ブラック・ブレットー暗殺生業晴らし人ー   作:バロックス(駄犬

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気づけばUAが一万超えてたよ。みなさんの御陰です。ありがとう、ありがとうッ


第八話~犬の七海、蟷螂少女と喧嘩する~②

「手短に言おう七海静香・・・私の仲間になる気はないかね」

 

「なか・・ま?」

 

奇妙なマスクで顔を覆った男、蛭子影胤の言葉に七海は身を強ばらせた。八洲許もいるという事で考えられることは、同じ”晴らし人”の仲間という事だろうか。だが、彼の異様な雰囲気が別の目的があるのではないかという事を七海は感じ取る。

 

七海が息を呑んだ次の瞬間だった。

 

「ゴラッ」

 

ぺしん、と影種のシルクハットから剥き出されている後頭部を八洲許が叩いたのだ。

 

 

「・・・何をするのだ八洲許刑事」

 

叩かれた後頭部をさすった影胤は前かがみになっていた態勢を戻し、背筋を伸ばしてみせると元凶の男に抗議の声をあげる。八洲許はめんどくさそうに煙草を吐き出して、

 

「うるせぇ、ルール違反だ」

 

「彼女は意味を理解していなかったし、今のはノーカンだろう?」

 

「アウト」

 

頑なにそう言い切る八洲許に対し、影胤は”やれやれ”と両手をあげてお手上げといったポーズだ。だがこの影胤を叩くという行為を黙って見過ごせない者がいる。七海の隣にいた小比奈だ。

 

「パパをいじめるなぁ―――!!」

 

「勇次ッ!!」

 

飛びかかる小比奈を七海が叫ぶが対して八洲許はひらり、とその袈裟斬りを躱してみせる。さらに、スピードに乗っている小比奈の無防備な脚に自身の足を掛けると態勢を崩した小比奈は綺麗に前のめりに砂場に倒れ込んだ。

 

「いい太刀筋だお嬢ちゃん。その年で二刀流をモノにするとは・・・たいした奴だ」

 

だが、と彼は紫煙を撒き散らして続ける。

 

「怒って太刀筋が読まれるようじゃあ俺は簡単に殺れん」

 

ニヒルな笑みを浮かべてる間に、小比奈は砂が口に入ったのか、舌を出して何度も砂を吐き出している。

 

「ちょっと勇次、女の子には優しくしてあげなよ!大丈夫?はい、水」

 

七海が腰に持っていた水筒を差し出すと小比奈は両手で奪い取り、口に含んで一気に吐き出す。やがて小比奈は涙目になりながらも八洲許を指差して一言。

 

「パパァ! 私このおっさん嫌いッ!!」

 

「君も子供相手に容赦がないね」

 

「俺は自分の命を守っただけなのに、なんでガキからもお前からも批難されなきゃいけねぇんだ」

 

その後、畜生ッ、という八洲許のいらついた言葉が聞こえたが取り敢えず暫くお互いに落ち着くまで間を置いて、状況を一つ一つ理解するために七海が口を開く。

 

「えーっと、影胤さん?」

 

「なんだい?」

 

突如として、ぬっ、という擬音を纏った彼の白い仮面が七海の眼前に迫る。この状況は軽くホラーだな、と思いながらも怖気づいていては話は進まない。七海は苦笑いしながらも質問していく。

 

「おじさんは勇次の友達なの?」

 

「ああ、君のパパとは古くからの友達だよ」

 

「呼吸するように嘘をつくな嘘を」

 

またしても影胤の後頭部に八洲許の手刀が入った。小比奈がまた飛びかかろうと動作に入るが八洲許に睨まれると、先ほどの仕打ちが効いたのか次の動作に戸惑っていた。やがて八洲許が頭を掻いて、

 

「まぁ、裏関連なのは間違いねぇ。 だが、仲良しこよしやる間柄じゃあないんだよなオイ」

 

そう言って同意を影胤に求めた時、彼は”ああ”と頷いてから続けた。

 

「君のパパとは昔戦った事があってね・・・実に熱い戦いだった、まぁ私の圧勝だったがね」

 

「おい」

 

即座に会話に八洲許が割ってはいる。顔は引きつった笑みを浮かべた彼は影胤の肩を掴んだ。

 

「間違えるなよ。アレはどう見ても俺の勝ちだ。無理しちゃいけねぇよ?ん?俺の勝ちだから」

 

「何を言う」

 

八洲許はこう言う訳だが、影胤は八洲許と向き合うと小さく笑って対抗する。

 

「どう考えても私の勝ちだ。君があの時どうしても引き分けにしてほしいという顔をしていたから”仕方なく”引き分けにしてあげただけだ。本当なら私のマキシマムペインが君の体を貫いて―――」

 

「自分の娘の前だからってカッコつけんなよ」

 

「ほぅ、ならここであの時の続きを行ってもいいのだが」

 

お互いにグリグリと額を押し付け合いながら、二人は言い合っている。それは昔の事なのだろうが、当時の事情を知らぬ七海と小比奈にとっては、この話題はまったく分からない。

 

「うるさーい! 二人ともいい加減にしろォ!!」

 

 

次第に沸を切らした七海が叫んで漸く二人が舌打ちをして押し付け合っていた額を離す。険悪な雰囲気なのはよく分かったが別の視点からだと仲が良さそうに見えるのは気のせいだろうか。

 

「ふぅ・・・」

 

影胤はそう溜息をついて乱れていたシルクハットの位置を元に戻すと七海と八洲許に対して背を向ける。

 

「今日はここでお開きといこう八洲許刑事」

 

「えらく素直に帰るんだな」

 

彼の性格をよく知っているのか、八洲許は警戒を解いていない。影胤は笑った声を出してみせると首だけをこちらに向けて七海を見た。

 

「ただの顔合わせをしたかっただけだからね。ついでに、小比奈相手に負けるようなら、こちらに引き込む意味などないからね・・・」

 

「で?お前の目で、七海はどうよ」

 

「・・・及第点だな」

 

その言葉に、内心で”むっ”となった七海である。問答無用に襲われて、あまつさえ見知らぬ人間にその戦いぶりに難癖つけられるのは遺憾だった。

 

「行くよ、小比奈」

 

「はーい、パパァ」

 

間延びした声をあげて、影胤の後ろを小比奈がついていく。彼女は去り際に七海の方を振り返ると真顔で手を振りながら、

 

「ばいばいワンちゃ―――間違えた七海、次会うときはもっと斬り合おう」

 

そう言って去っていったのだ。

 

 

「ま、また私を犬扱いしたなァ!ちくしょー!」

 

飛び跳ねて抗議の叫びを二人が消えていった方向へ放つが、その叫びに返ってくる答えはない。気づけば、気配そのものも消え去っていた。最初のときのような慌ただしさはなく、ただ波が揺れる静かな浜辺となった。

 

やがてその場にしゃがんだ八洲許が口を開く。

 

「・・・ケガ、しなかったか?」

 

「ん・・・ちょっと頬を掠めたくらい、バラニウムの刀で斬られたんだけど・・・これって治る?」

 

「・・・見せてみろ」

 

七海は頬を見せて、八洲許はその具合を確かめる。血が小さくまだ流れているが見た感じ、深い傷ではないから大丈夫だろう。頭を軽く叩いて彼は言う。

 

「んー・・・こんくらいなら時間が経てば治る・・・一応、消毒と絆創膏な」

 

その言葉を聞いて、七海に安堵の表情が宿る。どうやら、相当気にしていたようだ。

 

 

「なんだってそんな気にしてんだ」

 

そう聞くと、七海は目を釣り上げて怒りの表情を見せた。

 

「勇次! 顔に傷ができるなんて、女の子にとっては死活問題なんだよ!お嫁にもいけなくなるッ!!」

 

「お、おう・・・すまん、悪かった」

 

彼女の剣幕に押されて、折れることしか出来なかった八洲許であった。身体的にそれ以上大きな傷はなっかった事から、無事だということを確認すると彼は煙草を取り出す。火をつけようとしながらその動作をやめた彼は一応聞いておくことがあった。

 

 

「ああ、そうだ。 他にはなんもなかったか」

 

 

「え”っ」

 

一応、という名目だったが大げさにも視線を逸らした七海を見て、八洲許は目を数度見開く。七海は額に汗を浮かべながら背中に持っていた刀を出し、八洲許の前で抜いてみせた。

 

「折れちゃった、てへっ」

 

 

次の瞬間、般若顔の八洲許が七海の側頭部に拳をねじ込んでいた。

 

 

「痛い!痛い痛い! 虐待ッ 虐待だよ! 児童相談所に訴えてやる!!」

 

うるせぇ!、と八洲許は折れた刀を見てうなだれ始める。

 

「うっそだろお前・・・これ、俺が晴らし人初期から使ってる愛刀・KOTETSUちゃん・・・まだローンだって残ってるのに」

 

「ローンなんか組んで買うほど高いヤツじゃないでしょこれ。 この前裏ヤホオクで12万で売ってるの元締めさんのネットで見せてもらったよ」

 

今度は事実を指摘されて八洲許は視線を逸らす。確かに、これは言われるほど高いモノではない。名刀と聞かれたらさほど有名なモノでもないし、ただちょっとよく斬れる日本刀だ。だが八洲許が晴らし人を始めた頃から使用していたのは事実である。七海が晴らし人になった祝いの品として譲った物だった。

 

一応、補足だが銘は本当にKOTETSUである。

 

「えっと、その・・・ごめん」

 

刀が折れた事に対して、申し訳なさそうに七海が頭を下げた。真面目だなぁ、と思いながらもその下げる頭に八洲許は手を置いて、折れたKOTETSUを見ながら呟く。

 

「純度の高いバラニウムってのは普通の金属より硬ェもんだ。それを二本も振り回す化物に、よく無事で帰って来れたな」

 

「・・・うん」

 

心配されていたという事に気づいた七海が八洲許の胸元に倒れこむ。七海としても、同じ呪われた子供で、しかも強敵との戦いはかなりの精神に疲労をもたらした筈だ。その緊張が今解けたのだろう。ぐったりとしたその小さい体を八洲許は背負うと、海に踵を向けて歩き出した。

 

 

「いいタクシーだろ」

 

「うん、いいタクシーだ。ちょっと加齢臭するのが難点だけど・・・」

 

・・・余計な事を言うな。

 

と、このまま減らず口を続けようものならこの背中から振り落としてやろうと思ったが眠そうに頭を揺らしていた七海が視線に入ってその行動を辞める。余程疲れたのだろう。

 

「ねぇ、勇次・・・あの二人は、なんなの?」

 

うつら、うつらとそう問う七海に八洲許は一度彼女を背負い直して、片手で自身の顎鬚を掻いた。

 

「七海、これから・・・アイツ等が誘ってくる事があるかもしれん今日見たく、あの娘が戦いを挑んできたようにな」

 

明らかにはぐらかしてしまったが、眠気に支配されつつ七海はその意図も分からないまま続ける。

 

「私は・・・どうすればいいのさ」

 

続けてそう問う七海に、一度自分の地面を八洲許は見た。少しばかり考えて、彼は言う。

 

「お前が仲間になりたければ、なればいい。でもその時は・・・俺とはお別れだ」

 

「そんなの・・・いやだ、な」

 

首に回されていた両腕が八洲許の首を締め付ける。肉体的に痛みは感じないものの、これから訪れるであろう彼女の過酷な道を思うと心が痛かった。

 

「なら、拒否を続けろ。だが、全てはお前の意志で決めるんだ・・・それと、俺からの願いはたった一つ」

 

八洲許は背負っている七海に視線を合わせることなく、続けて言い放った。

 

 

「強くなれ。時が来たら、全部話すから・・・って、アレ?」

 

 

「ぐー・・・」

 

「こ、このやろう・・・・大事な所で見事シリアス壊しやがった」

 

殴って目を覚ましてやろうか、と思った八洲許だが彼女の安らかな寝顔を見てその握り拳を解く。戦いから解放された彼女の寝顔を見て、思わず八洲許は笑みを浮かべた。

 

「このまま歩いて帰るのは疲れるな・・・元締めに電話するか」

 

片手で七海を抑え、携帯を取り出そうとした時だ。

 

 

『ゴーウィwwwゴーウィwwヒカリッヘ―』

 

懐からバイブレーションとともに奇妙なテクノソングが流れている。”俺の着信音こんなんだっけ?”と思いながらも自身のスマフォ画面を持つとその表示されている名前を見て首を傾げる。

 

 

「『ありんこ』・・・俺人外と友達になったっけ?」

 

疑心に駆られながらもその通話ボタンを押して、耳に当てるとそこからは聞きなれた声が聞こえてきた。

 

『あー、あー、八洲許さん聞こえますかー』

 

「お、おお? その声・・・美濃か」

 

『そ、そうだけど・・・ちゃんと連絡先教えた筈なのに、誰だと思ったの』

 

「いや、てっきり人外からの地球外通信かと」

 

『ドユコト』

 

カタコトの発声が聞こえて、まぁいいや、と美濃が続ける。

 

『墨さんから伝言ー、今お酒飲みに行ってるから私が伝えるよー』

 

・・・ああ、そう言えば墨って機械音痴だっけ。

 

そんな事を思い出しながら、八洲許は美濃から告げられたその内容を聞いて、眉間に皺を寄せて言うのだ。

 

 

 

 

 

「あん? 晴らし人になりたいヤツがいる?」

 

 

 

 




こんなギャグ寄りな影胤さんもアリだと思うんだ。武器破壊は新装備フラグ也。


色んな感想が来れば、それはとっても嬉しいなって(訳:ご意見や、感想がございましたら、気軽にお願いします!)






―――次回予告

木更「サッカー、目玉焼き、様々なカオス回を乗り越えて来た藍原延珠、謎の少女によって今度は財布のお金を盗まれたァ――ッ!!」

蓮太郎「嬉しそうだな木更さん」

木更「悲劇のヒロインとはまさにこの事かッ 泣き寝入りする延珠、そして今度標的となるのはやっぱり七海ちゃん!」

延珠「どうして妾はこう不遇なのだ」

木更「新たな晴らし人希望の人物と会う八洲許刑事。 この事件に繋がりはあるのかッ ”いつになったら本篇やるんだよ”なんてツッコミは言わせない! なぜなら、私のメイン回が控えているからッッ」

蓮太郎「あるのかよ」

作者「(多分彼女がキチるんで)ないです」

木更「うっ・・ぐすっ。 次回晴らし人第九話~延珠、財布の金を盗まれる~ もうやってられっか!」

蓮太郎「まぁ、木更さん。涙拭けよ」
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