ヒスイにいたボクへ、パルデアにいるオレより   作:逸環

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10話:騒ぎの次の日

「ああ……そうか、そうか」

 

「分かっていたんだ。やっちゃいけない事は、やっちゃいけないんだと」

 

「それでも……それでも……。僅かでか細く、何万の人に、千年先まで迷惑をかけようとも……」

 

 

 

「だから、ありがとう。オレを止めてくれて」

 

 

 

 

「……頭いてえ」

 

頭の悪い表現だが、頭痛が痛い。

目が覚めて早々に最悪の気分で、最悪の目覚めだ。

昨日は完全に飲み過ぎたな……。

記憶を無くしたり、我を忘れるほどは飲んでいないとはいえ、それでもしっかりとアルコールはオレの体にダメージを与えている様だ。

しかもあんな話をしたのと、酒のせいで眠りが浅くなったせいか、またあの日の事を夢に見てしまったらしい。

とりあえず職員寮まで戻ってきて、かつレホール先生を彼女の部屋に放り込む所まで完遂した自分を褒めておこう。

 

ただ、気分は本当に最悪だ。

 

一先ず水を飲もう。

それから缶詰のフルーツが床下収納にあったはずだから、それを食べよう。

二日酔いを醒ますには、大量の水分と糖分が必要だ。

蛇口をひねり、コップではなく手で水を受けてガブガブと飲む。

ついでにそのまま頭から水をかぶり、顔も洗って目を覚ます。

タオルで拭っても、ポタポタと髪から雫が垂れ、床を濡らした。

気怠さに身を任せ、洗面台に軽くもたれながらそれを眺める。

 

「……なにがありがとうだ」

 

そんなことを言うくらいなら、最初からやるんじゃない。

口から出た言葉は、我ながら辛気臭いものだった。

 

 

 

 

さて、二日酔いから回復したところで、今日は完全にオフだ。

ぶっちゃけ午前中は二日酔いの回復に費やしたので、残り半日だがどうしたものか。

観光……という気分ではないな。

なんなら家から出たくないくらいだ。

テント生活が主だったオレにしては、中々に珍しい事だが。

 

「そういえば、生徒たちがなんか有名な動画配信者がいるとか言ってたな」

 

思い出したところで、即行動。

ベッドに寝転がり、スマホロトムで動画を観る。

確か名前は、ナンジャモだったか?

生徒が見せてくれた画面には、可愛い系の女子が映っていた記憶があるが……。

 

……おお、これポケモンバトルの動画か。

何者なんじゃ?ナンジャモです!ってのは、キャッチーで覚えやすいし、良いなこれ。

パクって今度の講義の枕にするか。

おはこんハロチャオ~ってのも良いな。これも使おう。

そして頭のコイルたちはいったい……?これに関しては謎だ……。

とりあえず、動画の高評価とチャンネル登録をポチッとな。

 

……ん?

 

「こいつ、ジムリーダーかよ!?」

 

動画配信者がジムリーダー!?マジか!?

今時専業でジムリーダーやってる人も少ないけど、それでも動画配信者がってすげぇな!?

パルデア地方、恐るべし……。

このナンジャモって奴、シンオウ地方に連れてってコンテストに参加させても面白そうだな。

……いや、違うな。シンオウ地方のコンテストより、ホウエン地方のコンテストって感じだな。

 

うっお、ハラバリー初めて見たけど、中々に面白いなこのポケモン。

調べてみるか……。

……へえ?とくせいの『でんきにかえる』ってのが面白いな。

攻撃を受けるとじゅうでん状態になる、か。

ただ鈍足そうだから、そこをどう補うかが課題……?

いや、それよりも防御性能を磨く方がモノになるか?たぶんそうだろうな。

相手の攻撃を受けて、耐えて、倍返しにするのがベストになりそうな気はする。

……おぉ?何々?

 

「……頭のコレ、目じゃないの!?」

 

ひぇー……マジか。

これ目じゃなくて、コブなのか……。

目を大きく見せるための、一種の威嚇か?

なおさら面白いな。

オレも捕まえてみたいところだ。

 

さて、動画の続きだ。

うん?ムウマージ?でんきタイプのジムリーダーがか?

……シンオウ地方も他所の地方の事は言えなかったな。

だけど、最後のエースが別タイプってのは、流石になかったが……ああ、なるほど。テラスタルでタイプをでんきに変えるのか。

ムウマージのとくせいはふゆうだから、じめんタイプのわざは効かなくなる。加えてでんきタイプの弱点はじめんタイプのみ。

なるほど、上手いな。流石ジムリーダーってところか。

こうなるとハッコウジムに挑戦する時には、タイプ相性の理解だけじゃなくて純粋な地力が求められるな。

多少の地力の不足はタイプ相性で覆せるが、弱点がないならそうもいかん。

 

「面白えな、テラスタル……」

 

とりあえず一戦を観終わった所で、ベッドから出て再びキッチンへ。

良い時間だし、遅い昼食を作ろう。

肉と少しの野菜、ヌードルをソースで炒める。

……おぉ、ソースの香ばしい匂い。堪らねえな。

できたなんちゃって焼きそばを、パンに挟めばパルデア地方名物のサンドウィッチの完成だ。

……サンドウィッチ?これ焼きそばパン……いや、ここはパルデア地方だから、焼きそばを挟んだサンドウィッチだと強弁していこう。

たぶんサワロ先生あたりなら、苦笑いしながら賛同してくれるはずだ。

 

「そして我ながら普通に美味いな」

 

肉を少し多め、野菜は少な目にしたのが正解だな。

野菜の水分が麺をべしゃッとさせるから、こうした方が美味いとは思う。

そこに肉の脂の旨味。これだよこれ。

今日はオフだから、昼から酒も飲んじゃう。

缶ビールが冷蔵庫に……あったあった。

 

「昼酒美味ぇー……」

 

自分がダメになっていく感覚ぅー……。

昼間から酒を飲む背徳感ー……。堪らねぇー……。

久しぶりに電子タバコじゃなくて、普通のタバコ吸っちゃお……そうだ買ってなかったわ。

仕方ない。電子タバコで良いか。

そうして蒸気をプカプカさせながら、ボーっと天井を見上げる。

 

「……厄災ポケモンを解放し、管理下に置く……ねぇ?」

 

思い出すのは、昨日のレホール先生の提案。

現代と比べてまだまだ国家規模が小さい時代に、4体で国を滅ぼしたポケモンたち。

それに対して、単体で世界を滅ぼしかねなかったパルキアやムゲンダイナの捕獲例。

しかも厄災ポケモンが暴れた時代は、今と違いモンスターボールが存在せず、ポケモントレーナーたちもおらず、極々一部のポケモン使いしかいなかった頃だ。

単純な戦力差で言えば、現代の方が遥かに上になってしまう。

そこを比較してしまえば、そりゃあ厄災ポケモン程度(・・)というスケール感にはなってしまう。

油断はできないとはいえ、勝てない相手じゃないし、捕まえられない相手という事もないだろう。

 

「……捕獲となると、あくびやさいみんじゅつ、ねむりごなが使える人材が欲しいな」

 

倒すだけならば簡単な話だ。

だが、倒しきってしまえば捕獲はできない。

……いや、逆に一度倒してしまうか?

現状、相手がどの様な存在なのか、断片的な情報しかない。

となれば一度強引に倒してしまって、情報を集めてから二度目で確実に捕まえるのもアリだろう。

後は夜を狙ってダークボールってのも正道だな。

使えるネタはリストアップして、レホール先生にメールで送っておこう。

そこから企画書にするのは任せた。

 

さて、なんでオフにほぼ仕事に近い事を考えてしまったのかという悲しみからは目を背けて、次は何をしようか。

これ以上飲むのは二日酔いの翌日という事を考えて、まあ避けた方が良いな。

オレは失敗から学べる男だ。

そーうーなーるーとー……?

 

驚くほど酒を飲む以外思いつかねえ……ッッ!!

 

嘘だろ……!?え……!?嘘……!?

い、いや、待て!待て!オレなら大丈夫……!ここから滅茶苦茶良い案が思いつくはず……!

一応酒を飲んだ後だから、できれば外へ出ないで家の中で完結しつつ、それでいて仕事に関わらない休日の過ごし方……!

 

「……あ」

 

1つ、思いついた。

……でもなぁ、ちょっとこれはなぁ。

恥ずかしいと言うか、なんと言うか……。

まあでも、こういう時くらいしかそういう事しようとは思わないし……。

 

スマホロトムのアドレス帳から、目当ての名前を探す。

……なんかちょっと緊張するな。

特に緊張する理由もないんだけどな。

 

「えいっと」

 

通話ボタンをポチッとな。

ロトロトロト……という声が少しの間続き、そして消える。

 

「……ああ、姐さん?うん、うん。久しぶり。今大丈夫?おお、良かった良かった。……え?急にどうしたって?いやさ」

 

 

 

 

 

「────ちょっと声が聞きたくなってさ」

 

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