妄想日本国召喚   作:石原

12 / 28
 今回は外伝です


第七話  敷かれたレール

 創始者預言 第7章 救いの章

 

 

 魔が総力を結集し、王国に襲いかからんとする時、エスペラントは滅びの危機に瀕す。

 

 空より現れ、傷ついた導きの戦士、その鬼神のごとき強さをもって、王国を救わんとす。

 

 勇敢に戦うも、強き、数多き魔軍の群れを前に誰もが諦めし時、再び奇跡は起こる。

 

 導きの戦士によって導かれ、太陽神の使いは再び舞い降り、その強大な魔導をもって魔軍を滅す。

 

 王国は太陽によって導かれ、長きに渡るエスペラントの黒き時代は去り、誰もが明日に希望を持つ国となり、光の時代が訪れるだろう。

 

 導きの戦士は傷を癒さんとした乙女を伴侶とし、王国の繁栄の一助となるだろう。

 

 

 

 ・・・ ・・・ ・・・

 

 

 

 中央歴1640年6月11日

 日本政府、パーパルディア皇国から竜母を借りてカルミアーク王国へ使節を派遣。

 6月12日

 マウリ・ハンマン侯爵、反乱を起こして王都アルクールへ進撃を始める。

 6月21日

 カルミアーク王国軍、マウリ軍との戦闘に敗れ敗走。

 6月23日

 マウリ軍、王都へ侵攻。

 日本国防軍、パーパルディア皇国軍の救援により、マウリ軍は敗退。

 後日、カルミアーク王国は日本と国交を締結。

 7月29日

 グラメウス大陸の調査の為、C-2によって派遣された先遣調査隊は、磁気嵐とバードストライクによってエスペラント王国外縁に墜落。

 生存者は、岡 真司 三等陸曹 のみ。

 8月31日

 エスペラント事変発生。

 王国は岡の指導の下で全力迎撃を敢行。

 連絡の取れた国防軍の救援もあり、迎撃に成功する。

 

 

 

 ・・・ ・・・ ・・・

 

 

 

 日本  東京 首相官邸

 

 

 エスペラント事変が終息した日、戦勝の宴会が催され、過去に現れた太陽神の使いの写真が戦艦大和であった事が判明した。

 日本政府は混乱の渦中へ叩き落されたが、それとは別に問題が発生していた。

「・・・以上が、岡三等陸曹への婚約の概要になります。」

 総理を含め、閣僚は頭を抱えた。

 新たに発生した問題

 それは、エスペラント王国の娘が、岡へ求婚したのである。

 その娘は、墜落現場へ逸早く駆け付け、岡を介抱した少女 サフィーネ である。

 岡本人としては困っているのが正直な所だが、命の恩人の一世一代の申し出を無下にする事も出来ず、更には王国が全力で援護しており、王国内で英雄視されているとは言えども、岡個人の力では如何ともし難いのが実情であった。

「それにしても、英雄扱いされているとは言え、その娘はどうして突然求婚などしたのだ?こう言っては何だが、そんなのは物語の中だけの話ではないかと思うのだが・・・それを王国が後押しするなど、どうなっているんだ?」

 総理が疑問を呈す。

「それにつきましては、エスペラント王国で伝わっている預言が関係しております。」

「「「預言?」」」

 複数の声が被る。

「詳しく説明すると非常に長くなりますので、今回の件に関係する部分のみを抜粋します。救いの章と呼ばれておりますが、王国が危機に瀕した時に空から傷付いた戦士が現れ、魔の軍勢と戦う。その軍勢の圧倒的な戦力に敗北寸前へと追い込まれるが、太陽神の使いが戦士の導きによって再び現れ王国を救う。そして戦士は、自らを介抱してくれた娘と結ばれる。」

 その場の全員が絶句した。

 たかが預言と思っていたら、今回の事件と状況があまりにも酷似していたのである。

「その娘、サフィーネ氏は勿論、王国もこの預言を非常に重視しております。今後も預言の通りに推移するとすれば、岡三曹の婚姻は避けられないでしょう。現地では判断しかねるとして、此方へ話を持って来ました。また、この隙に王国側が説得に及ぶ事が想定される為、現地の外交官の判断で岡三曹は王国側から隔離している状態にあります。」

 不確かな預言に従って国が動いている事実に、誰も何も言えない。

 正に、現代ではまず有り得ない未知との遭遇であった。

 暫くして、国防大臣が口を開く。

「認めても宜しいのではないでしょうか?」

 その言葉に、誰もが目を剥く。

「理由は?」

 総理が問う。

「はい。この先、我が国がグラメウス大陸の調査、開発を行う場合、有力な拠点が必要となります。エスペラント王国は、その拠点として都合が良いでしょう。また、ある程度周辺の地理にも明るいと思われますし、現地特有の生物についても精通している筈です。地球に比べ、危険が遥かに多いこの世界では、そうした情報は金よりも価値が高いかと。岡三曹の婚姻によってこの様なメリットが得られるならば、是非とも推進するべきでしょう。」

「しかし、彼の現地での行いは法令に違反し過ぎている。国家間の関係を深める人物としては不適格ではないか?」

 法務大臣が懸念を示す。

 史実に比べ、武力行使のハードルはかなり低くなっているとは言え、軍事力が機密の塊である事に変わりは無い。

 国交も何も無く、信用出来るかどうかも判らない相手に武器を貸与し、様々な情報を譲渡した。

 本来であれば、極刑に値してもおかしくない。

 とは言え、彼の置かれた状況を考えると、止むを得ない措置であるとの意見が大勢を占めている。

 また、地勢もよく判っていない領域へ飛ばし、大事故を引き起こして多くの犠牲者を出した挙句、絶望的な状況から生還を果たした者を責め立てるなど、世論も敵に回してしまう。

 こうした要因から、エスペラント事変での岡の行動は緊急避難的措置として認められ、お咎め無しで行く事が決まった。

 しかし、結果として軍人にあるまじき数々の行為に及んだのである。

 その様な人物が、果たして国家間を繋ぐ役割を負うに値すると言えるのか?

 正当性を保持する為にも、後の時代にケチが付いては堪らない。

「いや待って下さい。本当に婚姻に至れば、岡三曹はエスペラント王国に所属する事になります。そうなれば、彼はエスペラント王国の為に我が国との間を取り持つ存在となるでしょう。それが、我が国の利益にもなれば良いのですが、問題なのは彼が多くの機密に触れている人物だと言う事です。向こうから有益な情報が手に入るとしても、これはそのメリットを上回る大きなデメリットになり得ます。」

 外務大臣が反対意見を述べる。

「うーむ・・・確かにそれはマズい。現時点でそれをやっているのだ。それが、100%自身の生存の為だけでない事は明らかだ。」

 文部大臣が同調する。

 岡の生存は、王国の協力無しには成し得なかったが、王国の危機を救い出そうとする感情も働いていた事は、この場の誰もが察していた。

「この先も情にほだされて、重要な情報を次々に渡してしまう光景が目に浮かぶ・・・」

 これには国防大臣も反論出来ない。

「しかし、此処まで預言通りに事が進んでいる。もしその預言を外れた行動に出た場合、何が起こるか・・・」

 財務大臣が不安を吐露する。

 国を挙げての婚約ともなれば、それを断れば関係悪化は避けられない。

 それだけならまだしも、預言と異なる見通しの立たない道筋に立つなど、どれ程のコストを要するかに大きな不安を抱いていた。

「財務大臣、しっかりしろ!」

 総理が喝を入れる。

「預言通りに事が進んだのは、そうして筋書き通りに動かされているからだ。」

「しかし・・・」

 空から戦士が降って来る様を言い当てるなど、偶然の成し得る業ではない。

 それが財務大臣の心に引っ掛かっていた。

「地球でも、予言の類は掃いて捨てる程に存在したが、的中する事は無かった。何故か?」

 ノストラダムスを初め、何処かの大国同士が将来大戦争を始めるなど、様々な予言が現在に至るまで多数現れては消えて来た。

 その中には、日米戦争が再燃し、世界の覇権を争うと言った物まで存在した。

「地球の予言は、世界の滅亡など、悲観的な未来を提唱する物ばかりだったからだ。だからこそ、予言通りにさせまいと誰もが懸命に抵抗したのだ。地球の予言は当たらなかったのではなく、当てさせなかったのだ。」

 予言に頼らずとも、破滅の未来が待っていると知れば、誰もがその様な未来を遠ざけようとする。

 キューバ危機も、極東危機も、破滅の一歩手前まで行きながら、多くの懸命な努力によって回避に成功した。

「何処の誰がこんな迷惑な預言を遺したのかは知らんが、これは国益を損ないかねん重大な案件だ。ならば、この預言を外してやろう。大丈夫だ、その為のノウハウを我々は有している。」

「・・・」

 財務大臣は口を閉ざすが、先の見えない未来を選ぶ事に躊躇していた。

「よく聞け、我々は国家国民を守る為にこうして大臣の座にいるのではなかったか?何処の馬の骨とも知れない自称預言者の手駒にされる為ではない。そいつの筋書き通りに動かされるのが望みか?日本が今日まで発展して来れたのは、その筋書きのお陰か?」

「・・・解りました」

 総理の言葉に、財務大臣は腹を決める。

「他に何か言いたい者はいるか?」

 口を開く者はいない。

「では、岡三曹の婚姻を認めない方針で行こうと思う。良いか?」

 全会一致で賛成となり、婚姻を認めない方針が現地の外交官へ通達された。

 

 

 

 ・・・ ・・・ ・・・

 

 

 

 エスペラント王国  王宮

 

 

 内閣からの方針を受け取った外交官達は、至急の要件があると言い王国側の交渉可能な関係者にアポを取った。

 そして彼等の目の前には、サフィーネの母親である王族 ロヴィーサ 、憲兵所長であり岡と初めて接触した軍関係者である ジャスティード 、王宮科学庁の セイ を中心とし、その他官僚や書記が顔を連ねている。

「急な訪問にも関わらず、対応頂き感謝致します。」

 日本側外交官の代表である 北村 が口を開く。

「至急の用であるとお伺いしましたが、どうされましたか?何か、此方の者が問題を起こしてしまいましたか?」

 ロヴィーサが応じる。

「いえ、貴国の国民は礼儀正しく、何ら問題は発生しておりません。」

 岡と一悶着を起こしたジャスティードは、若干居心地悪そうにする。

「実は、岡三等陸曹とサフィーネさんの婚約に関してなのですが・・・」

 婚約と口にした瞬間、空気が張り詰める。

(カルミアークと言い、どうして俺ばかりこんな案件に・・・!)

 内心で本省(外務省)を呪いつつ、話を続ける。

「政府からの本件に関する回答をお伝えします。」

 手元に置かれている正式な書類を渡す。

「・・・」

 ロヴィーサが受け取り、脇にいるジャスティードとセイが覗き込む。

 長々と丁寧な言葉が書かれているが、要約すると婚約を拒否する内容であった。

 ジャスティードは複雑な感情の入り混じった表情をしており、セイは(別の意味で)絶望的な表情をしていた。

「我が娘に、貴国は何か不満がおありなのですか?」

 ロヴィーサは、悲しげな表情をしながら問う。

「理由はいくつかあります。まず、岡三曹個人の事なのですが、今回の件で困り果てています。」

 「婚約されて迷惑している」と聞こえ、王国側は多少の怒りを滲ませる。

「考えてみて下さい。サフィーネさんはともかく、彼女のみならず王国中が結婚してくれと彼に迫っているのです。ただでさえ此処は異国の地です。祖国を捨ててまでこの地で結ばれる事を選ぶのか?大変な決断であるのは言うまでもありませんが、次から次へと言い寄られる現状は、余計に彼を追い詰めてしまいます。」

 事故によって唐突に異国の地に投げ出され、多くの仲間を失い、訳も分からない内に命懸けの場に身を投じる。

 岡がこの地で受けた災難は、王国のこれまでの過酷な歴史に勝るとも劣らないものであった。

 その上で、故郷を捨てる決断まで国を挙げて迫るなど、確かに酷な話である。

 同じく迫ろうとしていたロヴィーサは、口を閉ざす。

「次に、法的な問題です。今回の事変で岡三曹が行った貴国に対する武器の貸与、作戦の教示は、重大な情報漏洩に該当します。」

「そんな・・・では貴国は、その法を守って岡殿が死んだ方が良かったと言われるおつもりか!?」

 堪らずジャスティードが声を上げる。

 エスペラント事変は、岡の協力は勿論、王国が総力を挙げて岡と連携したからこそ解決出来たのは、誰の目にも明らかであった。

 国を守る立場にあるからこそ、彼は同じ立場にある岡を見捨てるが如き物言いに激昂した。

「そう思っているなら、国防軍は動きませんでした。守る側の軍人とは言え、彼も守るべき国民だからです。ですが、それとこれとは別の話です。」

「彼は、我が国をお救い下さった英雄なのです。勿論、貴国そのものが我が国の英雄も同然ですが、その中でも彼の功績は群を抜いております。どうか、穏便にお願いします。」

 ロヴィーサは頭を下げる。

「それは、貴国の中でのお話です。我が国にとっては、岡三曹はこの間まで行方不明になっていた一軍人に過ぎません。我が国が貴国をお救いしたのも、結果論に過ぎません。軍を動かした目的は、あくまで日本国民である岡三曹を守る為です。」

「岡殿さえ無事ならば、我々はどうなっても良かったと言われるつもりか!?」

 再びジャスティードが声を上げる。

 彼のみならず、その場の大多数が軽蔑の表情を向けていた。

 人類と言う種の存続を目的として打ち立てられたエスペラント王国は、個人の幸福や命を犠牲にしつつ、ただひたすら全体の存続に血道を開けて来た。

 そうしなければ人類そのものが滅亡すると言う強迫観念があればこそ、薄情な決断も繰り返され、国民はまるで蜂の様な合理性極まる扱いを受け入れて来た。

 それは、逆を言えば個人主義を徹底否定すると言う事であり、北村の主張は個人主義とまでは行かずとも、全体を顧みない極一部の集団のみが得をする方策であり、彼等とは相反する価値観であった。

「どうなっても良いと考えていたら、岡三曹のみを上空から回収して、さっさと撤収していたでしょう。そして、対抗可能な武器を失った貴国は、魔獣に蹂躙されていた。」

 そう言われては誰も反論出来なかったが、ロヴィーサが言葉を重ねる。

「北村さん、無礼をお許し下さい。ですが、どうか寛大な措置をお願い出来ないでしょうか?」

「これは、我が国の内政問題に当たります。内政干渉はどの国であれ、認める訳には参りません。」

「内政干渉?」

 他国と関係を持った経験の無い彼等は、主権の概念を持っていない。

 北村は、現在の国家関係を説明する。

「・・・つまり、内政干渉とは重大な主権侵害に当たり、友好関係に多大な影響を及ぼす行為なのです。」

(このまま引き下がってくれれば、何もせずに済むんだけどなぁ・・・)

 日本政府は、婚約拒否に失敗した場合には、特殊戦術展開部隊を動員して岡三曹の暗殺を画策している。

 そうなった場合、情報操作で王国へ濡れ衣を着せ、国を挙げて王国を糾弾し、漏洩した情報を握っている面々を差し出させようと画策している。

 最悪の場合、頭を挿げ替えて属国化するとしている。

 この場で唯一それを知らされている北村は、そうならないよう必死であった。

「・・・貴国の言い分は理解しました。ですが、婚約を避ける事は出来ないでしょう。」

 少しの沈黙の後、ロヴィーサが口を開く。

「それは何故ですか?」

「創始者預言は御存知ですか?」

「大まかになら」

「その中に、今回の事変を記した救いの章と呼ばれる記述があります。その最後には、{導きの戦士は傷を癒さんとした乙女を伴侶とし、王国の繁栄の一助となるだろう}とあります。」

 日本側が既に把握している部分であったが、黙って話を聞く。

「預言は本当でした。空から戦士たる岡さんが現れ、サフィーネが介抱し、魔軍と戦い、力及ばず敗北しそうになるも、太陽を背負う貴軍によって魔軍は滅されました。」

 熱く語るロヴィーサの眼に、北村は強い覚悟を感じた。

「これはきっと運命なのです。岡さんと娘は伴侶として結ばれ、王国の繁栄の為に役割を果たすのです。そしてその繁栄は、貴国にとっても良い影響を齎す事でしょう。」

 セイを除く王国側の面々は、胸にこみ上げる熱い何かを感じた。

 日本側は運命と言う単語に胡散臭さを感じたが、同時にその言葉に何か強い思いを感じた。

 しかし、言うべき事を躊躇無く言う。

「申し訳ありませんが、我が国が預言に従う事はありません。むしろ、嬉々として逆らうでしょう。」

「「「何だと!?」」」

 王国側の官僚の声が被る。

「そ、それは、どう言う事でしょうか?」

 今まで冷静さを保っていたロヴィーサも動揺を抑えられず、震える声で問う。

「我が国が転移する前にいた世界でも、様々な予言が存在していました。その中には、世界が滅亡すると言った過激な物も存在しましたが、明確な根拠に基づいた予言でさえ、何一つ的中する事はありませんでした。」

 王国側の視線が鋭くなる。

 彼等からすれば、「創始者預言と一緒にするな!」と言いたい所であった。

「どうして的中しなかったかと言えば、予言を避けていたからです。」

「それは、どう言う事でしょうか?」

 予言の存在そのものを避けていたのかと考え、更に問う。

「予言を的中させないよう、世界が行動していたのですよ。世界が滅亡しますと言われて、はいそうですかと受け入れる人など何処にもいません。実際、地球では本当に世界が滅亡しかねない危機的状況を経験しています。」

 想像を超えた爆弾発言に、王国側の顔が引きつる。

「ですが、多くの人々の懸命の努力によって、そうした事態は避けられました。これが、我が国が歩んで来た歴史です。」

(世界の滅亡を回避する為の努力か・・・)

 滅亡の危機と戦い続けて来たエスペラント王国にとって、この話は無視出来ない内容であった。

「貴国は預言に従う事によって救われましたが、我が国と地球は予言に逆らう事によって自らを救って来ました。」

「貴国も、血塗られた道を歩んで来たのですね・・・」

 ロヴィーサは、日本の歴史の中で流れた血に敬服しつつ、更に言葉を重ねる。

「ですが、此処は預言によって救われる世界なのです。この世界に転移されたのも、預言によって救われるべき運命にあるからなのでしょう。この世界のやり方に身を任せてみては如何でしょうか?」

「我が国がこの世界に転移するのも、預言に記されていたのですか?」

 北村の目に暗さが増す。

「それは・・・」

「あまり言いたくはありませんが、この世界に転移してからと言うもの、在外邦人は現地に取り残され、これまでの関係を突然断絶されて滅亡の危機に瀕し、他国の戦乱に巻き込まれ、侵略者の見せしめに国民が殺害され・・・これも預言の通りなのでしょうか?その預言は、本当に我が国を救ってくれるのですか?」

 苦難に塗れた王国からすれば、むしろそれが当然の事だと受け入れる所だが、預言によってこの世界に導かれたのだとしたら、日本の立たされている境遇は目も当てられない。

「失礼ですが、貴国のやり方こそが特殊なのです。この世界のやり方は、力ある者が力無き者を蹂躙し、自らの勢力を拡大するのです。それも、人類同士で行っているのです。尤も、その点では我が国のやり方も特殊である事は否定出来ませんが・・・」

 彼等は、グラメウス大陸の外では、人類が繫栄している事を日本を介して知った。

 そして世界から隔絶され、人類の為にと必死に繋いでいたバトンが、実は全て無駄であったと知らされた瞬間であった。

「それが預言の通りであるなら、我が国は全力で抗います。」

「そう、ですか・・・」

 ロヴィーサは、辛うじてそう答えた。

 王国側の誰もが体から力が抜け、当分は元に戻りそうもなかった。

 そこで会談は一旦お開きとなった。

 

 その後、日本政府の方針通り、岡とサフィーネの婚約は取り消される事となった。

 岡は帰国し、サフィーネは酷く落ち込む日々が続いた。

 婚約は取り消されても、両国の友好関係は継続した。

 この件を機に、エスペラント王国は日本と共に預言に抗う道を選んだのである。

 これまでの道筋から外れ、何の標も無い真っ新な道を行く。

 

 




 政略婚を断る展開って、何故か気持ちいい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。