まいにちがきしょーなん   作:ガラクタ山のヌシ

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デュラちゃん編の続きです。


抜き放たれた…

「これでよし…っと」

「コレは?」

 

デュラちゃんが疑問を口にする。

いやまぁ当然か。

 

「爪の弱い子のためのスペシャルアイテムだ。当然トゥインクルシリーズの公式レースでもちゃんと使えるよ」

 

オレが取り出したのは競技ウマ娘用の特殊なソックスだ。

脚への負担を少しでも減らし、まだ見ぬ担当ウマ娘の爪割れの可能性を少しでも下げるために、幾つかのサイズ分を買っておいた。

 

「ふぅん…」

 

デュラちゃんはしげしげと自分の脚…というよりソックスを見つめる。

 

「締め付けがきつかったり、逆にゆるかったりしたら言ってね。それと、コレも爪のケアの一環だけど…今日からトレーニング後には…よっと、このフットバスで脚を温めて、爪のお手入れをしてね。これがそのお手入れ用のハードナー…まぁ、マニキュアみたいなものと思ってくれて良い。それと保湿オイルね」

 

爪が弱い自覚がある以上、もう知ってるし持ってるし、なんなら使ってるかもだけど、予備は多いに越した事はないだろう。

 

その後、初日は結局そのまま持ち帰ってもらうためにお開きになったけど、その後の数日間もデュラちゃんは律儀に来てくれた。

ちょっとずつだけど、基礎トレーニングやちょっとした走り込みくらいならしてくれるようにもなった。

 

そして、ここしばらく適正距離を見るがてらトレーニングをやってみてわかったことだが…デュラちゃんはどちらかと言えば短距離向きのバネをしてる。

 

そもそもスプリンターとステイヤーでは根本的に構造が違う。

スプリンターのバネはより固く頑丈に、ステイヤーのバネはスプリンターのそれと比較して柔軟かつ無駄の無い形状をしている。

 

そこでスプリンターに重要となってくるのがステイヤーより強い踏み込みだ。

だがデュラちゃんは、その爪の弱さ故に十全に踏み込めていない。

 

何よりゲート練習をなかなかやりたがらないことから、所謂ゲート難である可能性も高い。

狭いところが苦手なのは人間もウマ娘も同じ。

とは言え、レース前の数分でさえ我慢できないからゲート難なわけだが。

短距離は文字通りの短期決戦ゆえにスタートがものを言う。

出遅れはそのまま敗北にも繋がりかねない重要な課題だ。

だから考えて、時として先輩達にも相談して、過去のレース資料を見て思い至ったのが…。

 

「デュラちゃん、キミには逃げも先行もたぶん難しい。だが中途半端な差しで消耗するのも悪手だと思うんだ。それに見せてもらった脚質的にも、キミに一番向いてるのは…」

 

そこまで言って、彼女もオレの言いたいことがわかったらしい。

 

「…追い込み?」

「ああ」

 

短距離で追い込み。

それはほとんど前例が無い。

有名選手で言えばサクラバクシンオーは逃げ気味の走りをしていたし、黄金世代のスプリンターとして高松宮記念を勝利したキングヘイローも先行や差しといった走りをしていた。

だけど、探して探して探し続けたら…いたんだ。

数少ないそのひとり、トゥインクルシリーズを短距離、そしてマイルG1を追い込みで駆け抜けた稲妻が…。

 

「デュラちゃん…キミには素質も才能もある。特に末脚の切れ味は抜群の一言だ。その頑固さだって、自分への絶対の信念だと思えば強力な武器にだってなるんだ」

「…………」

 

彼女はうつむき、何も言わない。

 

「今はまだお試し期間だけど…それでも、この数日間のキミとのトレーニングには多くの発見があって楽しかったし、出来ればこれからも一緒に走って行きたい」

「………っ!!」

 

うつむくデュラちゃんはぎゅうっと手を握る。

心なしか、奥歯も噛み締めているようだ。

 

「どうして…?」

「うん?」

「どうしてここまでしてくれるの?わたし、…ゲートすら怖がるくらい、臆病者なのに…」

 

普段感情が分かりにくい彼女の声が震えている。無理もないか。

ずっと苦労してきたんだろう。

走るのが好きなのに、それが難しいもどかしさに悔し泣きを続けてきたんだろう。

オレは彼女を落ち着かせるために膝をつき、下から覗き込むようにして目を合わせる。

 

「それをサポートするのが、トレーナーだからだよ」

「っ…」

「オレにできることならなんでも相談してよ。ってもまだ新人だし、頼りないかもだけど…いつか、本当にキミの担当をしてくれるトレーナーさんと出会ったその時に、ちょっとでもオレとのトレーニング経験がキミの糧になってたなら、それだけでも救われるからさ」

「…ちょっと、写メ撮って良い?」

 

しばらく固まってたデュラちゃんがそんなことを言ってくる。

 

「え?別に良いけど…」

「ん」

 

デュラちゃんはそれを聞くと、歩み寄ってきてインカメラで撮影する。

 

そしてその写真をそのままLANEで送信して…。

 

ん?

 

「ちゃんと…責任とって」

 

見せられた画面には写メに続いて文章が書かれていて…。

 

「最後まで、お世話して」

 

『やっとトレーナーが決まった』

 

んん?しかも、送り先は…お母さん!?

 

んんんんんんん〜〜??

 

アレ、もしかしてデュラちゃんって……。

 

けっこう重い子だったり?

 

「………♪」




某芦毛のカワイイ子…いつ出そう。
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