「3号……貴様ァ……!!」
「4号…カトル、勝負だ!お前も仮面ライダーを名乗るなら、タイマンで勝負だ!!」
無謀とも呼べる申し出だったが、3号は構わずタイマンの挑戦状を叩きつけた。
「フッ……いいだろう。」
4号はその申し出を受け入れた。
完全に3号を舐めきっていた。スペック自体は自分自身の方が上だったからだ。
そのため、自分が勝つと高を括っていた。
「ニ、ニコル……!」
グリムはなんとか立ち上がろうとした。その時、同時にロイド達が駆けつけてきた。
「ロイド君、グリムを頼んだ。」
駆けつけてきたロイド達にグリムを任せ、3号はじりじりと4号に近づいていく。4号も同様だった。
そして、両者は互いの攻撃が当たる間合いに入った……その瞬間、二人は同時に上空へ跳躍し、互いに拳を繰り出した。
互いの拳がぶつかり合ったことで衝撃波が発生し、両者は吹き飛びながらも地面に着地した。
「フフッ……」
「チッ……」
3号は腕が痺れるのを感じた。対し、4号は何も感じていないのか拳の骨を鳴らしてみせた。
(やはりスペックは奴の方が上か。)
たった一回の拳のぶつかり合いだけで、3号は向こうの方が格上だと感づいた。
しかし、3号はひどく落ち着いていた。油断……しているわけではなかった。
「ドォゥッ!!」
3号は掛け声とともに回転しながらジャンプし、カカト落としを繰り出した。しかし、4号は両腕をクロスさせて攻撃を防ぎ、さらにその脚を掴んで上に投げ飛ばした。
しかし次の瞬間、3号は投げ飛ばされた反動を利用して4号の顎に蹴りを食らわせた。
「ぐぅっ!?」
戦いとは、パワーやスピードといったスペックで決まるのではない。
少なくとも、スパイの戦い方はパワーやスピードには頼らない。
スパイの戦いの真髄は周りの環境を利用することにある。
「ディヤァッ!!」
「ウォルァッ!!」
二人は互いに蹴りを繰り出し、ぶつけ合った。さらに反転して蹴りを繰り出すが、ぶつかり合って相殺された。
4号はさらにそこから拳を繰り出してきた。3号はそれを、よけなかった。わざとその攻撃を喰らい、倒れる拍子に回し蹴りを繰り出し4号を蹴り飛ばした。
「ぐおっ!!」
利用するのは周りの環境……さらにいえば状況すらも利用する。相手の攻撃に、喰らった時のダメージ、体制すらも利用できる。
「カウンターばかり狙いやがって……!!」
敵にダメージを与えた時、相手は「やった」と思い油断する。それこそが攻撃のチャンスにつながる。
「あの人……ダメージを受けてるはずなのに、着実に攻撃を当ててる……」
戦いを見守っていたグリム達は思わず唾を飲んだ。
その時、ふとロイドは思った。「もし、ニコルがスパイを続けていたのなら、西国イチのスパイは彼になっていたかもしれない」と。
「この裏切り者がぁっ!!」
そして、短気な者ほど怒り、焦る。それが隙を生む。
「フンッ!!」
4号は怒りで我を失いかけている。その隙を突き、3号は攻撃を受け流しながら腹に掌底を叩き込んだ。
「ごふっ!!」
腹に鋭い一撃を喰らった4号は後ずさった。3号はその隙を逃さない。ベルトの両側にある推進器を使って、一気に4号に近づく。さらに推進器で空中に浮きながらの連続蹴りを繰り出していく。
「チイィッ!!」
蹴り飛ばされながらも、4号は右拳に力を込め、緑色のオーラを纏う。対し、3号も拳に力を込め、同じくオーラを纏った。
『ライダーパァンチッ!!!』
互いに必殺パンチを繰り出し、ボクシングのクロスカウンターのように互いの顔面に拳が叩きつけられた。
「くっ……!」
「ぐぅっ……!」
両者はダメージを受け、後ろに下がりながらもファイティングポーズを崩さなかった。
「さすがは3号……なかなかの戦闘能力……こんな力を持っていながら、何故ショッカーを裏切った?何故、その落ちこぼれについた?」
ファイティングポーズを取り、睨みながら3号に問いかけた。すると、3号は握った拳をさらに強く握りしめた。
「……笑えないからだ。」
「何……?」
「ショッカーの作る世界じゃ、子ども達は笑えない。そして何より、お前らがいたらグリムはグリムとして生きていけない!!」
3号は拳を握って叫んだ。その叫びを聞いたグリムはキョトンとしたような顔で呆然としていた…かと思いきや、その瞳は今にも泣きそうな潤んでいた。
「ニコル……!」
「ふん、まだ親のつもりでいるのか?血が繋がってないくせに!」
「血の繋がりなんて関係ない!……家族は、最初は他人同士だ。誰かと出会って、結ばれて、子どもを作って……時間を重ねて愛と絆を創る!それが家族だ!!」
3号は叫んだ。それは心の、魂の叫びだった。
そして、3号は駆け出し、4号に掴みかかった。
「むっ!?」
「誰にも文句は言わせない!!誰がなんと言おうと……グリムは俺の息子だっ!!!」
3号の雄叫びとともにベルトの風車が高速回転を始めた。
「ライダーきりもみシュートッ!!」
4号を掴みながらその場で高速回転。そしてそのまま4号を空中へ放り投げた。
「うおおおおっ!?」
「ライダァァァァァァ……!!キッ……!?」
そのまま必殺キックを繰り出そうとした……その時だった。腹部に鋭い痛みを感じた。まるで何かが突き刺さるような……
見ると、腹部に剣が突き刺さっていた。カイザが使うカイザブレイガンだった。
「なっ……!!ごふっ!!」
3号は口から血を噴き出した。吹き出た血がマスクの外に漏れ出し、口元のクラッシャーを濡らした。
「ニコルーーーーーッ!!!」
「貴様ら……!!汚いぞ!一対一の勝負じゃなかったのか!?」
眼の前の惨状を見てグリムは叫び、フリッドは横槍を入れたカイザとサイガに向かって叫んだ。
すると二人はおろか4号もケラケラと笑い始めた。
「はぁ?何言ってんのぉ?戦いに卑怯も汚いもないじゃん。」
「負けた奴が悪い……3号はアマアマのヨワヨワだ。」
「一対一を了承したのはそっちだろう!!」
ロイドはさらに抗議の叫び声を上げた。ロイドの言う通り、カトルはニコルのと一騎打ちに応じた。
しかし、向こうは態度を変えない。
「クククッ……約束した覚えは……ないなぁ。」
『!!!』
信じられないことに、4号は約束などしていないと言ってのけた。
「キャハハハ!!お兄ちゃんが全部正しいの!お兄ちゃんが言えば、白も黒に、黒も白になるの!!」
「兄者こそ絶対……!兄者こそ正義だ……!」
「クハハハ……そういうことだ。悪いなぁ……」
その時グリム達は怒りがこみ上げてきた。
こんな奴が、こんな奴らが仮面ライダーを名乗っていることが許せなかった。
こんなあくどい人間達が仮面ライダーでいいのか、と思いながら唇を噛み締めた。
「くっ……!」
そんな中、3号は腹に刺さった剣を引き抜き、投げ捨てた。
それを見ながら、4号は拳の骨を鳴らしながら近づいてきた。
「さて……さっきの仕返しをしてやる……かっ!!」
4号は仕返しとばかりに3号の顔面を殴り飛ばす。
「がふっ!」
「ハハハ……どうしたどうした!」
さらに胸を殴り、さらにはさきほど刺された腹を殴りつける。
「がはっ……!!」
「そら、もっと吐け!!」
腹を殴られ、3号は口から血を吐いた。それを見た4号は執拗に腹を殴りつけた。
「クソォ……!!ニコル……!ニコルゥ……!!」
一方的にやられる3号を見て、グリムは血が出るほど唇を噛み締めた。
3号は、ニコルは自分のことを息子と呼んでくれた。そしてその息子のために命をかけて戦ってくれている……にも関わらず自分は何もできない。
それが歯痒く、悔しく思っていた。
「悲劇だなぁ!なぁ、グラハム!」
そんなグリムを見かねてか、4号は大声でグリムの昔の名を呼んだ。
「お前のせいでニコラスが死ぬぞ!お前のせいでなぁ!!クハハハハハハハッ!!」
「くっ……!!」
4号のその言葉にグリムは悔しそうに唸り声を上げた。4号の言葉は正しいと思ってしまった。
自分さえいなければニコルはあんな目に遭わずに済んだかもしれない。傷つかなくて済んだかもしれないと思った。
だがその時、
「気負うなグリム!!」
「!!」
その時、3号が叫んだ。
「お前は何も悪くないさ……悪いのは、俺達大人さ……こんな奴らを放っておいた、俺達の大人のせいだ……」
「あぁん?お前、何を言ってる?そんなナマイキなこと言っていいのか?今の自分の立場が分かっているのかぁ?」
「分かってるさ……!分かってないのはお前の方だ!」
ふらつきながらも、仁王立ちになる3号。すると、ベルトの背面にあるスイッチを操作し始めた。
「トライサイクロン!!」
スイッチの操作と3号の叫びに呼応し、専用マシン、トライサイクロンが音を立てて姿を現した。
トライサイクロンはそのまま3号の前に停まる……かと思いきや4号に向かって突っ込んでいった。
「なにっ!?」
「すまない、サイクロン……!!」
3号はトライサイクロンに向かって謝罪すると同時に、さらにスイッチを操作した。そして次の瞬間、ピピピピ……と音を立てた後、トライサイクロンが爆発を起こした。
「ぬおぉぉぉぉぉぉぉ!!?」
「お兄ちゃん!!」
「兄者!!」
トライサイクロンが起こした爆炎に4号が飲み込まれた。
しかし、その爆炎の中から4号が飛び出してきた。
「はぁ…はぁ……!!まさかこんな手を使うとは、驚いたぞ……だが、無駄に終わったなぁ!」
「そうかな……フンッ!!」
そう言うと3号はベルトの風車を高速回転させた。すると、なんと驚いたことに高速回転した風車が回転によって爆炎を吸い込み始めた。
「なっ……爆炎が……!?」
「ハアァァァ……!!」
風車によって吸い込まれた爆炎は、3号の全身に行き渡り、炎を纏っていく。さらに爆炎の影響か、3号の金色の瞳が炎の如き真紅の瞳に変わった。
「な、なんだアレは……!?」
「フウゥゥゥ……ハァッ!!」
炎を纏った3号は掛け声とともに地面を拳で殴った。その瞬間、4号達の足元から炎の柱が立ち上った。
「キャアッ!?」
「ぐぬぅっ!!」
「な、なんだこの力は……!!」
突然湧き出た炎に困惑する3人だったが、すぐさま立ち直り構えた。
「何してる!?やれ!!」
4号は3号を指差し、カイザとサイガに命令した。その命令に従い、サイガはフライングアタッカーの機関銃を乱射し、カイザはドサクサで拾ったカイザブレイガンとベルトのカイザフォンを銃に変形させての2丁銃を乱射した。
3号はこの攻撃を、よけなかった。仁王立ちしながら全身に力を込め始めた。
「ハアァァァァァァ……!!」
銃弾が体を貫いても、3号は気にも止めずに力を溜め続けた。力を溜めるとともに体を纏っている炎がどんどん大きくなっていた。まるで3号自体が炎の化身になったかのようだった。
「トゥッ!!」
そして、巨大になった炎とともに3号は空へ舞い上がった。
(もうこれで終わってもいい……!!ありったけを!最大の力を!!)
「ライダー!轟炎ッ!!キィィィィィック!!!」
全身から湧き出る猛火とともに、全身全霊を込めた、自分の全てを込めた必殺キックを繰り出した。
負けじと3人は銃で応戦するが、3号を包む炎の前では無駄だった。そしてそのまま必殺キックは3人に向かって飛来する。
「う、うわあああああああああ!!!」
その瞬間、激しい爆発が起き、3人を爆炎が包みこんだ。
そして3号はその場に着地した。同時に3号を包んでいた炎は完全に消え、瞳も元の金色に戻った。
「か、勝ったのか……!?」
「いや……」
爆炎が消え、そこに現れたのは……あの3人だった。
『ハァッ……!!ハァッ……!!』
3人はまだ生きていた……だがスーツは半壊し、満身創痍といった様子だった。
「クソッ……!裏切り者の分際で……!!」
「お前ら……!退くぞ!!」
『えっ!』
4号の突然の一言に驚いたザカとフラン。対し4号はギリギリと拳を握りしめた。
「こいつらは、完璧な状態で完膚なきまでに叩きのめなさければ意味がない!!こんな状態で勝つなど……プライドが許さん!!」
(この落とし前はつけるぞ、3号……!!グラハム……!!)
カトルはそう言うと変身を解き、ザカとフランを連れてその場からそそくさと立ち去っていった。
「ま、待て……!くそっ……!!」
グリム達はすぐに追撃しようとしたが蓄積したダメージのせいで変身すら叶わなかった。
その時、
「倒せなかった、か……だが、これで……いい……」
3号はフラッとぐらついたかと思いきや、その場に倒れ込んだ。
「ッ!!ニコル!!」
グリムはすぐさまニコルの元に駆け寄り、体を抱き起こした。
「ニコル……!しっかりしろ……!!」
「すまない……負けてしまった……結局俺はお前に何もしてやれなかった……いや、それだけじゃないな……俺は、お前や……君達若い世代に、何もしてやれなかった……」
ニコルはグリムの顔を見て、続けてロイド達の顔を順に見つめた。
「いつだってそうさ……俺みたいな奴が不甲斐ないせいで戦争が起こって、君達の大事な家族や友人を奪ってしまった……だが……」
ニコルはグリムやロイド達に向けて懺悔を始めた……かと思うクラッシャーを外し、マスクを脱いで素顔を晒した。
「これで、ようやく未来に遺せる……」
ニコルは外したマスクを見つめ、フッと笑ったかと思うと、それをグリムに差し出した。
「えっ……?」
「これを、お前に渡す……どう使うかはお前次第だ。それからグリム……もう、戦うなとは言わない……自分の意思で決めろ。だが……」
ニコルはグリムにマスクを手渡すと、頭をガシッと掴んだ。
「決して自分を泣かせるようなことをするな……!それだけは、守ってくれ……!!」
「ニコル……お…俺……!!」
マスクを受け取ったグリムは目から大量の涙を流しながら、ニコルの手をギュッと強く握りしめた。
「俺…!心の中で……!!アンタのこと“親父“って呼んでたんだ……!!」
「…ハハッ……!そっか……ありがとうな……」
泣きながら言うグリムを慰めるように、ニコルは頭を撫でた。すると、ニコルはロイドに顔を向けた。
「ロイド君……白檀に、シルヴィアに伝えて欲しい…『役立たずの相棒ですまなかった』って……」
「…はい……!」
ニコルはロイドに伝言を託すと、首に巻いていたマフラーを外し、ロイドに手渡した。
そして再度グリムの方に顔を向けた。
「すまん……言い忘れたことがあった……グリム……俺のコート…似合っててよかった……」
そう言うと、ニコルは満面の笑みを見せた……後にガクリと項垂れた。さらにその後すぐ、ニコルの体が泡に変わっていく。
「ッ!!待て、待てよ!!まだ……話したいこと……!!いっぱいあんのに……!!」
グリムの願いも虚しく、ニコルの体は完全に泡に変わってしまい、残ったのは手渡されたマスクとマフラーだけだった…
「お……お、親父ィィィィィィィィィィ!!!」
ようやく再会し、ようやく“親父“と呼べたのに、その相手は死んでしまった。
亡骸は消え、遺体を埋葬することもできないまま、グリムは泣き叫んだ。
遺された遺品を、マスクを抱きかかえながら……
おまけ「起源」
「よしよし、グリムくんはいい子ですね♪」
「へ、へへへ……」
「……ねぇ、この作品、ヨルちゃんモテすぎじゃない?」
フィオナはグリムの頭を撫でるヨルを眺めながら、フリッドに尋ねた。
「私とどう違うの?」
「うーん……母性、かなぁ?ヨルさんの母性は最強クラスだから。」
「母性……」
後日、
「坊や、私に甘えなさい。抱っこしてあげるわ。」
「……はい!?」
フィオナはダミアンの前で両手を広げ、甘えさせようとしていた。
それから30分後……
「フフフッ……坊や、どんな気持ち?」
「き、気持ちいいれしゅ……」
「そうでしょうね。もっと甘えなさい?私が骨抜きにしてあげる……♡」
「は、はひっ♡」
フィオナはダミアンを抱きしめ、体に自分の胸を押し付け、頭を撫でながら耳に息を吹きかけるように囁いていた。
そんな行為は、年齢一桁の小学生男子であるダミアンには刺激が強く、蕩けた顔で全身脱力していた。
そしてそんな光景を、フリッドは鼻血を出しながら眺めていた。
(フィオナ…それは母性というより、小学生の性癖を拗らせる奴だ!でも、大好きな二人が絡み合ってるから、良しッ!!!)
そしてその光景は巧も見ていたが、巧は「本編めっちゃシリアスなのに何やってんだコイツら」と思っていたが、同時に「いや、シリアスだからこそギャグが必要かもしれない」とか「このノリにノリきれない自分がおかしいのかも」と思っていたため、何も言えなかった。
後に、フィオナのこの行動が、「ASMR」の起源と呼ばれたとか呼ばれてないとか。
─────────────────
ダミアンの性癖拗らせたい……拗らせたくない?
3号が炎を取り込む展開は、映画「仮面ライダーTHE NEXT」のクライマックスでV3がモチーフになっています。