ある朝、
脳内に存在する、『彼の知る常識』からはかけ離れた『常識』。何度鏡を見ても此方を見返してくるスーパードルフィー*1のようなとんでもない美少年。
それら全てが彼を混乱させ、鏡の中の美少年はへにゃりと整った眉を顰めている。
そもそも、皇塚桔梗という派手な名前自体『彼』の本来の名ではない。だが、もはや彼は自己を皇塚桔梗であるとしか認識できないのだ。
————或いは、己はこの桔梗少年が狂を発した結果生まれた存在なのかもしれない。
そんな仮説すら脳裏に過ぎる中、小一時間ほど悩んだ彼は、『なってしまったものは仕方がない』というヤケクソな結論に到達し、男性らしい問題解決思考を回し始める。
記憶によれば、皇塚少年は入学式を1週間後に控えた中学卒業後の春休みを過ごしているらしい。家族構成は父1人、母3人、姉10人の15人家族。彼はその大家族の末っ子として随分と可愛がられているようだ。
が、そんな生活に思春期特有の反発を示した桔梗少年は一念発起し、今までの甘やかし生活を捨てて親元を離れた遠方の共学高校を受験した、というのが今日までの流れらしい。
今、桔梗少年が住んでいるのは、親が彼の進学祝いとして買い与えた高セキュリティマンションの最上階*2。ワンフロアブチ抜きの6LLDK*3という意味不明なその規模は、この世界の『男性』を取り巻く環境を如実に表していた。
男性基礎年金として毎月30万円がマイナンバーカード*4に非課税で振り込まれる事に始まり、公共交通費無料、医療費無料、学費無料*5、その他諸々の手厚い補助が男性を取り巻いている。
ただ、その代わりに毎月の献精*6と結婚の義務*7を負うというのが男性の責務なのだが、後者に関しては結婚すれば基礎年金に結婚年金が上乗せされるため、桔梗少年主観では半分ご褒美のようなものである。
ちなみに婚姻に関しては一夫多妻が一般的だ。何しろこの世界の男女比は1:99。男にはなるべく多くの女性と交際することが求められているのである。
が、この世界、男性希少世界だけでは無く貞操逆転世界でもあるので、女性の性欲が男性よりもズバ抜けて高く、一方の男性は桔梗少年の知るそれよりは遥かに少ない性欲しか持ち合わせていないのだ。桔梗少年にはピンと来ない感覚だが、この世界の男性には一夫多妻というのは中々辛い物らしい。
ちなみにこの女性の性欲過剰と男性の性欲減退については、より優秀な子孫を残す為の進化らしい。男性は厳しい目で種を付ける相手を選び、女性は男性と結ばれた際により多くより確実に子孫を残すべく複数回の妊娠を狙うセックスモンスターへと進化したのだ。
更にその過程で多胎妊娠や複数回の出産に耐えるよう進化した影響なのか、この世界の女性の平均身長は190cmとかなり大きめで、筋力や肉体強度も男性比2倍というとんでもないパワーになっている。桔梗少年の実体験として強く記憶に残っている姉達の筋力はそれはそれは素晴らしい物だった*8。
だが、不思議なことに、この桔梗少年の肉体は特別製なのか、前世の記憶的な部分で言うところの『チート』なのか、この世界の女性と比較してもなお異常な身体能力を有しているらしい。彼の記憶が間違っていなければ、中学最後の体力テストでは50m走2秒、握力100kg以上、反復横跳び300回、垂直跳び5mなどなどの意味不明な記録でちょっとした騒ぎになった程だ。
と、そこまで記憶を漁ったところで、桔梗少年はふと、自らの内に渦巻く欲望がこの世界では問題なく叶うのだという事実に気がついた。
美女は姉達で食傷気味だ、という桔梗少年の記憶と前世の男性Xの性癖が悪魔合体を遂げた結果、彼の内には今、妙に屈折した性癖が醸成されていたのである。
即ち。
『地味で芋っぽい女の子が僕の前でだけえちえちドスケベになるのって興奮する』
という難儀な性癖である。まぁ人の道は外れていないが、せっかく今までの人類が積み上げてきた美的価値観に関しては喧嘩を売っている考え方と言えるだろう。それはB専*9とは少し違う、あえていうならば『B級専』とでも言うべき嗜好。ちょっと野暮ったくて、美形というわけでも無く、ブサイクでもない、普通の女の子というものが、妙に彼の性癖にブッ刺さるようになってしまったのだ。
ちなみに、前世の男性X氏は大量の『地味子』『モブ萌え』系のお宝を持っていたので、かなりそちらに引っ張られているのは否めない。過去のX氏と現在の桔梗少年に共通するのは『美女はもう良いかな……*10』という感覚だけと言っても良いだろう。
ともあれ、性癖を存分に満たしても咎められないのなら桔梗少年に我慢という選択肢は存在しない。何しろ彼の中に宿る『男性的感覚』は前世のソレであり、後ろ指を指されるのがわかっていながらついキャバクラや風俗に行ってしまうようなどうしようもない性欲を抱いた、男という名のケダモノなのだ。
であればもはや彼は止まらない。
1週間後に控えた入学式を超えた後は、性癖の赴くままにクラスカースト下層部を喰い荒らすのだとニマニマとほくそ笑むその姿は、美少年のガワでなければ通報もののネッチョリとした物であった。
好きなキャラクター
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皇塚桔梗
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粟草紀子
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尾花茅子
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河原撫子
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袴田藤子
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萩原久仁子
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諸葛芳子