幻想郷in my house   作:回忌

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退屈な時間

さて、楽しい時間は何よりも早く終わる

何故かと言うと頭をフル回転させるからである

退屈な時間は自分にとって興味が無いということだ

つまり頭を使わない、使う気がない

 

しかし退屈な時間もいつか終わる

何もかもが永遠では無い

妖怪の様に、いつしか終わりがある

 

永遠を手に入れた不死人でさえ、終わりがある

 

その終わりは何を指すか分からない

 

ただ、全てには終わりがあるということだけだ

 

「さて」

 

家の玄関の前に立つ

何が飛んで来るのは確定としておこう

ただまぁ、どんな威力か分からない

俺が弾け飛ぶのかそれとも飛んできた物が弾き飛ばされるか

 

まぁ、結果次第だ

 

鍵穴に鍵を刺し、鍵を解除する

取っ手に手をかけ、捻る

 

ドアを開ける

 

 

 

 

 

 

ドッジロール

 

 

体を捻り、その飛ばされた"針"を避ける

 

「荒い歓迎だな」

 

何の表情も表さず、声色も変えずにそいつに言う

若干息を荒らげた様子だ、声だけで怒ってると分かる

ソイツは幻想郷で素敵な楽園の巫女と呼ばれていた女

 

博麗霊夢

 

大幣と大針(彼女達から見れば)を構える

今にも俺の眉間に突き刺しそうだ

 

「どうした、来いよ」

 

「…ッ!」

 

シュシュシュと放たれる針

ただそれはこの距離で放たれるプラスチックの弾丸より遅い

横へ上へと軽々と避け、スルリと彼女に近づく

 

霊夢に驚かせる暇も無く俺は彼女にデコピンした

 

「ッ…!!!?」

 

割と痛そうな音だが大丈夫か…?

下駄箱の上に墜落する霊夢

恨みの籠ったような顔で俺を睨む

 

「…アンタ何したか分かってんの」

 

「逆に何をしたか気になるか?」

 

「とぼけないで、アンタが幻想郷事友人に言ったと紫から聞いたわ

 要らぬ混乱を招かないように私にしか知らされてないけどね」

 

そうか、変に口外すると俺が殺されるかもしれんのか

やけにこの小人達は殺意が強いからな、全く

 

「逆にバレないとでも思ってたのか?」

 

「何を…」

 

仕方ない、少し"現実"を見てもらおうか

いつまでたっても"幻想"にいられる訳では無いというのを教えてやろう

こいつらにはそれが一番だ

 

いつの間にか霊夢の隣に現れた紫は悲しそうな顔でこちらを見ていた

おそらく、今から俺の言うことが分かるのだろうか

 

たた、止められる気は無い

 

「この家に全く人が来ないという訳では無いんだよ

 あの水道が止まったらどうする?俺はそこまで機械は詳しくない

 だから専門家に見てもらうしかない」

 

「…」

 

霊夢は顔を少し青ざめた

どんな固い奴でもこれくらい言えばわかる、今の暮らしがどれだけ危ういか

どれだけ薄い氷の上に何十人が立っているか分かるはずだ

 

「…くっ」

 

霊夢は悔しそうな顔をして、どこかに戻って行った

紫がふわふわと近づいてくる

 

「灰汁…」

 

「謝らんぞ、俺は」

 

「良いの、勢いで彼女に言ったけど、いつしか知られることだから…」

 

「俺の友にはな」

 

俺はそう言うと、買ってきた菓子類の袋を持って階段を上がる

紫は物凄く申し訳のなさそうな顔をしていた

さすがにブラフを振りすぎたか、仕方ない

 

「言っとくが免許持ってるから修理はできるからな」

 

「…貴方」

 

「性格が悪いとはお前に言わせんぞ」

 

ガチャりとドアを開ける

こいしがおかえりーと迎えるのを横目に机に袋を置く

これでも対策はできる限りしている、やれる事はする

 

こいつらがただ役に立つ時に来たからするだけだ

 

「私は貴方の事を誤解していたかもしれない」

 

「お互い様だ」

 

最初は胡散臭く、弱いと思わせている面倒奴と思っていた

実際は寂しがり屋の1番頭を抱えている可哀想な奴だった

彼女からすれば灰汁は独りよがりの悲しいヤツに見えていた

だが実際は人のことを一番気遣っている人間だった

 

お互いがお互いを勘違いしていたという訳だ

 

「俺の友人には理解の出来るやつが多い

 あんたらのことも恐らく否定はしないだろう」

 

「そんな人間が多ければ…」

 

「悪いがそんなことにはならん、アイツらも聞くより見る方が信じるし」

 

そんな都合のいい世界があってたまるか

俺だったらんな世界ドロドロに溶かしてしまうわ

そう思いながら俺はパソコンを起動した

 

「さて、少し情報収集するか…」

 

「じょーほーしゅーしゅー?シュッシューって汽車みたい」

 

こいしがパソコンを眺めながら言う

幻想郷って汽車があるのか?結構技術進んでんな

確実に大正以降だとして、どのくらいだろうか

 

「言っておきますが幻想郷に汽車はありませんわ」

 

「あんたらの水準が分からん」

 

「米を炊くのは釜というのが当たり前だと思っていただければ」

 

成程江戸時代か戦国か…?

というかどれほど昔なんだ、いつなんだよ

 

「あぁ、とある山にはロープウェイがあるわ

 神社に人間を呼び寄せたいけど、妖怪の山には登りたくないでしょう?」

 

あぁ、頭がこんがらがってきた

いつなのか分からなくなったよ

まぁ、いいか…どうせいつか見るだろうし

 

「それで、何を調べるの?」

 

こいしがウキウキとした様子で尋ねてくる

俺は軽く考えて答えを返す

 

「色々、だ…あいつら何故か情報が早いからな。

 それに負けないように掻き集めないといけない」

 

まるでオシリスの死体集めだ、と呟く

あいつらはどこから仕入れたんその情報って物を持っている

面白い事にそれが国家機密だったというオチもあるくらいだ

 

後日談も面白いものだった

あぁ、本当にクソッタレなものだった

 

カタカタとキーボードを打ち込む

マウスを動かし情報を探る

 

「ふむ…」

 

あるページでマウスが止まる

そこには大国と小国の戦争が長期化している

ただ大国の主は長期化を予測していなかったのか押されているという話だ

 

俺は少し目を細め、カタカタとパソコンを鳴らす

 

「こりゃ…」

 

戦争とは非難を呼ぶ物でしかないとネットのコメ欄を見て思う

特に戦争で家族を失った奴は特に、だ

 

「わ…」

 

こいしの顔が引き攣る

人間同士の争いを見ている筈の紫は扇子で口を隠す

やはりいつの時代も人が争うのは変わらないらしい

この場面もいつもの事だ

 

「さて…」

 

俺はコキリと首を鳴らす

いつも通り、アンダーグラウンドな情報を探っていこう

アイツらのことだろうし、おなじことやってるんだろうなぁ

 

この日は世界の闇に溺れながら、全てを終えた

 

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