最近久しぶりにスパロボ買って大立回りしたりしてます。
しかし、やってみて思ったんですけど今のスパロボ結構熱血覚えるのが遅かったり、熱血なくても結構いいダメ入ったりするんすね……。
キングヘイローさんの過去の話を聞いたり、地元でやっていた夏祭りで羽を伸ばしたりしながらも合宿での練習や勉強をしっかりとこなしていく。
レースに出場する先輩方はと言うと、スズカホークさんは七夕賞をしっかり1着をもぎ取り、次走の新潟記念に勝てばサマー2000シリーズで優勝出来る可能性が芽生えてくる。レース賞金とは別に5000万円貰えるらしいから物凄く張り切って練習に取り組んでいる。
オルガさんもしっかり2勝クラスを勝ち抜けして菊花賞へ向けて視界良好。後はエチュードさんと私、そしてアグネスデジタルさんも次走が決まったようで今まで以上に熱心に練習に取り組んでいた。
「よし、後1本!」
「……っ、はい!」
トレーナーの檄に応え、少し一息入れてから砂浜ダッシュのスタート位置に戻る。やっぱり自重で脚が沈み込むから走りにくいなぁ。トレーナー曰く、この砂をなるべく吹っ飛ばさないように走ることが能力の向上に繋がるとのことだけど、これがなかなか上手くいかないんだよね。ようは無駄な力を前進する力に変えるってことは理解できるんだけどね。
「スノーさん、合宿始めに比べると大分速くなったのではなくて?」
「え、そう思いますか?」
走った後の折り返しの最中、エチュードさんが感心した顔で私の顔と足とを見比べてきた。
砂浜ダッシュは二人一組で走ることもあって、私はエチュードさんと組んで走っている。タイムを測っているとはいえ、すぐ見れるものじゃないから自分ではあまり実感できないけど、後でデータを見比べてみよう。けど、エチュードさんもほっそりしているだけで大分筋肉が詰まった体つきをしているんだよね。今が全盛期なんだろうな、エチュードさん。
「エチュードさんも大分仕上がってきたと思いますよ」
「ふふ、わたくしの本懐は長距離なのですけど、3勝クラスの長距離レースがあまりない*1ので……。だからここは絶対に落とすわけには参りませんわ」
エチュードさんの瞳の奥からは焦りにも似た感情が宿っている。そうか……エチュードさんはシニア2年目だし、仕上がりが遅い晩成ウマ娘と言えどもこれから衰えがちらつく頃合いなんだ。だから少しでも早く勝ち上がって、少しでも自分が走れる距離の選択肢を増やしたいんだと思う。ここを勝ち上がれれば、アルゼンチン共和国杯? とかステイヤーズステークス? とか、選択肢が一気に増えるだろうし。
「こらこら、二人ともどこまで歩いていくの!?」
そんなことを話していたら、いつの間にかスタートラインを超えて歩いていきそうになってた。慌てて二人してスタートラインに戻って、ウォームアップしてスタートの準備を整える。
「それじゃあ行くわよ……スタート!」
キングヘイローさんの持つフラッグが上がると同時にスタート。スタートは得意なほうだけど、やっぱり砂浜だといまいち踏ん張りが効かない。それでもエチュードさんよりもしっかりスタートダッシュを決められた。
なるべく砂を蹴り上げないように気を付けつつ――――!!
「はぁぁぁぁ――――!!」
「っ、負けませんわ!!」
さすがシニアウマ娘のエチュードさん、こんな私にきっちり付いてくる。でも、練習とは言え負けるわけにはいかない! だけど、私よりもエチュードさんの走りのほうが力強く、ゴール手前で僅かに一歩先を行かれてしまった。
「はぁっ、はぁっ……、負けた――――!!」
「ふぅぅ……、さすがにここで負けるわけにはいきませんので」
「エチュードはさすがの気合乗りだな。これなら、この後の報道陣に見せる最終追い切りも良いタイムが出るんじゃないか」
トレーナーがストップウォッチを片手にうんうんと頷く。いつもトレセン学園でやっている追い切りタイム計測は、合宿参加組は旅館のすぐ近くにあるコース練習用トラックでやっていて、今週のレース組であるエチュードさんはその追い切りに参加することになっている。ちなみに私が並走相手で相手をすることになっているのだけれど、これは私が中盤から終盤で競りかけられた時の叩き合いの練習も兼ねているとのこと。なので、私も本気でエチュードさんの相手をしなければならない。
「よし、エチュードは追い切り一番手になるからスノーも一緒に先に休憩しておいで。報道陣の前で緊張するとは思うけど、リラックスして臨むように」
「「はい!!」」
トレーナーの指示で早めの休憩になった私はエチュードさんと軽めの昼食を採り、その後トレーナーと追い切りの手筈を再確認する。そこでは私がエチュードさんの1秒先を先行し、エチュードさんはその後を追走しつつ残り3ハロンを目途にスパートし、私を追い抜こうとするように走る。私はエチュードさんに抜かれ過ぎず、先行し過ぎずスパートするというもの。
エチュードさんは私に勝負根性を発揮させないよう一気に抜き去る練習、私は叩き合いを意識した勝負根性を培う練習ってことらしい。ただ、これはあくまで目安でしかないらしくて、エチュードさんがどこで仕掛けてくるかは分からない。
うーん、私は残り2ハロンくらいでスパートかなぁ。前走がコーナーからそのまま押し切る感じだったし、今度は本来の定石である直線からスパートするってのを試してみよう。
打合せがある程度まとまった頃、トレセン学園のスタッフが私達を呼びにこっちまで駆けてきた。
「それじゃあヤネキエチュードさん、スノーラビットさん、そろそろ追い切りの時間ですので準備してください」
「分かりました」
「すぐ参ります」
「それじゃあ僕らはスタンドに居るから。後は手筈通りにね」
そう言って、トレーナー達はスタンドのほうへと向かっていった。残された私達は身を翻して、トレーニングコースのスタート地点へと向かうのだった。
―――――★――――――★――――――
最終追い切り。それはレースに出走する週の概ね水曜日か木曜日に行われる、ウマ娘のコンディションを最高値へ持っていく最終仕上げだ。また、報道陣がレースに出走するウマ娘に対して公的に接触、あるいは視察できる最後の場でもあり、記事を作成したり、あるいはライバル達の仕上がり具合を視察できる重要な場でもある。
チームアケルナーのトレーナー、森村とキングヘイローは視察用スタンドからその様子をやや不安そうに眺めていた。
「そろそろエチュードも
「トレーナー。ここに来て、スノーさんを並走相手に選んだのはどうしてかしら?」
キングヘイローの問いに、森村は少しだけ考えてから答える。
「エチュードのここ一年、いつも末脚が届かず負けてることが多いだろう?」
「まぁ、確かにそうね。長距離が得意で早い上がりを使える子ってあんまりいないもの」
長距離戦において、上がり3ハロンはおおむね36~37秒台が多い。もちろんG1級になると34秒台~35秒台、もしかしたら33秒台を叩き出す怪物もいつか現れるかもしれないが……とにもかくにも、ヤネキエチュードの走りは
ここ一年、彼女が入着を繰り返しては勝ち上がれないさまに森村はとても心を痛めていた。オープンクラスにさえ入れば、彼女が戦えるレースが一気に増えるというのに、あと一つを取らせてやれないことに――――。だから、先行して切れのある末脚が繰り出せるスノーラビットとの併せウマはミスマッチに感じていた。
「ここのとこずっとスノーラビットとペアを組ませて練習させていたんだ。一緒に練習して、もしかしたらスノーラビットと走ることで何かを掴んでくれるかも知れないと」
「けれど、同じ上がりを使えるというならデジタルさんとかでも良かったのではなくて?」
「デジタルとは一時期組ませていたけど、今一つ効果がなくてな。デジタルもウマ娘のこと良く見てる子だし、あいつにも『私の走りってキレのほうが勝ってると思うので……多分エチュードさんには合わないかと』って言われたよ」
肩をすくませながら語る森村の瞳には、いっそう悔しさが滲み出てきている。キングヘイローはそんな森村を見て、かつての自分との歩みを偲ぶ。
(本当に、あなたという人は……。ウマ娘の想いをなんとしても叶えてやるんだ、ということに情熱を燃やすのね)
《用意、始め!》
響き渡るスタッフの号令に、二人は弾かれたように顔をトラックコースに向けた。視線の先では、スノーラビットが手筈通りに先行し、その一秒後をヤネキエチュードが追走している。最初の3ハロンはウォームアップを兼ねたキャンター、10と書かれたハロン棒を通過してからタイム計測だ。
キングヘイローは辺りをふと見渡すと、自分が想像する以上に記者陣が彼女らの追い切りに注目しているようだった。記者や他陣営の鋭い視線が二人のほうへと注がれている。
「そろそろタイム計測だ」
記者のうちの誰かが呟く。スノーラビットが10のハロン棒を通過したからだろう、タイムを注視する者、二人の走りを注視する者、あるいはどんな調整なのか、だとか色々なやりとるをする者等――――この視察用スタンドに立つと、かつての自分の走りもそんな憶測や結果で語られていたのだろうな、とキングヘイローは感じていた。
そして、追い切りのほうはというとスノーラビットは悠々と先行、ヤネキエチュードはやや仕掛けが遅れたか、若干離されて1ハロンを通過した。すると――――
「あれ、エチュードもう仕掛けた!?」
「え、嘘!?」
双眼鏡で視察していた壮年の記者の言葉にキングはハッとする。確かにエチュードがやや前傾姿勢で早くもスノーラビットを捉えようとしている。
「トレーナー、少し逸ってないかしら!?」
「ああ、確かに予定通りじゃない。だけどもしかしたらこれは……捲りを意識したのか?」
「けれど、レースする新潟は直線が……あ」
そこでキングヘイローは言い留まる。新潟レース場の直線は長いイメージがあるが、エチュードが出走する施工条件芝2200mは内回りになるため直線が約360mと短くなる。それに加えて、本来エチュードはスタミナがずば抜けて豊富なウマ娘。多少のスタミナやコーナーロスはなんとかなる――――というのが彼女の算段なのだろうか。
そしてそのエチュードは捲りと云う名の超ロングスパートを駆使し、残り3ハロンを通過してスノーラビットを捉えつつある。遠目に見てもスピードの乗りは悪くない、だが。
「スノーラビットが突き放す……!」
スノーラビットは先行してキレがある末脚が繰り出せる。直線に入ってバ体が並んだと同時に、スノーラビットがスパートを開始する。最初はエチュードが先行出来ていたものの、スピードが乗ったスノーラビットが再び前を取り、少しずつエチュードは離されていく。エチュードのほうも負けじと食らいついていくが、そのまま1バ身程離されたままゴールラインを通過した。
「うーん、エチュードのほうは早仕掛けだったかな」
「だがタイムのほうはまぁ悪くはない。反応も良いし――――」
二人がゴールを駆け抜けてすぐ、報道陣はあれこれ推測や情報の精査を始める。そんな様子を尻目に、キングヘイローは森村が計測していたラップタイムを覗き込んだ。
「……脚が上がった感じはなさそうかしら?」
「エチュードのスタミナありきの走りだね。400~200mのラップは11秒5だし、仕掛けどころを考えると上々じゃないか?」
「スノーさんも、よく我慢してスパート出来たわ。合宿の成果が出てきてるわね」
「ああ。エチュードが前に出たのを見てスパート出来ていた。前走は焦って早めのスパートをしていたし、焦らずに仕掛けられたのは収穫だよ」
森村も、予定外だったとはいえこの結果には満足が行ったようだ。思ったことをバインダーに挟んだレポートに書き留めると、そのままトレーニングコースに向かおうとする。キングヘイローもそれに付いていき、スノーラビットらの元へ向かうのだった。
―――――★――――――★――――――
っは~~~~!! 危なかった! エチュードさんめっちゃ鬼気迫る表情で上がってきてるから、スパート我慢するの大変だった……。いや、別に勝ち負けが大事ってわけじゃないのは分かってるんだけど、私としてもスピードが乗り切った追い込み勢の追撃をギリギリまで我慢して追い越せたのはすごくいい事なんじゃないだろうか?
「ふぅ……スノーさん、完敗ですわ。わたくしとしても、とてもいい走りが出来たとは思うのですが……」
「いえいえ、エチュードさんも全然脚色衰えなかったじゃないですか。きっとこれなら日本海ステークスも勝てますよ!」
これはお世辞とかじゃ全然ない。これだけ本番さながらで走れるんだから、絶対勝てると思う。もちろんレースに絶対はないから、実際に勝てるかどうかは展開と、エチュードさんの頑張り次第ではあるんだけどね。
あ、そういえば……。
「エチュードさん、結構仕掛け早くなかったですか?」
「ああ、アレは”まくり”と言われる早仕掛けですわ。半年ほど前に試してみて上手くいかなかったので、暫く封印していたのですけど……今のわたくしなら出来るかも、と思いまして」
「まくり……ですか」
「ふふ、スタミナには絶対の自信がありますので。スピードの無さはスタミナで補ってみせますわ」
まくり、という言葉は初めて聞いたけど、多分エチュードさんみたいにスタミナに特化した人じゃないと使えない技術なんだろうな。ずっと長い時間全力疾走するわけだし、そんな脚は大抵のウマ娘では使えないだろうし。
そんなことをやりとりしていたら、関係者通路のほうからトレーナーとキングヘイローさんが下りてきていた。私達は雑談もそこそこに、二人の元へ駆け足で寄っていく。
「お疲れ様、二人ともいいタイムだったよ」
「「ありがとうございます」」
開口一番、笑顔で褒めてくれるトレーナー。後ろでキングヘイローさんもうんうん、と頷いている。
「エチュード、さっきのは昔失敗した捲り、だね」
「はい、あの時は仕掛けもそうですが自身のスタミナが足りないせいでした。しかし、今のわたくしならロングスパートも十分決められると思っております」
「そうか。じゃあ僕からは言うことは何もないな。タイムを見ても、十分持続力のある脚だったと思う。自信を持って欲しい」
「はいっ、ありがとうございます」
深々とお辞儀をするエチュードさん。あれだけいい顔してるんだし、今回の追い切りは先輩にとってとても有意義のあるものだったてことだ。さて、私のほうはどうだろう?
「トレーナーさん、私のほうはどうでしょう?」
「スノーも2週間前とは言え、かなり仕上がってる風に見えたよ。課題のひとつだった追い出しのタイミングも、今日見た限りじゃ悪くなかった。後はスノーが追走する側になって適切なタイミングで仕掛けられるかだね」
「はいっ」
トレーナーのお墨付きも貰えた。これはもう満点と言える結果だね。悦に浸る私に、キングヘイローさんが釘を差してくる。
「とは言っても、フォームとかその他まだまだ詰めなければならない場所はたくさんあるわよ。この後スタッフの録画したビデオを見て、修正点とかチェックしていくから休憩の後またきてちょうだい」
「分かりました」
「かしこまりました」
うーん手厳しい。でも、これも次のレースを勝つために必要なことだ。勝って兜の緒を……なんだっけ? ていうかそもそもまだ1回しか勝ってないし。
ともあれ、もうすぐ夏の合宿も終わる。合宿と夏休みが終われば二学期、そしてすぐに私はききょうステークスだ。私は少し日焼けした腕を見ながら、勝利を誓うのだった。