フリッド達が神化教団の調査をしていた頃、敬介はグリムとユーリを町外れの採掘場に呼び出した。
「まさか…ジジイが仮面ライダーだったとはなぁ。」
「フフッ、驚かせたか。」
「大先輩か…!胸お借りします!!」
ユーリは目を輝かせながら、敬介に頭を下げた。
すると、敬介は笑った。
「はっはっはっ、そう固くならないでくれ。さぁ、訓練を始めるぞ!」
「へっ、楽勝にこなしてやるよ!」
敬介は若手である二人を鍛えるため訓練を始めようと思ったのだ。
それから10分後……
「はぁ…はぁ…!」
「も、もう、勘弁しろよ……!!」
二人はすでに根を上げていた。
「まだ10分しか経ってないぞ!その程度かお前達は!」
「で、でも……!!」
「ジープで人を追いかけ回す奴があるかぁっ!!」
二人は必死に走っていた。敬介が乗るジープから逃げるために全速力で。
「逃げるなっ!」
「逃げるだろうが普通!!」
「ひぃ~っ!!姉さん助けてぇ〜〜!!」
それからさらに10分ほど追いかけ回され、二人はヘトヘトになった。しかし、敬介による訓練はさらに続いた。
「ちょ、ちょっと待て!?本気でやんのか!?」
「せ、せめてスーツを……!」
「甘えるなっ!いくぞ!!」
声を上げる二人を叱りながら、敬介は鉄球のついたクレーン車を動かし、鉄球を大きく動かして勢いをつける。
『うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?』
目の前に鉄球が勢いよく迫り、二人は悲鳴を上げながらよけた。
しかし、すぐさま鉄球をよけた二人を見て敬介は怒鳴り声を上げた。
「そんなに簡単によけるんじゃない!ギリギリでよけるんだ!!」
「無茶言わないでくださいよ!!」
「後で覚えてろクソジジイッ!!」
ギャーギャーと大声を上げる二人を無視し、敬介は再び鉄球を二人に向けて放った。
『ぎゃあああああああああっ!!』
────────────────────────
「……で、ボロボロになったワケか。」
「ジジイ、めちゃくちゃだろ……!!」
「こ、腰が…足が…もう動かない……」
「情けないぞ二人とも!それでも仮面ライダーか?」
訓練を終え、3人は喫茶シオンに戻ってきた。すっかりヘトヘトになった二人は満身創痍のまま店の床に寝転がっていた。
「ぱいせんとおじ、しんでる。」
「死んでねぇよ、ドアホ!」
長めの定規でつんつんと突いてからかってくるアーニャに、グリムは怒鳴り声を上げた。
そこにおんぶ紐で背中にシエルを背負ったヨルがやってきて、二人の手を引っ張った。
「ほら二人とも!早く起きてください!今日はパーティーです・・・よっ!」
「うおっ!?」
「うわっ!」
二人は無理やり起こされて立ち上がった。
「パーティー・・・ああ、フリッドさんの就任記念パーティーだっけ?」
「ああ、だいぶ日にちが経ってしまったが、ようやく暇が出来たんだ。」
「ケッ!何がパーティーだよ・・・あのオッサンだけ訓練さぼったじゃねぇかよ。」
訓練にはフリッドは参加していなかった。神化教団の調査があったため仕方ないと言えば仕方ないのだが、それでもグリムは不服を漏らした。
「どうせ調査にかこつけて、あのメカクレ女とイチャイチャしたいだけだろ?」
「フフッ……」
その時、ヨルが急に笑い始めた。
「ヨルさん?」
「いえ、なんだか最近・・・フィオナさん変わったなぁって思って……」
「確かに……そうですね。俺はあいつのことは組織に入ってきてから知ってますけど……よく笑うようになったと思います。」
ヨルの言葉を聞き、以前のフィオナを思い出したロイド。以前のフィオナはポーカーフェイスを崩さない氷のような女だった。しかし、フリッドと過ごしている時は表情を崩すことが多くなった。
ロイドはそれを感慨深く思い、見ていた。
その時、店のドアが開きベルがカランコロンと鳴った。
「ロイドくーん!来たぞー!」
「おっ、噂をすれば……」
「よぉ、サボり魔。」
フリッドの姿を見るなり、グリムは悪態をついた。フリッドはそれに対して苦笑いを浮かべた。
「そう怒るなよ、グリム。訓練に参加しなかったのは悪かったって。」
「あっ、アニキも来てたんだ!」
フリッドの後ろからダミアンがひょこっと顔を出し、グリムの姿を見るなり走り寄ってきた。
「おっ、クソチビも来たのか。」
「チビじゃない!去年より身長伸びたんだ!・・・2cmだけ。」
「1cmも2cmも変わんねぇよ!チービチービ!」
「うわっ!やめてよアニキ!」
グリムはニヤニヤ笑いながら、ダミアンの頭に手を置き、ポンポンと叩いたり、ぐちゃぐちゃに撫でて髪型をわざと崩したりするなどのイタズラを繰り返した。それに対しダミアンは抵抗するが、力では敵わずされるがままだった。
そんな二人のやりとりを見て、フリッドは・・・鼻血を垂らしながら微笑んでいた。
(甥っ子同士のワチャワチャ可愛い……これだけで食パン一斤食える……)
対し、周りにいた者達は若干引き気味な顔でフリッドを見ていた。
「だらしのない顔はやめなさい、このバカ。」
その時、後ろからフリッドは後頭部を叩かれた。
叩いたのはフィオナだった。さらにその後ろには意外な人物がいた。それは、ヘンダーソンだった。
「ヘンダーソン先生?」
「フォージャー、久しぶりだな。フリッド君に誘われてな・・・いいかな?」
「もちろん!歓迎しますよ!」
ロイドはにこやかに言うと、フリッド達を席へと案内した。
その時、ユーリが口を開いた。
「あっ、そうだ!姉さん、ロッティ、もう後2、3人増えてもいいかな?パーティーに参加したいって人が……」
「お邪魔しまーすっ!!」
ユーリがこの後パーティーに参加する人間がいることを伝えようとした瞬間、その当人が現れた。
現れたのは未確定生命体対策班のアイネとフランキー、それにユーリのガールフレンドであるノエルの3人だった。
「ユーリくーん!来たよー♪」
「お酒飲めるって聞いたから来たわよ!」
「はぁ・・・アイネ姐さんほんと酒好きだなぁ……」
パーティーに参加する人数が増え、ロイドは苦笑いを浮かべた。
「これはもてなしがいがありそうだな……」
そして、いよいよパーティーが始まった。テーブルにはロイドが作った料理が並べられ、さらに各種酒やジュースが用意された。
全員グラスを手に持ち、ロイドが音頭を取った。
「それでは、フリッド・リードがイーデン校の教師を就任したことを祝って・・・乾杯っ!!」
『カンパーイッ!!おめでとー!!』
「はははっ、みんなありがとう!」
乾杯を終えると、真っ先に料理を食べ始めたのはグリムだった。
皿に大量の料理を盛り、それをひたすら貪る。
「ガツガツ・・・モグモグ・・・先輩!もっと肉!食いまくって力つけて、ジジイぶちのめしてやる!」
「フフッ、頑張ってくださいねグリムくん♪」
(ハムスターみたいです♪)
口いっぱいに食べ物をつめ、ハムスターのように頬を膨らませるグリムの姿を愛らしく思ったヨルは、グリムの皿に追加で肉を盛った。
それを横目で見ていたユーリはジェラシーを感じていた。
(くっ・・・!グリムの奴、姉さんの気を引きやがって……!僕だって!)
負けじとユーリも大量の料理を皿に盛り、それを勢いよく食べ始めた。
しかし、
「むぐっ!?」
慌てて掻き込んだせいか、喉につかえてしまった。
「み、水・・・!」
「はい水っ!」
そこにすかさずノエルが水を差しだし、ユーリに飲ませた。
「ケホッ、ケホッ・・・ありがとうノエルさん・・・」
「もうっ、そんなにがっついたらダメだよ?食事はマイペースじゃなきゃ、ね?」
「う、うん……」
ノエルに諭され、反省したのかユーリは落ち着いてゆっくりと料理を食べ始めた。
そんな二人を、ヨルは微笑ましく思いながらニコッと笑ってみていた。
「他の世界にも仮面ライダーがいるのっ!?」
「ああ、そうとも。まず、仮面ライダー1号。世界で最初の仮面ライダーだ。」
「いちごっ!」
敬介は料理を食べる傍らで、アーニャとダミアンに自分の先輩や後輩にあたる仮面ライダー達のことを話していた。二人は敬介の口から語られるそれぞれの仮面ライダー達の強さ、活躍を聞き、目をキラキラと輝かせていた。
「へぇ、じゃあアイネさんは元イーデン校の生徒なんですか。」
「そうそう!これでも成績はトップだったんだから!」
フリッドの方はアイネ、ヘンダーソン、フィオナ、ロイドとともに料理と酒を楽しみながら談笑をしていた。
その時、アイネの話を聞いたヘンダーソンはため息をついた。
「確かに成績はトップだったが・・・同時に問題児でもあったな。」
「問題?というと?」
「実験と称して理科室を爆発させたり、授業で教師が間違っているところを指摘しすぎて注意されたり・・・終いにはあのマードックの金た・・・股間にスタンガンを押し付けたりしたな。」
『うわっ・・・』
ヘンダーソンの話を聞いて、当人以外は皆驚いて声を上げた。同時に、「よくこの人退学にならなかったな」と思っていた。
「いや~、懐かしいですね!あの時のマードックの顔は笑いましたよ!あの教師、本当にムカつきますから!あの時だって、『女の癖に研究なんかするな!』とか時代錯誤なこと言って!アホかっての!」
(それで股間にスタンガン押し付けるのはどうかと思うが・・・)
「でも・・・あいつがクビになったって聞いてホッとしましたよ。あいつに泣かされた子、けっこういますから。それこそ、15年前の・・・」
「アイネ君っ!!」
フッと落ち着いた様子を見せ過去のことを話そうとしたアイネを、ヘンダーソンは大声を上げて止めた。
「あの子のことは……言わないでくれ。」
そう言ったヘンダーソンの顔は深刻そうだった。同時にどこか落ち込み、寂しそうに見えた。
普段とは違う様子に、ロイドとフリッドはまじまじと見つめていた。
(ヘンダーソン先生・・・?)
(15年前に何かあったのか・・・?)
二人がヘンダーソンの方を見る中、ヨルがフィオナに近づいてきた。
「フィオナさん!楽しんでますか?」
「ええ、料理とっても美味しいわ。シエルちゃんも・・・楽しんでるみたいね。」
フィオナは頭を動かし、ヨルに背負われているシエルの顔を覗き込んだ。シエルはニコニコ笑っており、楽しそうにしていた。
「フフッ、抱っこしてみますか?」
「えっ!?そ、それはダメ・・・先輩の息子さんだし、万が一落としたりしたら・・・」
「フィオナ!」
珍しく慌てるフィオナに、ロイドは声をかけた。
「抱いてあげてくれないか?」
「せ、先輩がそう言うのなら・・・」
フィオナのその一言を聞いて、ヨルはおんぶ紐からシエルを降ろし、フィオナにそっと渡した。
「あ・・・結構重たいんだ・・・」
「キャハハッ!」
フィオナはシエルを抱きしめ、ゆりかごの様に腕を揺らした。するとシエルは嬉しそうに笑い始めた。
「フフッ、かわいい・・・」
フィオナは思わず笑みをこぼし、指先で頬をつついた。するとシエルはまたも笑った。
その光景に、フリッドは目を奪われていた。そして思わず想像してしまった。母親になって赤ん坊を抱くフィオナの姿を。そして自分の方に目を向けて愛おしい笑顔を浮かべる姿・・・
(って何考えてんだ俺は!)
いらないことを考えてしまったとばかりに、フリッドは持っていた酒を一気に飲み干した。
同時に、自分の顔が真っ赤になっていることに気が付いた。
「あ、暑いなぁ・・・」
「・・・フリッド。」
暑がるフリをするフリッドに、ロイドは声をかけた。
「ちょっと来てくれ。」
ロイドは半ば無理やりフリッドを引っ張り、カウンターの方へ向かわせた。
「お前・・・夜帷、フィオナとはどうなんだ?」
「ど、どうって・・・何が?」
ロイドはフリッドのグラスに酒を注ぎ、フリッドは戸惑いながらも酒を受け取り飲み始めた。
「一緒に暮らし始めてもう一年だろ?そろそろ本格的に付き合ってもいいんじゃないのか?」
「つ、付き合うって・・・俺達の関係はそんなんじゃ・・・」
「そんなんじゃない?毎回俺や他のみんなに、たっっっっぷり惚気ておいてか?」
「うっ・・・」
フリッドは何も言えなかった。フリッドはことあるごとに自分とフィオナとの日々を仲間達に語っていた。
思い出すと恥ずかしくなり、フリッドは酒を飲んだ。
「フィオナは俺のかわいい後輩だ。そしてフリッド・・・俺はお前をいい友人だと思ってる。だから俺とヨルさんみたいに、お前達二人も幸せになってほしいんだ。」
「ロイド君・・・」
フリッドは迷っていた。フリッドはフィオナのことを心から愛していた。本当なら、「好きだ!結婚してくれ!」と言いたかった。しかしできなかった。そもそも、フィオナがフリッドと同棲しているのは、彼のことを知るためだった。以前、フィオナは言った。
『私、あなたのことが嫌い。でも……あなたのことを全部知りたい。嫌いになるかどうかは……それを知ってからにしたいの。』
フリッドはその言葉を、彼女の意思を尊重して同棲を始め、今まで告白をしなかった。
だが、フリッドは今の生活が変わることはない。彼女が自分の全てを知ることはないと思っていた。
「・・・無理だよ。俺には、そんな資格なんてない。」
「どうしてだ?」
「それは……」
フリッドは秘密を隠していた。誰にも言わなかった、誰にも言えなかった秘密があった。
フリッドが言葉を濁したその時、店のドアが開いた。ロイドは客が来たのかと思い、ドアの方に顔を向けた。
「あ・・・すいません!今日は貸し切りでして・・・」
「っ!!」
同じくドアの方に顔を向けたフリッドは目を見開き、驚いた。
そこにいたのは、今日調査に向かった先で見た3人組・・・神化教団のアイゼン、ペルラン、そして赤い修道服に帽子、ペストマスクをつけたグレンだった。
「ロイド君近づくなっ!!そいつらは神化教団だ!!」
「なにっ!?」
『!!』
フリッドの言葉にロイドは驚き、さらに他の皆も一様に驚いた。ただ一部、ヘンダーソンとダミアンは何事のなのかと思い困惑していた。
「我々は客ではありません。そこにいるお二人と・・・神 敬介殿に忠告に来ました。」
アイゼンは静かに口を開き、フリッド、フィオナ、敬介に指を差した。
「我ら教団の邪魔をしないでいただきたい。我らが行っているのは神罰であり、悪行ではありません。」
「神罰……?人の指を切り落とすのが神罰か!それが人を救う宗教団体のやることか!」
アイゼンの一言にフリッドは抗議した。宗教とは本来暴力とは無縁のもの。それに反するようなことをする神化教団は言語道断。
しかし、アイゼンは態度を変えない。
「あなた方には理解できないでしょう。我が教団が人類の未来を考えてることなど……」
「ああ……宗教なんて、サッパリだ!!」
と、その時グリムは懐からトマホークを抜き、すぐさまアイゼンに向かって投げつけた。しかし、同じくグレンがアイゼンの前に立ち、銃剣でトマホークを弾いた。
しかし、これは囮だった。グリムはトマホークを投げた直後反対方向に回り込み、アイゼンの懐に入り込み、拳を繰り出した。
「っ!?」
しかし、グリムの拳は防がれた。咄嗟にペルランが飛び出し、グリムの拳を手で受け止めたのだ。ペルランはそのままグリムを蹴り飛ばし、アイゼンから引き剥がした。
「なるほど!こりゃあ確かに読みづらいし、優劣がつけやすい!」
と、ペルランは突然ニコニコ笑い手を叩いた。
「俺達の視線をぶん投げた斧に向けさせて、その隙に自分は懐に潜り込む……いいね!」
「あ……?」
ペルランはグリムの策を褒めると、右手の親指を上げてみせた。
突然褒められたグリムは困惑し、首をかしげた。
すると、ユーリは咄嗟に懐から拳銃を抜き、アイゼンめがけて銃弾を撃った。
銃弾はアイゼンの額を撃ち抜いた…かと思いきや、ガキンッ!という音が鳴り響いた。
「なっ……!?」
驚いたことに、アイゼンは銃弾を受け止めていた。しかも歯だけで。アイゼンの歯には銃弾が食べかすのように挟まっていた。
「仕方ありませんな……」
アイゼンは銃弾を吐き捨てると静かに呟いた。
すると、アイゼンとペルランの血管が目でも分かるほど浮き出て、模様のようになった。
「ここは祝いの場…そのような場所で脅すようなことはしたくありませんが……怪力招来ッ!!!」
「チェンジ」
大きな声で叫ぶアイゼンと、静かに呟きながら言い放つペルラン。両者の体が変貌を始めた。アイゼンは全身が鉄のような灰色に、ペルランは白く、鳥のような羽毛が生え始めた。
「な、なんだ?!まさかアイツラも……!?」
「違う!奴らは仮面ライダーではない!奴らは……GODの怪人だ!」
敬介のその言葉通り、二人は怪人へと姿を変えた。アイゼンは全身が鉄色のドクロの顔を持った巨漢で、鉄球を武器にする怪人に、ペルランは白い鳥のような姿をし、青い顔をした鳥型の怪人へと変貌した。
二人の変貌した姿を見て、全員息を飲んだ。その時、どこからともなく笑い声が響いてきた。
「フハハハハハ……!!見たかXライダー、神 敬介!」
そこに現れたのは、白いタキシードを着た敬介と同じくらいの凛々しい男だった。
その男を見た瞬間、敬介は目を見開き驚いた。
「貴様…まさかっ!?」
「フッフッフッ……アポロチェンジ!!」
タキシード男は叫ぶと同時に、アイゼンやペルラン同様怪人へと姿を変えた。黒いスーツに白いマント、赤い羽がついた赤い兜をつけた怪人へと変貌を遂げた。
「我が名はアポロガイスト!またの名を、神化教団の大司教アポロンである!」
「やはりアポロガイスト……!そうか、一連の殺人事件の黒幕か!」
敬介は指を差しながら、アポロガイストとやらに指摘した。すると、アポロガイストはフッと笑った。
「殺人だと?先ほどアイゼンも言っていただろう。我々がしているのは神罰だ!決して殺人ではない。」
「ふざけるなっ!!」
敬介は大声を張り上げると同時に変身の構えをとった。同様にフリッドとグリムも構えた。
「おっと、ここで変身してもいいのかな?この場所は貴様らにとって大事な場所だろう?」
アポロガイストはそう言うと、パチンッ!と指を鳴らした。
すると、その音を合図に怪人態になったアイゼンが鉄球を振り回し、壁に激突させた。ドゴンッ!という音とともに店の壁に大穴が開いてしまった。
『っ!』
「フハハハハハッ!!謂わば、この店全体が人質のようなものだ!」
アポロガイストの行動と発言に、ライダー達は動けなかった。
自分達が動けば、ロイド達の店が壊されてしまう…そう考えてしまうと変身することができなかった。
「みなさんっ!戦ってください!」
「そうだ!店のことはいい!戦ってくれ!」
ロイドとヨルは戦うことを促すが、それでも動くことはできなかった。
特にフリッド、グリム、ユーリの3人は動けなかった。この店ができる以前…ロイド達がどれだけのことがあったのか、3人には分かっていたからだ。
すると、アポロガイストは踵を返し、背中を向けた。
「今回は警告のみだ。これ以上我々の邪魔をするな。」
アポロガイストはそう言うと、アイゼンとペルランは変身を解き、元の姿に戻ってアポロガイストの後をついて行く。
その時、
「おいっ!そこの鳥ヤロウは変身しないのかよ?」
グリムが突然グレンを煽り始めた。しかし、グリムの言う通り、グレンのみ怪人に変身しなかった。他の二人は変身しているにもかかわらずだ。
グレンは立ち止まり、チラリと後ろを見た。
「グレン、相手にするな。」
「まさか一人だけ変身できねぇとか?仲間外れのぼっち君ってか!?」
グリムはさらに声を上げてこれでもかというほどグレンを煽った。アポロガイストの忠告を無視し、グレンは後ろを振り向いた。
「貴様……っ!!?」
後ろに振り向いた瞬間、グレンの目の前が真っ赤に染まった。
グレンが振り向いた瞬間、グリムは近くにあったケチャップを半分に割り、そのままグレンの顔に向けて投げ、ケチャップで視界を塞いだのだ。
(今だっ!!)
視界が塞がれた瞬間、グリムはここぞとばかりにグレンに向かって、飛び蹴りを繰り出した。
しかし、グリムの殺気に感づいたグレンはグリムの蹴りと同時に足を突き出した。結果、両者の蹴りは顔にぶち当たり、二人はそのまま床に倒れた。
「クソっ・・・!」
「不覚を取った・・・!」
せめて一矢報いようとしたグリムだったが、失敗に終ってしまった。グリムは打ちどころが悪かったのか、そのまま起き上がれず、対しグレンの方はフラフラと立ち上がり、ケチャップで濡れてしまったマスクを外した。
「ッ!!?」
その瞬間、声にならない声を上げる男がいた。それは、ヘンダーソンだった。
「グレン、構うなと言ったはずだ。」
「申し訳ありません、大司教様・・・」
アポロガイストに軽く叱られながら、再びグレンは3人の後を追って店を出ようとした。と、その時・・・
「ま、待て!!」
ヘンダーソンがグレン達の前に飛び出した。
「ヘンダーソン先生!?」
「お、お前は・・・イグニスか!?イグニス・ブレイズなのか!?」
「……お久しぶりです、先生。」
ヘンダーソンの呼びかけに、グレンは静かに答えた。
その返答に、その場にいた全員が驚いた。
「えっ・・・?先生って・・・?」
「それに、イグニス・・・?」
全員がその場でざわついた。それに構わず、ヘンダーソンは困惑しながらグレン・・・イグニスの肩を掴んだ。
「お前・・・!どうして教団に・・・!それに、今まで何をしていたんだ!?」
イグニスの肩を掴み、揺らしながら問いかけるヘンダーソン。その表情と声色から、彼のことを相当心配していたように取れる。しかし、そんなヘンダーソンの手を振り払うように、肩を掴んでいる手を跳ね除けた。
「先生・・・前にあなたは仰った。『なりたい者になれ』と・・・僕は今、それに近づいてます。」
「なんだと・・・!?イグニス、貴様は一体何をする気なんだ!?」
イグニスに食い入るように問いかけ、ヘンダーソンはまた手を伸ばした。しかし、イグニスはひらりと手をかわし、そのまま背を向けた。
「・・・僕は変わります。なりたい自分に。・・・あなたはいつまでそうしているんですか?」
「えっ・・・!?」
「エレガント、エレガント・・・そんなことを言ってるから、あなたはいつまで経っても腐ったままなんだ。」
ヘンダーソンに向けて捨てセリフを吐いたイグニスは、そのまま他のメンバーとともに店を出て行った。
ヘンダーソンはというと、去り際のイグニスの一言がショックだったのか、そのまま膝をつき、ガクリと項垂れた。
「先生・・・?」
そんなヘンダーソンに、フリッドは恐る恐る声をかけた。
「グレン・・・さっきの男とは知り合いなんですか?」
「・・・グレンという名ではない。あの子の本当の名はイグニス・ブレイズ……15年前の、私の生徒だ。」
おまけ「意外に苦労人」
「久々だな、Xライダー!」
「アポロガイスト!」
「ふっふっふっ・・・ここまで来るのに苦労したぞ・・・はぁ・・・」
不敵な笑みを浮かべていたアポロガイストだったが、ふとため息をつき、近くの椅子に腰かけた。
「本っっっ当に大変だったんだぞ、ここまで来るの・・・教団の幹部であるあの3人は計算苦手だから俺が会計やることになるし、あいつら3人揃って暴れ馬だから言うこと聞いてくれるのに時間かかったし・・・『殺すさずに生かしておけ!』って言っても勝手に殺しちゃうし・・・!」
酒を飲みながらしみじみと語るアポロガイストだったが、その手はプルプルと震えた・・・かと思うと、そのままグラスをテーブルに叩きつけた。
そして目に涙を浮かべながら敬介を指差した。
「この苦労が・・・!お前に分かるかーーーーッ!!!」
「お、落ち着けよ・・・」
その光景を見て、ロイドは・・・
「悪役も悪役で大変なんだなぁ」
と、思ったのだった。
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神化教団について
教団の信者達は本名を名乗らず、司教及び大司教に付けられた洗礼名で呼ばれます。
洗礼名は自然界にある物(動物や植物、気候など)を元にして付けられます。
例:アイゼンはドイツ語で「鉄」、ペルランはフランス語で「隼」、グレンは日本語で炎を意味する「紅蓮」・・・etc
それから、グレンの本名であるイグニス・ブレイズはどちらも「炎」の外国語です。
(イグニスはラテン語、ブレイズは英語で「炎」という意味)