SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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PART.9 遺された者の責任

あれから3日……フォージャー家は変わらない朝を迎えていた。

しかし、3人は浮かない顔で朝食を食べていた。

 

「…ごちそさま。」

「もういいのか、アーニャ。」

「うぃっ……あまり“しょくよく“ない…」

 

アーニャの皿に盛られた料理歯半分ほど残されている。決して体調が悪いわけではなかった。気がかりなことがあったのだ。

 

「かてーきょーし、がっこうきてない……」

 

あれから3日…フリッドはイーデン校に来ていなかった。

 

「そうか……あんなことがあったとはいえ…」

 

ロイドはため息交じりに呟いた。それに続くようにヨルが口を開く。

 

「ユーリとグリムくんが家に行ったみたいですけど・・・誰もいないって言ってました。」

「誰もって・・・フィオナもですか?」

「はい……フィオナさんもどこかに行ってしまったみたいで……」

「そうですか……」

 

ロイドは口に手を当て、考え事を始めた。何故フィオナも姿を消したのかを考えていたのだ。

フリッドの過去にショックを受けたせい…?しかしフィオナは簡単に心が乱れるような女ではない。だが、フィオナはフリッドとともにいるうちに変わってきている。可能性はあるだろうか……

 

「……考えても仕方ない。ヨルさん、今日は店を休んでフリッドを探しに行きましょう!」

「はい!」

「アーニャもいくっ!」

「お前は学校に行きなさい。」

 

アーニャも行きたがったが、ロイドに却下され頬を膨らませた。

その後、アーニャは学校へ行き、ロイドとヨルは出かける準備を整えた。

 

「キャッキャッ♪」

「フフッ、シエルちゃんも行きましょうね♪」

 

楽しそうに笑うシエルを抱きかかえ、ヨルは優しく頬をつついた。

 

「さぁ、行きましょう。」

 

―――――――――――――――――――――

 

「……お客さん、もういい加減にしてくれよ!もう朝だぞ!いつまで居座る気だ!?」

「いいだろ……酒ぐらい飲ませろよ……」

 

街のとあるバー……しかし時間帯はもう朝…店はもう閉店している時間だ。しかしそこに入り浸る男がいた。フリッド・リードだ。

 

「金なら払うぞ…ほら。」

 

酒を飲みながら、フリッドはポケットから金を取り出すと、無造作に放り投げた。すると、バーのマスターは怒りが込み上げたのか飲んだくれるフリッドの胸倉を掴んだ。

 

「金の問題じゃないんだよ!今日は息子の誕生日で、家族と出かける予定があんだよっ!!」

「家族……」

 

バーのマスターの言葉に、フリッドの脳裏に亡き母の、自分が殺してしまった母の姿が浮かんできた。

 

「……悪かったよ、帰る……」

 

酒で消し飛ばそうとした記憶がまた蘇り、酔いが覚めたフリッドはフラフラとした足取りでバーを出た。

 

(何をしてるんだろう…俺は……)

 

今の自分がどれだけ惨めかは分かっていた。だがこうでもしなければ、あの時の記憶が嫌でも思い浮かんでしまう。

その度に酒を飲んで忘れようとする……最悪だ。

 

(なんて、情けない……)

 

夢なら醒めて欲しい……そう思いながら、フリッドは崩れ落ちる

ようにその場に座り込み、壁に背中を預ける。

このままくたばってしまえば、どれだけ楽だろうか……と思ったその時、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「フリッド!」

 

名を呼ばれ、フリッドは声がした方に顔を向けた。そこにはロイドとヨル、それにシエルがいた。

3人を見ると、フリッドは苦しそうな笑顔を浮かべた。

 

「やぁ……」

「……ここにいたんだな。」

 

一瞬驚いたような顔を見せたロイドだったが、すぐに真顔に戻った。

それとは逆にヨルは驚きながら、食ってかかるようにフリッドに声をかける。

 

「フリッドさん…こんなところで何をしてるんですかっ!?」

 

フリッドは何も答えない。ただ黙り込んでいた。ヨルは構わず続けた。

 

「フィオナさんがいなくなったんです……あの日からどこかに行ってしまったみたいで……」

「……いい機会ですよ。」

 

フリッドはフッと笑った。その一言を聞いたヨルは目を見開いた。まるで信じられないものを見るかのように。

 

「元々……彼女は俺のことを知るために付き合ってたんだ。今回のことで……彼女は俺の全てを知った……その時点で関係は終わり。それに、彼女は俺のこと嫌いだったみたいだし……」

「……ロイドさん、シエルちゃんお願いします。」

 

フリッドの話を聞きながら、ヨルは抱いていたシエルをロイドに預けた。

その間、フリッドはまだ話を続けていた。

 

「だから…これがいい機会なんです。フィオナはもっといい男を見つけて、家庭を築いて、幸せな人生を送るんです。そう…お俺なんかじゃなく、もっと素敵な……ッ!!?」

 

次の瞬間、ヨルは勢いよく拳を繰り出し、フリッドの顔面に叩きつけた。

拳が叩きつけられた瞬間、フリッドの体はゴムボールのように跳ね、壁のあちこちにぶつかり、そのまま地面に転がった。

 

「ゴフッ……!!」

 

常人であれば間違いなく死んでいるヨルの本気のパンチ。しかしフリッドは不死身のため、なんとか生きている。

 

「……いい加減にしてくださいッ!!!」

 

ヨルは怒りを露わにし、大声で叫んだ。その声にロイドとフリッドは驚き、体をビクッと震わせ、シエルは泣き出した。

さらにヨルは倒れたフリッドの胸倉を掴み、無理やり起こす。

 

「私……ダミアン君の時にも言いましたよね…?『相手の気持ちはするんですか』って……あなたは、同じことを繰り返してます!!フィオナさんはフリッドさんを嫌ったりなんかしてません!!フィオナさんはよくフリッドさんの話をしていました……!前にツーリングした時の話をした時も…とても楽しそうでした!」

 

胸倉を掴まれながら、フリッドは黙ってヨルの叫びを聞いていた。その時、ヨルの目には涙が浮かび上がる。 

 

「私…その時わかりました……フィオナさんにとって、フリッドさんは大切な人なんだって……!それなのに、それなのに……あなたは何をしてるんですか!!?」

 

ヨルは叫ぶと同時に大粒の涙を流した。そして、力が抜けたのかフリッドの胸倉から手を離し、そのまま膝をついて泣き崩れた。

 

「ヨルさん……」

「フリッド……俺もヨルさんと同じ気持ちだ。」

 

腕の中で泣くシエルと、その場で泣き崩れるヨルを慰めながら、ロイドはフリッドに問いかける。

 

「アイツは俺にとって可愛い後輩だ・・・それでも、お前なら任せられると思った。アイツのあんな顔は見たことなかったからな……それに、俺はお前のことを……尊敬してた。」

「ロイド君……」

「これ以上……俺達を幻滅させないでくれ。」

 

ロイドに睨まれながら、フリッドは何も言わずにその場から立ち去ろうとした。

これ以上、二人に合わせる顔がないと思った。すぐにでもその場から逃げたかった。

しかし、

 

「待て、フリッド!」

 

男の声が聞こえ、フリッドの名を叫んだ。振り返るとそこにいたのは、神 敬介。

敬介は眉間に皺を寄せながらフリッドを睨んでいる。

 

「神さん……」

「場所を変えよう。」

 

―――――――――――――――――――――

 

敬介はフリッドとロイド達を連れて、街外れの森の中を訪れていた。

そこで敬介とフリッドは互いに向かい合いながら立っていた。ロイドとシエルを抱いたヨルは少し離れたところで見ていた。

 

「また逃げる気らしいな。」

「放っておいてくださいよ……」

「悪いが、俺は古い人間なんでな。放っておけないのさ。もし力づくでも逃げたいなら……大変身ッ!!」

 

敬介は全身の力を込めて叫び構える。そして敬介はXライダーに変身した。

 

「ライドルホイップ!」

 

ベルトからハンドルを抜き、その先から刃を伸ばす。

Xライダーは戦う準備万端だった。しかし、フリッドは変身せず、ただぼーっと立っていた。

 

「ライドルアタック!!」

「ッ!!」

 

Xライダーは剣先をフリッドに向けて突き出した。フリッドは咄嗟にそれをよけてしまった。

 

「フリッド、これは戦いだぞ!構えろ!」

(なんで今のよけてしまったんだ……?あのまま刺されれば良かったのに……!)

 

フリッドは無意識に攻撃をよけていた。フリッドは攻撃をよけてしまったことを後悔した。あのまま敬介に殺されていれば、楽になるはずなのに、今までのクセでついよけてしまった。

 

「くっ……変身っ!!」

 

フリッドは仕方なく両腕を顔の前で交差させて叫び、ギルスに変身した。

 

「ウオォォォォォォォッ!!」

「来いっ!!」

 

ギルスは両腕から爪を伸ばしてXライダーに襲い掛かる。Xライダーも剣で応戦する。

リーチは武器を持つXライダーの方が広い。ならば、とギルスは右腕の爪を鞭状の触手を伸ばし、遠間から攻撃しようとする。

 

「ライドルロープッ!!」

 

しかし、Xライダーはハンドルのスイッチを押して剣をロープに変え、ギルスの鞭を弾いた。

さらにそのままロープで鞭を巻き付ける。

 

「くっ……!」

「フンッ……!」

 

そのまま両者による力比べが始まった。

その時、遠巻きで見ていたロイドとヨルは違和感を覚えていた。

 

「ロイドさん……フリッドさんの動き……」

「ええ・・・明らかに鈍い・・・」

 

以前と比べて、戦っている時の動きが鈍いことに二人は気づいていた。相手が敬介だから……というだけではない。フリッドの動きはどこか迷っているようなおぼつかない印象だった。

以前のような勇猛だが、知恵を使って臨機応変に立ち回るフリッドの姿がない。

 

「ライダーショーック!!」

「ぐああああああああああっ!!」

 

Xライダーがハンドルのスイッチを入れると、ロープに高圧電流が流れ始めた。電流はロープから鞭を伝い、さらにギルスへと流れた。

突如流れる電流の痛みに叫び声を上げるギルス。しかしギルスは左腕の爪で鞭を切って難を逃れる。

 

「ロングポール!!」

 

しかし、Xライダーはその隙にロープを槍の様に長い棒に変え、槍先でギルスの胸を突いた。

 

「ぐっ!?」

「デヤァァァァァァァァ!!」

 

そこからさらに突きの猛襲。目にも止まらぬ速さで連続の突きが繰り出され、ギルスはよける間もなく、全てくらってしまう。

 

「ライドルアターック!!」

 

そして、とどめとばかりに強烈な一撃が繰り出され、その一撃がギルスの喉仏に直撃した。

 

「ぐえっ……!!うあああああああ!!」

 

突かれた瞬間、ギルスは遠くまで吹き飛ばされ樹に激突し、そのまま樹に背中を預けるように地面に座り込んだ。

同時に変身が解け、元の姿に戻るフリッド。しかしそんなフリッドにもXライダーは容赦なく襲い掛かる。

 

「とどめだ!フリッドォォォォォ!!」

「フリッドさん!」

「フリッド、よけろぉっ!!」

 

ロイドとヨルの警告もむなしく、Xライダーはポールをスティックに変え、そのままフリッドの脳天に振り下ろした・・・が、脳天に当たる直前、Xライダーは攻撃をやめた。

 

「……え?」

「フリッド……そんなに死にたいか?」

 

Xライダーはそう言うと、変身を解いて元の姿に戻った。フリッドはしばらく黙り込んだ後、静かに口を開いた。

 

「……俺は、最初ダミアンの顔を見た後……死ぬつもりでした。でも……!あの子の笑顔を見たら……愛おしくなって……!離れたくないって思ってしまった……!!」

 

フリッドは震える声で語っていた。そしてその目には、薄っすらと涙がにじみ出ていた……

 

「あの子の笑顔を見るたびに、フィオナと一緒にいるたびに、みんなと過ごしてるうちに……!『生きたい』、『死にたくない』って思ってた……!母さんを殺した俺に、そんな権利なんてないのに……!!」

「フリッド……」

 

涙を流して語るフリッドの手を、敬介は掴み、そのまま引っ張って無理やり立たせた。

そして、まっすぐな瞳でフリッドを見つめた。

 

「生きることにも、死ぬことにも権利なんてない。生死は誰にでも平等だ。お前は生きていいんだ。」

「神さんに俺の気持ちなんて・・・!」

「分かるさ。俺も愛する人を失った……父親と、恋人をな。」

 

一瞬声を荒げたフリッドだったが、続く敬介の言葉にフリッドは目を見開いて驚いた。

 

「神さんも・・・?」

「俺の親父は、瀕死の俺を仮面ライダーへと改造して・・・そして死んだ。そして、涼子と霧子……俺の恋人とその妹だ。みんな、俺の目の前で死んだ……!俺は助けられなかった……だが、お前はまだ間に合う!」

 

その時、敬介は声を荒げ、フリッドの肩を掴んだ。

 

「フリッド、大切な人を失うことは、とんでもなく辛い!だが、遺された者はその人の分まで生きる責任があるんじゃないのか!?お前がやるべきことは、死ぬことじゃなく……生きることだろう!!」

「遺された者の、責任……!」

 

敬介の言葉に、フリッドの心は揺らぎ、拳を握った。フリッド自身はまた皆と笑って過ごしたいと思っていた。しかし、親殺しの過去は消えない・・・フリッドの人生に重くのしかかる錘だ。

その時、敬介は懐からあるものを取り出した。それは盗聴器からの音声を聞くためのリモコンだった。だった。

 

「さっき、お嬢さん……フィオナ君から預かったんだ。お前に渡してほしいと。」

「フィオナが……?」

 

敬介からそれを受け取ると、フリッドはリモコンを耳に当て、再生ボタンを押した。

 

『フリッド……聞こえる?私は今、自分の盗聴器に自分の声を録音してるの。』

 

リモコンからフィオナの声が聞こえてくる。彼女の声を聞くと胸が高鳴り、緊張で体が硬直してしまう。

 

『突然あなたの前から消えて、ごめんなさい……でも、ようやく決心ついた。まず……お母さんのこと、ごめんなさい。』

 

フィオナは急に謝り始めた。それに動揺しながらも、フィオナは続けて言った。

 

『私が自分のことしか考えなかったせいで、あなたを追い込んでしまった……私があなたをフッたりしなければ、親殺しなんてしなかったかもしれない……』

 

フリッドは「違う」と首を横に振る。同時に、フィオナにこんなことを言わせてしまう自分が許せなくなった。

 

『だから、私はあなたの前から消える。これでお別れ。』

 

続く一言に、フリッドはまたも驚いた。

 

『あなたと一緒にいた毎日は、本当に楽しかった。ツーリングであなたの後ろに乗った時、嬉しかった。まるで、自分の命をあなたに預けたような気がして、とても心地よかった……先輩がヨルちゃんと一緒にいる時、どんな気持ちだったのか…私にも分かった気がする。ありがとう、フリッド……さようなら。』

 

プツンッ……

 

そこで録音は終わっていた。その瞬間、フリッドの両目から滝のように涙が流れ出た。

 

「フィオナ……!ぐっ…ぅぐ……!フィオナ……‼」

 

最後の別れの時、フィオナの声は震えていた。泣いているのかもしれない、悲しんでいるのかもしれない。

フリッドは怒り半分嬉しさ半分で泣きじゃくる。

フィオナを悲しませてしまった自分への怒り、フィオナが自分のために泣いてくれていることへの喜び……同時にフリッドの脳裏にある想いが生まれていた。

 

「会いたい」

 

会って謝りたい、という気持ちが生まれたフリッド。

会って、謝って、そして……その時こそ言おうと思った。自分の彼女への気持ちを……

と、その時だった。カッ!と地面に何かが突き刺さった。

 

「むっ!?」

 

敬介はそれを広い上げた。刺さっていたのは封筒で、中には手紙が入っていた。

 

「これは…アポロガイストからの手紙だ!」

「えっ!?」

(というかアイツ、手紙とか書くのか……)

 

あのアポロガイストが律儀に手紙を書くことに、ロイドは心の中でツッコんだ。敬介は中の手紙を読み始めた。

 

「えー……『前略、仮面ライダーの皆様 お前達の仲間の銀髪目隠れ女は預かった。返してほしければ、神化教団教会に来い。 アポロガイスト拝』…だとっ!?」

「そんな…フィオナさんが……!」

「夜帷……!」

 

予想外の事態に3人は驚き、戸惑いを隠せない。しかし、それとは対象的にフリッドは……

 

「……助けに行こう。」

 

フリッドは落ち着き払っていた。否、内心怒りに震えていたが、表面上はそれを見せない。

 

「ロイド君、ヨルさん、神さん……力を貸してくれ。もうこれ以上……大切なものを失いたくない!!」

 

フリッドのその言葉に、3人は力強く頷いた。

 

「ああっ!」

「アポロガイストを止めよう!」

「すっかり元に戻りましたね、フリッドさん!」

 

ヨルがそう言うと、フリッドはフッと笑い自分の頬を…さきほどヨルに殴られた頬を撫でた。

 

「神さんに喝を入れてもらったからな。それに…ヨルさんのパンチは効いた。」

 

フリッドが笑って言うと、ヨルは申し訳無さそうに俯き、頬を赤く染めた。

 

「す、すいません……」

「いえ、おかげで目が覚めました!さぁ……行こう!!」

 

フリッドは前を向き、進み始めた。これから先の人生でも前を向けるように…そして、これ以上何も失わないために……

 

 




おまけ「宣伝」

「俺は父親と恋人を失った……」
「神さんも……?」
「ああ、瀕死の俺を親父が……詳しくはこれを見てくれ。」

そう言うと、敬介は懐から「仮面ライダーX vol.1(DVD)」を取り出し、フリッドに差し出した。

「そこは説明してくれないんですか……」
「そして、俺の恋人とその妹は……!あっ、詳しくはこれを。」

さらに続けて、敬介は「仮面ライダーX vol.2」を差し出した。

「神さん……お金でも貰ってるんですか?」

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フリッドの制作秘話3
フリッドとというキャラを作るにあたって、僕の理想のヒーロー像をかなり盛り込みました。ヒーローとしての強さと優しさ、人間としての陽気さ、悲しさ、哀愁を盛り込んだつもりです。
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