フリッドがイーデン校で仕事をしている時、ロイドは敬介とともにパン屋に向かっていた。
「すいません、神さん・・・手伝ってもらっちゃって・・・」
「なーに、居候させてもらってるんだ。これくらいは平気さ。」
二人は店の料理に使うパンを買うためにパン屋を訪れた。
そのパン屋は、以前アギトである翔一が働いていたパン屋だった。
「いらっしゃ…おう、ロイド!」
「どうも店長。」
店の中に入ると恰幅のいい男が出迎えた。
「注文の品はできてるぜ。ロールパン30個と食パン5斤。」
ロイドは注文したパンを受け取り、乗ってきたワゴン車に積み込んだ。
その時、店長はロイドに声をかけてきた。
「…なぁ、ロイド。翔一の奴……いつ帰ってくる?」
「……分かりません。」
ロイドは申し訳無さそうに答えた。すると、店長はフッとため息をついた。
「そっか……あのバカ、何も言わずに勝手に辞めやがって……」
文句を言った店長だったが、その顔はどこか寂しそうだった。
「あいつ、バカだったけど……いなかったらいないで寂しいんだよな。どこで何やってんだか……」
店長はそう言うと、窓の外を眺めた。店長は最初は翔一のことをよく思ってはいなかった。しかし共に仕事をしていく内に、自分でも知らない内に愛着が芽生えていたのだ。
「…翔一に会ったら伝えてくれ。勝手に辞めたから退職金は出さないってな!」
「はい……伝えます。」
フッと笑いながら言うロイド。しかしその笑顔は店長と同じく寂し気だった。
ロイドには分かっていた。翔一とはもう会えないことを。だがそれでも、心のどこかでは「いつか会える」と信じていた。そう思う自分が可笑しく思える。
ロイドと敬介はワゴン車に乗り込み、次の目的地へと車を走らせた。
「…ロイド君、聞いていいか?」
「はい?」
「さっきの、翔一というのは……誰だ?」
「……津上翔一。この世界を守ってくれたライダー…仮面ライダーアギトです。」
運転をしながら、敬介の質問に答え、ロイドは翔一のことを話し始めた。
「彼も最初は神さんと同じで、この世界に迷い込んだ仮面ライダーでした。ぼくら家族はひょんなことから彼と出会って…一緒に生活しました。血は繋がってないけど、ぼくらは家族になったんです。でも……」
その時、ロイドのハンドルを握る手が強くなった。同時に、ロイドの脳裏にアギトの最後の姿が浮かんだ。
「でも・・・!」
ハンドルを握る力がさらに強くなった。翔一のことを話すたびに、彼を思い出すたびに、「会いたい」という気持ちが強くなる。もう会えないというのに。
すると、敬介が口を開いた。
「……もういいよ。辛いことを聞いてしまったな。」
「すいません……」
ロイドの気持ちを察した敬介は話題を切り上げ、別の話題を始めた。
「そういえば、ヨルさんは?」
「ああ・・・今日は"女子会"って言ってましたね。」
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「喫茶シオン」の休日は日曜と月曜日。休日の日は家族で過ごしたり、「アギトの会」メンバーと食事をしたり、店の料理に使う食材を買いに行ったりする。
そして今日、ヨルは休日を利用してフィオナ、ノエル、アイネを店に招待し、月に一度の"女子会"を開いたのだ。
『け、結婚指輪を買った!!?』
「・・・そう。」
3人が驚きの声を上げる中、フィオナはため息を吐いた。
すると、3人は歓喜の声を上げる。
「キャーッ♪甘酸っぱいー!!」
「ついに結婚まで行っちゃうワケね!?」
「おめでとうございます、フィオナさん!」
「あなた達ねぇ・・・カモフラージュだって言ってんでしょ。」
フィオナはため息混じりに言いながら紅茶を飲んだ。その反応に3人は「えーっ」と声を上げた。
「うーん、フィオナさんってなーんかフリッドさんに冷たいですよね。」
青髪の女性ノエルがフィオナに言い放った。
それに続き、ユーリの上司アイネが口を開いた。
「そういえばそうよね。彼に不満でもあるの?彼、イイ男じゃない。イケメンだし、頭いいし、運動神経いい上に喧嘩も強い・・・これ以上いい男はいないと思うわよ?」
「フィオナさん・・・フリッドさんのこと嫌いなんですか?」
ヨルのその言葉に、フィオナは黙り込んだ後、静かに口を開く。
「……わかんない。それを知りたいから同棲してるというか……」
「なーんか微妙な関係ね。」
「ええ、ぶっちゃけ微妙。でも……」
その時、フィオナは微笑みを浮かべた。
「楽しいこともあるわ。この前、彼の後ろに乗って、バイクでキャンプをしたの……」
フィオナは目をつむり、フリッドとバイクでキャンプに言った時のことを語り始めた。
キャンプ地で、フリッドが淹れてくれたコーヒーを飲んだこと……
『俺のバイクツーリングは基本野宿だ。不便だけど楽しいよ。』
『ん・・・美味しい。』
『フフッ、そっか。』
フィオナが作った料理を二人で食べたこと。
『うん、美味しい!フィオナはやっぱり料理上手だなぁ!』
『あっそ。』
『フフフッ……』
夜中、テントの中で二人隣り合って眠ったこと……
『フィオナ…?どうした?』
『別に……ちょっと甘えてみたくなっただけ。』
その時、フィオナはフリッドの腕にしがみつくように腕を絡ませていた。
そんな行動をしたフィオナに、フリッドはこう答えた。
『うん、いいよ。フィオナだってたまには誰かに甘えたいよな。』
そう言ってフリッドはフィオナの頭を撫でた。
内容を話すだけで、自然と顔が綻び、笑みが浮かんでしまう。
「頭を撫でられたのなんて……初めて…ッ!?」
その時、フィオナは視線を感じ3人の方を向いた。
『へぇー……♪』
「はわわ……!」
ノエルとアイネはフィオナの話を聞いてニヤニヤと笑っていた。ヨルに至っては聞くのが恥ずかしかったのか顔を真っ赤に染めていた。
「フィオナさんとフリッドさん……お熱いんですね……!」
「おーおー、ラブラブじゃないの~!」
「アイネさん、今時はアツアツっていうんですよ!」
「う、うるさいわね……」
フィオナは恥ずかしくなったのかプイッとそっぽを向いてしまった。この時フィオナ自身は気づいていなかったが、顔が真っ赤になっていた。それに気づいている3人はまたニヤニヤ笑っていた。
すると、フィオナは席から立ちあがった。
「ご、ごちそうさま。またね、ヨルちゃん。」
「あ、フィオナさん・・・!」
慌てて店を飛び出すフィオナをヨルは呼び止めようとしたが、フィオナはそのまま出て行ってしまった。
(あーっ、もうバッカみたい。何が「頭を撫でられたのなんて初めて」よ!バカなの?私……)
フィオナは自分の言動を恥じた。スパイたるものどんな時でも
フィオナはそれを隠し、ずっとポーカーフェイスを貫いてきた。しかし最近になってそれが崩れてきた。
(それもこれも、あのバカが……ッ!!)
それを崩したのは他でもないフリッド。彼はフィオナとは真逆で喜怒哀楽がハッキリしていた。それに加えて、フィオナを呼ぶ時は喜怒哀楽だけでは表現できないような表情を浮かべていた。キスをしたときの蕩けた顔、自分を抱いた時の切なげな顔……それを見ていくうちに影響されていったのだ。
(あのバカのせいでこっちまで影響された……でも、彼のそんなところも……)
キュンッ……
「キュンッじゃないっ!!!」
胸がときめいた瞬間、フィオナは耳が裂けそうなほどの大声を上げながら近くの電柱に思い切り頭突きした。ドゴッ!という鈍い音が鳴り、フィオナは額から血を流した。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
「大丈夫です。お気遣いなく。」
たまたま近くにいた通行人が、血を流すフィオナを見て恐る恐る声をかけたが、フィオナは表情を変えずに答え、血を流したままその場を立ち去った。
その時、フィオナは思った。
(あのバカ、帰ったら殺す。)
戻ったらフリッドを半殺しにすることを誓った。同時に、フィオナはふと思い出したことがあった。
(そういえば……アイツ、自分の過去のこと話さない……)
フリッドと同棲を始めて…否、フリッドと出会ってからかなりの時間が経つが、分からないことが一つあった。フリッドは自分の過去のことを話したがらない。母親のことや、フィオナやダミアンと初めて会った時のことは何回か話したことはあるが、それ以外のことは話したことがない。
さらに、フリッドの母親に関して違和感があった。それは死因である。フリッドの母親は病気で床に伏せていた……が、その死因は病死ではなく、事故死だった。
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そのころ、ロイドと敬介は買い出しを終えて帰路についていた。
後部座席とトランクには知り合いの農家から仕入れてきた野菜とさきほどのパン屋から仕入れたパンが積んである。
「……え?フリッドですか?」
「ああ、どうも・・・彼という人間が読めないんだ。何か隠しているような気がするというか……気のせいだとは思うが。」
「そんなことはない」とロイドは言いかけたが、正直言うとロイド自身もそう思っていた。フリッドはいい友人ではあるが、底が分からないところが多々あった。
その一つが彼の過去。昔のフリッドについて分かることは、元々は大手出版社に勤めていたが、母親の手術費と入院費を稼ぐために地下格闘技の選手に転身した。その後はフィオナと出会い、別れ…さらにその後にダミアンと出会い、さらにはロイド達と出会った。
(思えば、アイツ全然話さないな・・・自分のこと。)
ロイドは前にフィオナから受け取ったフリッドとその母親の経歴を読んだ時のことを思い出した。
その中に気になるものがあった。それは母親の経歴……死因だった。死因は事故死と書かれていた。
猛獣による事故死……とのことだったが、その死亡した現場がなんとも異様だった。街の警官達が入るまで玄関ドアには鍵がかかっていて、窓もしっかり閉まっていた。どこにも猛獣が侵入した形跡はなかったのだ。だが、死体には猛獣による爪痕や歯形も確認された。間違いなく猛獣に殺されたのだ。
(忘れていたが、アレは一体どういうことなんだ……?)
「っ!」
考え事をしたロイドだったが、突然ブレーキを踏み、急ブレーキをかけた。
「アレは・・・!」
二人は息を飲んだ。目の前にいたのは修道服を着てフードで顔を隠した10人ほどの男達・・・それを見て、例の神化教団だと察した二人は、車から降りた。
「貴様ら……神化教団か!」
「いかにも……神 敬介、我ら教団の邪魔をするな。余生を健やかに過ごしたいだろう?」
教団の信者の一人、リーダー格と思われる男が挑発的なことを言って敬介を挑発した。
しかし、敬介はフッと笑い捨てる。
「カイゾーグである俺にそんなことを言うとはな。悪いが断る!貴様らの目的を知るまではな!」
「そうか……ならば仕方ない。」
リーダーはそう言うと、指をパチンッ!と鳴らした。
すると、残りの信者達が一斉に修道服を脱ぎ捨てた。
『ジーィッ!!』
奇怪な叫び声とともに現れたのは、「GOD」の文字が入っている真っ黒な装束にベレー帽と黒い覆面にゴーグルを身に着け、裏地が赤のマントを羽織った集団だった。
それを見て、敬介は目を見開いた。
「ご、GODの戦闘員!?」
「知ってるんですか!?」
「昔、俺が壊滅させた秘密結社の戦闘員だ!だが、GODはもう存在しないはず……!」
敬介は昔壊滅させたはずの敵を見て、困惑した。しかし、戸惑っている場合ではない。今は目の前の敵を倒すのが優先。
敬介はベルトを出し、身構える。
「大変身ッ!!」
叫び声と同時にポーズを決め、
「ライドルスティック!」
Xライダーはベルトからハンドルを引き抜き、引き抜いたハンドルを棒に変化させ、棒術で戦闘員と対峙する。その時、戦闘員は近くにいたロイドにも襲い掛かった。
しかし、ロイドは槍を掴み、そのまま戦闘員を蹴り飛ばして槍を奪った。
「ロイド君、逃げるんだ!」
「俺は大丈夫です!」
ロイドは手にした槍で戦闘員に攻撃を加えていく。最初はよけられたが、続けざまに繰り出される攻撃に対処できず、戦闘員は苦戦した。そして次の瞬間、ロイドは戦闘員の胸を貫いた。
「ジ、ジーィッ!!」
(常人よりは運動神経がいいようだが・・・俺の敵じゃないな。これならアンノウンの方がよほど・・・)
と、ロイドが思ったその時、不思議なことが起こった。倒れた戦闘員が突然泡になって消えていったのだ。
(泡になった!?これはどういうことだ!?)
その時ロイドは気づかなかった。背後から別の戦闘員が襲い掛かってきているということを。しかし、ロイドは目の前で敵が泡になって消えたことに集中してしまっている。
「ライドルロープ!」
すると、Xライダーはスティックを長いロープに変化させ、ロイドに襲いかかろうとした戦闘員の腕に巻き付け、攻撃を止めさせた。
「油断するな!」
「すいません!フンッ!」
敵に気づかなかったことを反省しながら、ロイドは背後の戦闘員の胸を槍で貫いた。すると、またも戦闘員や泡になって消えていった。
「ライドルホイップ!」
Xライダーはロープを今度はサーベルに変えた。そして、目の前に並ぶ戦闘員達を睨みつけ、目の前で剣の切っ先で
「
その叫びとともに
たちまち爆発が起こり、戦闘員達は倒れ泡となった。
「つ、強い・・・これがXライダー・・・」
「やるな……だが今度は俺が相手だ!」
リーダーの男は宣言すると同時に修道服を脱ぎ捨てた。その下から現れたのは戦闘員……ではなく、半魚人のような右半身とギリシャ彫刻を思わせる左半身を持った怪人だった。
「ネプゥ~!!」
「貴様はネプチューン!?」
「これこそ神化教団の力だ!人間は進化し、神へと至る……!俺は人間を超えたのだ!!」
ネプチューンは高らかに叫ぶと、手に持った三叉の槍を持ってXライダーに突進した。
「チィッ!」
Xライダーのサーベルとネプチューンの槍がぶつかり合い、火花を散らす。しかし、ネプチューンは鼻息を荒くし怒涛の突きを繰り出してくる。
「貴様など、グレン様が出るまでもない!俺が殺してやる!」
「トォッ!!」
鋭い一撃が繰り出された瞬間、Xライダーは空高くジャンプした。跳ぶと同時にサーベルをスティックに変え、空中でスティックを静止させ、そこで鉄棒の大車輪を見せる。そして次の瞬間、回転によって蓄えられたエネルギーをスティックに集中させ、空中で思い切り振り上げた。
「ライドル!脳天割り!!」
叫ぶと同時にスティックを振り下ろすXライダー。ネプチューンは咄嗟に槍で防ぐが、スティックによって槍は真っ二つに割れ、そのまま脳天をかち割られた。
「ぐ、ぐあああああっ!!」
「今だ!Xキック!!」
ネプチューンが怯んだ隙に、Xライダーはもう一度宙に飛び上がり、必殺のライダーキックを繰り出し、ネプチューンを蹴り飛ばした。
「ぬああああああっ!!神、化…教団……!!アギト
ネプチューンはフラフラ立ち上がったかと思うと、断末魔を上げそのまま爆発。そして戦闘員同様泡になって消えていった。
その時、ロイドは拳を強く握り、歯ぎしりを立てた。
(何が神化教団だ…何がアギト神だ!翔一君を汚すようなことをして……!!)
ロイドは勝手にアギトを神として祀り上げる神化教団に怒りを覚えた。翔一本人はきっと、自分が神様扱いされるのを嫌うはずだと思ったからだ。
すると、変身を解いた敬介がロイドに話しかけてきた。
「どうしたんだ?」
「いえ、別に……それより、どうしてこいつらは泡になって消えたんですか?」
「……昔、ショッカーという秘密結社がいた。」
敬介は泡になったネプチューンの亡骸を見ながら語り始めた。
「ショッカーの怪人や戦闘員は、死ぬと泡になって消えるという特徴がある。証拠を残さないためにな。だが……GODの怪人は泡になったりはしなかったはずだ……一体どういうことなんだ……?」
「……神化教団……思ったより闇は深そうですね……」
そして、ロイド達は知ることになる。神化教団の目的とその黒幕、そして、思わぬ人物が教団と関わっていたことを……
おまけ「夜の秘事」(※下ネタ注意!)
「そういえばフィオナちゃんって……フリッドさんとはシてるの?」
「してるけど……何?」
フィオナは怪訝そうな顔で質問してきたアイネの顔を見た。
「いや、フィオナちゃんってフリッドさんのことが好きか分かんないでしょ?それなのにシてるって……それセ◯レじゃない?」
「下品なこと言わないでくれる?ほら、ヨルちゃんがバグってるから。」
「セセセセ……!!」
ヨルは会話の内容を聞き、恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にしていた。
それを横目にフィオナは話を続けた。
「別に不思議なことじゃないでしょ。男と女である以上性欲は溜まるでしょ。それを発散するために抱いたり抱かれたりするのは普通でしょ。まぁウチの場合は私がアイツを抱くことの方が多いけど。」
「なるほどねぇ……って」
『えっ⁉』
フィオナの一言にアイネとノエルは声を上げた。
「えっと…どういう原理で?」
「だから、私が◯◯◯◯履いてアイツの◯◯◯にズッコンバッコン……」
「もういい!もういいわ!聞いた私が悪かった!!」
「ああっ!ヨルさん大丈夫ですか!?」
「フフフフフ、フリッドさんと…フ、フ、フ、フィオナさんが…ズココココ……!!」
ヨルは恥ずかしさのあまり完全にバグってしまっていた。
同時に、フリッドがフィオナに抱かれているという事実にショックを隠せない3人。この事実は他の知り合いには絶対に話さないようにしようと誓ったのだった……
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最近、フリッドがギャグキャラになってる気がする。
可笑しいな、主役のはずなのに……