SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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長らくお待たせしました……体調が悪くなって寝込んでまして……ようやく投稿できました。


PART.13 月満つる夜に金色になれ

 

『なにっ?ヨルさんが戻ってこない?』

「ああ……おまけにタクミもいない……」

 

ロイドはフリッドに電話をかけていた。ヨルが病院から戻ってこなかったからだ。

 

『ユーリ君のところは?』

「もう電話して確かめたが……ユーリ君のとこにも来ていないようだ。お前のところにも来ていないとすると……いったいどのに……」

 

ロイドはだんだんと不安になっていった。そんな時、フリッドが声を上げた。

 

『……なぁ、ロイド君。少し嫌な予感がする……まさかと思うが、ヨルさん…グリムの仇討ちに行ったんじゃ……』

「えっ……?」

 

瞬間、ロイドの脳裏に嫌な光景が浮かんできた。

妻のヨルがかわいい後輩の仇を討つために敵に向かっていく姿……そして、返り討ちに遭い殺されてしまう姿……

 

『いくらヨルさんが頑丈で強くても、相手がライダーじゃ返り討ちにされるだけだ!早く見つけて止めないと!!』

「わかってる!一度合流しよう、こっちに来てくれ!ユーリ君にも召集をかける!」

『わかった!!フィオナにも声をかけておく!』

 

ロイドからの案に賛同し、フリッドは電話を切った。ツー、ツーと電話が切れる音が鳴り、ロイドは受話器を戻した。

 

(……ヨルさん、早まらないでくれ……!!あなたがグリムを一番可愛がっていたのは誰でも分かる!でも……今のあなたは俺の妻で、アーニャとシエルの母親なんだ!!あなたがいなくなったら、俺は……!!)

「俺達は……!!」

 

ロイドの目には涙が浮かんでいた。もしヨルが死んでしまったら……そう思うと、いてもたってもいられなくなってくる。

すると、そんな気持ちを吹き飛ばすかのように電話がかかってきた。

 

「なんだ……?もしもし?」

 

ロイドは電話に出た。その電話はバーリント総合病院からだった。

 

「ああ、どうも。どうしました?……えっ!?」

 

ロイドは途端に声を上げた。病院から伝られた情報は、何とも信じられないことだった。それは……

 

「グリムが……病院から消えた……!?」

 

────────────────────────

 

「ハァッ!!」

「ヤァッ!!」

 

そのころ元前線基地では戦闘が繰り広げられていた。

ファイズはファイズエッジを、サイガはトンファーエッジをぶつけ合い火花を散らした。

 

「シィィィッ!!」

 

少し離れたところでは、ヨルがスティレットで4号に攻撃を繰り出していた。

ヨルの攻撃は強力無比。しかし、それは人間相手ならの話。

 

「フッ、かわいい攻撃だなぁ?」

 

4号は次々とかわし、ヨルの脇に腕を通し拘束した。

 

「それに、中々の美人だなぁ……とても二児の母とは思えん体つきだ……」

「ぁぐっ!?」

 

ヨルは小さい悲鳴を上げた。4号はヨルを拘束したとともに、ヨルの大きな胸を鷲掴みしたのだ。

 

「もったいないなぁ……」

「くっ……!!」

 

後輩の仇であり憎むべき敵である4号に体を触られ、ヨルは悔しさと恥ずかしさで歯ぎしりを立てた。そして、ヨルは4号の片足にスティレットを突き刺した。

 

「うっ!?」

 

突然の痛みに4号はうめき声を上げた。その隙にヨルは4号を蹴り飛ばして離れた。さらにそこに、オートバジンが現れ、4号から離れたヨルを回収すると同時にタイヤ型のガトリング砲を乱射した。

 

「チイッ!!」

 

4号は走りながら銃弾を避けていく。オートバジンは地面に着地し、ヨルをおろした。

 

「ありがとうございます、バジンさん!」

「チッ……」

 

ヨルがオートバジンに礼を言う中、4号は足に刺さったスティレットを引き抜き、乱暴に投げ捨てた。

 

「気に入らないなぁ……俺はバラが大キライだ。バラは花のクセにトゲがある……花は無抵抗だから美しいんだ。だが、バラはトゲで抵抗してくる!お前も同じだなぁ!!」

 

ヨルの一撃が逆鱗に触れたのか、4号は拳を握りながらヨルに向かって突進してきた。

 

「!!」

 

ヨルは咄嗟に身構えた。しかし、それよりも速くオートバジンがヨルを守るため立ち塞がった。だが……

 

「邪魔だガラクタがッ!!」

 

オートバジンがガトリング砲を撃つよりも先に、4号は拳でガトリング砲を弾き飛ばし、さらに回し蹴りでオートバジンを蹴り飛ばした。

 

「バジンさんッ!!」

「ウォルァァァァッ!!」

 

ヨルがオートバジンのことを気遣った隙を突き、4号はヨルの腹に拳を叩きつけた。

 

「がふっ……!!」

 

ヨルの体は地面に跳ねながら吹き飛び、転がっていった。

 

「女の分際で、俺の体に傷をつけた罰だ……死ね。」

「ゲホッ……!!ゲホッ……!!」

 

拳を腹に食らって、痛みと吐き気を覚えながらも、ヨルはなんとか立ちあがった。それをよそに、4号は両足を開いて右足に力を込め始めた。

 

「ハアァァァ……!!」

(ッ!マズイッ!!)

 

その時だった。ヨルが4号のライダーキックを食らってしまうと思ったファイズは、サイガを殴り飛ばし左腕につけた「ファイズアクセル」のメモリをベルトに装填した。

 

《Complete.》

 

ベルトの音声とともにファイズの胸の装甲が展開し、同時に体に走るラインが赤から灰色に、目も黄色から赤に変わり、「アクセルフォーム」へと姿を変えた。

 

「トオッ!!」

 

その間に、4号は空高く跳び上がり、

 

「ライダーキーーーック!!」

 

足に緑色のオーラを纏いながら必殺の蹴りを繰り出した。

 

《Start Up.》

 

それと同時に、ファイズは「ファイズアクセル」のボタンを押した。画面に表示された「10」の数字が減り、カウントダウンが始まった。

 

(間に合え!!)

 

「ファイズアクセル」の力でファイズは高速で動けるようになり、周りの動きが遅く感じる。ファイズはヨルの傍まで行くと、4号のキックがもう間近まで近づいていた。

 

《3...2...1...》

 

ファイズはヨルをタックルで突き飛ばし、4号から引き離した。

しかし、

 

《Time Out.》

 

そこで10秒のカウントダウンは終わり、同時にファイズはヨルの代わりに4号のキックを食らい、吹き飛ばされた。

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁっ!!」

「タクミさん!!?」

 

吹き飛ばされたと同時にベルトが外れ、ファイズの変身は解除され、巧は地面に転がった。ヨルは咄嗟にベルトを回収し、巧の元に駆け寄った。

 

「タクミさんッ!!大丈夫ですか!?」

「ああ……!そんなに……!ヤワじゃねぇからな……!!」

 

巧はふらつきながらも立ち上がり、まだ戦おうと4号とサイガを睨みつけた。すると、4号は急に笑い始めた。

 

「クックックッ……仮面ライダーともあろう男が、殺し屋を助けるとはなぁ……」

「殺し屋……」

 

巧はチラリとヨルの方を見た。ヨルはバツが悪そうな顔で俯いていた。

 

「かつては『ガーデン』最強の殺し屋と謳われたいばら姫……それがそこにいるヨルという女だ。言ってしまえば……クズだな。」

「本当だよねぇ♪」

 

4号の言葉に同調するように、サイガが会話に乱入してきた。

 

「しかもクズの癖に家庭持って幸せこよしやってるとか、あり得なくない?マジキモいんですけど!」

 

二人からの心無い言葉にヨルはますます俯いていく。しかし、

 

「人殺し、か……俺とそう変わんねぇじゃねぇか。」

「あぁ?」

 

その時だった。巧の顔に半透明の模様が浮かび上がった。

 

「……うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

巧は途端に雄叫びを上げた。すると、巧の姿が変化を始めた。灰色の尻尾、灰色の両足、灰色の体に狼のような頭……巧は灰色の狼の姿をした怪物に姿を変えた。

 

「ウソ……!タクミさんが……!!」

「お、お兄ちゃん……!これって……!」

「ショッカーの研究資料にあった……”オルフェノク”という怪物か……!」

 

巧が怪物に姿を変えたのを見て、3人は驚きを隠せなかった。それをよそに、巧はゆっくりと口を開いた。

 

「そうだ。俺はオルフェノクだ。そして……俺はオルフェノクでありながら、ファイズになって同じオルフェノクを葬ってきた。」

「!!」

 

巧のその言葉にヨルはさらに驚き、自分で自分の口を抑えた。

 

「……最初は迷った。オルフェノクも人間と同じく精一杯生きようとしてた。でも……迷ってる内に人間は殺されていく。だったら俺は、戦うことの罪を背負うことに決めた。だから俺はファイズとして戦い続ける。」

 

巧の語りを、4号とサイガは黙って聞いていた。

 

「その点じゃ、ヨルだって同じはずだ。こいつには大事な家族がいる。きっと殺し屋をしてきたのは家族のためなんだろ?俺はこいつらと過ごして日は浅いけどよ……お前らが分かったような口を聞くな!!」

「なんだと……?」

「お前らにヨルを笑う資格なんかねぇんだよ!笑いながらフランキーをボコボコにして、ニコルを殺して、グリムを嘲笑ってたお前らに、ヨルとグリムを笑う資格なんかねぇ!!」

 

巧は叫びながら二人に向かって指を指した。

 

「お前ら二人や口だけで叩く奴らに比べたら、ヨルとグリムの方がよっぽど筋の通った生き方してるぜ!!」

 

指を指した手で拳を握りながら、巧は叫んだ。巧のその叫びに、ヨルは目頭が熱くなるのを覚えた。対し、4号とサイガの方は冷めきっていた。

 

「チッ……くだらん……」

「お兄ちゃん、こいつ、もう殺っちゃおうか?ババァ諸共さぁ!」

「そうだな……やれ。」

「はーいっ♪」

 

4号が命令すると、サイガは嬉々としてトンファーエッジを構え、二人に向かって突進していった。

巧は迎え撃とうと身構え、同じく駆け出した。ヨルも巧だけに苦しみを味合わせはしないと、武器を持って身構えた。

だが、その時だった。サイガと巧の攻撃がぶつかり合おうとした、まさにその瞬間……

 

「なっ……!?」

「あっ……?」

 

闇を切り裂き、光をもたらす救世主が現れた。

 

「な、なんだ……お前らは!?」

 

4号は声を上げた。サイガと巧の攻撃がぶつかり合おうとした瞬間、そこに現れたのは、灰色の人馬姿の馬の怪人と同じく灰色の獅子の姿をした怪人だった。

 

「お前……!そんな……お前は……」

 

目の前に現れた怪人二人は間違いなく巧と同じオルフェノクだった。巧はその内の一人、馬のオルフェノクを見てわなわなと震え、思わず人間の姿に戻った。

すると、それと同時に二人のオルフェノクも人間の姿になった。それを見て、ヨルは目を見開いた。

 

「木……場……!木場……!!」

「久しぶりだね、乾君。」

「グリムくん……!?本当に……!?」

「ああ……待たせてごめんな。」

 

目の前にいたのは、紛れもなく、巧とヨルにとって大切な人だった。かつては敵であり、友だった木場勇治、そして……ヨルが4号に仇討ちをする引き金となった存在で、かわいい後輩……植物状態になってしまったはずの少年……グリム。

 

「お前ら、一体どうして……!?」

「俺は、このキバさんに助けられたんだ。その代わり、一回死んで、オルフェノクになったけどな。」

「君を助けるには、これしかないと思ったんだ……一か八かの賭けだったけどね。」

 

グリムが木場の顔を見ると、木場は苦笑いを浮かべていた。そんな中、巧は動揺しながら木場に尋ねた。

 

「グリムが助かったのはいいけど……木場!お前、お前はいったいどうやって……!?」

「話は後だよ。」

 

質問を投げかけてくる巧の口を塞ぎ、木場は4号とサイガの方に顔を向けた。同じく他の3人も同じ方を向いた。

 

「っと……そうだったな。」

「たっぷり仕返ししてやるぜ!!」

 

4人は4号を睨みながら、巧と木場はベルトを巻いた。と、その時4号は急に笑い始めた。

 

「クハハハ……!グラハム……!お前はもう変身できない!オルフェノクになったということは、アギトではなくなった!つまりお前は、もう仮面ライダーにはなれないということだ!!」

 

勝ち誇ったように4号は叫んだ。4号の言う通り、アギトではなくなったグリムはもうルデスには変身できない。しかし……

 

「ああ、そうだな。確かに『ルデス』には変身できねぇな。」

 

そう言って取り出したのは、アタッシュケース。グリムはその中から一つのベルトを取り出した。

 

「そ、そのベルトは……!!」

 

4号が驚く中、グリムはベルトを巻き、アタッチメントを装着していく。

 

「カイザのベルトだと!?」

 

グリムが巻いたのは、あの時破壊したはずのカイザのベルトだった。

 

「バカな……!一体誰が直したんだ……!?」

 

驚く4号だが、すぐさまフンッと鼻息を鳴らした。

 

「だが、そいつは貴様に扱える代物じゃ……?」

 

途端に言葉が止まった。グリムはベルトの次に妙なものを出した。それは、仮面ライダー3号…ニコルが残したマスクだった。

グリムはスッとそれを前に突き出した。

 

「……こいつの中にはデータが入ってた。このベルトの使い方や、カイザの戦い方……その他諸々な。それから……ここ。」

 

グリムはマスクの額にあるOシグナルを指さした。

 

「ここにカメラが仕掛けられてやがった。このカメラを通して……ニコルはお前ら三兄妹をずっと記録してたんだ!!」

「えっ!?」

「なんだとっ!!?」

「動き、戦い方、ちょっとした仕草や癖まで……全部記録されてるぜ!!」

 

4号は明らかに動揺を見せていた。全ての動きが記録されているということはこちらの戦法が筒抜けなのと同じだからだ。

すると、グリムはマスクをギュッと握りしめ、下におろした。

 

「……俺は、親父のことを何にも理解してなかった。こんなものを遺してくれたのに……それに気づかないで俺は勝手に突っ走って……!本当にバカだ……!!でも、今度は違う!!俺は、あの人が…親父が遺した意思を守るッ!!」

 

グリムはそっと地面にマスクを置くと、カイザフォンを開いて「9.1.3」の順でボタンを押した。

 

《Standing by,..》

 

電子音とともに、グリムはカイザフォンを閉じ、構えた。

満月の光を背に、今こそ少年は、金色に輝く。

 

「俺は、ニコラス・ハワードの息子!グリム・ハワードだッ!!」

 

生まれ変わった自身の名を名乗り、カイザフォンを天に掲げた。

同時に巧と木場も同じく構えた。

 

『変身ッ!!!』

 

《Complete.》

 

3人は同時に叫び、携帯をベルトに装填して変身した。

木場は全身黒に金色のラインが走った、腰にローブを持つオーガに、巧は黒い体に赤のラインが入ったファイズに、そして、グリムは金色の光のラインが入り、Xの意匠が入ったカイザへと変身を遂げた。

 

「お前らの全部を否定して……俺達が勝つ!!」

「死にぞこないが……!!」

 

いよいよ、約17年にも及ぶデズモンドの名の呪縛に決着がつこうとしていた……!

 

 




おまけ「今と昔」

昔のグリム
「クハハハハハハハッ!!いい顔すんじゃねぇかよ!!やっぱクズの泣き顔は最ッ高だなぁ!!」

今のグリム
「あの人の……ヨル先輩のために命を使って、死ぬ。それが俺の夢だ。」

昔のフリッド
「いいさ……なら、この命が尽きるその時まで、戦って死んでやる。それが……化け物にはお似合いの死に様だ。」

今のフリッド
「ダミア〜〜〜ン♡フィオナ〜〜〜♡しゅきしゅき〜〜〜♡♡♡」

「……1年で変わりすぎだな、俺達。」
「特にフリッドのオッサンはな……」

───────────────────

一周年ということでオリキャラ二人の今と昔を比べて見ました。

謎の男の正体は木場さんでした!……って、もう勘づいた方はいるでしょうが……

最初は木場さんを出す予定はなかったのですが、「パラダイスリゲインド」の予告を見た時、「面白そうだなぁ!でも……木場さんは出てこないんだよなぁ……泉さんはもういないんだなぁ……」と悲しくなったので、せめてもの供養……ではありませんが、二次創作でも二人が再会できるようにと願いを込め、登場させました!

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