ヒスイにいたボクへ、パルデアにいるオレより   作:逸環

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12話:輝石

「ルールを確認します。3対3のバトルで、もちものはあり。それでは準備はよろしいですか?」

「ええ、大丈夫です」

 

私の問いかけに、彼が首肯する。

ポケモンの預かりボックスを確認しながら、あーでもないこーでもないと編成を考えていた様子でしたが、どうやら完了したらしいですね。

 

「それでは、始めましょう」

「お手柔らかに」

 

モンスターボールを握る彼がそう言いますが、無理な相談としましょうか。

 

「行きなさい、クエスパトラ」

「おいで、ギャラドス」

 

エゾマ先生のモンスターボールから出たのは、きょうあくポケモンのギャラドス。

その名に違わず、開幕からいかく(・・・)をしてきますが、私のクエスパトラにはあまり意味はないですね。

しかし、ふむ。ギャラドス……ですか。

 

「なるほど、確かに古代から人間とは関わりが深いポケモンですものね」

「あまり良いイメージでの関わりの深さではないですけどね。ジョウト地方のいかりのみずうみ然り」

「そういえばそうですね」

 

思わず話に花が咲いてしまいそうになりますが、いけないですね。

 

「行きましょう、クエスパトラ。ルミナコリジョン!」

「ギャラドス、アクアテールで打ち消してからりゅうのまいだ」

 

クエスパトラのルミナコリジョンをアクアテールで横薙ぎに防ぎ、その動きを利用してりゅうのまい……。

やはり上手いですね。無駄がありません。

 

「一気に攻めろ、かみくだくだ」

「リフレクターです!」

 

きょくあくポケモンの名に恥じぬ、ギャラドスの牙がクエスパトラに迫るのを半透明な壁(リフレクター)でクッションを挟みますが……やはり弱点ですか。

その咢に挟まれたクエスパトラは、そのまま膝を付いてしまいました。

りゅうのまいでこうげきも上がってましたし、ここまでですね。

 

「お疲れ様です、クエスパトラ」

 

早速私のポケモンが一体倒されましたが、仕事はしてくれました。

ここからは少し手強くなりますよ?

 

「お願いします、クレベース」

「クレベース……!」

 

現れたクレベースに、思わずといった様子で顔を歪める彼ですが、相性の悪さを理解しているようですね。

ひょうざんポケモンのクレベースの頑強さは、ポケモンの中でも随一。

彼のギャラドスはどうやら物理攻撃に特化して育てているようですし、突破するのは困難でしょう?

 

「……攻めるぞギャラドス。アクアテール!」

「クレベース、ゆきなだれです」

 

水流を纏った竜の尾が氷山を砕こうとしますが、リフレクターの効果もありそれを耐えきって空いた胴へ叩き込むカウンターの雪崩。

まだ倒れはしないですが、それでも苦悶の表情を浮かべていますね。

ここで手を緩めはしません。

 

「そのままかみくだくです」

「ギャラドスッ!?……お疲れ様」

 

ゆきなだれでダメージを負った胴体に、続けて噛み付かれたのは堪えたのでしょう。

彼のギャラドスは崩れ落ち、モンスターボールへ戻っていきました。

 

……さあ、次の一手はどうされますか?

 

「おいで、セキタンザン!」

「ッ! ここでセキタンザンですか……」

 

こおりタイプのクレベースには、致命的に相性が悪いほのお・いわタイプのセキタンザン。

で、あるならば……。

 

「クレベース、ボディプレスです!」

「セキタンザン、かえんほうしゃだ!」

 

クレベースがセキタンザンの頭上へ飛び掛かり、その頑健さと重量をフルに活かして叩き込む。

それを迎え撃ち、赤熱した石炭から放たれる炎。冷気と熱気が激突し、周囲を包む白い蒸気が爆発的に発生。

何も見えなくなりますが、音は静かになり次第に蒸気も晴れていく。

結果は───

 

「……お疲れ様です、クレベース」

「よく耐えたな、セキタンザン」

 

───セキタンザンだけが立っていました。

セキタンザンはクレベース同様に物理的な攻撃に強いポケモン。

対してクレベースはかえんほうしゃを始めとした特殊な攻撃に弱いポケモン。

その違いが出ましたね。

ですが、セキタンザンも無傷とはいかず、巨大な質量の衝突にふらついた様子を見せています。

 

「最後の一匹ですが、まだ弛んではいけませんよ!行きなさい、キラフロル!」

「弛めるかよ!気合い入れていけ、セキタンザン!」

「「だいちのちから!」」

 

激突する2つのだいちのちからですが、速さに勝るキラフロルのだいちのちからの方が先に出たためか、それともセキタンザンのとくこうがそれ程高くはないためか。

いずれにせよ、私のキラフロルのだいちのちからが相手のそれを砕き、そのままセキタンザンへと突き刺さる。

 

「……お疲れ様だ、セキタンザン」

 

4倍弱点は凌げなかったのか、崩れ落ちたセキタンザンがモンスターボールへと戻っていきます。

これでアナタも最後の一匹です。

……さあ、さあ!

 

「さあ、アナタの輝きを見せてください!」

「……いくぞ、リングマ!!」

 

現れた最後の一匹は、リングマですか。

それでは、いきましょう。

 

「トレーナーを導く光あれ、キラフロル!」

「遠き彼方を照らせ!テラスタル!」

 

私のキラフロルはいわタイプにテラスタルし、彼のリングマは……頭上に冠された大地。じめんタイプですね。

キラフロルが覚えているわざは、だいちのちからは等倍。ヘドロウェーブは半減。マジカルシャインは等倍。テラバーストは……いわタイプとなった今、半減ですか。相性は明確に私が不利。

しかし、止まる理由はありません。

 

「技はこのように放つのです。頂点を感じてください」

「オレは知っている。お前の可能性を見せてやれ」

「だいちのちから!」「じしん!」

 

指示したのは、お互いにじめんタイプのわざ。

仕方がないとはいえ、こちらはタイプが不一致。

対してあちらはテラスタルによりタイプが一致。

だがしかし、こちらは速度で勝る。

 

先にこちらのだいちのちからがリングマに当たり、そしてリングマからじしんが放たれる。

きっと、キラフロルはこの攻撃で倒れてしまうでしょう。

 

───普通ならば。

 

「ッ!?」

 

エゾマ先生の息を飲む音が聞こえた気がする。

わざの立てる音で聞こえないはずなので、きっと気のせいなのでしょう。

ですが、先に到達しただいちのちからで揺らいだ姿勢では、不十分な力のじしんしか放てなかった様子。

 

そしてキラフロルは、まだ動けます(・・・・・・)

 

「もう一度、だいちのちから!」

「マズ……ッ」

 

キラフロルから放たれただいちのちからが、リングマへと殺到。

直撃したのを確認しますが、これで終わりでしょう。

リングマは攻撃力と耐久力には優れますが、しかし防御力は決して高いとは言えないポケモン。

ジムリーダーであるカエデさんのエースであるリングマですら、2度の直撃には耐え切れないのですから。

 

「お疲れ様でした、エゾマ先生。とても素晴らしいバトルで「リングマァァッ!!」……え?」

 

 

 

 

しかし彼のリングマは(・・・・・・・)、立っていました。

 

 

 

 

「じしん!!」

 

リングマの頭上の大地が輝き、そして私たちの足元が揺らぐ。

そしてキラフロルに地震のエネルギーは襲い掛かり、頭上の神殿は割れて輝きを失いました。

 

 

 

 

 

 

 

「……最後に油断をしてしまいましたね。お恥ずかしいです」

「いや、実際それを誘ったところはありましたので」

 

バトルが終わり、感想戦。

話題はやはり、最後のリングマの件へと自然となります。

 

「それで、リングマはあそこまで防御力が高くはなかったはずですが?」

「ああ、もちもので補っただけですよ」

「とくぼうを上げるとなると、とつげきチョッキですか?しかし、身に着けていた様子はなかったですが」

 

……いえ、その前に聞くべき事がありましたね。

 

「そもそも、()()()()()()()()()のですか?」

「……なぜ、とは?」

 

そう、思えばそこからでした。

 

「今回アナタは、考古学者としてバトルに臨みましたね?たとえばギャラドス。彼はバトルの際に話した通り、古来より人類との関わりが深かったポケモンでした」

「……そうですね」

「たとえばセキタンザン。そもそも石炭とは古代の植物が朽ちず化石化したものです。そして我々人間は石炭を利用し発展した。いわば人類の発展の歴史の象徴でしょう?」

「まあ、そういう意図があった事は確かですね」

「翻って、リングマです。特別人間と関りが深かったわけではないポケモンを、()()()()()()()()()()選んだ理由はなんだったのでしょうか?」

 

エゾマ先生はあくまでも、シンオウ地方の頂点に師事したポケモントレーナーではなく、プロジェクトに携わる一介の考古学者としてバトルをしました。

彼との関わりは僅かですが、発言したことに対して責任を負う人物であるというのは分かります。

であるならば、そこには必ずそれなりの選んだ理由というものがあるはずです。

 

「うーん……これは論文にする気もなかったから、どうするかな……」

 

顎に手を当て、逡巡する様子を見せるエゾマ先生。

どうやら、何か隠したいことがあったようですね。

 

「では、1つだけ。オレが今回リングマに持たせたのは、『()()()()()()()』でした」

「な……ッ!?」

 

エゾマ先生がモフモフとしたリングマの毛を掻き分け、その中から見せてくれた物は確かにしんかのきせき。

しんか前のポケモンの防御力を上げる道具ですが、それならばあのリングマの耐久性にも納得がいくというもの。

しかし……それはつまり……。

 

「リングマは、これ以上のしんかはないはずですが……!?」

()()、ですね」

 

考古学者の彼がそう言うという事は、現在は知られていないソレがかつてはあったという事。

 

「時代の流れで失われたモノの1つですね。存在した当時でも、到達例は少なかったようですから、特殊なしんかだったのでしょう」

「失礼ですが、アナタはどこでそれを?そして、それはこのパルデアで再現可能なのですか?」

 

突如明示された、更なるバトルの可能性に思わず心が躍ってしまうのを自覚します。

些か気恥ずかしいですが、これも性分ですね。

 

「残念ですが、情報元は考古学的保護の観点から話せません。パルデア地方で再現可能かは……まだ分からない。というのが実際の所ですかね」

「話せない。そして分からない……ですか」

「ええ、申し訳ないですが」

 

しかし、彼が話してくれた情報は実質ないようなもの。

それでも、リングマにしんかのきせきが使えるのであれば、きっと、恐らく他にも現在は分かっていないだけで対応するポケモンはいるはずです。

 

やはり彼は、手放し難い人材ですね。

 

「分かりました、無理には聞きません。……ああ、いけない。当初の目的を忘れるところでしたね」

「ああ、そういえば。それで、オレはお眼鏡に適いましたか?」

 

アマカジの香りがする電子タバコを咥え、彼が問いかけてくる。

その答えは、勿論決まっています。

 

「あらためて、私からもプロジェクトリーダーの件をよろしくお願いいたします」

「承りました」

 

握られる手と手。

我ながら華奢な女の手と違い、固く厚く傷だらけの手。

その手を、しっかりと握る。

 

 

 

「ところでエゾマ先生。パルデアのチャンピオンクラスになってみるつもりは?」

「あ、そういうのはもういいです」

 

そうですか……残念ですね……。

 

 

 

 

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