許せない敵がいる。自分達の大切な人達を傷つけただけでなく、身内さえも平気で殺す悪魔のような男が今、目の前にいる。
「俺に何の非がある?俺は自分の思う通りに生きているだけだ!包み隠さず生きているんだ!俺以上に人間らしい人間はいない!」
「黙れ……!!」
減らず口を叩くカトルに、カイザは冷たい声で言い放った。それに続くようにオーガが口を開いた。
「君はもう喋るな……」
「あなたは売国糞野郎以下の、下衆の極みですッ!!」
オーガに続き、ヨルがカトルを罵倒した。そしてそれに続いてファイズが叫んだ。
「いくぞ、お前ら……!!」
「ふんっ……!雑魚が束になろうと、俺には勝てないっ!!」
カトルは銃火器を構えながら空へ飛翔した。そして銃口を4人に向けて一気に乱射した。
ファイズとオーガは咄嗟に横に動いてよけ、カイザはヨルを抱きかかえながらカイザブレイガンをカトルに向け、銃弾を放つ。
それに続くように、ファイズとオーガはベルトのケータイを取り外し、「1、0、6」のボタンを押し、ENTERを押した。
《Burst Mode.》
音声とともにケータイを銃に変形させ、カトルに向けて発射した。
カトルはその攻撃をよけ、4人に向けて突っ込んできた。
「この……!!オラァッ!!」
その時、カイザは抱きかかえていたヨルを降ろすと、突っ込んできたカトルに飛びかかり、その体にしがみついた。
「オラッ!!」
「この、落ちこぼれがッ!!」
しがみついた状態でカトルを殴りつけるカイザ。負けじとカトルも片手でフライングアタッカーを操縦しながら、もう片方の手でカイザを殴りつける。
「飛んでいけぇ!!」
さらにカトルは上空に向かってカイザを投げ飛ばした。空中ならばよける手段はないと、ニヤリと笑いながら銃口を向けた。
しかし、カイザは空中できりもみ回転しながら体制を整え、カイザブレイガンの銃口をカトルに向けた。そして、カイザブレイガンの後部グリップを引いた。
《Exceed Charge.》
音声とともに銃口から黄色いマーカーが放たれ、カトルを拘束した。
「何っ!?」
「ハアァァァァァァァァァッ!!」
カトルの捕縛と同時に、カイザはその体を金色の閃光に包み、落下と同時にカトルに向かって突進した。
「デヤァァァァァァッ!!」
そして、すれ違い様にカトルをX字に切り裂いた。
「ぬあぁぁぁぁぁぁっ!!」
カトルは断末魔を上げながら落下し、地面に直撃した。対し、カイザは綺麗に着地した。
「やったのか!?」
「いや、まだだ!攻撃が浅かった……!」
カイザの言葉とともにカトルは起き上がってきた。それを見てカイザ達は武器を構え直した。
カトルは4号のアーマーのおかけで無事だったようで、胸にX字の傷が入っていた。しかし、さすがにダメージがあったのかフライングアタッカーが半壊していた。
ここぞとばかりに、4人は武器を構えて突っ込んでいった。
「お……俺が……負けるわけがないんだーーーーっ!!!」
その時、カトルは半狂乱になって叫び、銃を乱射した。4人は咄嗟に武器で防いだが、銃弾によって武器が弾かれ、上空に舞い上がった。
しかし、4人はその場で跳び上がり、手近にある武器を手に取った。
ファイズエッジはヨルの手に、カイザブレイガンはファイズの手に、ヨルのスティレットはオーガの手に、オーガストランザーはカイザの手に渡った。
『ハッ!』
4人は試し振りとばかりに手にした武器を振り回し、構えた。そして、一斉にカトルに向かって突進した。
「ハァッ!!」
「ハイヤッ!!」
「ダァッ!!」
「ドリャアッ!!」
4人は四方からカトルを挟み込み、武器による乱撃をカトルに浴びせていく。さらに最後の一撃に全員一斉に武器で一閃する。
「ぐっ……がぁぁぁぁぁぁ!!」
4人に攻撃を食らい、カトルは後方へ吹き飛び、地面に倒れた。
倒れたカトルを睨みながら、4人は武器を放り投げ、互いの武器を交換した。
「決めるぞ!」
「ああっ!トドメは、君が決めるんだ……グリム君っ!!」
「おうよっ!」
最後のトドメをカイザに任せ、ファイズとオーガは共に前に出た。その間、カイザはベルトにマウントされたカイザポインターを取り外し、メモリを装填しようとした。その時、ヨルがカイザの手を取った。
「先輩……?」
「私も…一緒にいってもいいですか?」
ヨルのその言葉に、グリムはカイザの仮面の下で目を見開いていた。すると、ヨルはニコッと笑って手を握ってきた。
「あの男を倒して初めて、グリムくんの本当の人生が始まります。新しい人生の1年目……一緒に刻ませてください。」
「……ありがとう。」
カイザは優しく言ってくれたヨルにお礼を言いながら、手を握り返した。
そんな二人をよそに、ファイズとオーガは武器を手にだんだんとカトルに近づいていった。その足はだんだんと速くなり、二人は駆け出した。
「くっ……!ライダーパァァァンチッ!!」
カトルは拳に力を込め、思い切り拳を突き出した。しかし、二人はその攻撃をよけ、カトルの腹に武器を押し付けた。
《Exceed Charge.》
押し付けたと同時にベルトのENTERを押し、二人の体から光が走り、その光は武器へと集中していった。
「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!?」
「どけ……!あの二人が歩く道だっ!!」
「決めろ……グリム君っ!!」
カトルに必殺の一撃を叩き込みながら、二人は叫びカトルを切り裂いた。そして、それに応えるようにカイザはポインターを右足に装着した。
《Ready.》
「……なぁ、ヨル先輩。」
「ん?」
「……今まで、ありがとう。」
ポインターを装着してすぐ、カイザはヨルに礼を言い始めた。
「泣いていた俺を、アンタは優しく受け入れてくれた。俺のクソみたいな日々を…アンタが終わらせてくれた。目の前に染みついた霧を、アンタが晴らしてくれたんだ。だから……ありがとう。」
自分の人生を変えてくれたのは、間違いなくヨルだった。そんなヨルに対してグリムは礼を言った。新しい人生が始めるために、これだけは言わなければいけないと思ったのだ。
すると、ヨルはいつものように笑った。
「私も……グリムくんの、あなたの手を取ってよかったと思ってます。グリムくんに会えてよかった……」
「俺もだ……」
《Exceed Charge.》
ヨルと手をつなぎ、カイザはベルトのENTERを押した。その瞬間、体に閃光が走り、足を通ってポインターに集中した。
「行こうぜ、ヨルッ!!」
「はいっ!!」
カイザはヨルを抱きかかえながら空中に跳び上がり、ポインターをカトルに向けた。ポインターからマーカーが放たれ、同時に金色の円錐状のエフェクトが現れ、カトルを捉えた。
「ッ!!」
「トアァァァァァァァァァッ!!!」
「ハアァァァァァァァァァッ!!!」
叫び声を上げ、カイザとヨルは二人同時に飛び蹴りを繰り出し、円錐状のエフェクトを纏った。
「ライダーパンチッ!!!」
その時、カトルは最後の力を振り絞って渾身のパンチを繰り出した。しかし……そんなものは無駄だった。繋いだ手を離さない二人に敵う敵などいない。
グリムの新しい人生を刻むために、その手伝いをするために、二人は今、この夜に駆け出していく。
「お、押されてるだと……!?俺が……こんな落ちこぼれに……!!グラハムなんかにィィィィィィッ!!」
「違います!!この子はそんな名前じゃありません!!」
「そうだ!言ったはずだ、俺の名前は……!!」
『グリム・ハワード!!』
二人の声が重なった瞬間、二人の必殺の蹴りがカトルのパンチを弾き飛ばし、そのままカトルの体を貫いた。
「バ……バカ、な……!!グオァァァァァァァァァッ!!!」
断末魔の叫び声を上げ、とうとうカトルは、最低の悪人は爆発し消滅していった。
「やった……今度こそ……」
カトルは塵一つ残ることなく消滅した。これで自分の戦いが終わった、と思いながらグリムは変身を解いて元の姿に戻った。巧と木場も同じく変身を解いた。
「グリムくんっ!!」
「おっ、ヨル……うぼっ!!?」
変身が解かれ、ヨルはグリムを抱きしめようした…かと思いきや、ヨルは平手で思い切りグリムの顔面を殴った。
『えっ!!?』
あまりに突然のことに巧と木場は驚いて声を上げた。グリムは勢いよく殴られた勢いで地面に激しく転がった。
「イテテテ……!!い、今までで一番イテェ……!!」
「グリムくんの……バカァ!!」
地面に転がったグリムを、ヨルは無理やり抱き起こし、耳元で叫んだ。その目には涙が滲んでいた。
「みんなに心配かけて……!みんなを泣かせて……!!もうバカなことしないでください!!」
「ご……ごめん……」
「うっ……ううっ……!」
その時、ヨルの目に滲んだ涙がこぼれた……かと思いきや一気に涙が流れ始めた。
「よかった……!グリムくんが生きてて……ホントによかったです〜〜〜〜っ!!びぇぇぇぇぇぇ……!!」
ヨルは子どものように泣きじゃくり始めた。グリムが生きていたことが、心の底から嬉しかったのだ。
「……何泣いてんだよ……情けねぇじゃん……恥ずかしいじゃん……う、うっ……うわぁぁぁぁぁぁ……!!」
そんなヨルを見て、グリムも感極まって泣き出した。グリムも同様に、自分が生きていたことに泣いて喜んでくれたことが嬉しかったのだ。
「ぶぇぇぇぇぇぇぇ……!!」
「うがぁぁぁぁぁぁ……!!」
それから二人は抱き合いながら泣き喚き続けた……
滝のように涙を流し、鼻水を垂らし、これ以上泣けないというくらい泣きじゃくった……
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「……ったく、あんだけ騒いで、すぐに寝やがった。」
「フフッ、かわいいじゃないか。」
あれから30分ほど泣き続けた二人は、電池が切れたように、泣き疲れて寝てしまった。
寝てしまった二人をオートバジンに担がせて、巧は呆れてため息を吐き、木場が微笑ましく思っているのか笑っていた。
「……なぁ、木場。聞いていいか?」
「……うん。」
巧は木場に質問をしてきた。木場は質問の内容が分かっていたのか、快く承諾した。
「お前……どうやって生き返った?」
「生き返ってないよ。僕は、あの時から死んだままだよ。」
巧は足を止めた。表情こそ変えていないが、巧は明らかに動揺していた。
その昔、巧と木場は味方同士であり、敵同士でもあった。お互いに死力を尽くして戦った。そして最後の最後……木場は身を挺して巧を助け、その命を散らした……木場の言葉通り、木場勇治という男はとっくの昔に死んだはずだった。しかし、今目の前にいる…
「あの時、確かに僕は死んだ……でも、魂だけは色んな世界を彷徨っていたんだ。」
木場は足を止め、自分がこの世界にいる理由を話し始めた。
「この世界に来たのはまったくの偶然。でも、その時……同じくこの世界に迷い込んだ君を見つけた。」
そう言うと木場はニコッと笑い、話を続けた。
「それから、僕はしばらく君達の行動を見守ってきた。そしたら…声が聞こえてきたんだ。」
「声……?」
「うん。聞いたことない人の声だったけど、その人はツガミっていってた。その人は僕に言ったんだ。」
『グリムを助けてください!今の俺の力じゃ、そっちに完全に介入できない……!だからお願いします!!グリムを助けてください!!』
「……そう言ってたんだ。だから僕は、最後の力を振り絞ってこの世界に現れた。なんとか変身もできるようにした……けど、もう時間切れみたいだ。」
木場はそう言い終えたと同時に体が透明に透け始めた。
「っ!木場……!!」
巧はそれを見て声を上げそうになったが、木場はシーッと言うように人差し指を立てた。
「大きな声を出さないで。二人が起きるよ。」
木場はオートバジンに担がれ眠っているグリムとヨルに視線を移した。
「二人は優しい人だから……きっと真実を知ったら、自分のせいだと思っちゃうかもだから……」
「……っ!!」
巧は言葉を飲んだ。木場の言う通り、真実を二人に伝えてしまったら、二人は悲しみ、また涙を流すかもしれない……巧はそう思った。
そんなことを考えている内に、木場の体はどんどん透明になり、消え始めていた。
消えていく仲間に、何か言わなければと、巧は焦った。しかし焦っているせいで言葉が出なかった。
そんな二人を見て、木場はフッと笑った。
「大丈夫だよ、何も言わなくて。ただ……お願いがあるんだ。」
「……なんだ?」
木場はまたフッと笑った。しかし笑った木場の目は潤み、その口から出る声は震えていた。
木場もまた、悲しいのだ。また仲間と別れてしまうことに。だが、それでも言葉を振り絞った。
「グリム君に伝えて欲しいことがあるんだ。『オルフェノクになっても、決して絶望しないでほしい』って。」
「ああ、わかった……」
「あの子はきっと、僕達オルフェノクの新しい希望になるかもしれない。だから……」
「伝言だろ?任せとけ。」
巧の返答に、木場はコクリと頷いた。そして、さらに言葉を続けた。
「───、───────」
木場から放たれたその言葉に、巧の涙腺は緩んだ。だが巧は泣くのを必死に堪えた。
「────、───────」
そして木場は、最後の言葉を言い終えた……そして、木場は姿を消した……
「ああっ、任せとけ……木場……!」
巧の声も震えていた。だがそれでも、巧は決して泣くことはなかった。
今ここで泣いては、泣かなかった木場の意思を無駄にしてしまう……そう思った。
その気持ちを後押しするように、夜が明け、太陽が登った……
おまけ「始まりを祝って」
「ふぅ……」
木場は一息ついた。木場が来たのは、グリムも訪れた場所……あの世だった。辺り一面花畑で、川が流れている。
「あなたは……」
「ニコラスです。息子が世話になりました……」
そこに現れたのは、グリムの父ニコルだった。ニコルは木場に対して深々と頭を下げた。
「いえ、僕は何もしていません。息子さんが頑張ったんですよ。それより、ごめんなさい……息子さんをオルフェノクにしてしまって……」
木場もニコルに対して申し訳なさそうに頭を下げた。すると、ニコルは首を横に振った。
「いえ、命あっての物種ですよ。それに……あいつなら大丈夫のはずです。いつかきっと、オルフェノクであるグリムを受け入れて愛してくれる人が……いや、もういっぱいいるかな。ハハハッ!」
「あははっ、そうかもしれませんね!」
二人にはもう分かっていた。グリムが怪物になっても、分け隔てなく接してくれる人がたくさんいることを。
すると、ニコルはどこからかグラス2つと酒を取り出した。
「酒はイケる口ですか?」
「はい……もちろん。祝いましょう、息子さんの門出を。」
二人はその場に座り込み、酒の入ったグラスを片手に乾杯した。グリムの新たな始まりを祝って……
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次回、Episode:G最終回……まさかフリッド編よりも長くなるとは……
みなさん……木場さんを忘れないでね……
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忘れるわけないだろバカ!!
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もちろんです。
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思い出すと辛いので忘れます……