ヒスイにいたボクへ、パルデアにいるオレより   作:逸環

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11話:条件

「あれ?エゾマ先生だ。こんにちはー!」

「ああ、ネモさんです?はい、こんにちはー」

 

クラベル校長に呼ばれ、アカデミーの校長室へ向かう途中。たまたま通りがかったネモさんに廊下で声をかけられた。

この子、会う度にバトルを挑んで来るからちょっと大変。

っと、どうやら今日はネモさんだけじゃないらしい。隣に見覚えのある子がいるな。

 

「隣の子は……オレの講義を見に来てくれてたね?」

「は、はい!ハルトです!よろしくお願いします!」

「はい、よろしくどうもー」

 

ハルトくんと握手をして、挨拶挨拶。

そういえば、前にネモさんが「今度はハルトも連れてきますね!」って言ってたけど、そのハルトってこの子か。

 

「先生!バトルしてください!今日はハルトも一緒に!」

「よろしくお願いします!」

 

キャッキャとするネモさんと、ペコリとお辞儀をしてお願いしてくるハルトくん。

いやあ、そう頼まれると受けたい所なんだけども……。

 

「残念だけど、今クラベル校長に呼ばれててねぇ……。いつまでかかるか分からないし、今日は無理ですねぇ」

「そんなー……」

「しょうがないよ、ネモ。先生も忙しいんだから」

 

分かりやすくしょげるネモさんと、その背中をヨシヨシとさするハルトくん。

うむ、良いコンビだなこの2人。

ふーむ、しかし折角の申し出を断りっぱなしってのも、なんとも心苦しいところがある。

 

「次の講義の後なら、時間が取れますよ?」

「「その時にお願いします!!」」

「おおう、勢いが凄い。オーケー、それじゃあ次の講義の後に。……そういえば、2人のジムバッジの数は?」

「私が6個で」

「僕が4個です!」

「滅茶苦茶優秀だな2人共……」

 

オレがこの位の歳の頃って、まだ姐さんの所で修行しててジムに挑戦とかしてなかったんだけどな……。確か……そのはず……。

流石に10年以上前の事は、それなりにうろ覚えだけども。

おっと、いけない。話し込んでしまったな。

 

「じゃあ、オレはこの辺で。またー」

「はーい!今度は私が勝ちますね!」

「また今度よろしくお願いしまーす!」

 

手をフリフリ、2人と別れる。

いやあ、この短期間でジムバッジ6個と4個か……。

昨年チャンピオンランクにまでなったというネモさんは分かるけど、ハルトくんも凄えな……。

ジムバッジの個数に合わせてレベル帯を調整してバトルしてるから勝ててるけど、これフリールールになったら今のオレなら負けるんじゃねえかな?

ちょっとオレも特訓しておくかぁ……?でも勝たなきゃいけないわけでもないしな……。

いや……仮にもシロナの内弟子という肩書き持ちだからなオレ……。

やっぱ勝つ努力はしておかないとだわ。

 

「キハダ先生にお願いして、調整相手してもらうか……」

 

クラベル校長との話が終わったら、お願いしに行こう。

お礼は肉を奢る方向で考えておくか。

 

 

 

 

────で、校長室に来たわけなのだが。

 

「あれ、オモダカさん?」

「ああ、どうもエゾマ先生。お久しぶりです」

 

オレンジアカデミーの理事長にして、このパルデア地方のトップチャンピオンのオモダカさんがいるんだけども。

おかしい。オレは時間通りに来たし、ノックしたら普通にクラベル校長が「どうぞ」と言ったんだけどなぁ?

 

「こちらこそお久しぶりです。……オレ、後が良いです?」

「いえ、どうぞお入りください」

「どうぞ、そちらに」

「じゃあ、失礼して」

 

オモダカさんに促され、クラベル校長に勧められるまま椅子に座る。

ふむ、この状況はいったい……。

クラベル校長からの呼び出しだったので、たぶん講義に関してか厄災ポケモンの扱いについての話になると思ってたのだけども……?

 

「今回は私からもエゾマ先生にお話しがあるので、それでクラベル校長に席を用意してもらったのです」

「オモダカさんからも?」

 

まあ、そうじゃなきゃここにいないんだろうけども……。

 

「では、まずは私からお話しましょう。エゾマ先生、レホール先生からお話は聞きました。お2人はこのパルデアの地に封印された厄災ポケモンたちを解放・捕獲し、管理・研究を検討しているとのことですね?」

「ええ、そうですね」

「私の個人的な見解ですが、危険すぎます。封印され、厄災とまでに呼ばれるに至ったポケモンたちを解放するというのは、大きなリスクが発生します」

「その通りです」

「ですが……現状では悪用を企てる人が出て来た場合の危険性が極めて高いのも事実。そこで、レホール先生から提出された企画書を精査し……」

 

あの人もう書いたのか。

よっぽど調査を早くしたかったんだろうな……。

 

「エゾマ先生をリーダーとして、プロジェクトチームを発足する事にしました!」

「オレェッ!?」

 

あれぇ!?リーダーはレホール先生じゃないの!?

オレはあくまでも捕獲要員のつもりだったんだけど!?

 

「レホール先生をリーダーにすると……その……組織としてのブレーキが利かなくなってしまいそうでして……」

「あぁ……」

 

クラベル校長の言葉に、深く、それはもう深く頷いてしまう。

何気にオモダカさんまで繰り返し頷いてるし。

あの人のブレーキが壊れてるのは、ほぼ周知の事実だったらしい。

 

「それは分かりましたけど、そうなるとどうしてオモダカさんがここに……?」

「ええ、私からエゾマ先生への用というのはそれです」

 

オモダカさんからオレへの用?

しかもこのプロジェクトについてだろ?

確かこの人、リーグ委員長とアカデミーの理事長もしてるから、理事長として釘刺しとかかな?

 

「エゾマ先生」

「……はい」

「私とポケモンバトルをしてください」

「…………はい?」

 

急に来たな……。

 

「シンオウ地方元チャンピオンのシロナの内弟子であるアナタの実力を疑うわけではないですが、バトルの最前線から退いて数年。腕が落ちているとご自身でも言っていると聞きます。そこで、一度腕試しをさせてください」

「ああ、なるほど。それじゃあ……」

「ただ、1つ……いえ、2つだけ条件が」

「条件?」

 

条件戦はやった事があるけど、いったい何だ?

もちもの縛りとか、タイプ縛りとかか?

オレが不利な状態でのバトルにするんだろうけども……。

 

「1つはこのパルデア地方に棲息するポケモンだけで戦うこと。これはプロジェクト完了後に、エゾマ先生の身に何か起きてしまったり、パルデア地方を去る場合などに後継者となる存在を探しやすくするためですね」

「ああ、なるほど」

 

オレはそもそも、他の地方からパルデア地方に来た人間だからな。

またパルデア地方を離れる事になるのも、充分に考えられるし当然の懸念だろう。

 

「そしてもう1つは────」

 

 

「────考古学者エゾマではなく(・・・・・・・・・・・)ポケモントレーナーの(・・・・・・・・・・)エゾマとして(・・・・・・)バトルしてください」

「…………なるほど」

 

そう来たか……。

どうやらこの人は、オレのバトルスタイルの変化を知っているらしい。

たぶんだけど、昔の映像を観たんだろうな。

あの頃のオレと、今のオレだとだいぶバトルスタイル変えてるし。

だが、しかし……そうか……。どうするかな……。

 

ふむ……。

 

「……1つ目の条件はお受けしますが、2つ目はお受けできません」

「おや、どうしてですか?」

 

考えた結果、オレの答えは是で、否。

これには理由がもちろんある。

 

「オレがこの件に携わるのは、ポケモントレーナーとしてではなく、学位もなく無学の身とはいえ考古学者を名乗る者だからです。かつてのオレではなく、今のオレだからこの件に関わるからです」

 

きっとオモダカさんが求めているのは、強くて、ギラついていて、他人からは輝いている様に見えたあの頃のオレなのだろう。

だが、オレはその頃のオレを求めていないし、今のオレにもそれなりの自負があるんだ。

それに思い出はいつだって美しいけども、思い出すだけにして胸の内に留めておくに限るしな。

 

そうでないと、また繰り返してしまうかもしれない。

 

「だから、オモダカさん。今のオレの全力で良ければ……それで良ければお相手願えますか?」

「……分かりました。それでよろしくお願いしますね」

 

オレの代案に、微笑みながら了承してくれるオモダカさん。

さて、パルデア地方にいるポケモンだけという制限があるが、大きな口を叩いた手前だし気合いを入れて行こう。

 

さあて、どいつたちで戦おうか?

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