このド田舎に電車がある訳も無い
時折来るバスは1日に4回しか回って来ない
それにバスを乗るほどの距離でもない
しかし自転車に乗るとあら不思議かなり遠い
…この通りかなり面倒くさい立地をしているのだ
「…まぁ時間的に自転車しかないんだが」
そう、バスの来る時間は九時
学校は八時に始まるのでガッツリ遅刻してしまう
過去には風邪だったり腹痛だったりでわざと遅刻したりした
まぁそれが通るのは冬だけだったけど
ただ、それ以前の問題があり…
「…道路、凍結してるだろうなぁ…」
スリップである
この真冬は確実に雪が降り、そしてその下にあった雪は凍結している
それなのでハンドルを回せば俺は今すぐ神様を拝めるだろう
幻想郷のメンバーに神様居るらしいけど
なんなら閻魔も居るらしい、なんなんだあいつら
俺は何度もため息をつきながら、結局歩いて行くことにした
まぁ、言い訳は何個もあるさ
〇
「皆に集まって貰った理由は言わなくてもいいわよね?」
紫は開口一番、そういった
言われた面々は重々承知、という顔である
この場には幻想郷にて重要な役割を持つもの達だ
とはいえそれは天狗代表やらなんやら、本当に有名な奴らだ
妖精の代表にこられても困る
「ここに来てからの問題、それを今一度整理することでしょ」
「そう、神奈子の言う通り」
場所はこの家のどこと分からない場所
言ってしまえば入るなと言われた鉄扉の部屋である
家主の約束破ってええんか、おい
紫と藍以外知らない事実なので意味は無い
「私としては家主が干渉しないってのが頭に残ってるけどね」
諏訪子…元の世界でタタリ神と言われていた女はそう言う
女と言っても見た目は普通に少女なので見た目と情報が一致しないことが多々ある
「私は干渉する気がない、永遠亭はそう言っておく」
「あっちが関わるなって言ってきたんだからその言葉の通りにすべきと思うけど」
「幻想と現実は分かり合えない、闇雲に関われば彼にとって悪影響を及ぼすと思います」
八意永琳、レミリア・スカーレット、さとりは紫に言う
彼女達は基本他の勢力と関わらない為その意見に行くのは必然だろう
干渉否定派の代表みたいな彼女達の意見も最も
幻想郷は今日まで外と関わりを絶ってきたのだ
今更、あの人間と関わる意味があるのか?
それ以前にレミリアにとっては人間が上にいるのが嫌なのだろう
顔が既に苦虫を噛み潰したような顔になっている
まぁ否定がいれば肯定がいるのも事実である
そりゃこいつらだけじゃ人間が家畜の様になってしまう
幻想郷には仏を体現したような聖人が少なくない数いる
「彼からの欲は無い、かつては上の人間を貶せば自分に帰ってくる
それに彼は移住地を提供してくれた
妖怪は感謝すら出来ないのか?」
「提供してくれたということは妖怪を受け入れられる人間ということ
そういった数少ない人間を減らすのは良い作では無い」
「私しゃアイツに邪な考えがあったら否定派だったけどよ
さとりの嬢さんによればそりゃ無いってさ
そりゃ恩を返さねば神としてどうかって話だね」
神子、聖白蓮、八坂神奈子は意見を飛ばす
それぞれが人間に対して友好的であり、人間を想っている
特に最後の神奈子の発言はさとりの考えを変えるのは容易だった
さとりが読んだことは既に知られている
彼女にとって上辺だけの人間はただのクズだ、大半がソレだ
故に最初はそういう奴かと思いきや…
彼女自身心に仕舞っているが、彼は思いのほか何も考えていない
かなり彼はカラッポ…そう思えた
ただ、マズルフラッシュが眩しかった
この単語はただ、彼の頭の中にあったそれを当てはめただけだ
「眠い思考ですから嘘をつくなんて無理でしょう
出来たら、ソイツは嘘を本当にしているだけですよ…」
「ともかく、彼は仲良くしないとって話でいいですか?
私は中立ですけど、彼と話はしてみたいですねぇ」
漆黒の翼をヒラヒラと動かす女
射命丸文と呼ばれる鴉天狗で、幻想郷最速と呼ばれている
この場では天狗の首領の代わりに出ている
天狗は元より排他的な種族
彼女ひとりの判断に任せることは出来ない
「私も中立です、立場上彼に肩入れすることは出来ない」
緑髪の子供
低身長の彼女は幻想郷の閻魔である
四季映姫という名の彼女に裁けない罪は無い
「全く皆そんな意見言い合って、本当はあいつを利用したいだけでしょ」
そんな皆を霊夢は普通に笑う
ハッキリ言ってくるのダルかったが、仕方なくって話だ
「そんなことないでしょうに」
「私からすればなんで人間の世話にならなきゃいけないんだか
高潔な吸血鬼が人間如きに」
「何ともまぁ、妖怪は身勝手と聞きますがここまでとは
まさか恩を仇で返すクソ野郎とは思いませんでしたよ」
「あぁ!?」
「肯定派は信仰が欲しいだけでしょ
あんたらそれがないと消えちまうんだから」
頭が痛い
なんだこいつら、足並み揃える気ないんか
揃えてくれないと問答無用で幻想郷滅亡コースなんだが
胃がギリギリと痛み始める、うっ
「にしても家主さんは和菓子が好きらしいわねぇ…
美味しいお饅頭だったわ」
「幽々子…ソレ…」
どこから、という言葉は胃痛によって妨げられる
客観的に聞けば脅しのように聞こえる声と顔だが、本当は胃痛を耐えているだけである
「あぁ、棚からとったのよ」
「――」
目眩がした
というか実際目の前が一瞬ブラックアウトした
気力を振り絞り、状態を元に戻す
「でも私がどうこう言われる筋合いは無いわ、皆盗ってるもの」
ぐりんと凄まじい勢いで首を背ける奴らを見て思わず嘔吐く
こいつらどんだけ私にストレスと胃に負荷を与えたいんだ
一旦現状理解して絶望するか灰汁に握りつぶされないかな
全く、そんなに食料が足りないのか…
――あ
「どうしたの、紫」
「…いえ、家主と仲良くしなきゃいけない理由が増えたわってね」
「なんでよ、私あんな人間と関わりたくないわ」
このわがまま言っている吸血鬼も、他の反対派も肯定せざるを得ない理由を見つけてしまった
というかいつしか問題になる事だった、なんで気づかなかったんだ
「家主が食料提供してくれないと、餓死するわよ、私たち」
『…あ』
その事に今更気づいたのは、ほぼ全員だった