっ、引っ張らないで……」

 

そのまま二人は海を見に行ったが、この日はバイクに乗ってきていなかったので、最寄りの海が見える倉庫群に立ち寄った。

二人は倉庫の壁を背もたれ代わりにして、その場に座り込んで海を眺めた。

 

「うみ、キレイ。」

「うん……あ、あのね、アーニャちゃん。」

 

海を眺めながら、翔一は苦笑いのような表情を浮かべ、アーニャに話しかけた。

 

「ソニアさんのこと……ごめんね。俺、ソニアさんを助けられなかった……守ってあげられなかった……!」

 

翔一はソニアを、アーニャの母親を助けられなかったをずっと悔いていた。しかし、それだけではなかった。

 

「アベルさんも……俺が弱かったから……!」

 

アベルのことも、父親のことも助けられなかった翔一は、自分が情けなくなった。すると、アーニャは翔一に抱き着いてきた。

 

「ショーイチ、わるくない・・・!わるいのアンノン!」

 

アーニャは「アンノウン」と言ったつもりだったが、舌が回らず「アンノン」と言ってしまった。

 

「…プッ、アハハ……!」

 

それを聞いて、翔一は思わず笑った。対し、アーニャは恥ずかしくなって顔を真っ赤にした。そして恥ずかしいのをごまかすためなのか、小さい拳でポカポカと殴ってきた。

 

「あははっ、ごめんごめん!でも、ありがとうアーニャちゃん。おかげで元気出たよ!」

 

記憶を取り戻してから、翔一はずっとアーニャを、ソニアとアベルのことをずっと考えていた。ずっとアーニャに謝りたいと思ってきた。大事な人の両親を殺してしまったのは自分だと、自責の念に捕らわれていた。

しかし、アーニャはそんな自分を励ましてくれた。それだけでも、翔一にはありがたいと感じていた。

 

「えへへ……」

 

翔一が笑ったのを見て、アーニャも笑った。

その後、二人は手を繋いで帰路についた。

 

「ん?」

 

その道中、とある電気屋の前で人だかりができていた。二人はその中に紛れ込んだ。

 

「何があったんですか?」

「いや、なんかテレビが変なんだよ。ここだけじゃなくて、家のテレビもおかしくなって……」

 

野次馬の一人に話しかけたのも束の間、電気屋に並べられたテレビの映像が変わった。そこに写ったものに、翔一は目を見開いた。

テレビに写っていたのは、ドノバン・・・黒テオスだった。

 

『この世界に生きる人間達よ……此度は大事な報告がある。』

 

ドノバンのその言葉に、その映像を見ているもの・・・さらにはその映像を撮ったスタッフ達も困惑していた。

ドノバンがいるのは議事堂・・・会議室のような場所だった。

すると、

 

『変身』

 

ドノバンは突然、ミラージュアギトへと変身した。

当然、その姿を見た街の人々は困惑した。

 

「な、なんだあれ!?」

「白いアギト!?」

『諸君、ドノバン・デズモンドという人間は……死んだ。殺したのはこの私だ……』

 

さらに続けてミラージュは告白し始めた。確かに黒テオスはドノバンの意思を乗っ取った。ある意味ではドノバンは黒テオスに殺されたようなものだ。しかし、なぜそれをテレビで国民に報告する必要があるのか……

ミラージュは続けて言った。

 

『ドノバンに成り代わった私は、この世界をつぶさに見て回った。……なんとも愚かな世界だ。争いは絶えず、皆、本性を隠し人を騙す。なんとも愚かしい世界だ。故に、私は決意した。この世界を、創り直す。』

 

ミラージュはそう言うと、両手を広げ、天を仰ぐように顔を上に向けた。それと同時に、ミラージュの周りにアントロード達が床の下から這い出るように現れた。

それだけでなく、以前倒したはずの水のエル、風のエル、地のエルまでもが姿を現した。

 

「きゃあっ!!」

「ア、アンノウン!?」

「あいつ、アギトだよな……?なんでアギトがアンノウンといるんだよ!」

 

テレビを見ていた民衆は困惑していた。民衆にとってアギトとはアンノウンと戦う正義のヒーロー・・・それがアンノウンと並んでいる。恐怖と混乱が渦巻いていた。

 

『我は、貴様ら人間がアンノウンと呼ぶ者達を創り出した創造主……!テオスである!!』

 

ミラージュアギトは、テオスは名乗りを上げた。もはや、ドノバンという仮初の姿は必要ない。自身が神であることを知らしめさせるように。

 

『明朝、我らはこの東国を破壊する。世界を創り直すには、破壊が必要だ……逃げ惑うがいい、人間よ。』

 

テオスはそう言い渡すと、テレビの映像はそこで途切れ、画面は真っ暗になった。

映像が終わり、街の人々はただただ戸惑っていた。

 

「い、今のは……?」

「映画の宣伝じゃないの?」

「で、でも、アンノウンが……!」

 

皆が戸惑い、声を上げる中、翔一とアーニャは真面目な顔つきになっていた。

 

「アーニャちゃん、戻ろう!」

「うぃっ!」

 

二人は確信した。最後の戦いがいよいよ始まってしまうということに……

 

 




おまけ「ボルトアーム」

ボルトアーム
左腕を失ったグリムの新たな左腕。アイネとフランキーが共同開発したもので、ある意味、東国と西国の共同開発ともいえる。
最大の特徴は高圧電流を流して攻撃できることであり、その電力は500万~1000万Vに及ぶ。並の人間ならば即死させることができる。怪人相手なら、雑魚怪人ならば一撃で倒せる。

「義手か……使うには慣れがいるけど、やるしかねぇか。ん?」

グリムは視線を感じ、振り向いた。するとそこには、同じく武器腕を持つライダーマンが電柱の陰に隠れてグリムの方をじっと見ていた。
すると、ライダーマンはニッと笑いながら右手の親指をグッと上げた。

(……なんか同類を見てる目で見てるな……)

関わるのも厄介なので、関わらないようにしたグリムだった。

――――――――――――――

長くなりそうだったので前後編に分けました。
やりたかったシーンもあるので……




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