SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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今回はちょっと戦闘短めです。後、ヨルさんの出番少ないです。




第9話「頼りない父親」

 

翌日、ロイドはアーニャとともにイーデン校に来ていた。

 

「ちち、なんでよばれた?」

「それはこっちが聞きたい。」

 

ロイドはイーデン校の教頭から、アーニャを通じて呼び出しをくらっていた。

その呼び出しに、ロイドは内心不安に駆られた。

 

(アーニャが何かやらかしたのか?いや、それだったらわざわざ俺を呼ばないはず。呼ぶんなら、ヨルさんも一緒に呼ぶはずだ。しかも、何故教頭が?)

 

ロイドは頭の中で考えを巡らせた。そんな中、

 

「おい、さっさとついてこい!」

 

ロイドとアーニャを案内していた教師が怒鳴った。

教師の名はマードック・スワン。二人はイーデン校の面接試験の時に会った時がことがある。

 

(フン、相変わらずみたいだな……)

 

ロイドは内心マードックを小馬鹿にした。それもそのはず、マードックは面接試験の時、自分とヨルを侮辱し、さらにアーニャを泣かせたのだ。

 

「まったく、なんでワシがお前らみたいなのを……そういえば、後妻は相変わらず料理出来ないのか?」

 

その時、マードックがニヤニヤと笑いながら聞いてきた。そのにやけ面に、ロイドは苛立った。

 

「……日々、精進してます。この前、彼女のシチューを食べました。とても美味しかったです。」

「はいはい、どうせ固形スープとかでテキトーに味付けしたんだろ?あの女、体つきはいいのに、トロくさそうだしなぁ。」

 

マードックは笑いながら、ここにいないヨルのことを罵倒した。

 

(この……っ!!)

 

ロイドは拳を握り、怒りが爆発しそうになった。

彼女が、ヨルがどれだけ頑張って作ったのか、どれだけ家族のことを考えてきたのか、何も知らない癖に……と思いながら、拳を振り上げそうになった。

 

「ついたぞ。」

 

その時、マードックは教頭室の前で足を止めた。それと同時にロイドは怒りを抑えた。

 

(落ち着け、落ち着け黄昏……今ここで揉め事を起こすな……)

「失礼します。」

 

マードックはドアをノックし、部屋へ入った。

 

「なっ……!?」

 

部屋に入った瞬間、ロイドは目を疑った。部屋のソファに一人の男が座っていた。

その男は、昨日出会った、ロイドと同じく「WISE」のスパイ、法条だった。

 

(法条……!?なぜここに!?)

「きょ、教頭。い、言われた通り、連れてきました。」

 

ロイドが驚く中、マードックは先ほどの偉そうな態度とは打って変わって、媚びを売るような口調で、自分よりも歳が下の法条に話しかけている。

 

(あのマードックがあんな態度を……というか、教頭!?)

 

法条はマードックから教頭と呼ばれていた。その事実に、ロイドはまたも驚いた。

すると、法条はポケットから何かを取り出し……

 

プシュッ!

 

「ぶわっ!?」

 

マードックの眼前で何かを吹きかけた。それはよく見ると、消臭スプレーだった。

 

「私に近づかないでくれませんか?あなたは臭いんですよ。」

「なっ……!?」

(こ、この若造が……!!)

 

突然の罵倒に、マードックはわなわなと震え、怒りを覚えた。

そんなマードックの怒りに気づいているのか否か、法条は見下すような目で睨んだ。

 

「何を見てるんです?あなたにもう用はありません。出ていってもらえます?この部屋まで臭くされたら堪りませんので。」

「ぐうっ……!」

 

マードックは悔しそうに歯を食いしばったが、法条の方が地位が上だからか、その場を立ち去るしかなかった。

 

「し、失礼しました……」

「それと、もうこの部屋には来ないでください。空気が汚れるので。」

「……ッ!!」

 

去り際にも罵倒され、もはや何も言えず、マードックはバンッとドアを閉めて出て行った。

その光景を、ロイドとアーニャは何も言えず、ただただ黙って見守っていた。

すると、法条は立ち上がり、ロイドに手を差し出した。

 

「どうも!初めまして!私、今日付けでこのイーデン校の教頭と道徳の授業を担当する、ジョージ・リグラと申します。」

 

法条は先ほどとは打って変わってにこやかな笑顔で笑い、ロイドとアーニャの二人と握手を交わした。

 

「娘さんの話は聞いていますよ!とてもいい子だと、ヘンダーソン先生から聞いています!」

「は、はぁ……」

 

ロイドは今のこの状況についていけなかった。

昨日帰ってきた自分の後輩のスパイが、翌日に娘の通う学校の教頭になっていた……わけのわからない状況だと感じていた。

すると、法条はアーニャに目を向けた。

 

「アーニャくん、ちょっとお父さんと話があるんだ。外で待てるかい?」

「う、うん……」

 

アーニャは返事とともに心を読んだ。

目の前にいる男は、父と同じスパイだということが分かった。

しかし、それが分かっても、父の時と違って「わくわく」はしなかった。

 

アーニャは言われた通り、部屋を出た。

部屋を出たのを見計らうと、法条はニヤリと笑った。

 

「またすぐ会えましたね。黄昏、いや、ロイドさん。」

「法条……お前、なんのつもりだ?」

「ここではジョージと呼んでください。」

「……ジョージ!なぜ君がここの教頭なんだ?」

 

ロイドは呼び名を変えて法条に尋ねた。

 

「私はここの卒業生なんですよ。そのツテで教頭をやらせてもらってます。」

(どういうツテだよ……)

 

ロイドは心の中で法条にツッコんだ。そんなことなど知らず、法条は続けた。

 

「昨日も言ったはずです。私の方がオペレーション(ストリクス)に相応しいと。今の私はこの学校の教頭。そして貴方はただの生徒の父親……この違いが分かりますか?」

「……」

 

法条の言っていることが、ロイドは朧気に理解できた。

この任務のターゲット、ドノバン・デズモンドは用心深く、なかなか表舞台には顔を出さない。しかし、イーデン校での「懇親会」には必ず顔を出していた。

ロイドはその「懇親会」を狙っていた。しかし、「懇親会」に出るにはイーデン校から授与される優れた成績や社会貢献の証「(ステラ)」を8つ手に入れる必要がある。だが、これはかなり時間がかかる作戦になる。

 

「……君が教頭の立場なら、(ステラ)など関係なく懇親会に参加できる。」

「さすがに分かりますか。私ならいつでもドノバンと接触ができる。殺すことだって簡単にできるんです。」

 

ロイドは法条がしようとしていることが理解できた。

ロイドの任務を横取りし、自分の手柄にしようとしている。だが、本部がそんなことを許すはずがない。

 

「本部はこのことを知っているのか?」

「上層部からは、監視を頼まれました。例のドノバンの息子、ダミアン・デズモンドの監視を。実質オペレーション(ストリクス)に片足を突っ込んでるんですよ、私は。」

 

法条は鼻高々に、かつ胸を張って語った。それに対し、ロイドは内心呆れていた。

 

(この男……ここまでするか普通……そうまでしてオペレーション(ストリクス)を担当したいのか?)

 

その時、法条がクスリと笑った。

 

「ロイドさん……貴方の娘、アーニャさんは入学して早々、(トニト)を取ったそうですね。正直笑いましたよ。まさか……黄昏ともあろう人が、人を選ぶセンスがないんですね。」

「なんだと?」

「入試の筆記試験もギリギリでしたね。ハッキリ言って出来が悪い子ですね。」

(こいつ、アーニャのことまで……!)

 

ロイドは怒りで拳を握った。

法条は自分のことだけでなく、アーニャのことまで罵倒する気だと思ったのだ。

しかし、それは違った。

 

「貴方の教育が悪いのではないですか?」

「……なに?」

「貴方は凡人と秀才の違いを理解していない。あの子は所詮凡人なんですよ。凡人に、貴方のような秀才になれと言っても無理なんですよ。」

 

ロイドは何も言えなかった。

今思えば、思い当たる節はあった。アーニャは「勉強はイヤだ」といっていた。しかしそれは、ただ単に勉強がイヤなのではなく、自分の教え方が嫌だったのではないか・・・・自分も自分で、「なぜこの程度の問題が分からない」とイライラしたこともあった。

 

(……どうして俺は、こんな簡単なことに気づかなかった……?)

 

何故、相手が理解できるように努めなかったのか……と、ロイドは自分自身を責めた。

自分の教え方さえよければ、(ステラ)など簡単に取れていたのではないか、とロイドは思った。

 

その様子に、法条は勝ち誇ったような笑みを浮かべた。

と、その時、バンッ!とアーニャが勢いよくドアを開けた。

 

「ア、アーニャ?」

「どうしました?」

 

二人からの疑問には答えず、アーニャはズカズカと進んでいき、法条の足元に立ったと思うと……

 

「ふんっ!」

 

なんとアーニャは法条の足をいきなり蹴った。

 

「!!」

「なっ!?アーニャ、何をやってるんだ!?」

 

ロイドはすぐにアーニャを引き離した。すると、アーニャは法条を睨み、思い切り叫んだ。

 

「おまえ……ちちをいじめるなっ!!!」

 

アーニャのその叫びに、部屋の空気が静まり返った。

部屋の外、扉越しにアーニャは全て聞いていたのだ。

 

「アーニャ……」

 

ロイドはただ一言だけ呟き、立ち尽くした。

だが、この状況はかなりマズい状況だった。イーデン校の生徒が教頭に暴力を振るった……法条がそう判断すれば、アーニャはまたも、(トニト)を取ることになってしまう。

しかし、法条はニコニコと笑った。

 

「アーニャくんはいい子だね。お父さんがいじめられてると思って助けに来たんだね!でも大丈夫!いじめてないよ。ちょっとお話してただけだからね。」

 

張り付いた笑顔でアーニャの頭を撫でながら説明した。しかし、アーニャはそれが演技だと、心を読んで分かっていた。

 

(ふん、これだから世間知らずのお子様は嫌なんだ。善か悪かでしか物事を判断できないんだからな。)

 

法条は内心ほくそ笑んだ。

その後、二人は法条から解放され、二人一緒になって帰った。

 

────────────────────────

 

帰り道、二人は手を繋いで道を歩いた。

ロイドはあの時のことをアーニャに追及しなかった。というより聞けなかった。

そんな時、アーニャが口を開いた。

 

「ちち。」

「ん?」

「アーニャ、ぜったいナンバーワンになる!トップになって、さっきのあいつ、ギャフンいわせる!」

 

アーニャはそう言って鼻息をフンフンと荒くした。

大好きな父親を罵倒されて、黙っていられるわけがない。罵倒した奴を、絶対に後悔させてやる!

そんな意気込みが見て取れた。ロイドもそれを理解し、微笑んだ。同時に、目頭が熱くなるのを覚えた。

 

(初めてだな……こんな気持ちになったのは……)

 

うっかりすると目から何かが零れ落ちそうだった。それを隠すようにロイドはアーニャを抱き上げた。

 

「よーし、いい子だ!……頼りない父親でごめんな。」

 

ロイドはいつもより自信なさげに呟き、アーニャを抱きしめた。

嬉しくもあり、悲しくもあった。血は繋がってないとはいえ、自分の娘に助けられたことに対する自分の情けなさ、身を挺して親を守ろうとしたアーニャの成長ぶり……その二つが混ざって複雑な感情になった。

ロイドはその感情を胸にしまい込んだ。

 

(ちち……アーニャ、がんばる!)

 

ロイドの心を読み、アーニャは抱きしめられながらギュッと拳を握って、必ず特待生になると心に誓った。

 

そんな時、

 

「ロイドさーん!アーニャちゃーん!」

 

二人を呼ぶ声が聞こえた。顔を向けると、そこには翔一がいた。

 

「翔一君。今帰りかい?」

「はい!あ、これ!さっき農家のおばあちゃんからもらったんです!トマト!」

 

翔一はニコニコ笑い、片手に下げた袋に入ったトマトを見せた。

先ほどの法条の笑顔と比べると、妙にさわやかに見えた。それを見て釣られてロイドも笑った。

 

「フッ、そうか……」

「どうしたんですか?なんか元気ないですね。」

「いや、ちょっとな……」

 

翔一は正直者で、素で毒を吐くことはあるが、嘘をつけない人間だった。

だからこそ、ロイドは聞いてみたくなった。

 

「……なぁ、翔一君。君から見て、俺はどんな奴だと思う?」

「え?どうしたんですか急に?」

「なんとなく聞いてみたかったんだ。感じたままに答えてほしい。」

 

困惑する翔一に、ロイドは微笑みながら答えた。

 

「うーん……ロイドさんはいい人ですけど、笑顔がいつも張り付いてるような感じがして、なんかお面をつけてるみたいだなぁ…って思ってました。」

(そんな風に思ってたのか……)

「でも、俺、ロイドさんには感謝してます。だって、俺に居場所を作ってくれたんですから。」

 

翔一はニコッと笑って言った。そしてさらに続けた。

 

「俺だけじゃなくて、アーニャちゃんやヨルさんの居場所を作ったのもロイドさんですよ!」

「翔一君・・・」

 

翔一の言葉に、ロイドは胸が熱くなった。同時に、翔一に抱いていた不信感が薄れていくのを感じた。

 

「……ありがとう、翔一君。」

 

ロイドは笑顔を見せて翔一に礼を言った。すると、翔一も笑った。

 

「俺、必ず守ります。ロイドさん達の居場所!」

 

すると、翔一はキリッとした顔で宣言した。そんな翔一に、ロイドはキョトンと目を丸くした。

 

「プッ、あはははは……!!」

 

そしてすぐにロイドは声を上げて笑った。

 

「ロイドさん、そうやって笑えるんですね。」

「ちち、わらった!」

「ああ、久々にな……」

 

ロイドは自分でも心の底から笑えたと思い、また笑みを浮かべた。

 

「ロイドさん!アーニャさん!翔一さん!」

 

その時、またしても声が聞こえた。そこには仕事帰りのヨルがいた。

 

「はは!」

「皆さんも今帰りですか?」

「はい。みんなで帰りましょう。」

「なんか新鮮ですね、こうして4人で帰るのも!」

 

4人は話しながら帰路につき、自分達の居場所へと戻っていった。

 

───────────────────────

 

その夜、ロイドは任務へと赴いていた。

暗闇の中で拳銃を手に、銃弾を込める。

 

(しかし、よくもまぁ、こんなものを作れたものだ。)

 

本部から新しい弾丸が支給された。それはアンノウンの肉片を採取した保安局を通じ、東国軍が開発した「対アンノウン用貫通弾」。

 

(今回の任務は、「アンノウン及びアギトの戦闘観察」……随分と妙な任務だな。上層部は何を考えてるんだ?)

 

ロイドは与えられた任務に不満を抱きながら、至急された拳銃とカメラを手に、建物の最上階から街を見下ろした。

 

(第一、アンノウンは神出鬼没。どうやって見つけろと……)

 

その時、港の方で落雷のような光が走った。

 

(あれは……!?)

 

まさかと思い、ロイドは港へ向かって走った。

港に着くと、そこではアギトとクラゲのアンノウンがすでに戦闘を始めていた。

 

(さっきの落雷は奴か……?)

 

ロイドは物陰に隠れながら両者の戦闘を観察した。

一見するとアギトの方が優勢のように見えた。しかし、アンノウンによる攻撃なのか、度々雷撃がアギトを襲い、じわじわとダメージを与えている。

 

(あの雷撃はどこから撃っているんだ?)

「ぐわぁっ!!」

 

観察している間に、アギトはさらに雷撃を喰らい、怯んだ。その隙をつき、アンノウンはアギトの首を掴んで持ち上げた。

 

「ぐっ……!!」

(マズい、アギトが……!どこかに弱点があるはずだ……それさえ分かれば……)

 

その時、アンノウンの半透明な頭部が光を放ち始めた。

それを見て、ロイドはハッと目を見開いた。

 

(アレか!)

 

ロイドは咄嗟に飛び出し、拳銃を抜いた。そして銃口をアンノウンに向けた。狙うは、発光を始めた半透明な頭部だ。

放たれた銃弾はまっすぐ飛び、アンノウンの頭部を貫通した。

 

「グオオオオ!!」

 

ガラスのような頭部にヒビが入り、アンノウンは苦しみ始め、アギトから手を離した。

その瞬間、アギトは渾身の力でアンノウンを殴り飛ばした。

そして、頭の角が翼のように展開した。

 

「ハアァァァァ……!!」

 

構えと同時に地面に紋章を浮かべ、その紋章を足に吸収する。

 

「ハッ!!」

 

そして宙に跳び上がり、

 

「ハアァァァァァァッ!!」

 

雄たけびとともに必殺キックをアンノウンに食らわせた。

そして、着地したアギトは構えて"残心"を決める。

 

「グッ!!ウウウゥゥゥ!!グアアアアアアッ!!」

 

アギトの技を喰らったアンノウンは頭に光輪を浮かび上がらせ、断末魔を上げながら爆発した。

その爆発を背に、アギトは開いた角を閉じ、ロイドへと近づいた。

 

「……お前にはこの前、助けてもらったからな。」

 

ロイドが静かに呟くと、アギトは何も言わず、ただコクリと頷いた。

 

「アギト、お前は一体何者だ?」

 

ロイドは続けてアギトに問いかけた。しかし、アギトは何も答えず、そのままロイドに背を向けて去ろうとした。

 

「ま、待て!」

 

ロイドはすかさず後を追おうとした。すると、アギトは右手の親指を上に立て、それがロイドにも見えるように腕を振り上げた。

 

「あ……」

 

それを見て、ロイドの表情が和らいだ。アギトのサインは「ありがとう」のサインだと理解したのだ。

ロイドもそれを真似て、右手の親指を立てた。

アギトはそれを見ることはなかった。しかし、ロイドもそれをやったと理解したのか、振り上げた拳をさらに上に突き上げ、その場から去っていった。

 

「フッ、不思議な奴だな……ん?あっ!」

 

その時、ロイドはあることに気が付いた。

懐にしまっていたカメラを取り出した。

 

「……報告用の写真、撮るの忘れてた……」

 

写真を取り忘れたロイドは、その場でガクリとうなだれた。

 

 

 

作品内において、どのライダーの話が一番好きですか?期間は4月10日から4月17日まで。アンケート結果は後日作品内で発表します

  • アギト編(翔一+フォージャー一家)
  • G-3編(ユーリ+対策班、ノエル)
  • ギルス編(フリッド+ダミアン、フィオナ)
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