「ハッ!」
「フンッ!」
アギトは背中の翼から剣の羽根を射出し、ミラージュは鎧にしている紫色の炎を巨大な剣に変えて羽根をはじいた。
すると、アギトは二本の剣を手に装備した。すると10枚の羽根が剣に集まり、光となって吸収され巨大なシャイニングカリバーに変化した。
巨大な剣同士がぶつかり合い、火花を散らす。そして次の瞬間、アギトは剣で突き刺そうと前に突き出した。ミラージュはその攻撃をよけた、が次の瞬間巨大になった剣から光が飛び出し、剣は元のサイズに戻った。そして飛び出した光は元の剣の羽根に戻り、一斉にミラージュに突き刺さった。
「ぐぅっ!?こ…こざかしいっ!!」
刺さった羽根を炎で燃やし、ミラージュはさらに炎で巨大な牙を創り出し、アギトを飲み込もうとした。
対し、アギトは数枚の羽根で光の盾を創り、攻撃を防いだ。しかし攻撃が止んだ瞬間、ミラージュは姿を消していた。
「消えた……ッ!!」
その時アギトは背後に気配を感じ、振り向いた。そこにはミラージュの姿が。
ミラージュは鞭状に変化させた炎を腕に巻き付け、強化されたパンチを繰り出した。アギトも即座に光に変えた羽根を拳に吸収させ、同じくパンチを繰り出した。
互いの拳がぶつかり合い、激しい衝撃波が大空に走った。そこから激しい殴り合いが続き、両者の攻撃がぶつかり合う度に衝撃波が走った。
その光景を、ギルス達はただただ見守ることしかできなかった。
「歯がゆいな……俺達は何もできないなんて……」
「し、しかたねぇだろ……俺ら空飛べねぇし、なにより俺らとアイツらじゃ、強さが違いすぎる……」
「ん……?」
その時、ユーリが何かに気が付いた。車のエンジン音が徐々に近づいてきていた。そしてふと視線を移すと、そこには1台の車が3人に突っ込み、目の前で止まった。
「あ、あれは…」
「翔一君は!?」
車から出てきたのはロイド達だった。それを見て3人は思わず驚いた。
「ロ、ロッティ!?姉さん!?チワワ娘……それにデブ犬まで……!」
「翔一君はどこだ!?」
「あそこに……」
ユーリは空で戦うアギトを指差した。
両者の激しい攻防は続いていた。
「ハァァァァ……デヤァァァァァァァァ!!」
「ルォォォォォォォッ!!」
両者は互いに必殺の蹴りを繰り出した。必殺技が空中でぶつかり合い、白と紫色の閃光が走るがすぐに両者は吹き飛んだ。
「うわっ!!」
「くうっ!!」
両者とも実力は拮抗していた。パワー、スピード、反射神経……その全てが互角だった。
だが、
「決定打が足りない……」
「え?」
ロイドの言葉に皆が耳を疑い、ロイドの方を向いた。
「今の翔一君は確かに強い……だが、奴を一撃で葬れるだけの決定打がないんだ。……いや、もしかしたらあるのかもしれない。だがそれを行うための時間がない……」
「じゃあ、どうすれば……?」
ロイドは辺りを見回した。すると、ふと目に入ったのはユーリが落としたアンカーユニット「GA-04 アンタレス」……それをロイドは拾い上げ、ユーリに差し出した。
「…翔一君の時間を稼ぐ!ユーリ君、フリッド!二人はなんとしてでも奴の動きを止めてくれ!グリム!」
ユーリにアンカーユニットを手渡すと、今度はルデスに声をかける。
「武器はあるな?それで奴の高度を落とせ!それからスピードで攪乱しろ!」
「おう・・・任せとけ!」
ルデスは力強く頷くと、ベルトから二振りのトマホークを抜いた。
ギルスも背中から赤い触手「ギルススティンガー」を伸ばし、ユーリも右腕にアンカーユニットを装着した。
「いくぞ、ユーリ君!」
「はい!ロッティ達は下がって……ッ!?」
ロイド達に避難するよう伝えようとしたユーリは目を疑った。
そこには、ロイドがガトリング砲「GX-05 ケルベロス」を持ち上げ、砲身にロケット弾頭を装填している光景があった。
「な、何してるんだ!?」
「俺も翔一君の手助けをする。そっちは頼んだ!」
「バカッ!!それは生身の人間が使えるものじゃない!肩が外れるだけじゃすまないぞ!!」
ユーリはロイドを止めようと手を伸ばした。ロイドのしようとしていることは自殺にも等しい行動だった。
「GX-05」は"G3-Xだから"使える武器。通常の銃火器とは比べ物にならない反動が襲い掛かってくる。それを生身の人間が使えば肩が外れるどころか、全身の骨が砕ける可能性すらある。
それを知っているユーリはロイドの腕を掴もうとした。しかし、逆にヨルがユーリの腕を掴んだ。
「ね、姉さん!」
「大丈夫……私が後ろから支えます!」
「アーニャも!」
「ボフッ!」
覚悟を決めたような顔でヨル、アーニャ、ボンドが名乗りを上げた。しかし、ユーリは首を横に振る。
「む、無理だよ!何人束になっても、そのガトリング砲の反動を支えるなんて……!!」
口では「無理」と言ったものの、密かに「もしかしたらいけるかもしれない」と思っていたユーリ。しかし、愛する姉が傷ついてしまう可能性を恐れ、可能性を否定した。
すると、ヨルはユーリの肩を叩いた。
「ユーリ……支え合うのが家族でしょ?」
「うっ……」
「ロイドさんは私の家族。翔一さんも私の家族……だったら、私達が支えないと。」
「で、でも……!」
まだ迷いが残るユーリに、ヨルは平手打ちしようと右手を振った。しかし、それを当たる寸前で止めた。
「ね、姉さん……?」
「しっかりしなさい!あなたは……あなただって、みんなを守る仮面ライダーでしょ?」
「!!」
そのヨルの言葉に、ユーリはハッとした。
(そうだ……僕は、今の僕は……仮面ライダーだ!)
ユーリも覚悟を決めた。姉の、愛する人が生きる未来のために、親友を助けるために。
「今だッ!」
その時、ルデスはトマホークをミラージュに向かって投げた。幸い、ミラージュはアギトとの戦いに夢中で他には目もくれていない。トマホークは見事背中に当たった。
「ぬうっ!?」
攻撃を食らい、ミラージュはふらついた。それを見てルデスは追い打ちをかけようと空高く跳び上がった。その時、アギトは「これを使え!」とばかりに羽根を何枚か抜いて足場としてルデスの前に展開した。
「使わせてもらうぜ!」
アギトの厚意に従い、ルデスは羽根を足場にしてさらに高く跳び上がった。
「トォッ!!」
ルデスは掛け声とともに鋭いかかと落としを繰り出す。ミラージュは咄嗟に両手を交差させてかかと落としを防いだ。しかし、ルデスはさらに力を込めてミラージュを少しでも地面に落とそうとする。
「うおおおおおおおっ!!」
「しつこい小僧だ……!!無駄だと分からんのか!!」
叫び声とともにミラージュは紫色の炎を巨大な拳に変化させ、ルデスを掴んで投げ飛ばし、地面に叩きつけた。
「ここだっ!!」
しかし、それと同時にユーリはアンカーを、ギルスは背中の触手をミラージュの足に巻き付けた。
「うおっ!?」
「引っ張れぇぇぇぇ!!」
「ぬああああああっ!!」
二人は全身全霊の力を込めてミラージュの足を引っ張った。こんなことではミラージュは落ちはしないが、時間稼ぎにはなる。
と、その時……
「この……下等生物がッッッ!!!」
ミラージュは炎でアンカーと触手を焼き切り、さらに炎の弾で二人を吹き飛ばした。
「ぐあっ!!」
「うわぁっ!!」
「貴様ら人間は、どうしてこうも無駄なあがきをする……?私は、創り直してやろうと言うのだぞ!?この世界を!!世界を創り直すには破壊が必要だと、なぜわからん!?」
まだあがこうとする3人を見て、叫び声を上げるミラージュアギト。すると、ルデスは拳で地面を殴り、同じく叫び声を上げた。
「わかんねぇよ!!てめぇの言ってることなんざ、1から10まで全部わかんねぇよ!!」
さらに続けて、ユーリが声を上げた。
「勝手な理由で殺されてたまるか!僕らは、まだ今のこの世界で生きていたいんだ!!」
続けてギルスが叫んだ。
「愛する人が、大切な人達がいる……この世界で!!」
「貴様らぁ……!!」
と、その時だった。ミラージュのベルト部分が突然爆発を起こした。
「うっ!!?」
ベルト部分に、爆発物が激突したのだ。それを撃ったのは、ロイド達だった。
ミラージュは視線を爆発物が飛んできた方向に移した。そこには、ガトリング砲を構えたロイドの姿があった。その後ろにはヨル、アーニャ、ボンドがロイドの背中を支えていた。
「くっ……!ううっ……!!」
流石に反動がきつかったのか、ロイドは肩を抑えた。対し、ミラージュは怒り狂った。
「なんなんだ……!!なんなんだ貴様らァァァァァァァァ!!!」
ミラージュは許せなかった。たかが人間が、下等生物が神である自分に効いていないとはいえ、一撃を加えるなどあってはいけないことだった。
そんなミラージュに対し、ロイドは言った。
「………ただの人間だっ!!」
本名を捨て、肩書を捨てた男の言葉……それは聞く者によってはくだらないかもしれない。しかし、その言葉は人間がどれほど強いのかを示す言葉だった。
そして……時間稼ぎは終わった。
「!!」
ミラージュは異変に気付いたが、遅かった。
ロイド達が時間稼ぎをしたおかげで、アギトは決定打を決めるための準備が終わっていた。
ミラージュの周囲に、青く光るアギトの紋章が無数に配置されていた。それを見た瞬間、ミラージュは総毛だった。
「ハッ!!」
アギトは紋章目掛けて必殺の蹴りを繰り出した。すると、紋章に入った瞬間アギトは姿を消した・・・かと思いきや別の紋章から姿を現し、ミラージュを蹴り飛ばす。
「ぐあっ!!?」
さらに違う紋章に入り、もう一度別の紋章から現れて蹴り飛ばす。それが何度も何度も繰り返される。ミラージュは四方八方から襲い掛かるキックの嵐に対応できず、次第にボロボロになり、紫色の炎さえ出せなくなっていった。
「ハァァァァ……ハッ!!」
アギトは全身に力を込める。するとミラージュの周りに展開された紋章が全てアギトに吸収され、アギトの全身が青く輝いた。
そして繰り出される……究極まで、限界まで、極限まで進化したアギトが繰り出す、ライダーキックを!
「デヤァァァァァァァァ!!」
「グッ!?グオアアアアアアアアアア!!!な、何故だ……何故私が……!私こそ、この世界を運命を握っているのに……!!」
「人の運命が、お前の手の中にあるのなら!俺が……俺が奪い返すッ!!!」
そして、アギトのライダーキックがミラージュアギトを貫いた。その次の瞬間閃光が走り、凄まじい爆発が起きた。ミラージュが爆発に飲まれる中、アギトは綺麗に地面に着地した。
「津上君!」
「先輩!」
「津上っ!」
「翔一君!」
「翔一さん!」
「ショーイチ!」
戦いが終わり、皆アギトの元に集まった。
「俺ら……勝ったんだよな!?あの野郎、ブッ倒したんだよな!?」
「ああっ、僕たちは、人間は……この世界は助かったんだ!」
「本当に良かった……全部津上君のおかげだな。」
皆がホッと胸を撫でおろす中、ギルスはアギトをねぎらうように肩を叩いた。すると、アギトは首を横に振った。
「そんなことないですよ。みんながいてくれたから倒せたんです!本当に…ありがとうございます!それから……ロイドさん、ヨルさん、アーニャちゃん、ボンド……ただいま。」
『おかえ……』
ロイド達が「おかえり」と言おうとしたその時、
「うっ……」
アギト達の前にドノバンの姿に戻った黒テオスが現れた。
しかし、腹には大きな穴が開いており、ボロボロで満身創痍といった印象だった。
「ま、まだ生きてたのか?!」
「でも、もう虫の息じゃねぇか!さっさと終わらせようぜ!」
ルデスはトドメをさそうとトマホークを構えた。しかし、黒テオスは急に笑い始めた。
「フハハハハハ……終わるのは貴様らの方だ……!!」
笑いながら言うと、黒テオスはフッと宙に浮かんだ。すると黒テオスの背後の空間に開き、真っ暗な穴が開いた。
さらにその黒い穴は突如物凄い力で吸引を始めた。
「な、なんだ!?」
「吸い取ってるのか……!?」
「その通りだ……!最後にこの世界の全てを飲み込み、この世界を滅ぼしてやろうっ!!フハハハハハハハハハハハ!!」
黒テオスが高笑いを上げる中、黒い穴はありとあらゆる物を飲み込み始める。近くにある街灯や木々……瓦礫までも飲み込む。
ロイド達は飲み込まれないようにガードレールや街灯につかまり、なんとか耐えているが、それも時間の問題だった。
と、その時だった。アギトは堂々と仁王立ちし、黒テオスを睨んだ。
「アギト……何の真似だ!?」
黒テオスはアギトに向かって言い放つが、それを無視し、アギトは必死に耐えているロイド達の方に目を向けた。
「!」
その時、アーニャはアギトの、翔一の心を読んだ。その瞬間、アーニャは両目から涙をぽろぽろと流し、思わず駆け出した。
「アーニャッ!?」
しかし、咄嗟にロイドとヨルがアーニャの腕を掴み、抱きとめた。しかし、アーニャは暴れ出す。滝のように涙を流しながら……
「ショーイチ!いっちゃヤダッ!!ショーイチやくそくしたもん!!ずっとずっと、アーニャのそばにいるっていったもんっ!!」
アーニャは涙ながらの言葉に、ロイド達はハッと目を見開いた。
「どういうことだ……?翔一君、何をする気だ!?」
ロイドに聞かれるが、何も答えられず、バツが悪そうに俯くアギト。しかし、すぐにロイド達の方を向き……ただ一言だけ言った。
「さようなら」
アギトは必殺の構えをとった。目の前に青く輝く紋章が2枚……3枚現れた。
その瞬間、ロイド達は思わず駆け出していた。アーニャが泣いているのを見て、アギトが急に別れを言ったのを見て、直感した。アギトは、翔一は自分を犠牲にするつもりなのだと。
「ダメだ!ダメだ翔一君ッ!!」
「ハッ!!」
しかしもう遅かった。アギトのライダーキックは繰り出され、ロイド達の手から遠く離れていった。
「ぐっ!!?」
「ハアァァァァァァァァァッ!!」
黒テオスにキックが直撃し、そのままアギトは黒い穴の中へ消えた。
そして、黒い穴は空高く舞い上がった・・・かと思った次の瞬間、さきほど同様激しい爆発を起こし、黒い穴は消滅した。
さらに、空から無数の流星が落ちてきた。それは、光だった。無数の光……アギトの力になってくれた、この世界の人間達に眠るアギトの力だった。
アギトの光は地上に落ち、人間達の中に戻っていった。しかし、アギトは……戻らなかった。
「そんな……嘘だ……嘘だろ……?津上ィィィィィ!!」
「津上君ッ!!」
「先輩ーーーーっ!!」
「翔一君……!!うわあああああああ……!!」
「翔一さん……!!」
「ショーイチーーーーーッ!!」
叫び声だけが虚しく響いた。ロイド達は泣き叫んだ。だが、どれだけ泣き叫んでも、大切な人は戻ってこない。
ロイド達の脳裏に別れを告げたアギトの顔が浮かんでいた。あの時、「さようなら」と言ったアギトの顔は、笑っているように見えた……
その日、僕らはかけがえのないものを失った。
次回、「SPY×AGITΩ」最終回!
「津上先輩……俺、もう少し早く会いたかった。アンタみたいな人が傍にいたら……俺も何か変わったのかもしれない。」
「津上君……君に会えてよかった。まるで、弟ができたみたいで楽しかった。」
「津上……!僕は、僕はもっと早くお前と……!!」
「翔一さん……!翔一さんには、いっぱい笑顔をもらいました……本当に、いっぱい、いっぱい……!」
「翔一君、君に会えてよかった……今の俺達があるのは、今のこの生活があるのは……君のおかげだ。ありがとう、翔一君。」
「ショーイチ……アーニャ、アーニャ……!ショーイチのこと……だいすきっ……!!」
「俺、この世界でみんなに会えてよかった。グリムがいて、フリッドさんがいて、ユーリさんがいて、ロイドさんが、ヨルさんが、そして……アーニャちゃんがいてくれたから……胸を張って『さようなら』って言えるんです。でも、本当はもう一つ言いたいことがあるんです。それは……」
最終話「AGITΩ」
再び目覚めよ、その魂!!