ブラック・ブレットー暗殺生業晴らし人ー   作:バロックス(駄犬

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 一話で総文字数24000文字ってなんだコレw 最後のところだけ妙に長くなっちまった。
それではうすっぺら殺人の種明かしをご覧下さい。



~民警無用~③

 夜の9時過ぎというのは、夜にしてはまだ明るいほうだと夜の男たちは言う。 東京エリアの繁華街のことを指すが、この場所は夜のお店や街灯などによって自然と暗闇とは無縁の場所である。

 

 逆に、まったくもって静かな場所もある。それは、19地区の西に電灯が一本だけ立っている不気味な広場、別名『呪われた広場』だ。

『呪われた子供たち』が昔、大量に惨殺されて捨てられていた広場だったという噂が流れているがあくまで噂なので気にしない人もいれば気にする人もいる。

 

 まぁ噂の評判というのはかなり高いようで、夜に灯りが消えてる日は惨殺された『呪われた子供たち』の霊が彷徨っている日で、近づくものには呪いを与えるとかどうとか。

 

 

 その静かな広場に一人佇んでいる男がいる・・・ジェラルミンケースをぶら下げた浜田 由紀夫だ。もう片方の手に持った携帯電話で誰かと通話している最中である。

 

 

「・・・というわけだ。 警察の狙いも大きく外れてしまったこともあってか、この『民警殺し』はかなり大事になりつつあるよ。 近々、大掛かりな捜査も行われるみたいだ蓮太郎くん達も気をつけた方がいい」

 

『そうだったのか・・・大丈夫なのか? 浜田さん、あんたのところの部下もやられたんだろ?』

 

通話の相手は蓮太郎だ。

 

「・・・木下さんもこの仕事に就くからにはある程度覚悟してただろうね。 ただ悲しいよ、真面目で、正義感が強くて優秀な人だった」

 

 真上で輝いている電灯を見つめる。何匹かの蛾が光に誘われて辺りを浮遊していた。

 

「彼の無念を晴らす・・とまで行かないかもしれないけど、犯人は必ず捕まえてみせる」

 

『民警だからどこまで手を貸せるかわからないけど、力が必要になったら俺たちにも手伝わせてくれ・・・・ところで、どうしてこんな時間帯に電話を?』

 

 

そうだった、と浜田が目的を思い出してその問いに答える。

 

「遅くなったけどこの前の仕事の報酬金が用意できたんだ。 実は僕は明日から別の地区へ出張しなくちゃならなくて・・・今のうちに渡したいんだ」

 

『ああ、そういうことなら・・・じゃあ今すぐにでも』

 

「そうだ、来るときは延珠ちゃんも一緒でね・・場所は、19地区の西にある広場だ」

 

そう言い終わると蓮太郎の返事を待たずに彼は携帯の通話を終了させる。

 

 

「・・・ふぅ」

 

 大きく息を吐く浜田は携帯をポケットの中へと戻すと暫くして体をくの字に折り曲げた。 思わず持っていたケースを落として小刻みに肩を震わせる。

 

 

両手で顔を隠して必死で何かをこらえるようにしていた彼が零したのは・・・。

 

 

 

 

 

 

「クククッ・・・ば~か」

 

 

卑しいほどの腐った笑みだった。

 

 

 

 

・・・いいよなぁ、ああいう馬鹿で正直な民警くんはさァ! とてもとても、とっっっっても利用しやすい!

 

地面に落ちているケースを拾い上げる。 報酬として渡す金額として札束を入れたが、それを浜田は愛おしそうな目で見つめながらそれを抱きしめた。

 

 

・・・誰が貴様ら『民警』なんぞにこの金を渡すものかァ! これはなぁ、『俺ら』がこの世界でのし上がるために必要な裏金なんだよォ!

 

 

 

 

 

「木下も哀れだよなぁ、俺が『民警殺し』の犯人だったのを気づいていたならただ黙ってさえいればいい物を。 待ち合わせを指定したら真面目だからホントにその場所に『一人』できやがった!」

 

浜田の笑いは止まらない。 そこにある男の姿はまるでお笑い番組で変にツボってしまった視聴者の姿そのものだ。

 

「そこに殺し屋(スナイパー)が待ち伏せてるとも知らずになァ!」

 

 

・・・後は、あの不幸ヅラのアホな民警君がここに来るのを待っていればいい。 そしたらいつもの通り、スナイパーとの連携でッ

 

 

手の形を銃に変えて撃つ素振りをした。 簡単なシュミレーション、だがこれをこなすだけで自分に高額な報酬金が丸々入ってくるのだ。 もう人に引き金を引く事に対してなんも重みも感じない。

 

「まだかなぁ・・・ん?」

 

 

まるで遠足を待つ子供のような笑みを浮かべていた時だった。 遠くの広場の入り口から、一人の男がゆっくりと入ってくる。

 

 

・・・もう来たのか? いやまて、あれは誰だ。

 

浜田が疑問を浮かべたのはまず容姿だ。 ゆっくりと入ってきたその男の身長は180以上はある。 里見蓮太郎の身長と一致しない。 

 

ペアであるイニシエーターを連れて来いと言っていたのに、一人なのもだが極めつけはその長身に合ったコートだ。

 

 

・・・誰だ。

 

 

 

 やがて、浜田の頭上にある電灯にその影が近づくにつれて、その姿は明らかになっていき、彼は目を細めた。 その人物が来ていたコートが深緑だったという事もあって、浜田は一瞬で見当がつく。

 

 

 

「八洲許・・・?」

 

 

「よう『民警殺し』の浜田くん」

 

 

浜田とは違った笑みを浮かべた安元がそこには立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕が『民警殺し』の犯人だって? 一体なんの冗談だ?」

 

 

内心で焦りながらも表に出さないように浜田は思考を停止させないように努めた。 冗談だったとしても、なぜそんな答えを、この男が出せるのか、と。

 

「とぼけちゃあいけないや」

 

と、彼は自身の首を捻った。 関節が固まっていたのかゴキゴキ、と鈍い音がなる。

 

 

「実はさぁ、勝手に君の通帳調べさせてもらったんだけどさぁ、最近すっごい莫大なお金が君の所に流れ込んでるねぇ、なんと総額5500万円超!」

 

「き、きさまいったいどやって! い、いや・・・だから、それがどうした!」

 

思わず、息を呑む。 浜田は一斉に溢れ出した汗、そして身を包む寒気に対してすぐさま平常を装ってみせた。そうでもしなければ、不当な金だということを認めてしまう。

 

「これさ、多分だけど・・・殺害した民警に支払うはずのお金だったんじゃないの?」

 

八洲許は大きく手を広げて続けた。

 

 

「お前には協力者がいるな? 軍の関係者か、その手の人間か、もしくは・・・遠距離支援型のプロモーターが」

 

手順は非常に簡単だ。

 

 まず、狙いを付けたのは小さい民間警備会社。 理由は殺しのリスクが減るから。 自営業のような形でやっているのなら、完全に金をもらうにはここを狙うしかない。 そういった民間警備会社は仕事に困ってるから、疑いもせずに飛び込んでくるだろう。

 

 依頼が終わったら今回のように、人気のない場所に誘い込む。 だがそこは、腕利きのスナイパーがお待ちかねだ。 

 

 

 後は流れ作業、いつものようにプロモーターの方から頭を狙って一撃必殺。 中には勘のいいイニシエーターがいるからケースを渡して手がふさがっているのを確認してから狙撃。

 

 

「どうだァ、うすっぺらい殺人の手口だァ、ミステリーの欠片もないが許してくれ。 民間警備会社の仕事の依頼を全部自ら行ったのはまずかったな、どう考えても不自然だぜ・・・お前の担当した民警だけが後日死ぬってのはよぉ」

 

 

 

両手の手のひらを広げて、彼は年甲斐もなく舌をべろん、と出した。 完全に馬鹿にされていた浜田であったが彼の場合はもうそれどころではなかった。

 

 

「証拠はァ! 俺がやったていう証拠はあるのかァ!」

 

「お前・・・それ探偵漫画だとフラグなのに」

 

と、八洲許が取り出したのは一本のケータイだった。 頭に疑問符を浮かべた浜田が、首を傾げる。

 

 

「これはなァ、木下の携帯だ・・・アイツが殺された時、その実況中継を生で聞いていた人がいるんだよ」

 

 

それはな、と彼はその携帯を開いた。 その履歴には『木下 妙子』と表記されている。

 

 

「あいつもただでは死ななかったってことだ。 奥さんとグルになって、お前が犯行を白状するところから木下を殺して高笑いするところまでのその音声は録音されてたんだぜ? たいした夫婦だ」

 

「ばァかァなァッ! あの野郎ッ 余計なことしてくれやがってぇぇぇ!!」

 

 

先程からすでに理性の枠から外れた浜田の表情はとても冷静とは言えなかった。 ポマードで固められたオールバックヘアーを指でかき乱し、顔を真っ赤にしている。

 

 

・・・どうするッ! もうこの男を生かしておけないッ!  殺すしかないッ!

 

最終手段として、彼は右手をあげようとしていた。 この右手をあげるだけで、800m先で待機している彼の相棒であるスナイパーはこの男を射殺してくれるだろう。 

 

それも簡単に、いつものように。 

 

・・・殺すッ!

 

その為の右手を、肩まであげた時だった。

 

「なァ浜田くん」

 

そんな様子を見ていた八洲許が唐突に口を開いた御陰で、浜田の腕の動きがピタリと止まった。

 

 

指が、輪っかを作っているのを見て、浜田は腕を下げた。

 

 

「俺にいくらかくれない?」

 

 

「はッ!?」

 

 

本当に唐突だったためか、浜田は面を食らった。

 

・・・何を言っているんだコイツは!

 

 

「いやぁ、俺も悪魔じゃないからさぁ金額によってはこの一件黙ってやっても・・・」

 

 

「俺をゆする気かッ!?」

 

 

「違う違う、俺と組もうぜ浜田くん」

 

 

・・・正気かコイツッ!?

 

「ほら、俺も今月ピンチでさァ、 俺もいい年だ。 娘もいるし、もうちょいしたらこの仕事もお役御免だ。 でも月のお金は殆ど『嫁』の懐よ・・・わかるだろ? ちょっとお小遣いが欲しいのさ」

 

 

よく警察官が務まるな、とツッコミを入れてみたかったが、自分も人には言えないと気づいた浜田はそのまま何も言わず考えた上で内心、勝利を確信した。

 

 

・・・勝ったッ。

 

 

心の中で安堵する。 どうやって殺人の手口や金の流れを調べたかは分からないが、このまま彼を利用し続ければ、自分の野望が近づく。

 

 

「俺が提供するのは『殺しの現場』。 俺がガストレアのガキどもを始末してるのは知ってるだろ? あんま人に見つかんない絶好の場所があるのよ・・・長い経験の上に裏付けさせた信頼度は保証するぜ。 お前にも必要なんじゃないのか? 『絶対に足がつかない殺しの場所』・・・遺体を眩ませた行方不明にさせる場所を俺は腐る程知ってるぜ」

 

 

この男は知っている。と浜田は感じ取った。 行方不明という形が一番、捜査にとって難しいことを。

 

これからのこの裏の仕事で、奥の手は必要だ。 絶対に足がつかない、それは浜田にとって魅惑の一言につきる単語だった。

 

 

「い、いいだろう!」

 

 先程までの動揺を完全に消しされないままでも、浜田は充分な判断をする冷静さを取り戻しつつあった。それを見た八洲許も、にっこりとした笑顔で手を差し出す。

 

 

「おお、やったぜ。 握手握手、和解&同盟の握手」

 

 

 不本意だったが、耐えるのは今だけだ、と浜田はその手を握る。己がいつか磐石の地位を築いた後で、この男を始末すればいい。彼はそう考えた。

 

 

その手を握った八洲許が笑顔のまま口を開く。

 

「ひとつ聞きてぇ、プロモーターの方から先に殺るのはなんでなんだ?」

 

「ん? ああ、それはなァ聞いてくれよ」

 

 手をとった浜田が笑いながら続けた。完全に安心していた彼にはもう先ほどのように笑うほどの気力が戻っていたらしい。

 

「最初はひとつの実験だったんだけどよ、プロモーターの方から殺すとだなァ、イニシエーターって奴らは必ず冷静な判断を失う・・・イニシエーターってのははぶかれものだ。 それを認めてくれる存在のプロモーターに、奴らは酷く依存する・・それこそ、『調教』されてるってレベルでさァ」

 

 

またしても、浜田は卑しい笑いをこらえた。 だが、そのまま話し続けたので、ヒヒッという声が混じりながらだ。

 

 

 

「あいつら(イニシエーター)ったらさぁっ・・・ひひっ、自分の頭に銃口突きつけられてるのにっ、気づかないでいやがんのっ! 鼻水と涙にまみれながらさ、死体にっ、話しかけてんだぜ!? 『ねぇ起きて、起きて!』とか! 『死なないで!』ってぇっ! 傑作だったよ!」

 

 

「・・・・・」

 

 

見た目は、心に反するとかなんか、彼の頭は既に狂っていたのだろう。 笑いすぎて涙目まで浮かべていた浜田の手を離した八洲許は目を細めて――――。

 

 

 

 

「そうか」

 

 

静かにそう言った。 

 

 

「ははっ八洲許、そう言えば『金』の話ししてなかったなぁ? いくらだ? いくら欲しいんだ? 200万でも300万でもくれてやるぞ?」

 

 

はてさて、と八洲許は頭を掻きながら考える。 そして考えをまとめたか、顔を伏したままの彼は小さく、わざと聞こえないようにして呟いた。

 

 

「・・・全部」

 

 

「・・・なに?」

 

 

顔を伏せていた八洲許が顔の八洲許は小さく浮かべた笑みで改めて浜田に言った。

 

 

 

 

 

「5500万・・・・全部」

 

 

その瞬間、浜田の全身に悪寒が走った。

 

 

「ッ!!・・・は、葉隠(はがくれ)ッ!!」

 

どこから持ってきたと言わんばかりには垂れる殺気に思わず、彼はこの広場の外でライフルを構えているであろう元プロモーターの男の名前を呼ぶと同時に、ライフル発射の許可を出す右手を完全に空へとあげた。

 

その合図に従って、目の前のこの男が、頭から血しぶきを上げながら倒れるはずだった。

 

 

だが、倒れるどころか、協力者であるスナイパーの銃弾がいまだこちらに届いていない。

 

 

「!? どうした葉隠ッ、 なぜだ!? なぜ返事をしないッ!?」

 

 

必死に携帯を取り出してそれに呼びかける浜田だが、それとお構いなしに目の前の八洲許は続けた。

 

 

「お前さん、『晴らし人』って知ってるか? 晴らせぬ恨みの為に、金をもらって人を殺す職業さ」

 

「な、何言ってんだ・・・そんなものが存在する訳がッ 都市伝説だッ!」

 

「良かったなァ浜田。 お前の命は、200万だ・・・納得いかねぇが」

 

 

その言葉に、浜田はケースを手放して背にある電柱にしがみつきながら、懐から拳銃を突き出した。

 

「き、来てみろォ・・・う、撃つぞ!」

 

構えた浜田に対して、八洲許は冷静だった。

 

 

「真面目に働いて無残に死んでいった木下のことを考えると、この俺が直接手を下してェのは山々なんだが・・・生憎、お前さんの恨みを買っちまった奴が『もう一人』いてな」

 

 

余裕を見せつけるように、彼は両のポケットに手を突っ込んでみせた。 武器が飛び出すのかと一層浜田が彼を警戒し、引き金をひこうとした時だった。

 

 

 

「がぎっ、な、なにぃっ・・・・!?」

 

浜田は、己の体に何か異物が入り込んだのを感じた。 異物は酷く、冷たく、そしてそれは自分の心の臓を的確に突き刺し、体を貫いている。

 

 

 

左胸から突き出ていたもの・・・それは、刃。

 

 

ナイフなんてそんなちゃちなものじゃない、ナイフにはない切れ味を限界まであげた薄さ、歪みなくまっすぐ伸びているのは・・・刀だ。

 

 

「な、なんでェッ・・・!?」

 

 

溢れ出る血液が地面へと流れて大量の雫を作り出す。 刃を手に握りながら首を動かした浜田は自分を刺したその人物を見て驚愕するのだった。

 

 

否、まず本当に『ヒト』という種なのかと疑った。

 

 

まるで江戸時代を彷彿させるを白の着物の上に羽織った黒の羽織、腰から下は赤の袴。

 

それを身に纏っているだけでも異質なのだが、それよりも気になったのは電灯に照らされているその髪だ。光を浴びて輝く白銀の髪は腰の部位までに伸びており、背後からでも十分確認できる『呪われたこども』に現れる真紅の瞳。

 

そして最後に目を引いたのは、頭部からぴょこん、と出ていた動物の耳だった。 

 

 

「お゛、お゛ま゛え゛ぇぇぇっ!!」

 

口から血の泡を吹き出す浜田をじっとその紅き双眸で見つめたその少女は、突き刺していた太刀を捻りながら、更に深く突き刺した。

 

激痛とともに持っていた拳銃も地面へと落とし、苦痛の表情を浮かべた彼を少女は鋭い眼光をより殺気立たせて言った。

 

 

 

 

 

「ドブネズミ・・・・死ねッ」

 

 

そう吐き捨てて、少女は突き刺していた太刀を一気に引き抜いた瞬間、物言わぬ体となった浜田が静かに前のめりに倒れ込んだ。

 

 

倒れ込んだ浜田に近寄ったその少女は、コートの端を一枚の布で挟んで持ち上げると、コートの端を刀に被せてその真っ赤に垂れている血を拭い、その後で刀を収めた。

 

 

「地獄で会おうぜ、浜田」

 

もう絶命している浜田に、八洲許はそう呟くと目の前で鮮やかな殺しを繰り広げた少女が八洲許へと駆け寄る。

 

 

「勇次・・・終わったよ。 向こうの人も、仕留めておいた」

 

 

さっきまで『ドブネズミ』と吐き捨てながら殺しを行っていた少女とは思えないような柔らかさのトーンでそう言う少女が、紅い瞳が解かれた瞬間、彼女の体に変化が起きる。

 

数分前までは光を浴びて輝いていた白銀の髪の色が短くなると同時に変色していき、やがては首あたりまで縮んでしまう頃には艶のある茶色になってしまった。 

 

頭部に生えていた耳も今はどこへ行ったのか、引っ込んでしまっている。

 

 

「仕事は終わりだ・・・帰るぞ七海(ななみ)」

 

首を鳴らした八洲許は七海にそう言うと、彼女が横たわっている浜田の死体を眺めて動かない。

 

 

「どうした七海、ほかの奴らが来る前に帰るぞ」

 

「ねぇ勇次、さっき言ってた『地獄で会おうぜ』ってどういう意味なの?」

 

八洲許の顔を見た七海の表情は心配をしていると言った表情だった。

 

 

「勇次は地獄に行かなきゃならないの?」

 

「んーとなぁ、昔のご先祖さまが言うには、『人の命を頂くからには、いずれ私も地獄行き』っていう言葉があってなぁ」

 

えー、という七海が腕をぶんぶんと振った。

 

 

「それじゃあ私も地獄行きなの?」

 

「おおとも、だけどせめて最後は暖かい布団の上で死にてぇよな?」

 

うん、と七海が頷いくと、八洲許も続けた。

 

「野垂れ死には御免だ。 だから無事に歳とって死ぬまでは―――――」

 

「めいっぱい生きるんだ」

 

「分かってるじゃねぇか。 つまんねぇ事、いつまでも気にすんな。 あの世で木下もありがとうって言ってるだろうぜ」

 

 

帰るぜ、と言わんばかりに八洲許は七海の頭に手を当てて、くしゃくしゃとかき乱す。

 

「待って・・・お祈りだけ」

 

 

振り向いた視線の先にある浜田の遺体を七海は目を閉じて両手を合わせた。

 

 

・・・まだまだ甘い、か。

 

殺した相手には『殺されても仕方ない』理由がある。 罪を犯した悪党は、問答無用で地獄行きだ。 成仏など出来るはずがない。

 

だから、殺した相手に御免なさいは八洲許は行わないのが信条なのだが、この少女は優しさを持ってしまった為か、今まで殺してきた相手に必ず両の手を合わせている。

 

だが、それが彼女の持つ、七海静香たる所以なのだろう。

 

 

気が済んだのか、七海がこちらに戻ってくるのを見て、八洲許は歩き出した。 それを追って少しだけ七海が駆け足になる。

 

 

「ねぇ勇次、そろそろ私ばっかりに仕事させないで、ちゃんと働いて」

 

「え? やってるじゃん、捜査とコロンボ並みの犯人の追い詰めを」

 

「私命のやり取りしてるじゃん! 一番怖いの私なんだよ!!」

 

いやいや、と手を振って八洲許は七海の言葉を否定した。

 

 

「怖がってる人は、後ろからブッ刺して『ドブネズミ、死ね』なんて言いません」

 

「あー言えばこう言うし! 私これじゃ殺人狂と思われちゃうよ!」

 

 

 

 

 

 月夜の道に照らされて二人並んで帰路へとつくその姿は、どう見ても親子のそれだった。 二人はまた明日、いつもの日常へ戻るだろう。

 

 

――――八洲許は表でうだつのあがらない昼行灯刑事として。

 

 

――――七海はただの人間の元気な小学生として。

 

 

 

だが人々の恨みを晴らす為ならば、二人は裏の暗殺稼業の晴らし人となり、許せぬ悪を裁くのだ。

 

 

 

この物語は、殺しの業に身を焼きながら、それでも”生きる”という願いを胸に、破滅の運命に抗い続けた者たちの物語。

 

 

 

 




取り敢えず、一話終了。多分ですね、長編のシリアスくらいしかまともな必殺を描かないかもしれません。 今は仲間がいません、一緒に依頼金を持って行ってくれる仲間がいないので仲間集めを中心に進めていきたいと思います。 

あと、シリアスばっかもあれなんで勾田小学校と高校でギャグ回でもやってみようかと思います。

あぁ~、早く夏世ちゃんを書きたいぜ(迫真)




―――――――次回予告。


木更「いつものように勤務していた八洲許刑事はお昼休み中に義手義足義眼の高校生に捕まり、ボコボコにされます」


蓮太郎「アレ、これって俺のことじゃね」


木更「笑い続ける八洲許を『お前ホント主人公か』ってくらいに容赦なくタコ殴りする里見くん。その姿はまるで街に迫りくる巨人を狩る兵士の如くッ!・・・この一方的なワンサイドゲームの果てに、里見くんが見たものとは!?」

延珠「イェーガー!!」

蓮太郎「俺の名前出ちゃってるよ木更さん!」

木更「次回、暗殺生業晴らし人~八洲許、高校生にボコボコにされる~」

延珠「この仕事、仕掛けて仕損じ無し!」

蓮太郎「なんだろう、次って俺が悪役のパターン?」
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