ブラック・ブレットー暗殺生業晴らし人ー 作:バロックス(駄犬
―――とある休日の昼下がり、街の人の空いている道を歩いている一人の少女がいる。ウサギの絵が書かれた髪留めをしたツインテールが特徴的な少女だ。藍原延珠である。
「ふんふふーん♫」
上機嫌な彼女は鼻歌を交わせてスキップをしている。地面に掘られているタイルを色分けして一枚ずつ飛びながら進んで行くほどだ。当然、周りからの視線も気になるのだが今は昼時で、しかも自分が歩いているこの場所は極端に人が少ない。だから多少の奇行は許されるのである。
それでも、蓮太郎に見られては死ぬほど恥ずかしいものだが。彼は学校で補修を受けているらしい。
「天誅・天誅! 新作の天誅ガールズのカードパックが妾を待っておる!!」
笑みを浮かべる延珠の理由は先ほど述べた通りで、実はカード化している天誅ガールズの新作カードパック、『暁の咆哮』が今日発売されるとのこと。その新作を買うために休日の昼間に行きつけの店へと向かっていたのだ。
・・・七海ちゃんも来れば良かったのに。
内心でいつもは隣にいる舞や熱狂的な天誅バイオレットマニアの七海がいないことを寂しく思った延珠だった。当然、彼女もこの熱き祭典に参加するものだと思い、今日延珠は声をかけたのだ。だが当の本人である七海は顔をひきつらせて、
―――ちょっとお小遣いせがんでくるから、延珠ちゃん先に行ってて!
と言っていたので同伴を断られた。
・・・少しくらいなら妾が貸してあげてもよかったのだが。
延珠もイニシエーターとしての仕事を行っている事もあり、懐に入ってくる給金は小学生が得る金額を大幅に超えている。金銭感覚も多少狂っているのではないかと一度蓮太郎に指摘された事がある。この前8万以上するロデオマシンを購入した際は蓮太郎が玉ねぎでも切ったかと思わせるくらいの涙を流していた。
だが流石の延珠も友達相手にお金の貸すと言って連れ出すのは気が引けた。これだと金にモノを言わせて無理やり気を惹かせようとしている気がして嫌だったからだ。自分もそこまで腐ってはいない。
兎に角、開店時間前に間に合わせるべく延珠は急に走り出す。丁度今は十二時二十五分だ。店が開店するまで五分ほど時間はある。
「この財布に培った妾の三万円でッ 『大人買い』を超越した『箱買い』が妾の目的なのだッ 初日でXXレアの天誅ブラックを引き当ててからバイオレットカード全種を七海ちゃんに見せつけて愉悦を感じるのもまた一興」
一応、事前に店主との話は済ませており延珠用に五箱程別口で取り寄せてもらっている。このモノリスに閉じこもった現代であっても金銭が物を言うものだ。その力を自分は手にしている。延珠は愉悦の滲み出る勝利者の笑みを浮かべていた。
「あのぅ・・・もし」
だがその時、駆け足の延珠を呼び止める声がある。真横からだ。スピードに乗っていた延珠はすぐさまバラニウムを厚底に仕込んだブーツでブレーキを掛けるとどこぞのメカ少女のように減速して停止する。
「むっ、いま妾を呼び止めたのはお主か?」
「そうですのよ」
立ち止まった延珠の向ける視線の先には小さい路地裏へと通じる道。その出口付近で一人の少女がこちらを見て手招きをしていた。
「あら、かわいい。まるで兎みたい」
「褒めてもらえるのは嬉しいのだが、出来れば手短に頼む。妾はちょっとこの先に用があってだな」
延珠は目の前にいる声をかけてきた少女の姿をまじまじと見た。注目したのは黒のドレスよりも、縦ロール金髪でである。杖替わりに立てている黒の傘や左右の腕にレース、靴は革靴と見た感じ、どこかのお嬢さまのような風貌である。
「お主、日本人ではないのか?」
尋ねる素朴な疑問に金髪少女はくすり、と笑みを浮かべてその問いに答える。
「ええ、故郷はイタリアなのよ」
「・・・日本語が上手だな。 帰国子女というやつか」
「シチュエーション的にはそうなのよね。 日本語が上手くなった理由としては・・・」
澄んだ瞳がこちらに向けられて、一瞬だが延珠の胸を鼓動を打った気がした。気のせいか、と思った延珠は話をここで区切らせようとした。もう店はこの角を曲がれば目の前だ。時間も迫っているので早く切り上げたい気持ちだった。だが目の前の少女は、うん、と頷いて見せて、
「ええ、教えてくれた人がいたの」
「お、おう・・そうか・・と、取り敢えず・・・その、だ、な」
拒否の言葉を告げようとした時、延珠の視界が霞んで見える。まるで頭が熱を持ったかのようだ。自分はイニシエーターだ。発熱など、風邪などの病気には絶対に掛からないはずなのに。
「あら、どうしたの? 顔が真っ赤ではありません?」
「――な、なんでも・・・ないっ」
次第に息を切らしながら、ぼーっとするこの視界に延珠の足元がふらつく。この症状は金髪少女に出会った時からであり、先ほど感じた胸の高鳴りも気のせいとは思えないくらいに今は間隔を短くして刻んでいる。
・・・な、なんだ・っ、 頭がボーっとする。
どう考えても普通ではない。自分の体でこれまで起こり得なかった異常が起きていることに、延珠は不安を覚えた。
「安心しなさい。何も死ぬようなことではありません」
ふと、金髪少女が延珠の頬に手を添えた。突然の出来事であったが、延珠の不安が一瞬だけ和らぐ。その手は優しく頬を伝うように、延珠の首の後ろに手を回された。抵抗も何も、そんな力もなくしたかのように、延珠は彼女に引き寄せられてしまう。
「お願いがございますの」
「ひゃっ・・!!」
引き寄せられた矢先、延珠の耳元に少女の冷たい息がかかる。ただそれだけで囁かられた艶かしさを感じるその言葉と共に延珠の頬が一層と赤熱し、身を電気が走ったかのように震わせた。
「う、あうぅ・・・っ!!」
大きく呼吸して、肩が上下に揺れる。原因が依然として分からないまま、延珠は霞む視界の中で最後に少女の目を見た。
―――少女の瞳は紅かった。
「実は私、とてもお金に困っていますの。貴女、今おいくら持っているのかしら? そのお財布に」
艷やかな笑を投げかけると延珠はとろん、と溶けたような表情でなんとか口を動かす。
「し、しゃ、しゃんまんえん・・・でひゅ」
「あら凄いじゃない」
両手を合わせて歓喜すると少女は延珠に向けて手を伸ばした。満面の笑みを浮かべて、
「くーださいな!」
「は、はひぃぃ・・・・」
言われるがままに財布から万札を取り出す延珠の瞳には既に自分の意志は宿ってはおらず、少女の手にその三万円を乗せていく。
「ひぃ、ふぅ、みぃ・・・まーいどっ!」
「ふぇ・・」
フラフラとよろつき、頭を揺らす延珠の頬に軽くキスをして、少女はスカートの裾を軽くつまんでその場所から走り去っていく。
「Addio(アッディーオ)!!」
陽気に手を振ると、延珠も訳が分からず手を振って応じてしまっていた。微睡んだ視界で彼女は数分ほどその場にいた。
「・・んあ」
漸くマヌケ時空から脱出した延珠。時間にして十分ほど、彼女はその場に立ち尽くしていた。口から垂れている涎を拭きながら彼女は思う。
「妾は、一体・・・何をしていたのだ?」
思い出せない、自分は藍原延珠で、今日カードを買いに来たという事実を除いて。なぜあの場所で一人立ち尽くしていたのかが。
・・・誰かに、会ったような。
その時、延珠は自分の手にまだ取り出す段階ではない財布が握られていたのを見て、恐る恐るその中身を確認。息を呑んだ理由は財布の口が空いていたからだ。当然、その財布の中には今日用意していた軍資金の諭吉三人が存在しておらず、
「うわああああああああああああああああ!!妾の三万円がぁぁぁあああ!!」
東京エリアの空に、藍原延珠の絶望を孕んだ絶叫が木霊した。
●
「・・・ったく、こんな所に呼び出しやがって」
どこかで少女の叫びが聞こえていた同時刻、昼休憩中の八洲許は墨に指定されていた場所へと足を運んでいた。
「いいじゃねぇか。昼時でも勤務中でもお前は基本暇人だろう」
「別に構わねぇんだが・・・なんだってこんな気味悪い所に」
周りを見渡して人気のなさに気づいた八洲許。この指定された場所は以前影胤と一度遭遇した場所だった。前日にあの気味の悪い仮面の男と出くわした事を思い出して、因縁じみたモノを感じる八洲許である。。
「晴らし人希望者ってねぇ・・・」
煙草を口に加えて、彼は昨日の電話の内容を思い出す。美濃から伝えられた内容は、晴らし人になりたい人がいる、という事だった。
これまでの八洲許の経験からして、何度かこう言った知らぬ者がチームを組もうと提案してきた事があった。横にいる伊堵里墨も、その一人である。
他の仲間も勿論居た。自分よりも年配の男から、口うるさい女性の晴らし人もいた。今この場にいないのは、チームガストレア大戦時に散り散りになって逃げ延びたか、どこかでくたばったかの二択である。
「ここらで一人、年配が欲しいぜ」
八洲許は最近のチームが補強された事には最初は違和感を有していた。確かに七海や美濃のように呪われた子供が仲間になることは戦力が増える事に依存はない。だが、八洲許や墨のように子供達を監視する者が少ないというのが事実だ。
自分や墨が仕切っている間はまだいいだろう、だがそれは必ずしも『ずっと』という訳にはいかない。再生能力がない自分や墨などはいつどこで死ぬかわからないのだ。その時の監督役を引き継ぐ人間が出来れば望んでいた八洲許であった。
「んで?その希望者ってのはどこにいるんだ墨」
「あ? そうだな」
頭を掻いている墨に八洲許が問うと、彼は視線を遠くに移して指で示してから言った。
「お前ェの後ろ」
「へ?」
口の形をまさしく『へ』の字にした八洲許が振り返ると、そこには自分に向けて右手に細長い得物を持った男が振りかざしているのが目に入った。
「うおおお!!」
男が持っている物体の先が光ったことから武器だと察した八洲許はすぐさま彼の両手を掴み、その流れ男を背負投の要領で地面へと投げ飛ばした。
「ぐへぇ!!」
コンクリートの地面に激しく背中を強打した男がうめいた声をあげた。男の武器であろう細長いものが地面に音を立てて転がる。それは女性の髪留めによく使われている簪という物だった。”大理石の床で柔道はマジヤバい”という言葉がある。基本受身が効かないこの硬い地面では投げ技は危険だという事を皆は覚えておこう。
「得物は簪か―――って、おい墨。こいつはどういうことだ」
「どうって、俺が昨日言ってた晴らし人希望者」
袖に両手を隠した墨は目を細める八洲許の視線を気にすることなく欠伸をしてみせていた。八洲許は背を打ち付けて動けないでいる男を指差して、
「どう見たってガキじゃねぇかッッ!!しかも金髪ッ」
床に倒れている男が背中をさすって立ち上がる。髪は短めだが金髪というポイントが八洲許には印象が残ったかもしれない。金髪の青年は泣きそうな声でずれていた眼鏡を元に戻すと、
「す、墨の旦那ァ! このオッサンすげぇ強いじゃんかよ!!」
「おぉ、そりゃ強いよ。武器が無くて良かったな、こいつが武器使ってたらお前、今頃ナマス切りにされてたぜ」
ええ・・、と八洲許の方を見て恐怖の視線を向ける金髪の青年は息を呑んでまたしても身を屈める。まだやる気があるのか、と八洲許もファイティングポーズを取ろうとするが後ろに居た墨が声を上げた。
「おうおう、辞めろよ二人とも。 それに東 秀(あずま ひで)くん、別にこのオッサン相手に殺し合いしろって言ってんじゃねぇんだ。ただちょっと背中から驚かせてみろって言っただけなのに」
「やっぱりテメェがけしかけたが原因かッ このクソ坊主!!」
「♫~♫」
怒鳴り声に墨が”知りませーん”と言った遠くを見るような表情で耳を塞いでいた。本気で殺意が湧いた八洲許である。
「・・・お前、見たところ高校生ぐらいか。なんだって”晴らし人”になりてぇんだよ」
お互いに構えを解いて、八洲許が東と呼ばれる青年に問いかける。晴らし人や殺し屋など、裏稼業に身を落とす人間の事情は人それぞれだ。その理由を秀は淡々とした口調で、
「金が欲しいんだ」
そう言ったのに対して、八洲許は頭を掻いた。たまに殺人に対して享楽主義を抱いた人間がいるが、この青年はその類ではないということが八洲許には分かる。これは長年晴らし人を続けてきた彼が養った眼力というものか。
「・・・別に殺しを楽しもうっていう狂ったやつじゃねぇのは分かるが、この仕事をバイト感覚でやってもらっちゃ困んだよ」
「違う! そんなつもりじゃない!! 俺はただ家族を養う為にッ」
食い下がる秀に八洲許が動きを止めた。くるり、と身を翻して東に迫った八洲許は彼の肩を掴んだ。
「帰れ」
痛みで東の顔が歪むもの承知の上で、八洲許は真剣な表情で言うのだ。
「家族はそうやって養うもんじゃねぇ」
そのまま両肩を押し、東はその剣幕によって何も反応ができなかったか、腰を抜かしたように地面に尻餅を着いた。
「今日の事はなかったことにしてやる。死ぬ気でバイトすりゃあ高校生でもそれなりに稼げらぁ・・・いくぞ墨」
ビルの壁を背にもたれかかっていた墨が頭を掻きながら尻餅をついている東に手を振っている。余計な事はするなと言わんばかりに八洲許の視線が墨を睨みつけた。
・・・事情はよく分かるし、俺が言えたことじゃねぇんだが。
八洲許は小さく溜息をついていた。確かに今の秀の言うような、家庭の事情を解消するために裏稼業に身を落とした者を彼は何人も見てきている。両親が病気だの、手術代が欲しいだの、生活のためだの、あげて言ったらキリがない程に。
だが、それでも人を殺してまで家族を養うべきではない、と八洲許は考える。こうした裏稼業で命を落とせば、残されたものは更に深い悲しみを負うだろう。それと同時に、家族に自分が汚れた仕事をしていたことを知られて、更にショックを受けるはずだ。もっとも、八洲許の場合は辞めように辞められない所まできてしまっているからだろうか。
それは家族を持っている殺し屋・八洲許勇次だからこそ言えることなのである。東というこの青年はまだ若い、高校生ならばまだやり直しが効く。無理して道を外す必要はない。その意味を込めて、彼は拒絶した。八洲許や墨の二人が思う、これだけ言えば彼はもう諦めてくれるだろう、と。
「お願いです」
芯が通った声が後ろで聞こえて、八洲許は足を止める。振り返ると、そこには土下座をしてた東の姿があった。
「・・・俺を晴らし人に、仲間に入れてください」
その土下座は十代の若者がするような土下座ではなかった。頭部をしっかりと地面へとつけ、伸ばすべき場所をしっかりと伸ばし、腰の位置も揺らさない、精錬された土下座である。
・・・この野郎ッ、そこまで金が欲しいのかよッ
自分もかなり金に対しては強欲な性分だと八洲許は理解している。それでも、この青年から感じられるお金への執着は八洲許より高い。 だが、それ以外に感じるものがあるのは・・・
「・・・守りたいヤツがいるんだとよ。 裏事情持ちで、コイツはもう十人は殺ってる・・・」
「・・・フリーの殺し屋か」
心を読んだかのように、隣にいる墨が答えた。その言葉を聞いて、耳を疑った八洲許である。この年で、既に人を殺した経験を持っているとは、世の中まったくもって分からない物だと。
「・・・ちょっと墨、お前なんか変に肩入れしてねぇか」
「別にぃ~」
両腕を後頭部に組んだ墨は陽気にそう言う、八洲許は少しでも同情しかけていた自分を律するように目を再度見開いてから後ろの秀を視界に納めないように前を向いた。
「・・・関係ねぇ、俺は帰るぞ」
そう言い放って、彼は怒りを表すように歩幅を広げて去っていった。
「・・・くっ」
目的の自分が去って行ったことに、東は唇を噛み締めた。せっかく”目的”を果たす為のチャンスを手に入れたというに、何も出来なかった自分に対して拳を強く握り締めた。
「おう秀、何モタモタしてんだ。いくぞ」
と、悔しさに支配されつつある秀の肩を叩く人物がいる。秀をここに連れてきた張本人、伊堵里 墨だ。彼は不敵の笑みを浮かべて続ける。
「追いかけるぞ。こっからは根性の勝負だ」
「で、でもよぉ旦那ァ。 あの人、かなり頭かてぇよ」
弱気な発言を聞いた墨は一度舌打ちをして、秀の頭を引っぱたいた。予想以上に力が強くて、地面にまた叩きつけられるように土下座をしたのは言うまでもない。
「いいかぁ、向こうが頑固の頭ならお前ェ、こっちもそれ以上の・・・石頭になるしかねぇんだよッ 折れたら負けだ、金が欲しいんだろ?」
「そ、そりゃあ欲しいけど・・・」
「ならさっさと行けっつってんだ!!この根性無しロリコン小僧ッッ」
「アッ―――――!!」
トドメとばかりに、墨の蹴りが秀の尻に炸裂し、彼の悶絶声が路地裏に響き渡るのだった。
●
「なんだろう、今日はやけに騒がしい気がする」
そう物騒な事を口にして道を歩くのは七海静香だ。ポーチを肩に掛け、彼女もまた天誅ガールズの新カードパックを買うためにその祭典に参加すべく行きつけの書店へと向かっていたのだった。
どうしてか、無音の筈なのに各地で色んな叫び声が聞こえた気がしたのだ。
・・・もう延珠ちゃん、パック買っちゃったのかな。いや、あの娘の財力からすると
不安がよぎる。七海の友達である藍原延珠は、以外に金持ちだ。一度、彼女の家にお邪魔したことがあるが、八万するロデオマシンが置いてあり、机の上には十万程の価格がつくノートPCが存在していた。一見アパートは七海たちが住んでいる”山根荘”とタメを晴れるものでないかと思っていたが、まさかのブルジョアジーアピールだったので、彼女が『箱買い』という禁じ手を使用する可能性が高い。
・・・だが、私には小遣い三千円と、勇次から教えてもらった『レア抜き』があるッッ
拳を握りしめて、彼女は笑みを浮かべた。彼女の言う『レア抜き』とは、カードパックを触ってフィルムとカードの間が滑りやすければレア度の高いカードが入っているという、お店側にはホントマジで迷惑極まりないサーチ方法である。
勿論、そんなゲスの極みとしか言い様がない方法でレアカードを探すのは理由がある。それは、彼女が敬愛している天誅ガールズのメンバー、天誅バイオレットが理由だ。
・・・バイオレット! 私の憧れ! 例え『皆の踏み台』と周りが罵ろうとも、私は一生バイオレット命で押し通します。
信仰心というのは全くもって危険な物だと、七海は思う。自分の信仰する物の為に、これほど人は手を汚く出来るものなのかと。まさしく暗殺業をしている自分にとってふさわしい物だ。外道というには、かなりチープな手を用いているが。
・・・力(レア抜き技術)こそが正義ッ いい時代になったものだッ!!
どこかの南斗六星拳の使い手でお人形遊びが好きな殉星の男の如く、七海は不敵に鼻を鳴らす。想いを巡らせていると目的地間近まで近づいた。数百メートルという距離を走れば、神の祭典が行われている店はもうすぐだ。
嬉々とした笑みを浮かべ、一段と加速しようとしたその時、
「そこのお嬢さん」
「おっとっと・・え? 今私を呼んだ?」
横にあった一本の電柱から呼び止められた気がして、七海は前のめりに倒れそうになるがなんとか急停止。この忙しい時に何用だと彼女は不満を抱きながらも声のした方向を振り返る。
「Buon giorno(ブォン ジョールノ)・・・私(わたくし)、コーデリアと申します。ちょっとお願いを聞いてくださる?」
振り返った先に居た黒ドレスの金髪少女が笑顔をこちらに向けていた。
レア抜きはマジでお店に迷惑かけちゃうから皆出来るだけやめちくり~。