「…」
「「「「…」」」」
この無言は何か?
見た時人は首を傾げるだろう
不倫がバレて修羅場になったとかそういうアホみたいな理由では無い
簡単な事、朝早く起きて料理をしていたら皆寄ってきたのだ
ソイツらに羽やらなんやら生えてるのを見ていると俺は何なんだと思えてくる
なお作っているのはただのオムレツである
その中にはあの霊夢という巫女もいる
なんだろう、そんなヨダレを垂らされても困るんだが
俺は俺の食料がある、テメーらにはやれんぞ
俺は既に山なりになっているご飯にフライパンから卵を移す
そしてナイフを取り出し、真ん中を真っ直ぐ切る
『おーー…』
「…」
トロリとした黄身がご飯を覆い、これだけでも喉を鳴らすような見た目を現す
無論これだけでは俺は足りない人間だ
いや、大半の人間がそうだろう
なぜなら、こいつが足りていないからだ
俺は赤い容器を取り出し、波形に振る
それはお待ちかねのケチャップソースであり、更に美味さを引き立てる逸品だ
西洋の見た目をした…コウモリの羽を生やしたヤツと近くにいるヤツ…はおぉ、と目を開く
他の奴らは新鮮なのか、はたまた好奇心旺盛なのか目が輝いていた
俺に向けて
俺は、その視線を受けて、皿を――
持って階段を上がる
完璧な速さと動きである
階段につまづくことなく駆け上がりつつ、オムレツの形が崩れないように注意する
そして扉を一瞬で開閉し、鍵を掛ける
「…はぁぁぁぁぁぁぁ」
さて、食うか
俺は机の上に皿を置き、スプーンを取り出す
「おすそ分け貰うね、お兄さん」
「ちょっと極端な気がしますわよ」
どこから仕入れたのか分からない皿にご飯と黄身を乗せるこいしを見てまたため息をついた
その直後にスキマから出てきて質問してくる紫にんっんーと指を振る
「一応もうひとつ作ってある、アイツらが集中して見てないだけだ
今ごろ見つけて食べてんじゃないかね」
「…何か決まりを作った方がいいかと思いますわ」
金髪美人は困った顔で言う
だが如何せん仕草と顔がアレなせいで胡散臭く見える
ただ彼女の言う通りでもあった
つまるところ
「一旦下に降りて話し合えと?」
「いえ、霊夢と私と、貴方。」
「…んん」
時間は朝五時
学校に出かけるのはいつも七時
早起きすぎておつりが帰ってくるほど時間はある
…なら、潰すか
俺は"食べ終わった皿"にスプーンを置く
「着替える、ちょいと出てけ」
「分かりましたわ、ほら、来るのよ」
「やだー」
「き、消えた!?何処行ったの!?」
「取り敢えず出てけ」
〇
「…なぁ、俺はオムレツを一人分用意したと思うんだ」
「そうね」「そうだな」
「俺は思うがな、かなりデカいと思うんだ、アンタらには」
「私達はね」「私達はな」
「妖怪は皆大食いなのか?」
さて、皿を持って台所に行けばそこにはソースすらない綺麗な皿があった
これは俺が用意したこいつら用のオムレツがあった皿である
大きさは俺が作った奴と同じ程度
腹の大きさ的に…あれ、ちょっと頭痛くなってきた…
…頭を戻そう
「…して、紫、この二人が」
「えぇ、博麗の巫女と…そのオマケ?」
「失礼な!異変解決のプロフェッショナルだぜ!」
紫の暴言に黄色髪がキレる
もう1人の…巫女さんは気怠そうにそれを見ていた
無論俺も、なんか、馬鹿らしいや
「彼女はこの家に結界を張って幻想郷の維持を手伝って貰ってるわ
霊夢、自己紹介して」
巫女さんが俺を見て口を開く
「博麗霊夢、言っておくけどアンタに感謝はしていない」
中々辛辣なことを霊夢は俺にぶつけた
彼女からすれば自分は消滅せずに外の世界にはじき出されるだけだろう
人間なら、そうなるはずだ
まぁ多分元の生活が気に入っていたんだろうな
「そうかよ、博麗さん」
「霊夢で良い、皆呼び捨てよ、他人の名前は」
「狭い世界だからな」
皮肉をぶつけてやる
だがこの程度で顔を顰めるほど狭い器では無いらしい
「実際、その通りだわ」
「2人とも、そこまで。
灰汁、彼女は幻想郷で妖怪に対する抑止力となっていたわ
貴方が大きくても力の差は覆せない」
「そりゃ、こいしの能力がいい例だ」
「そう、だからこそ彼女が動くのよ
幻想郷最強に勝てる妖怪は居ない
この幻想郷の住人は言うのもなんだけど自分勝手だから…
言うことを聞かない時は霊夢を頼れば――」
そして、紫は霊夢を見た
だが、彼女は嫌そうな…いや、普通に嫌悪感を露わにしていた
そんな彼女から出る言葉は勿論…
「嫌、リターンもクソも無いわ」
「霊夢ッ!彼は私たちの命の恩人なのよ!
此処で追い出されたら冬の寒さで凍え死ぬわ!」
「アンタが頼んだ事、それまでよ」
「いい加減に――」
「そこまで」
嫌に通る声がした
その声の主に2人は顔を向けた
発したのは、俺だ
このまま険悪になっても面倒くさい
その前に止まってもらった
「紫、風呂場とトイレに建築物は無いな?
あったら今すぐ水没させる」
「えぇ…な、無いわ」
建物の五割…いや、七割以上が占領されたか
ただのジオラマならまだしも普通に住処だ
俺の生活圏はかなり絞られる
――あ
「二階のロックの掛かった部屋は」
「そもそも入れないわ」
なら良い
俺は手短に告げることにした
「いいか、風呂場と俺の部屋に鍵のかかった部屋は勿論…
後はトイレ…はお前らあるだろ、そこには入るなよ」
顔を上げて紫…いや、この"部屋"に居るものに告げる
これは事実上の鎖国宣言、もとい干渉しないことを宣言した事だった
「台所は普通に使う、もう部屋は自由にしてくれ
1週間立ってゴミが散乱してたらまとめてポイだ」
無論ポイは建物&住民である
俺はそれだけを告げるとリュックを背負い、立ち上がる
そしてリビングを出る直前、俺はとあることを言うことにした
「あぁ、そうだ霊夢」
「何」
敵対心の丸見えな目をのこちらに向けてくる
俺はそれを見ることなく、ただ、言った
「握り潰されないようにな」
無機質に、機械のように
それだけ告げて、俺は学校に向かったのだった
言ってみればこの作戦…宣言は無謀すぎた
あちらがやる気になれば俺の部屋に攻めてくるだろう
それを俺が黙って受け止め、死ぬ訳が無い
死に物狂いで奴らを滅茶苦茶にするだろう
言うこと言えば後の気持ちは楽なもんだった
そう思いたかったが、何かの気持ちが張り付いて、そう思えなかった
〇
「霊夢ッ!何であんなことを!」
「霊夢ッ流石にそれは無いぜ!」
「何が?アイツが関わるなって言った、だから私は関わらない」
紫からすれば彼女はこの幻想郷をぶち壊すような悪魔に見えた
実を言えばほかの何人かにも頼み込んだりはしたのだ
だがソイツらこちらを見るなり恐怖に怯え、逃げ出す
何故かって言えば紫が開くスキマに原因があるのだが…
何件も回り、その最後でようやく見つけた安息地
彼には言っていなのだが、実はここは霊脈の上にあるのだ
都市から離れた場所にあるかつ自然が近い
それに人が少なくスーパーしかない場所
少しでも騒げるという条件も付け加えたりして面倒だった
それが当てはまる物件、しかも運のいい事に承諾して貰えた
理不尽にも近い条件なのに
1、場所欲しい
2、しかし被害賠償はそちら側
3、んでもって干渉すんな
今考えるとなんという理不尽を押し付けてるのか
彼の心境を考えるだけで胃がキリキリと悲鳴をあげる
霊夢に怒こっているのは紫だけじゃない、魔理沙もだ
「霊夢!お前がそんな奴とは思わなかったぜ!
私を見殺しにする気か!?」
そう、追い出されるのは問答無用で全員なので普通に飢え死ぬ
それに加え冬の寒さが芯を捉え、侵食してくる
そんな場所で服一枚で生きれるとはおもえない
「そういうつもりじゃないわよ」
「じゃあなんなんだよ!?」
「私、アイツ嫌いだから」
霊夢から突然出る嫌い発言
とはいえ彼が彼女になにかした訳でもない
魔理沙と紫からすれば疑問しか無かった
「なんでだよ!?」
「霊夢…」
「気持ち悪いのよ、なんかご飯用意してるし
それにあんたの提案を断らなかったのも変だし…
それに何よ、最後の警告…意味がわからないわ」
それはもっともだった
彼の警告は霊夢がまるで握り潰されるかのような文だった
無論その拳は彼の拳以外にありえないのだろう
「気をつけた方がいいぜ〜?お前が捕まった時は指差して笑ってやる」
「あ?その前にアンタぶん殴るわ」
「霊夢、意外と彼の事見てるわよねぇ?
じゃないと気持ち悪いとかなるわけないわ」
「はぁ?ちょっとこっち来なさい」
魔理沙と紫の心は同じだった
どうにかして灰汁と霊夢の関係を修繕したい
流石にこれで幻想郷復興まで耐え切れる気がしない
それに紫は復興した幻想郷を見せると言っているのだ
さて、どうしたものか