王都に来て早3年
あれから私は毎日【剣術】と【魔術】の鍛錬に励んでいた。
先日、私はついに上級レベルの風魔法を完全に会得した。通常であれば、上級魔術を完全に会得するまで、早くても5年はかかると私の師匠は言っていた。
コンッ コンッ
「サンティ、入るわよ。」
師匠の声だ。
彼女の名は【ロベリア・メイザース】宮廷魔術師だ。
上級魔術からこの人が私の先生へと変わり、様々な知識と技術を教わった。
彼女は慈悲深い人で、魔術の教え方も非常に上手い。私の魔力(マナ)の調子が悪い時とかもしっかりとフォローもしてくれる。本当に優しい人だ。
「サンティ?」
あ、いけないいけない。
私は一体誰に紹介しているのやら。
「おはようございます、師匠。先日の修了試験では、また色々とご迷惑をおかけしました…。」
そう、私はやらかしたの。
修了試験では、風の上級魔法【テンペスト】を上手く発動させるという内容だったんだけど…
―――昨日―――
「よし、ここなら大丈夫だと思う!」
「サンティ、始めちゃっていいわよ。」
「はい!」
渡された杖を大きく構える。
無数の嵐を起こし、それらを1つの場所へ集中させる。
ゴォォォォォォォ…
…風が乱れてきた。
ゴォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!
もっと集中するんだ…!
ゴゴォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!
もっと……!!
「…ティ!!」
……
「サンティ!!!もうやめて!!!!」
私はハッとなり、辺りを見渡すと…
「え…??」
緑豊かな平原が、私の魔術によって荒れ果てた野原へと変わってしまった。
――――――
ということがあって、師匠にまた迷惑をかけてしまった。
「いいのいいの!!あなたの潜在能力を引き出して、立派な神様に育てるのが、私たち【宮廷魔術師】の務めなんだから!」
し、師匠…!!
そんな…輝かしい笑顔でこっちを見ないでください。私、ダメになってしまいます。
「でも、あなたの魔術能力…いえ、魔力(マナ)は既に魔神レベルと言っても過言では無いわ。」
「あなたは見事に上級魔術を使えた、それも予想以上に。」
「師匠…」
気を抜いてしまうとニヤケてしまうぐらい、めちゃくちゃ嬉しい。
「でも、あなたはまだまだ覚えなきゃいけない事が沢山あるわよ。」
そう言い、師匠は机の上にとある本を置いた。
「これは、【禁書庫】から持ってきたものよ。」
「き、禁書庫…」
噂には聞いたことがある。
【禁術】とも呼ばれる魔術が沢山、本に著してるものがこの王宮の【禁書庫】と呼ばれる所に封印されてると。
「あなたは【剣術】と【魔術】を見事に上達してみせた。だから今度は、宮廷魔術師の上位職でしか覚えられない魔術を教えるわ。」
「これを覚えたら、いよいよ最終段階ね…。」
最終段階。
つまりそれは、私が人間の領域を越えて、いよいよ【魔神】になるということだ。
「明日は、私ともう1人の魔術師があなたの先生になるわ。」
「だからそれまでに、ゆっくりと身体を休んで、明日に備えてちょうだいね。」
師匠はそう言い、ゆっくりと扉を閉めて去ってしまった。
「はぁ……」
私は大きくため息をつき、将来の事について考え始めた。
「魔神か…。」
正直、実感はあまり湧いてこない。
魔神とはいえ、私以外にも【あと3人】この世界のどこかに存在するのだ。
だが3年経った今。
他3名の魔神の居所がまだ掴めていないという状況。
「大丈夫かな…。」
魔神の後継者とはいえ、元々はごく普通の一般人である。
不安はあるかないかと言えば、物凄くある。
だが、不安に押しつぶされてはいけない。だって、私には【守らなけらばいけない】ものが沢山あるから。
私はそう思いながら、最近師匠に貰った時計を見つめた。
「まだお昼か。」
「…自主練しにいこうかな。」
密かに開発した新技の練習をしに行こうと、重い腰をあげる。
「あっ、いけないいけない」
いつも私が身につけている首飾りを、持っていくのを忘れてしまう所だった。
「今日も私のことを見守ってね。お父さん、お母さん。」
私はぶつぶつと独り言を言い、今日も魔術と剣術の修練に励もうと気合いを入れ、ガチャっと扉を開けた。