SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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第63話「勝利と喪失」

 

「ハッ!」

「フンッ!」

 

アギトは背中の翼から剣の羽根を射出し、ミラージュは鎧にしている紫色の炎を巨大な剣に変えて羽根をはじいた。

すると、アギトは二本の剣を手に装備した。すると10枚の羽根が剣に集まり、光となって吸収され巨大なシャイニングカリバーに変化した。

巨大な剣同士がぶつかり合い、火花を散らす。そして次の瞬間、アギトは剣で突き刺そうと前に突き出した。ミラージュはその攻撃をよけた、が次の瞬間巨大になった剣から光が飛び出し、剣は元のサイズに戻った。そして飛び出した光は元の剣の羽根に戻り、一斉にミラージュに突き刺さった。

 

「ぐぅっ!?こ…こざかしいっ!!」

 

刺さった羽根を炎で燃やし、ミラージュはさらに炎で巨大な牙を創り出し、アギトを飲み込もうとした。

対し、アギトは数枚の羽根で光の盾を創り、攻撃を防いだ。しかし攻撃が止んだ瞬間、ミラージュは姿を消していた。

 

「消えた……ッ!!」

 

その時アギトは背後に気配を感じ、振り向いた。そこにはミラージュの姿が。

ミラージュは鞭状に変化させた炎を腕に巻き付け、強化されたパンチを繰り出した。アギトも即座に光に変えた羽根を拳に吸収させ、同じくパンチを繰り出した。

互いの拳がぶつかり合い、激しい衝撃波が大空に走った。そこから激しい殴り合いが続き、両者の攻撃がぶつかり合う度に衝撃波が走った。

 

その光景を、ギルス達はただただ見守ることしかできなかった。

 

「歯がゆいな……俺達は何もできないなんて……」

「し、しかたねぇだろ……俺ら空飛べねぇし、なにより俺らとアイツらじゃ、強さが違いすぎる……」

「ん……?」

 

その時、ユーリが何かに気が付いた。車のエンジン音が徐々に近づいてきていた。そしてふと視線を移すと、そこには1台の車が3人に突っ込み、目の前で止まった。

 

「あ、あれは…」

「翔一君は!?」

 

車から出てきたのはロイド達だった。それを見て3人は思わず驚いた。

 

「ロ、ロッティ!?姉さん!?チワワ娘……それにデブ犬まで……!」

「翔一君はどこだ!?」

「あそこに……」

 

ユーリは空で戦うアギトを指差した。

両者の激しい攻防は続いていた。

 

「ハァァァァ……デヤァァァァァァァァ!!」

「ルォォォォォォォッ!!」

 

両者は互いに必殺の蹴りを繰り出した。必殺技が空中でぶつかり合い、白と紫色の閃光が走るがすぐに両者は吹き飛んだ。

 

「うわっ!!」

「くうっ!!」

 

両者とも実力は拮抗していた。パワー、スピード、反射神経……その全てが互角だった。

だが、

 

「決定打が足りない……」

「え?」

 

ロイドの言葉に皆が耳を疑い、ロイドの方を向いた。

 

「今の翔一君は確かに強い……だが、奴を一撃で葬れるだけの決定打がないんだ。……いや、もしかしたらあるのかもしれない。だがそれを行うための時間がない……」

「じゃあ、どうすれば……?」

 

ロイドは辺りを見回した。すると、ふと目に入ったのはユーリが落としたアンカーユニット「GA-04 アンタレス」……それをロイドは拾い上げ、ユーリに差し出した。

 

「…翔一君の時間を稼ぐ!ユーリ君、フリッド!二人はなんとしてでも奴の動きを止めてくれ!グリム!」

 

ユーリにアンカーユニットを手渡すと、今度はルデスに声をかける。

 

「武器はあるな?それで奴の高度を落とせ!それからスピードで攪乱しろ!」

「おう・・・任せとけ!」

 

ルデスは力強く頷くと、ベルトから二振りのトマホークを抜いた。

ギルスも背中から赤い触手「ギルススティンガー」を伸ばし、ユーリも右腕にアンカーユニットを装着した。

 

「いくぞ、ユーリ君!」

「はい!ロッティ達は下がって……ッ!?」

 

ロイド達に避難するよう伝えようとしたユーリは目を疑った。

そこには、ロイドがガトリング砲「GX-05 ケルベロス」を持ち上げ、砲身にロケット弾頭を装填している光景があった。

 

「な、何してるんだ!?」

「俺も翔一君の手助けをする。そっちは頼んだ!」

「バカッ!!それは生身の人間が使えるものじゃない!肩が外れるだけじゃすまないぞ!!」

 

ユーリはロイドを止めようと手を伸ばした。ロイドのしようとしていることは自殺にも等しい行動だった。

「GX-05」は"G3-Xだから"使える武器。通常の銃火器とは比べ物にならない反動が襲い掛かってくる。それを生身の人間が使えば肩が外れるどころか、全身の骨が砕ける可能性すらある。

それを知っているユーリはロイドの腕を掴もうとした。しかし、逆にヨルがユーリの腕を掴んだ。

 

「ね、姉さん!」

「大丈夫……私が後ろから支えます!」

「アーニャも!」

「ボフッ!」

 

覚悟を決めたような顔でヨル、アーニャ、ボンドが名乗りを上げた。しかし、ユーリは首を横に振る。

 

「む、無理だよ!何人束になっても、そのガトリング砲の反動を支えるなんて……!!」

 

口では「無理」と言ったものの、密かに「もしかしたらいけるかもしれない」と思っていたユーリ。しかし、愛する姉が傷ついてしまう可能性を恐れ、可能性を否定した。

すると、ヨルはユーリの肩を叩いた。

 

「ユーリ……支え合うのが家族でしょ?」

「うっ……」

「ロイドさんは私の家族。翔一さんも私の家族……だったら、私達が支えないと。」

「で、でも……!」

 

まだ迷いが残るユーリに、ヨルは平手打ちしようと右手を振った。しかし、それを当たる寸前で止めた。

 

「ね、姉さん……?」

「しっかりしなさい!あなたは……あなただって、みんなを守る仮面ライダーでしょ?」

「!!」

 

そのヨルの言葉に、ユーリはハッとした。

 

(そうだ……僕は、今の僕は……仮面ライダーだ!)

 

ユーリも覚悟を決めた。姉の、愛する人が生きる未来のために、親友を助けるために。

 

「今だッ!」

 

その時、ルデスはトマホークをミラージュに向かって投げた。幸い、ミラージュはアギトとの戦いに夢中で他には目もくれていない。トマホークは見事背中に当たった。

 

「ぬうっ!?」

 

攻撃を食らい、ミラージュはふらついた。それを見てルデスは追い打ちをかけようと空高く跳び上がった。その時、アギトは「これを使え!」とばかりに羽根を何枚か抜いて足場としてルデスの前に展開した。

 

「使わせてもらうぜ!」

 

アギトの厚意に従い、ルデスは羽根を足場にしてさらに高く跳び上がった。

 

「トォッ!!」

 

ルデスは掛け声とともに鋭いかかと落としを繰り出す。ミラージュは咄嗟に両手を交差させてかかと落としを防いだ。しかし、ルデスはさらに力を込めてミラージュを少しでも地面に落とそうとする。

 

「うおおおおおおおっ!!」

「しつこい小僧だ……!!無駄だと分からんのか!!」

 

叫び声とともにミラージュは紫色の炎を巨大な拳に変化させ、ルデスを掴んで投げ飛ばし、地面に叩きつけた。

 

「ここだっ!!」

 

しかし、それと同時にユーリはアンカーを、ギルスは背中の触手をミラージュの足に巻き付けた。

 

「うおっ!?」

「引っ張れぇぇぇぇ!!」

「ぬああああああっ!!」

 

二人は全身全霊の力を込めてミラージュの足を引っ張った。こんなことではミラージュは落ちはしないが、時間稼ぎにはなる。

と、その時……

 

「この……下等生物がッッッ!!!」

 

ミラージュは炎でアンカーと触手を焼き切り、さらに炎の弾で二人を吹き飛ばした。

 

「ぐあっ!!」

「うわぁっ!!」

「貴様ら人間は、どうしてこうも無駄なあがきをする……?私は、創り直してやろうと言うのだぞ!?この世界を!!世界を創り直すには破壊が必要だと、なぜわからん!?」

 

まだあがこうとする3人を見て、叫び声を上げるミラージュアギト。すると、ルデスは拳で地面を殴り、同じく叫び声を上げた。

 

「わかんねぇよ!!てめぇの言ってることなんざ、1から10まで全部わかんねぇよ!!」

 

さらに続けて、ユーリが声を上げた。

 

「勝手な理由で殺されてたまるか!僕らは、まだ今のこの世界で生きていたいんだ!!」

 

続けてギルスが叫んだ。

 

「愛する人が、大切な人達がいる……この世界で!!」

「貴様らぁ……!!」

 

と、その時だった。ミラージュのベルト部分が突然爆発を起こした。

 

「うっ!!?」

 

ベルト部分に、爆発物が激突したのだ。それを撃ったのは、ロイド達だった。

ミラージュは視線を爆発物が飛んできた方向に移した。そこには、ガトリング砲を構えたロイドの姿があった。その後ろにはヨル、アーニャ、ボンドがロイドの背中を支えていた。

 

「くっ……!ううっ……!!」

 

流石に反動がきつかったのか、ロイドは肩を抑えた。対し、ミラージュは怒り狂った。

 

「なんなんだ……!!なんなんだ貴様らァァァァァァァァ!!!」

 

ミラージュは許せなかった。たかが人間が、下等生物が神である自分に効いていないとはいえ、一撃を加えるなどあってはいけないことだった。

そんなミラージュに対し、ロイドは言った。

 

「………ただの人間だっ!!」

 

本名を捨て、肩書を捨てた男の言葉……それは聞く者によってはくだらないかもしれない。しかし、その言葉は人間がどれほど強いのかを示す言葉だった。

 

そして……時間稼ぎは終わった。

 

「!!」

 

ミラージュは異変に気付いたが、遅かった。

ロイド達が時間稼ぎをしたおかげで、アギトは決定打を決めるための準備が終わっていた。

ミラージュの周囲に、青く光るアギトの紋章が無数に配置されていた。それを見た瞬間、ミラージュは総毛だった。

 

「ハッ!!」

 

アギトは紋章目掛けて必殺の蹴りを繰り出した。すると、紋章に入った瞬間アギトは姿を消した・・・かと思いきや別の紋章から姿を現し、ミラージュを蹴り飛ばす。

 

「ぐあっ!!?」

 

さらに違う紋章に入り、もう一度別の紋章から現れて蹴り飛ばす。それが何度も何度も繰り返される。ミラージュは四方八方から襲い掛かるキックの嵐に対応できず、次第にボロボロになり、紫色の炎さえ出せなくなっていった。

 

「ハァァァァ……ハッ!!」

 

アギトは全身に力を込める。するとミラージュの周りに展開された紋章が全てアギトに吸収され、アギトの全身が青く輝いた。

そして繰り出される……究極まで、限界まで、極限まで進化したアギトが繰り出す、ライダーキックを!

 

「デヤァァァァァァァァ!!」

「グッ!?グオアアアアアアアアアア!!!な、何故だ……何故私が……!私こそ、この世界を運命を握っているのに……!!」

「人の運命が、お前の手の中にあるのなら!俺が……俺が奪い返すッ!!!」

 

そして、アギトのライダーキックがミラージュアギトを貫いた。その次の瞬間閃光が走り、凄まじい爆発が起きた。ミラージュが爆発に飲まれる中、アギトは綺麗に地面に着地した。

 

「津上君!」

「先輩!」

「津上っ!」

「翔一君!」

「翔一さん!」

「ショーイチ!」

 

戦いが終わり、皆アギトの元に集まった。

 

「俺ら……勝ったんだよな!?あの野郎、ブッ倒したんだよな!?」

「ああっ、僕たちは、人間は……この世界は助かったんだ!」

「本当に良かった……全部津上君のおかげだな。」

 

皆がホッと胸を撫でおろす中、ギルスはアギトをねぎらうように肩を叩いた。すると、アギトは首を横に振った。

 

「そんなことないですよ。みんながいてくれたから倒せたんです!本当に…ありがとうございます!それから……ロイドさん、ヨルさん、アーニャちゃん、ボンド……ただいま。」

『おかえ……』

 

ロイド達が「おかえり」と言おうとしたその時、

 

「うっ……」

 

アギト達の前にドノバンの姿に戻った黒テオスが現れた。

しかし、腹には大きな穴が開いており、ボロボロで満身創痍といった印象だった。

 

「ま、まだ生きてたのか?!」

「でも、もう虫の息じゃねぇか!さっさと終わらせようぜ!」

 

ルデスはトドメをさそうとトマホークを構えた。しかし、黒テオスは急に笑い始めた。

 

「フハハハハハ……終わるのは貴様らの方だ……!!」

 

笑いながら言うと、黒テオスはフッと宙に浮かんだ。すると黒テオスの背後の空間に開き、真っ暗な穴が開いた。

さらにその黒い穴は突如物凄い力で吸引を始めた。

 

「な、なんだ!?」

「吸い取ってるのか……!?」

「その通りだ……!最後にこの世界の全てを飲み込み、この世界を滅ぼしてやろうっ!!フハハハハハハハハハハハ!!」

 

黒テオスが高笑いを上げる中、黒い穴はありとあらゆる物を飲み込み始める。近くにある街灯や木々……瓦礫までも飲み込む。

ロイド達は飲み込まれないようにガードレールや街灯につかまり、なんとか耐えているが、それも時間の問題だった。

と、その時だった。アギトは堂々と仁王立ちし、黒テオスを睨んだ。

 

「アギト……何の真似だ!?」

 

黒テオスはアギトに向かって言い放つが、それを無視し、アギトは必死に耐えているロイド達の方に目を向けた。

 

「!」

 

その時、アーニャはアギトの、翔一の心を読んだ。その瞬間、アーニャは両目から涙をぽろぽろと流し、思わず駆け出した。

 

「アーニャッ!?」

 

しかし、咄嗟にロイドとヨルがアーニャの腕を掴み、抱きとめた。しかし、アーニャは暴れ出す。滝のように涙を流しながら……

 

「ショーイチ!いっちゃヤダッ!!ショーイチやくそくしたもん!!ずっとずっと、アーニャのそばにいるっていったもんっ!!」

 

アーニャは涙ながらの言葉に、ロイド達はハッと目を見開いた。

 

「どういうことだ……?翔一君、何をする気だ!?」

 

ロイドに聞かれるが、何も答えられず、バツが悪そうに俯くアギト。しかし、すぐにロイド達の方を向き……ただ一言だけ言った。

 

「さようなら」

 

アギトは必殺の構えをとった。目の前に青く輝く紋章が2枚……3枚現れた。

その瞬間、ロイド達は思わず駆け出していた。アーニャが泣いているのを見て、アギトが急に別れを言ったのを見て、直感した。アギトは、翔一は自分を犠牲にするつもりなのだと。

 

「ダメだ!ダメだ翔一君ッ!!」

「ハッ!!」

 

しかしもう遅かった。アギトのライダーキックは繰り出され、ロイド達の手から遠く離れていった。

 

「ぐっ!!?」

「ハアァァァァァァァァァッ!!」

 

黒テオスにキックが直撃し、そのままアギトは黒い穴の中へ消えた。

そして、黒い穴は空高く舞い上がった・・・かと思った次の瞬間、さきほど同様激しい爆発を起こし、黒い穴は消滅した。

さらに、空から無数の流星が落ちてきた。それは、光だった。無数の光……アギトの力になってくれた、この世界の人間達に眠るアギトの力だった。

アギトの光は地上に落ち、人間達の中に戻っていった。しかし、アギトは……戻らなかった。

 

「そんな……嘘だ……嘘だろ……?津上ィィィィィ!!」

「津上君ッ!!」

「先輩ーーーーっ!!」

「翔一君……!!うわあああああああ……!!」

「翔一さん……!!」

「ショーイチーーーーーッ!!」

 

叫び声だけが虚しく響いた。ロイド達は泣き叫んだ。だが、どれだけ泣き叫んでも、大切な人は戻ってこない。

ロイド達の脳裏に別れを告げたアギトの顔が浮かんでいた。あの時、「さようなら」と言ったアギトの顔は、笑っているように見えた……

 

 

 

 

 

その日、僕らはかけがえのないものを失った。

 

 

 

 

 




次回、「SPY×AGITΩ」最終回!

「津上先輩……俺、もう少し早く会いたかった。アンタみたいな人が傍にいたら……俺も何か変わったのかもしれない。」

「津上君……君に会えてよかった。まるで、弟ができたみたいで楽しかった。」

「津上……!僕は、僕はもっと早くお前と……!!」

「翔一さん……!翔一さんには、いっぱい笑顔をもらいました……本当に、いっぱい、いっぱい……!」

「翔一君、君に会えてよかった……今の俺達があるのは、今のこの生活があるのは……君のおかげだ。ありがとう、翔一君。」

「ショーイチ……アーニャ、アーニャ……!ショーイチのこと……だいすきっ……!!」

「俺、この世界でみんなに会えてよかった。グリムがいて、フリッドさんがいて、ユーリさんがいて、ロイドさんが、ヨルさんが、そして……アーニャちゃんがいてくれたから……胸を張って『さようなら』って言えるんです。でも、本当はもう一つ言いたいことがあるんです。それは……」

最終話「AGITΩ」

再び目覚めよ、その魂!!

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