「なんでアンタがここにいんだよ……!?」
「ちゃんと足はあるだろ?」
目の前にいるのは幽霊じゃない、そう言いたげな目で目の前に現れたニコルは自分の足を叩いた。
「こ……こ……この……!!クソボケェェエ!!」
わなわなと震えながら、グリムは叫び声を上げ、ニコルの顔面にストレートパンチを叩きつけた。
「ぶほっ!」
「えっ!?」
ヨルは声を上げた。てっきり感動的な再会になるとばかり思っていたからだ。
グリムはさらに何発も拳を叩きつける。
「いきなり!死んだって!聞かされて!」
一言一言叫びながら拳を振るうグリム。その目は涙がこぼれ出そうなぐらい潤んでいた。
「俺が……!!どんな気持ちでいたと思ってんだ!!!」
グリムはより一層大きな声で叫び、渾身の力を込めたパンチを繰り出そうとした。しかし、それよりも早く、ニコルはグリムのことを抱きしめた。
「そうだな……待たせてすまなかった。今まで、よく頑張ったな。グリム。」
その瞬間、グリムの両目から涙がこぼれ落ちた。
ニコルの両腕に包まれる温かさと、ニコルの優しい声……グリムの涙腺を刺激するには十分すぎた。
「うっ……ぁぐ……!!ニコル……!ニコル……!!」
「お前は泣き虫だな。昔のままだ。」
「うるせぇよ……!!」
ニコルに抱かれながら、グリムは子どものように泣きじゃくった。その後ろで見ていたヨルも、感極まって滝のように涙を流していた。
「よかったです……!よかったですねグリムくん……!!」
そう言ったヨルだったが、涙と鼻水のせいで声にならなかった。
すると、騒がしい3人を見かねて店の店員が近づいてきた。
「あの、お客様……他のお客様のご迷惑になるので騒ぎを起こすのは……!?」
その時、店員の言葉が止まった。店員の視線は3人からその先にいる者に写っていた。その視線の先には……
「アリアリアリッ!!マンモーッ!!」
「ば、化け物だーーー!!」
店員は恐怖のあまり叫び声を上げ、一目散に逃げ出した。店にいた客もアリマンモスの姿を見て、叫び声を上げながら逃げ出した。残ったのはグリム達3人だけだった。
「お前、昨日の……!」
「ようやく見つけたマンモーッ!ライダーが一人なら俺でもなんとか倒せるマンモーッ!」
「へっ、舐めんな!てめぇなんか一撃で……!」
グリムはニヤリと笑い、早速変身しようと身構えた……が、それより早く、ニコルがグリムの前に立った。
「現れたか、ショッカー。」
「ニコル…?」
「アリアリアリ〜〜?なんだお前は?」
ニコルの突然の行動に、グリムとヨルは目を丸くし、ニコルを知らないアリマンモスは首を傾げた。
すると、ニコルはフッと笑った。
「お前、新入り怪人みたいだな。だったら……お見せしよう。」
ニコルはそう言うと、上着の捲り上げ下腹部を露出させた。すると、そこにあったのは真ん中に風車がついた銀色のベルトだった。
そのベルトを見た瞬間、グリムもヨルも、さらにアリマンモスも驚いた。
「そのベルト……!まさか……!」
「変……身ッ!!」
ニコルは拳を握りしめ、全身の力を込めて叫んだ。その叫びに呼応するように、ベルトの風車が激しく回転し、風を巻き起こす。
その風にニコルの体は包まれていき、徐々に姿が変わっていった。
黒い体に、暗い青色の虫のようなマスクに、手枷と足枷がついたグローブとブーツ、金色に輝く瞳とマフラー。
その姿はまるで……
『仮面……ライダー……!!』
仮面ライダーへと変身したニコルは、胸に垂れるマフラーを掴んで後ろにやった。
「お初にお目にかかる……俺は、ショッカーの敵。人類の味方……仮面ライダー3号だ。」
名乗りを上げた3号は、金色の目をカッと発光させファイティングポーズを取った。
「ま、またライダーが増えたマンモーッ!?」
「ニコルさんが、仮面ライダー……!?」
「す……すげぇ!すげぇよニコル!」
ヨルとアリマンモスが驚く中、グリムだけは歓喜の声を上げた。もちろん驚いてはいたが、それよりも自分の育ての親が仮面ライダーという喜びの方が先に来ていた。
「トイヤッ!!」
3号は掛け声とともにチョップを繰り出し、アリマンモスの体にめり込ませた。さらにそこから全身にチョップの連撃を浴びせていく。
「ドゥッ!!」
さらにそこから飛び上がってのローリングソバットを繰り出し、アリマンモスを蹴り飛ばした。
「アリアリアリ……!!マンモーッ!!」
アリマンモスは自分の鼻を持ち上げ、鼻の先から光弾を発射した。
「ハァァァァ……!ライダーパァンチッ!!」
3号が右腕に力を込めると、腕に緑色の風のようなオーラが纏われ、そのオーラとともに拳を突き出した。
突き出された拳によって光弾は弾かれた。さらに、パンチを繰り出した際に強力な突風が巻き起こり、アリマンモスを吹き飛ばした。
「アリ〜〜〜ッ!!?」
風圧で吹き飛ばされたアリマンモスは地面に転がった。
3号の強さは圧倒的だった。その強さに、グリムとヨルは固唾を飲んで見守っていた。
すると、
「て…撤収〜〜〜!!撤収マンモーッ!!」
アリマンモスの叫びとともに、どこからか軽トラックが現れた。
アリマンモスはトラックの荷台にそそくさと乗り込んだ。乗り込んだのを見ると、運転していた戦闘員はすぐさま車を走らせた。
「あっ!?また逃げやがった!!」
「逃がさん!」
3号は店の前に止めた車に乗り込み、すぐさま後を追った。
「俺達も行くぞ!」
「はい!」
3号が行ってしまったのを見て、グリムは右手の親指と人差し指で輪っかを作り、それを口に当てて笛のように鳴らした。
すると、どこからともなくルデス専用バイク「ダークホッパー」が姿を現した。
二人はバイクに乗ると、全速力で3号を追いかけた。
「いくぞ、トライサイクロン!」
3号はハンドルに備えられたスイッチを入れた。すると、道路を走る車が変形を始めた。
車体前部からガトリング砲が二門、後部からロケットブースターが出現し、専用マシン「トライサイクロン」へと変形を遂げた。
変形すると、後部のブースターを起動し、超加速で突き進んでいく。
数分もしない内にアリマンモスの乗る軽トラックに追いついた。
「くらえ!」
3号はトライサイクロンのガトリング砲を眼の前のトラックに向かって乱射した。防御する術のないトラックはガトリングの直撃を受け、爆発した。
「アリ〜〜〜!!?」
トラックが爆発し、アリマンモスは道路下に投げ出された。
3号はその後を追って車から飛び降りた。
「グンタイッ!マンモーッ!!」
追い詰められたアリマンモスは前と同じ様に自分の分身を4体増やして5体になった。
「後は任せたマンモーッ!!」
アリマンモスの本体はその場を分身達に任せ、その場から逃げ出した。
「待て!」
『アリアリアリ〜〜〜!!』
後を追おうとした3号だったが、分身達に行く手を遮られた。
だがその時……
「どりゃあっ!!」
そこにグリムが現れ、分身を蹴り飛ばした。
「グリム!」
「俺もやる!変身ッ!!」
グリムは腰の前で腕を交差させて叫び、ルデスへと変身した。
「グリム……!その姿……まさかお前も……!!」
「ああ、仮面ライダールデスだ!」
「そうか……なら、一緒にいくか?」
「おうよっ!!」
ルデスは喜々とした返事をすると、3号とともにファイティングポーズをとった。
『トゥッ!!』
二人はお互いに掛け声を上げるとともに拳を突き出し、分身を攻撃する。分身達も同様に拳を突き出して攻撃する。互いの拳がぶつかり合うが、力はルデスと3号の方が強かった。
分身アリマンモスは殴り飛ばされ、そこに二人は追撃で蹴りを入れる。
「ディヤァッ!!」
蹴りを入れた直後、3号は2体の分身を相手に連続攻撃を加えていく。両サイドから挟まれても、繰り出された攻撃を掴んで防ぎ、反対側の分身に蹴りを入れる。
「オラオラオラァッ!!」
ルデスも2体の分身を相手に立ち回っていた。目の前の分身に連続パンチを叩き込む。その時、もう一体が背後から襲いかかってきた。
しかし、ルデスは跳んで目の前の分身を飛び越えて背中を蹴り飛ばし、もう一体の分身に衝突させた。
『マンモーッ!!』
分身達は鼻を持ち上げると、一斉に光弾を発射した。
「任せ……ッ!?」
ルデスは得意気に前に出て、ベルトからトマホークを取り出そうとした。しかし、その瞬間ルデスは急な腹痛に襲われた。それも腹を下すというようなチャチなものではなく、内臓を素手で掻き回されるような痛みだった。
(なんだこれ……!?急に腹が……!!)
「グリム!」
その時、3号は咄嗟に前に出て飛んできた光弾を素手で弾いた。
「よそ見をするな!」
「わ、悪い!」
3号から注意を受け、慌ててルデスは謝った。
すると、3号は分身達を睨みながらベルトの風車を高速回転させた。
「ハァァァァァァァ……!!」
風車の回転と同時に、右足に緑色のオーラを纏っていく。
「お、俺も!」
ルデスも慌てて身構え、地面に深緑色の紋章を浮かべた。
「シイィィィィィ……!!」
深く息を吸い込みながら、ルデスは紋章のエネルギーを足に吸収していく。
そして、二人は空中に跳び上がった。
「トアァァァァァァッ!!」
「ライダーキーーック!!」
二人は同時に必殺の飛び蹴りを繰り出し、分身を全員纏めて蹴り飛ばした。
『や……やられたマンモーッ!!』
間抜けな断末魔を上げ、分身達は爆発していった。
「へへっ、見たか!俺だってやるだろ!?」
「ああ……よそ見したこと以外はな。」
「うっ……い、いや急に腹が痛くなってよ……」
「異次元みたいな胃袋のお前がか?」
3号に言われて、ルデスは申し訳なさそうに頭を掻いた。しかし、すぐさま3号の両腕をつかんだ。
「でも……これから、俺らと一緒に戦ってくれるよな?もう、どこにもいかないよな……?」
「そうだな……“
表情は分からないが、なんとも寂しげな声を上げるルデス。そんなルデスを、グリムを見て、3号は頭を撫でた。
「ホントか……?」
「ああ……ずっと傍にいるさ。一緒にショッカーと戦おう……」
久々に甘えてくる息子同然のグリムに、ニコルは愛おしさを覚えた。
しかし、次の瞬間……ピシッと音を立て、ルデスの赤い瞳にヒビが入った。
「ッ!!?」
それを見た途端、ニコルは仮面の下で目を見開いて驚いた。対し、グリムはそれに気づかず変身を解いた。
「ん?どうしたんだ、ニコル。」
「い、いや……なんでもない……」
ニコルは慌てて平静を装い、変身を解いた。
「グリムくん!」
「先輩!」
そこに物陰から見守っていたヨルが二人に駆け寄ってきた。
「聞いてくれよ!ニコル、俺達と戦ってくれるって!ずっといてくれるって!!」
グリムは喜々としてヨルに語りかけた。普段の生意気そうな面影はなく、少年のような純粋な笑みを浮かべていた。
「まぁ!よかったですね、グリムくん!」
「うん!」
ニコニコと純粋な笑みを浮かべるグリムを見て、ヨルも笑い、ホッと安心したように一息ついた。
(グリムくんのこんな笑顔……初めて見ました……本当によかった……)
「早く帰ろうぜ!みんなにニコルのこと紹介してぇ!!あ、その前にスーパー寄って食材買わねぇと!今日はパーティだ!ニコルが帰ってきた記念だ!!」
グリムは笑いながら、今にもスキップしそうな足取りで走っていった。
本来の目的だったヨルへの告白は忘れていた。もう頭の中はニコル一色になっていた。
(グリム……まさかお前の体は……!!)
喜んでいるグリムに対し、ニコルは内心穏やかではなかった。先程一瞬だけ見た、ルデスの瞳に走ったヒビ……それが気にかかっていた。
(……俺が、なんとかしなければ……!“奴ら“に見つかる前に……!!)
─────────────────
そのころ……
「ハァ、ハァ……!に、逃げ切ったマンモ〜〜……」
敵前逃亡したアリマンモスは遠くにある廃工場に逃げ込んでいた。逃げ切ったと確信したアリマンモスは深いため息を吐いた。
「ふひ〜〜っ、セーフセーフ!」
「いや、セーフじゃないなぁ。」
その時、廃工場の奥の暗がりから男の声が聞こえてきた。
すると、その暗闇の中から三人組が現れた。金色の黒のメッシュが入った短い髪の男……その傍らには2メートルはあるであろう袈裟姿の男、さらにはツインテールが特徴的なミニスカートの女がいた。
「敵前逃亡とか、マシでありえないんだけど〜〜?」
「お前……ヨワヨワのズルズルだな。」
ツインテールの女はクスクスと笑い、袈裟姿の男は変な言葉遣いでアリマンモスを罵倒した。
「なんだお前らマンモーッ!」
アリマンモスが指を指して指摘すると、メッシュの男がクスクスと笑い出した。
「おいおい……
男は笑うと、上着を捲り上げた。するとそこには……3号がつけていた物とよく似ているベルトが巻かれていた。
「変身」
ポーズを取ることなく、男は静かに呟いた。するとベルトの風車が回転しながら男の姿が徐々に変わっていく。
空軍パイロットのようなスーツの上にブロンズ色のアーマーが装着され、同じくブロンズ色のマスクが装着された。
「お、お前……!?仮面ライダー!?」
「俺達は、ショッカーの死神グループが生んだ処刑部隊だ。お前の様な腑抜けな怪人や、裏切り者を始末するための……な!!」
ブロンズのライダーは得意気に語ると、右の拳を握りしめ一気に突き出した。拳は勢いよくアリマンモスの体に直撃し、そのまま心臓ごと胸を貫通した。
「うっ……!!?し、知らなかったマンモーッ……!!」
アリマンモスは断末魔の声を上げると、そのまま地面に倒れ泡になって消滅した。
「バイバーイッ♪雑魚怪人のクセに、お兄ちゃんのこと知らないなんて……死刑で当然♪」
「兄者……次は
「ああ……だがその前に、弟に会わないとなぁ……デズモンド家の落ちこぼれに……」
おまけ「グリムの食生活4」
「ジーッ……」
「ボフッ……?」
グリムはボンドのことをじっと見つめていた。そこに、アーニャが歩み寄ってきた。
「ぱいせん、どうした?」
「いや……このデブ犬、いつ食うの?」
その瞬間、アーニャはこの世の終わりのような顔をし、それを見ていたロイドとヨルも驚いて天井に向けてコーヒーを噴き出した。
「ななななな、何言ってんだお前は!?」
「ボンドさんは食べ物じゃありません!!」
「ボンドたべないで~~~!!」
ロイドとヨルはボンドを庇うように囲み、アーニャは泣き叫んだ。ボンドに至ってはグリムを見て怯え震えていた。
対し、グリムはキョトンと目を丸くしていた。
「え・・・?ちげぇの?」
「違うわ!というか、犬なんて食えないだろ!!」
「いや、俺食ったことあるぜ。家無しだったころに、野良犬の腹掻っ捌いて焼いて食うんだ。でもなー、そんな美味くないんだよなー……まぁ、デブ犬なら油乗ってて少しはマシだけど……」
「お前、まさかもう一度犬を食いたいとか思ってるんじゃ……」
ロイドはグリムが昔が懐かしくなって、犬を食べたいのだと考えた。すると、グリムはケラケラと笑った。
「まさか!今は犬を食わなきゃいけないほど貧乏じゃねぇよ!犬より美味いモノがたくさんあるからな!」
「な、ならいいが……」
それから数日後……
「おーっす、ボンド~!これお土産な!」
喫茶シオンを訪れたグリムは、お土産として高級ドッグフードをボンドに振る舞った。
この日はヨルとアーニャは買い物に出ており、店にはロイドだけだった。
「おい、食事の前にそんなに食わせるな!」
「いいじゃねぇか、食わせるだけ食わせれば……ほーら、丸々太れ~♪」
グリムはニコニコ笑いながらドッグフードを皿に盛った。それはもう、不気味なほどに爽やかな笑顔だった…
「……非常食は確保だな。」
『………!!!』
誰にも聞こえないような小さい声だったが、長年スパイをしてきたロイドと、犬のボンドは聞き逃さなかった。
それからというもの、ロイドはできる限りグリムに食事を振る舞うことを決意したという……
─────────────────
実際に犬を食べる文化はあるのだとか……中国、東南アジア、朝鮮半島でよく食べられるそうで……
ちなみにグリムはボンドを食べる気なんてありません!ジョークで言っただけです!
途中、グリムとの会話でニコルが口にした、"白檀"という名前ですが……「スパイファミリー」第12巻をカバー裏まで読んだ熱心なファンなら分かるはず……
ニコルのモデルは「ワンピース」に登場した「コラさん」こと「ドンキホーテ・ロシナンテ」と「仮面ライダーゼロワン」の「飛電其雄」です。
この二人を意識したセリフや行動なんかも、この先入れたいと思ってます。
ちなみに声のイメージは主に映画の吹き替えをしている東地 宏樹氏。