「マジでテラスタイプ変わったわ。宝食堂すげぇ……」
次の講義が1週間程先になるので、その間にテラスタイプの変更をやってみたいのでアオキさんに連絡を取ってお願いしたところ、宝食堂の店主さんに特別にお願いしてくれた。
約束の日に宝食堂に行ったところ、アオキさんはいなかったんだが「アオキさんから聞いてるよ!」と店主さんに快くキハダ先生からもらったテラピースを使って料理をしてもらったんだが……。
料理でテラスタイプが変わるって、料理ってなんなんだろうな……?
いや、深くは考えるまい。たぶん考えても分からないだろうし。
「よし、それじゃあ久しぶりに本業しますか」
私用も済んだところで、久しぶりに本業の遺跡調査といこう。
今日は水に浸かってる物見の塔を調べてみよう。
観光地化していて、看板も立っていたはずだ。
夜には用事があるから、テーブルシティに行かないといけないので時間はあまりない。
「おいで、プテラ」
プテラのそらをとぶで、ひとっとびで向かう。
さあて、ちょっと巻きでいこう。
水に浸かっている物見の塔────パルデア十景に選ばれるビシャビシャの斜塔だが、観光地化しているだけあり既に調査の手は充分に入っている。
オレがあらためて調べる理由は薄いのだが、とはいえ観光も兼ねて調査してみよう。
紙の資料を見るのと、実際の現物を見比べるとではまた違う発見もあるしな。
「……にしても、本当にビシャビシャだな」
下部分が水没し、残った部分が水上に出ているわけだが、すぐそばに滝まであるので水飛沫でビシャビシャもいいところだ。
梯子が見えるが、塔自体が斜めになっている上にこれでは滑ってしまい、梯子で登るのは危険だろう。
それにしても、なんでこの塔は水没してしまったんだ?
まさか建築当時に、最初からここが水辺だったわけでもあるまい。
そもそも隣の山は存在しなかったんじゃないか?
そうでないと、ここに物見の塔がある理由がない。
「2000年前の帝国時代の戦争で、兵器かポケモンか何かでここまでの地形変動が起こしたのか。それとも自然によるものなのか……」
周囲の形跡を探ろうにも、この有様じゃあよく分からんな。
「何か遺っているとすれば、地面の下か?」
この近辺を掘って確かめてみたいが、地形が問題だな。
加えて、ここが観光地なのも発掘調査となると障害がある。
それこそクラベル校長とレホール先生と相談して、行政に許可を取ってから専門のチームを作らないといけない案件だ。
まあ、ここを掘り返すのはそんなすぐに必須というわけでもない。
後々必要になったら相談とかでも良いだろう。
……必要じゃないけど気になるなぁ。
「よし、とりあえず上を見てみるか」
気を取り直して、またプテラに乗って今度は下からではなく上から観察してみる。
ふーむ、上側の破損は少ない……というか全体的に斜めになって水浸しになっている以外は、ほとんど破損がないんじゃないか?
この物見の塔、頑丈すぎるだろ。
どんな材料をどんな工法で建てたらこんなんが2000年前にできるんだ。
お、あの宝箱はコレクレーだな。
珍しいポケモンだし、いっちょ捕まえておくか。
「こういう時は、リピートボール!」
コレクレーは前に捕まえた事があるからな!
夜になる前にテーブルシティに戻り、シャワーを浴びて目的の場所へ向かう。
場所は職員寮からさほど離れていない、肉料理がウリの飲み屋だ。
今日はここに1人で飲みに来たわけではなく────
「はいはい!それじゃあ最初はビールじゃない人はいるかしら?」
「はーい、アタシは赤ワイン」
「ああ、ワタシも赤ワインを頂きましょうか」
「ワガハイは……その……いや、やはりビールで頼もう」
「サケあります?……あ、ない。じゃあオレもビールで」
「残りの方達もビールね?それじゃあ頼んじゃうわ。すいません、店員さーん!」
「飲み物がいきわたったところで、それではみなさんエゾマ先生の歓迎会を始めます」
────クラベル校長主導での、オレの歓迎会だ。
「まずは今日の主役、エゾマ先生から挨拶をお願いします」
おっと、早速出番だ。
「えー、今日はオレのためにこのような席を設けていただき、誠にありがとうございます。自分は一時的な講師の立場ですが、期間中皆様のお役に立てるよう、生徒たちの役に立てるよう努めたいと思います。よろしくお願いします」
「では、エゾマ先生のご挨拶も終わりましたところで、乾杯!」
「「「「「「「「かんぱーい!!」」」」」」」」
グラスとジョッキを合わせ、カキンカキンと音がする。
黄金色のビールを喉に流し込めば……あー!うめえ!
このね!冷えたシュワシュワとのど越しがね!五臓六腑に染み渡るよね!
ここに串焼きを食べて、更に残ったビールを流し込めばね!
「あぁー!これこれ!これですわ!」
「いい飲みっぷりですね」
「まあ、最初だけですけどねー」
なにやら微笑ましいものを見る眼でニコニコしているクラベル校長だが、これ完全に食べっぷり飲みっぷりが良い若者を見る眼だな。
校長も歳だものな……。
「エゾマ先生の講義、生徒たちに好評ですよ」
「お、そいつは良かった。慣れないなりに、なんとかできてますか」
「ええ、このままアカデミーに正職員として登用したいほどには」
「あはは、そいつはありがとうございます。本業が上手くいかなくなったらお願いしちゃいますね」
「おや、テイよく振られてしまいました」
「「はははは!」」
「あそこまだ一杯目のはずでは……?」
「なんとなく気持ち良くなってるんでしょうね」
なんか知らないが、一杯目からやたら上がったテンションに任せてクラベル校長と笑う。
いやー、久しぶりに人と飲むなんてやってるけど、これも楽しいね。
普段は1人酒が多いからなぁ。
「やあやあ、エゾマ先生。どうもどうも」
「ああ、ジニア先生。これはこれは」
そうこうしていると、話しかけて来たのは生物学のジニア先生。
ぽやっとした雰囲気の人だが、滅茶苦茶優秀との評判だ。
……クラベル校長から、ちょいちょい怒られてるのも見るけども。
「エゾマ先生は他の地方から来られましたけど、他の地方の人としてはボクの作ったポケモン図鑑はどうですか?」
「これ滅茶苦茶良いですよ。使いやすいですし、見易いですし」
「そう言ってもらえて良かったです!」
そうそう。パルデア地方のポケモン図鑑は、ジニア先生が作ったんだったなー。
ポケモン図鑑を作るって、かなり大変だったろうに。
「エゾマ先生は仕事柄あちこち行かれますし、ついでで良いのでドシドシポケモンを捕まえて、図鑑を埋めちゃってくださいね!」
「オレもパルデア地方のポケモンには興味があるんで、頑張りますね」
今日もコレクレー捕まえたし、他にもパルデア地方のポケモンを捕まえてみたいところだ。
この間の焼肉での時にキハダ先生から聞いた話によると、パルデア地方のケンタロスは黒いしかくとうタイプらしいし、なんなら数は少ないがほのおタイプ持ちとみずタイプ持ちがいるとかいう話だから、かなり気になっているんだ。
「ポケモンの話ですかな?小生も混ぜていただいても?」
「おお、ハッサク先生。どうぞどうぞ」
座る位置を詰めて、ハッサク先生が座れるスペースを作る。
この人学園では美術の先生なんだけど、このパルデア地方の四天王もしてる凄い人なんだよなー。
最初にポケモンリーグに挨拶に行った時に、トップチャンピオンのオモダカさんと営業のアオキさん。それから四天王の一人としてハッサク先生がいたんだけど、その後普通に学園で顔を合わせて教師をしてるって知った時には驚いた……。
「四天王をしていると、他地方のトレーナーと親善試合などでバトルする機会もありますが……エゾマ先生の出身であるシンオウ地方のポケモンも興味深いポケモンばかりだと思うのですよ」
「あー、オレも他の地方あちこち行くようになったら、シンオウ地方のポケモンって面白いんだなー。って思うようになりましたね」
「やはり、外からの視点というのは大事ですからね」
「うーん!ボクも他の地方のポケモンみたいなぁ!」
「それじゃあ、今度お見せしましょうか?」
「良いんですか!やったー!ありがとうございます!」
出身地が違うと、知ってるポケモンについても全然違うから楽しいもんだ。
ジニア先生はポケモン図鑑を作るほどの知識があるし、ハッサク先生のドラゴンタイプのポケモンについての話も面白い。
いやあ、酒が進む進む。
「あ、すいません。次は烏龍茶で」
「確かに酒が進み過ぎですね。一回挟みますか」
「ボクもそうしますねー」
酒が進み過ぎるのよ。楽し過ぎて。
なので意識してチェイサーを挟まないと、これ悪酔いする。
外しちゃいけないタガが外れる。
オレ自分のタガが外れやすいの、よく知ってる。
「つまり4ヶ所に封印された、厄災とされるポケモンたちがいてだ。それらを解放する事も可能なはず……!ウッヒョー!知的好奇心が止まらんぞ!!」
「いや……厄災なら封じたままの方が……?」
「キハダ先生、これ聞いちゃダメなやつよ。離れましょ」
あっちの若手女子グループで、タガが外れて暴走し始めた人みたいになりたくないしな……。
「おーい!エゾマ先生!こっちに来てワタシの話を聞くんだ!!考古学の徒だろう!!」
ひえ!?こっちにターゲット回って来た!?
あ、ちょ!?ジニア先生!?ハッサク先生!?無言で押さないで!?
あれ絶対に面倒な相手だから押し付けようとしてるでしょ!?
おい!おい!?