そして…来たる選抜レース当日。
天候は晴れで、駆ける予定のコースは絶好の良バ場。
オレは他のトレーナー達と同じように観覧席に座り、彼女の番が来るのを固唾を飲んで待つ。
ウマ娘もそのトレーナーも、誰もが必ず通るトゥインクル・シリーズの入り口。それがここだ。
学園外からのテレビ局関係者や観客たちの放つむせかえるような熱気に、思わず気圧されるそうになるが、なんとか自分の席を確保できた。
オレの前後左右に座るトレーナー達の目は爛々と輝いて、食い入るようにパドックから出て来るウマ娘を見比べる。
そして、レースの結果を見ては「あの子は末脚がいい」だの、「あの子はもっと筋力があったら」だの、「自分ならもっとスタミナをつけさせて…」だのと各々がつけるだろうトレーニングを脳内で何度も何度もシミュレートしているようだ。
途中、カメラがこちらに回されたが、正直オレには反応する余裕も無かった。
きっかけもほぼなりゆきで、期間もほんのひと月足らずの短い間だったとは言え、自分がトレーナー人生ではじめてトレーニングをつけた子がこれから走るわけで…。
この場を支配する独特の緊張感やら空気感に触れたせいか、どうにも落ち着かない。
しかしパドックでも出番になるや、のそ…と現れる彼女を見ると、少しだけ落ち着いた。
トモの調子はとても良さそうで、好走を期待させる。
現に周囲のトレーナー達も彼女の様子を見てざわついていた。
ただ…やはりと言うべきか、マスクはまだつけたままだったが。
彼女の参加したのは十六人立てのレースで、他にも期待の新人が数名出ていたようだ。
途中、パドックで寝そうになっていた子もいたみたいだが…。
まぁ特にこれと言ってトラブルも無く順調に選抜レースははじまった。
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ゲートに入り、アタシは口元…マスクに手を当てる。
「大丈夫っス…コレを外さなくたって、結果は出せるってことを証明してみせる…そうでなくっちゃ…」
それに…あのことも言わないといけない…。
「……そろそろ、ゲートが開くっスね」
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立ち上がりは悪くない。
今回の作戦は末脚が鋭い彼女の脚質に合わせ後方から最終直線で一気に勝負を決める、いわゆる差し戦法だ。
追い込みをするには1600メートルと言う距離は短くて不安が残る。
かと言ってガッツリ逃げるにもデビュー前ということからスタミナ面に問題が出て来る。
彼女は利口な子だし、様子を見るに無茶なオーバーワークもしていなかった。
堅実にいけば勝ちは硬い。
何かと無茶をしがちな同年代と比べても、彼女の素直さには驚かされた。
「このままいけば…うん?」
あれ?彼女の様子が…?
って言うかマスク…それと目つきが変わったような…。
たらり…と背中に嫌な汗が流れた。
トレーナーくんはどうなるんじゃろ