ヒスイにいたボクへ、パルデアにいるオレより   作:逸環

2 / 12
2話:初めての講義

「無茶苦茶に緊張して来た」

 

オレがいるのは、オレンジアカデミーの職員室。

ついにオレの講義をする日になったので、時間まで待機している。

軽く手解きする程度ならばともかく、人にモノを教えるなんて初めての経験だ。

しかもあのオレンジアカデミーで講義するってんだから、そりゃドキドキもする。

オレの講義は、オレンジアカデミーが『宝探し』の期間中に行う、期間限定のものだ。

言ってしまえば、生徒たちの『宝探し』の一環になるんだが……クラベル校長は「軽い気持ちで話してください」とは言ってくれてたけども……。

あー、ソワソワする……ッ!

そうだ、歴史のレホール先生に、授業の前にコツとか聞いて……いねぇ!!

職員室を見渡しても、どこにも本職(レホール先生)の姿が見えない。

クソゥ、頼れないか……!

 

「やあ、ドウモー。緊張してるようだね?」

「ああ、セイジ先生。そうなんですよー、なにせこういうの初めてなもんで」

「ハハ!誰だって最初は初めて!リラックスリラックスだよ!」

 

と、職員室でソワついているオレに話しかけてくれたのは、言語学を教えるセイジ先生。

坊主頭に剃り込みが特徴だが、明るく穏和な先生だ。

 

「そうだ、ちょっとアドバイスくださいよ」

「ウーム、そうだね……。軽い気持ちで話す事かな!」

「クラベル校長にも「軽い気持ちで話してください」とは言われましたけど、それができないからアドバイス求めたんですけど!?」

「ハハ!ソーリーソーリー。言葉足らずだったね。授業をする先生たちが緊張してると、生徒たちにそれが伝わってお互いにガッチガチ!それじゃあつまらないよね。ワシは言語学を教えてるからってのもあるけど、授業は先生と生徒のコミュニケーション!お互いにリラックスだよー!」

「なるほど……」

 

そうか、オレの緊張が生徒にも……。

言われてみれば、確かにそうか。

 

「それにきっと先生は真剣に準備して、これから講義するんだよね。大丈夫、生徒たちもそれに真剣に向き合ってくれるから!」

「おお……確かにちょっとオレ、一人相撲してる気持ちになってたかもしれないですわ……」

「ドント ウォーリー!気にしない気にしない!最後に1番のアドバイス。授業中はニッコリ笑顔で!笑えば自然とリラックス!ちょっと噛んじゃうくらいは笑いにしちゃおう!失敗もみんなで笑えばハッピーね!楽しんじゃおう!」

「おお!ありがとうございます!」

 

セイジ先生にお礼を言ったところで、ついに時間が来た。

さあて、アドバイス通り楽しんで講義して来ますか!

 

 

 

 

「はい、皆さんどうも初めまして。あ、後ろで見学されてるクラベル校長とレホール先生は初めましてじゃないですね。よろしくお願いしますー」

 

キンコンカンのチャイムと同時に教室へ入り、教壇から個性豊かな生徒たちに挨拶をする。

しかし、クラベル校長はともかく、レホール先生職員室にいないと思ったら先に教室に来てたのか……。

 

「それじゃあ、この講義の説明を軽く。この講義は必修科目ではなく、『宝探し』の一環として行う課外授業です。何回か行うので、参加したい時は今回同様に事前に申請してください。内容はね、歴史のレホール先生と似た感じだけど、オレが教えるのはパルデア地方以外の土地の歴史。特にオレの出身地であるシンオウ地方についての歴史です。事前にテキストをスマホロトムに配布してるので、それを見ながら授業していきまーす。といったところで……お待ちかね!オレの自己紹介しまーす!」

 

そうだね。みんなの目が物語ってるね。「講義の内容はともかく、お前誰やねん?」って目だね。

 

「オレの名前はエゾマ、26歳。シンオウ地方のズイタウンの辺り出身です。職業は考古学者をしていて、この間まではね、ガラル地方で仕事してました。それで今度はこのパルデア地方の遺跡を調査しに来たわけです。好きなものは……と言うか最近のマイブームはカレーだね。ガラル地方で仕事をしてる間にハマったんだけど、今度家庭科のサワロ先生に美味しい作り方を教わろうと思ってます」

 

ディスプレイにあらかじめ用意していた、オレの紹介スライドを表示して自己紹介をする。

まあ、オレ自身の事については、講義の内容そのものには関係ないのでここはササッとだ。

それはそれとして、一通り自己紹介をすれば次は勿論……。

 

「はい、それじゃあ質問ある人!挙手!」

 

質問タイムだ。

お、元気よく手がチラホラ挙がるな。

よーし、サクサク行くぞー。

 

「彼女いますか!」

「一発目から重ためのボディブロー!?彼女いないんだよなぁ!好きなタイプはね!職業柄あっちこっち行ったりする事が多いから、好き勝手してても許してくれる人かな!」

「好きなポケモンはなんですか?」

「あー、難しいな。好きなポケモンは色々いるけど……ちょっと決めきれないから、考えておくよ」

「逆に嫌いなポケモンっていますか?」

「嫌いなポケモンはいないけど、苦手なポケモンはマスキッパだね。子供の頃にマスキッパのデカい奴に追いかけ回されてから、どうにも怖くてねー」

「はい!ポケモンバトルしませんか!」

「講義の後でならオーケー!」

 

ノリで軽くオーケーしたけれど、時間大丈夫かな……?

普通に他の授業もあるだろうし、オレの仕事の都合もあるし。

まあ、1vs1の限定戦なら大丈夫だろう。

 

そして苦手なポケモンのマスキッパ。

あれはマジで怖い。余裕で勝てる手持ちポケモンがいる今でも怖い。

脳味噌に刻まれた恐怖とはあの事。

 

「はい、じゃあこんなところでね、講義を始めていきます。まずはみんな大好きポケモンの話。それも昔々、まだ宇宙がなかった頃に生まれた、タマゴ。そしてそれから産まれた、1匹のポケモンのお話です。この宇宙を作ったとされる、そのポケモン。彼の名前は────」

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様、だな」

「ああ、レホール先生。本職の前で拙い講義をしまして、お恥ずかしい」

「いやいや、中々様になっていた。貴様の語り口、語る内容。興味深く、引き込まれたよ」

「なら良かった」

 

初めての講義が終わり、教室を出たところでレホール先生に声をかけられる。

……貴様ってのが気になるところだが、この人誰が相手にもそう言っているのを見るので、そういう人なんだろうな。

美人なんだけど、変わり者なんだろうなぁ。

……姐さんもそうだからな、考古学に関わる女はみんなそうなんだろうか?

あれ?姐さんといえば、そういえばオレが不在で片付けとか大丈夫か?

心配になって来たから、今夜あたり連絡しておこう。

 

「そうだ、スマホロトムに私の連絡先を送ろう。調査の手が必要なら呼んでくれ」

「どうもです。授業の相談も大丈夫です?」

「もちろんだとも。……可能なら調査の方が嬉しいが」

「これだから学者って生き物は……まあ、オーケーですよ。今度お手伝いお願いしますね」

「是非頼む。有休を取って行こう」

「……クラベル校長とも相談して、日程調整しますね」

 

これは生徒たちのためにも、この人を誘う時には事前の調整が必要なやつだ……。

これだから学者って生き物は!

 

「それじゃあ、オレは生徒とポケモンバトルする約束しちゃったからこの辺で。またよろしくお願いします」

「ああ、また。……調査の件、本当に頼んだぞ」

「……ええ、はい」

 

去り際にまで念押しされてしまった。

まあ、美人とのデートの約束と考えれば……いや、無理だわ。

遺跡の調査は仕事だわ。デートには思えん。

折角の美人のお誘いなんだけどなぁ……。

 

 

 

 

 

「ああ、そういえば貴様がポケモンバトルの約束をした相手だがな。このパルデア地方のチャンピオンクラスの1人だぞ」

「エッッッ!!!???」

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。