今回はちょっと戦闘短めです。後、ヨルさんの出番少ないです。
翌日、ロイドはアーニャとともにイーデン校に来ていた。
「ちち、なんでよばれた?」
「それはこっちが聞きたい。」
ロイドはイーデン校の教頭から、アーニャを通じて呼び出しをくらっていた。
その呼び出しに、ロイドは内心不安に駆られた。
(アーニャが何かやらかしたのか?いや、それだったらわざわざ俺を呼ばないはず。呼ぶんなら、ヨルさんも一緒に呼ぶはずだ。しかも、何故教頭が?)
ロイドは頭の中で考えを巡らせた。そんな中、
「おい、さっさとついてこい!」
ロイドとアーニャを案内していた教師が怒鳴った。
教師の名はマードック・スワン。二人はイーデン校の面接試験の時に会った時がことがある。
(フン、相変わらずみたいだな……)
ロイドは内心マードックを小馬鹿にした。それもそのはず、マードックは面接試験の時、自分とヨルを侮辱し、さらにアーニャを泣かせたのだ。
「まったく、なんでワシがお前らみたいなのを……そういえば、後妻は相変わらず料理出来ないのか?」
その時、マードックがニヤニヤと笑いながら聞いてきた。そのにやけ面に、ロイドは苛立った。
「……日々、精進してます。この前、彼女のシチューを食べました。とても美味しかったです。」
「はいはい、どうせ固形スープとかでテキトーに味付けしたんだろ?あの女、体つきはいいのに、トロくさそうだしなぁ。」
マードックは笑いながら、ここにいないヨルのことを罵倒した。
(この……っ!!)
ロイドは拳を握り、怒りが爆発しそうになった。
彼女が、ヨルがどれだけ頑張って作ったのか、どれだけ家族のことを考えてきたのか、何も知らない癖に……と思いながら、拳を振り上げそうになった。
「ついたぞ。」
その時、マードックは教頭室の前で足を止めた。それと同時にロイドは怒りを抑えた。
(落ち着け、落ち着け黄昏……今ここで揉め事を起こすな……)
「失礼します。」
マードックはドアをノックし、部屋へ入った。
「なっ……!?」
部屋に入った瞬間、ロイドは目を疑った。部屋のソファに一人の男が座っていた。
その男は、昨日出会った、ロイドと同じく「WISE」のスパイ、法条だった。
(法条……!?なぜここに!?)
「きょ、教頭。い、言われた通り、連れてきました。」
ロイドが驚く中、マードックは先ほどの偉そうな態度とは打って変わって、媚びを売るような口調で、自分よりも歳が下の法条に話しかけている。
(あのマードックがあんな態度を……というか、教頭!?)
法条はマードックから教頭と呼ばれていた。その事実に、ロイドはまたも驚いた。
すると、法条はポケットから何かを取り出し……
プシュッ!
「ぶわっ!?」
マードックの眼前で何かを吹きかけた。それはよく見ると、消臭スプレーだった。
「私に近づかないでくれませんか?あなたは臭いんですよ。」
「なっ……!?」
(こ、この若造が……!!)
突然の罵倒に、マードックはわなわなと震え、怒りを覚えた。
そんなマードックの怒りに気づいているのか否か、法条は見下すような目で睨んだ。
「何を見てるんです?あなたにもう用はありません。出ていってもらえます?この部屋まで臭くされたら堪りませんので。」
「ぐうっ……!」
マードックは悔しそうに歯を食いしばったが、法条の方が地位が上だからか、その場を立ち去るしかなかった。
「し、失礼しました……」
「それと、もうこの部屋には来ないでください。空気が汚れるので。」
「……ッ!!」
去り際にも罵倒され、もはや何も言えず、マードックはバンッとドアを閉めて出て行った。
その光景を、ロイドとアーニャは何も言えず、ただただ黙って見守っていた。
すると、法条は立ち上がり、ロイドに手を差し出した。
「どうも!初めまして!私、今日付けでこのイーデン校の教頭と道徳の授業を担当する、ジョージ・リグラと申します。」
法条は先ほどとは打って変わってにこやかな笑顔で笑い、ロイドとアーニャの二人と握手を交わした。
「娘さんの話は聞いていますよ!とてもいい子だと、ヘンダーソン先生から聞いています!」
「は、はぁ……」
ロイドは今のこの状況についていけなかった。
昨日帰ってきた自分の後輩のスパイが、翌日に娘の通う学校の教頭になっていた……わけのわからない状況だと感じていた。
すると、法条はアーニャに目を向けた。
「アーニャくん、ちょっとお父さんと話があるんだ。外で待てるかい?」
「う、うん……」
アーニャは返事とともに心を読んだ。
目の前にいる男は、父と同じスパイだということが分かった。
しかし、それが分かっても、父の時と違って「わくわく」はしなかった。
アーニャは言われた通り、部屋を出た。
部屋を出たのを見計らうと、法条はニヤリと笑った。
「またすぐ会えましたね。黄昏、いや、ロイドさん。」
「法条……お前、なんのつもりだ?」
「ここではジョージと呼んでください。」
「……ジョージ!なぜ君がここの教頭なんだ?」
ロイドは呼び名を変えて法条に尋ねた。
「私はここの卒業生なんですよ。そのツテで教頭をやらせてもらってます。」
(どういうツテだよ……)
ロイドは心の中で法条にツッコんだ。そんなことなど知らず、法条は続けた。
「昨日も言ったはずです。私の方がオペレーション
「……」
法条の言っていることが、ロイドは朧気に理解できた。
この任務のターゲット、ドノバン・デズモンドは用心深く、なかなか表舞台には顔を出さない。しかし、イーデン校での「懇親会」には必ず顔を出していた。
ロイドはその「懇親会」を狙っていた。しかし、「懇親会」に出るにはイーデン校から授与される優れた成績や社会貢献の証「
「……君が教頭の立場なら、
「さすがに分かりますか。私ならいつでもドノバンと接触ができる。殺すことだって簡単にできるんです。」
ロイドは法条がしようとしていることが理解できた。
ロイドの任務を横取りし、自分の手柄にしようとしている。だが、本部がそんなことを許すはずがない。
「本部はこのことを知っているのか?」
「上層部からは、監視を頼まれました。例のドノバンの息子、ダミアン・デズモンドの監視を。実質オペレーション
法条は鼻高々に、かつ胸を張って語った。それに対し、ロイドは内心呆れていた。
(この男……ここまでするか普通……そうまでしてオペレーション
その時、法条がクスリと笑った。
「ロイドさん……貴方の娘、アーニャさんは入学して早々、
「なんだと?」
「入試の筆記試験もギリギリでしたね。ハッキリ言って出来が悪い子ですね。」
(こいつ、アーニャのことまで……!)
ロイドは怒りで拳を握った。
法条は自分のことだけでなく、アーニャのことまで罵倒する気だと思ったのだ。
しかし、それは違った。
「貴方の教育が悪いのではないですか?」
「……なに?」
「貴方は凡人と秀才の違いを理解していない。あの子は所詮凡人なんですよ。凡人に、貴方のような秀才になれと言っても無理なんですよ。」
ロイドは何も言えなかった。
今思えば、思い当たる節はあった。アーニャは「勉強はイヤだ」といっていた。しかしそれは、ただ単に勉強がイヤなのではなく、自分の教え方が嫌だったのではないか・・・・自分も自分で、「なぜこの程度の問題が分からない」とイライラしたこともあった。
(……どうして俺は、こんな簡単なことに気づかなかった……?)
何故、相手が理解できるように努めなかったのか……と、ロイドは自分自身を責めた。
自分の教え方さえよければ、
その様子に、法条は勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
と、その時、バンッ!とアーニャが勢いよくドアを開けた。
「ア、アーニャ?」
「どうしました?」
二人からの疑問には答えず、アーニャはズカズカと進んでいき、法条の足元に立ったと思うと……
「ふんっ!」
なんとアーニャは法条の足をいきなり蹴った。
「!!」
「なっ!?アーニャ、何をやってるんだ!?」
ロイドはすぐにアーニャを引き離した。すると、アーニャは法条を睨み、思い切り叫んだ。
「おまえ……ちちをいじめるなっ!!!」
アーニャのその叫びに、部屋の空気が静まり返った。
部屋の外、扉越しにアーニャは全て聞いていたのだ。
「アーニャ……」
ロイドはただ一言だけ呟き、立ち尽くした。
だが、この状況はかなりマズい状況だった。イーデン校の生徒が教頭に暴力を振るった……法条がそう判断すれば、アーニャはまたも、
しかし、法条はニコニコと笑った。
「アーニャくんはいい子だね。お父さんがいじめられてると思って助けに来たんだね!でも大丈夫!いじめてないよ。ちょっとお話してただけだからね。」
張り付いた笑顔でアーニャの頭を撫でながら説明した。しかし、アーニャはそれが演技だと、心を読んで分かっていた。
(ふん、これだから世間知らずのお子様は嫌なんだ。善か悪かでしか物事を判断できないんだからな。)
法条は内心ほくそ笑んだ。
その後、二人は法条から解放され、二人一緒になって帰った。
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帰り道、二人は手を繋いで道を歩いた。
ロイドはあの時のことをアーニャに追及しなかった。というより聞けなかった。
そんな時、アーニャが口を開いた。
「ちち。」
「ん?」
「アーニャ、ぜったいナンバーワンになる!トップになって、さっきのあいつ、ギャフンいわせる!」
アーニャはそう言って鼻息をフンフンと荒くした。
大好きな父親を罵倒されて、黙っていられるわけがない。罵倒した奴を、絶対に後悔させてやる!
そんな意気込みが見て取れた。ロイドもそれを理解し、微笑んだ。同時に、目頭が熱くなるのを覚えた。
(初めてだな……こんな気持ちになったのは……)
うっかりすると目から何かが零れ落ちそうだった。それを隠すようにロイドはアーニャを抱き上げた。
「よーし、いい子だ!……頼りない父親でごめんな。」
ロイドはいつもより自信なさげに呟き、アーニャを抱きしめた。
嬉しくもあり、悲しくもあった。血は繋がってないとはいえ、自分の娘に助けられたことに対する自分の情けなさ、身を挺して親を守ろうとしたアーニャの成長ぶり……その二つが混ざって複雑な感情になった。
ロイドはその感情を胸にしまい込んだ。
(ちち……アーニャ、がんばる!)
ロイドの心を読み、アーニャは抱きしめられながらギュッと拳を握って、必ず特待生になると心に誓った。
そんな時、
「ロイドさーん!アーニャちゃーん!」
二人を呼ぶ声が聞こえた。顔を向けると、そこには翔一がいた。
「翔一君。今帰りかい?」
「はい!あ、これ!さっき農家のおばあちゃんからもらったんです!トマト!」
翔一はニコニコ笑い、片手に下げた袋に入ったトマトを見せた。
先ほどの法条の笑顔と比べると、妙にさわやかに見えた。それを見て釣られてロイドも笑った。
「フッ、そうか……」
「どうしたんですか?なんか元気ないですね。」
「いや、ちょっとな……」
翔一は正直者で、素で毒を吐くことはあるが、嘘をつけない人間だった。
だからこそ、ロイドは聞いてみたくなった。
「……なぁ、翔一君。君から見て、俺はどんな奴だと思う?」
「え?どうしたんですか急に?」
「なんとなく聞いてみたかったんだ。感じたままに答えてほしい。」
困惑する翔一に、ロイドは微笑みながら答えた。
「うーん……ロイドさんはいい人ですけど、笑顔がいつも張り付いてるような感じがして、なんかお面をつけてるみたいだなぁ…って思ってました。」
(そんな風に思ってたのか……)
「でも、俺、ロイドさんには感謝してます。だって、俺に居場所を作ってくれたんですから。」
翔一はニコッと笑って言った。そしてさらに続けた。
「俺だけじゃなくて、アーニャちゃんやヨルさんの居場所を作ったのもロイドさんですよ!」
「翔一君・・・」
翔一の言葉に、ロイドは胸が熱くなった。同時に、翔一に抱いていた不信感が薄れていくのを感じた。
「……ありがとう、翔一君。」
ロイドは笑顔を見せて翔一に礼を言った。すると、翔一も笑った。
「俺、必ず守ります。ロイドさん達の居場所!」
すると、翔一はキリッとした顔で宣言した。そんな翔一に、ロイドはキョトンと目を丸くした。
「プッ、あはははは……!!」
そしてすぐにロイドは声を上げて笑った。
「ロイドさん、そうやって笑えるんですね。」
「ちち、わらった!」
「ああ、久々にな……」
ロイドは自分でも心の底から笑えたと思い、また笑みを浮かべた。
「ロイドさん!アーニャさん!翔一さん!」
その時、またしても声が聞こえた。そこには仕事帰りのヨルがいた。
「はは!」
「皆さんも今帰りですか?」
「はい。みんなで帰りましょう。」
「なんか新鮮ですね、こうして4人で帰るのも!」
4人は話しながら帰路につき、自分達の居場所へと戻っていった。
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その夜、ロイドは任務へと赴いていた。
暗闇の中で拳銃を手に、銃弾を込める。
(しかし、よくもまぁ、こんなものを作れたものだ。)
本部から新しい弾丸が支給された。それはアンノウンの肉片を採取した保安局を通じ、東国軍が開発した「対アンノウン用貫通弾」。
(今回の任務は、「アンノウン及びアギトの戦闘観察」……随分と妙な任務だな。上層部は何を考えてるんだ?)
ロイドは与えられた任務に不満を抱きながら、至急された拳銃とカメラを手に、建物の最上階から街を見下ろした。
(第一、アンノウンは神出鬼没。どうやって見つけろと……)
その時、港の方で落雷のような光が走った。
(あれは……!?)
まさかと思い、ロイドは港へ向かって走った。
港に着くと、そこではアギトとクラゲのアンノウンがすでに戦闘を始めていた。
(さっきの落雷は奴か……?)
ロイドは物陰に隠れながら両者の戦闘を観察した。
一見するとアギトの方が優勢のように見えた。しかし、アンノウンによる攻撃なのか、度々雷撃がアギトを襲い、じわじわとダメージを与えている。
(あの雷撃はどこから撃っているんだ?)
「ぐわぁっ!!」
観察している間に、アギトはさらに雷撃を喰らい、怯んだ。その隙をつき、アンノウンはアギトの首を掴んで持ち上げた。
「ぐっ……!!」
(マズい、アギトが……!どこかに弱点があるはずだ……それさえ分かれば……)
その時、アンノウンの半透明な頭部が光を放ち始めた。
それを見て、ロイドはハッと目を見開いた。
(アレか!)
ロイドは咄嗟に飛び出し、拳銃を抜いた。そして銃口をアンノウンに向けた。狙うは、発光を始めた半透明な頭部だ。
放たれた銃弾はまっすぐ飛び、アンノウンの頭部を貫通した。
「グオオオオ!!」
ガラスのような頭部にヒビが入り、アンノウンは苦しみ始め、アギトから手を離した。
その瞬間、アギトは渾身の力でアンノウンを殴り飛ばした。
そして、頭の角が翼のように展開した。
「ハアァァァァ……!!」
構えと同時に地面に紋章を浮かべ、その紋章を足に吸収する。
「ハッ!!」
そして宙に跳び上がり、
「ハアァァァァァァッ!!」
雄たけびとともに必殺キックをアンノウンに食らわせた。
そして、着地したアギトは構えて"残心"を決める。
「グッ!!ウウウゥゥゥ!!グアアアアアアッ!!」
アギトの技を喰らったアンノウンは頭に光輪を浮かび上がらせ、断末魔を上げながら爆発した。
その爆発を背に、アギトは開いた角を閉じ、ロイドへと近づいた。
「……お前にはこの前、助けてもらったからな。」
ロイドが静かに呟くと、アギトは何も言わず、ただコクリと頷いた。
「アギト、お前は一体何者だ?」
ロイドは続けてアギトに問いかけた。しかし、アギトは何も答えず、そのままロイドに背を向けて去ろうとした。
「ま、待て!」
ロイドはすかさず後を追おうとした。すると、アギトは右手の親指を上に立て、それがロイドにも見えるように腕を振り上げた。
「あ……」
それを見て、ロイドの表情が和らいだ。アギトのサインは「ありがとう」のサインだと理解したのだ。
ロイドもそれを真似て、右手の親指を立てた。
アギトはそれを見ることはなかった。しかし、ロイドもそれをやったと理解したのか、振り上げた拳をさらに上に突き上げ、その場から去っていった。
「フッ、不思議な奴だな……ん?あっ!」
その時、ロイドはあることに気が付いた。
懐にしまっていたカメラを取り出した。
「……報告用の写真、撮るの忘れてた……」
写真を取り忘れたロイドは、その場でガクリとうなだれた。
作品内において、どのライダーの話が一番好きですか?期間は4月10日から4月17日まで。アンケート結果は後日作品内で発表します
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アギト編(翔一+フォージャー一家)
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G-3編(ユーリ+対策班、ノエル)
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ギルス編(フリッド+ダミアン、フィオナ)