そんな哲学めいた振り返りすらしてしまった程に金曜から土曜日に掛けてたっぷりと愉んでいた茅子だが、流石に体力が尽きて日曜日の明け方には睡魔に屈し、今こうして昼前に起きるまで爆睡してしまっていた。
「あー。ガビガビするッス……お風呂と洗濯しなきゃ」
そんな呟きと共に後始末を開始する茅子だが、入浴した後風呂を洗い、服とシーツの洗濯やらをしていると早いもので既にお昼を過ぎ切って、
流石にそこまで行けば腹も減ってくるというものだが、悲しいかな一人暮らし*1の茅子のキッチンには電子レンジしか家電がない。つまりは買い食い派なので、メシの備蓄が存在しないのだ。
「……この時間ならレストランで外食ッスね。空いてる筈ッス」
そうと決まれば善は急げ。睡眠欲と性欲ばかり満たしてズルいぞと茅子の中の食欲中枢が猛抗議を始める前に腹に何か入れねばと、適当なファッション*2で近所のファミレス*3までノソノソ歩く事しばし。
しかし彼女の予想とは異なりティータイムを楽しむ陽の者共とマダムで混み合う店内は3組待ちの状態となっており、まさかの事態に茅子の胃袋は話が違うぞと暴れ出す。
しかし他の店に行こうにも、茅子の口は完全に『プロシュートにフォカッチャをつけてあとは青豆のソテーにペペロンチーノとドリンクバー』な口になってしまっており、ここ以外の選択肢は無い。
どうしたものかと悩んだ末に、とりあえず待とうと決めた茅子だが、そこにふと、救いの手が差し伸べられた。
「あら、茅子ちゃん?」
そう声を掛けてきたのは、お手洗いから出てきた際にレジ前を通ったらしい大柄でムッチムチな少女、袴田藤子。金曜日の体育で交流を深めた、茅子にとってはなりたての友人と呼べる間柄の少女である。
「ん? 藤子ちゃんもお茶ッスか? 金曜日はどうもッス」
「いえ、私はお昼を食べに来たの。……良かったら相席しない? 久仁子ちゃんも居るし」
「マジっすか! 神! 是非お願いするッス」
「うふ、神ってそんな大袈裟な」
そんな軽い会話と共に、招かれるは隅の席。そこでメニューを見詰めていた萩原久仁子と軽く会釈を交わした茅子は促されるままに席に着くと、出て当然の疑問を述べる。
「というか、なんで2人はご一緒してるんすか?」
「……偶然、遅めのお昼を食べに来たから」
「え、かなりミラクルっスね? というか久仁子ちゃんもお昼ッスか。私もなんスよ」
「……もしかして、土曜日の夜遅くまでずっとシてた?」
「げ。シャワー浴びたのに……私臭かったりするんスかね?」
「そうじゃ無いのよ茅子ちゃん。私と久仁子ちゃんもそうだからもしかしてって思ったの」
「あー……まぁ、凄かったっすよね。皇塚くん。漫画かよっつー感じッス」
そう言って軽くシュートを打つ身振りをする茅子に触発されて、数日前のバスケを回想する乙女達。思い思いに『グッときた』*4シーンを振り返るだけで、彼女達の恋心には火が灯る。
皇塚桔梗というとんでも美少年の魅力にどっぷりと使ってしまった彼女らは、もはや沼に肩まで浸かっている同志達と語り合うことしか出来ない身の上に成り果てているのだ。
「……私、未だに実感ないぐらい。……夢みたいだった」
「いやー逆王子様抱っこは夢超えてるっス。漫画でも見ねぇッスよ」
「確かにそうよね。久仁子ちゃんと皇塚くんだと身長差もあるし……彼の筋力どうなってるのかしら?」
「確かに。私175cmしかないチビっスけど*5、それでも72kgあるんスよ? 久仁子ちゃん確か250っすよね?」
「その……鯖読んでて、本当は259……」
「ひえー、凄いっス。……体重とか訊いて良い感じっスか? 見た感じ細めっすけど」
「……えと、118kg、かな……油断したらすぐ120kg越えちゃうけど……」
「うーん、でも身長を考えると痩せすぎじゃないかしら? 多分適正体重ってざっくり150kg*6ぐらいよね?」
「はえー、やっぱり身長高めだとそれぐらい行くもんなんスか」
「まぁ人それぞれ過ごし易い体型ってあるものだけれどね。私はオヤツを我慢してまで痩せたいとは思わないもの」
「あんまり体重とか考えた事無いっすね……あ、ちなみに藤子ちゃんの身長体重ってどんなもんなんすか? *7 久仁子ちゃんと並ぶと感覚狂うんスけど、藤子ちゃんも結構デケェっすよね」
「私は中学2年からずっと、200cmぴったりよ。体重は今は145kgだったかしら?」
「おぉ……でっけぇ。でも、藤子ちゃんはそのおっぱいだけで10kgぐらいありそうだし納得っす」
「うふふ、流石にそんなには無いわよ? 6kgくらいね」
「十分じゃねえッスか! ねぇ、久仁子ちゃん!」
「う、うん……男の子ってやっぱり……大きい方が好きなのかな……?」
「どうなんすかね……処女な上に中学時代のあだ名が『お馬鹿な子や』*8だった私には難しすぎる問題*9っすよソレ」
「それに久仁子ちゃんや私たちが知りたいのは、一般論じゃなくって皇塚くんの好みだものね?」
「となると……諸葛さんに聞くのが1番ッスか?」
「……諸葛さん、怒らない? 付き合ってるワケだし……」
「お妾狙いって言ったらどうにかならないッスかね、陰キャのよしみで、こう」
「いいえ、やってみる価値はあるかもしれないわね。諸葛さん、最近腰を庇っている事が多いもの。ほら、皇塚くん、体力ありそうでしょう?」
「もしそうなら……いよいよ同人誌のキャラみたいだね……皇塚くん」
「いやぁ、夢女子でもここまでの妄想は自重するんじゃないスか? 『リアリティが無い!』とか言いそうッス」
「……確かに」
「ふふふ。事実は小説よりも奇なり、って事かしらね? ……ところで、何か頼まない? 作戦会議には栄養補給も必要よ?」
「億理あるッス。藤子ちゃんは億り人だった……?」
「……私、注文伝票書くから……欲しいもの言ってね」
「じゃあとりあえずセットドリンクバーが3ッス」
「私は温玉乗せドリアとペスカトーレとマルゲリータ、それに————」
女三人寄れば姦しい。そんな言葉を体現するかのように熱く語り合う3人は、纏めて『妾に貰ってもらう』計画を練り、あーでもないこーでもないと頭を捻りながらも、諸葛芳子経由で桔梗少年のハーレムに加わる方法を詰めていく。
そんな中、『1-Aバスケ桔梗くん班』のグループLIMEに粟草紀子から『桔梗くんに妾に誘われたんだけど!?』という爆弾発言が飛び出した事で事態は加速し、当の本人をレストランに呼び出して事情聴取*10を行った彼女達は、その日のうちにLIME越しとはいえ諸葛芳子に「桔梗くんは喜ぶと思うよ」とのお墨付きを貰う事が出来た。
その結果結成された『皇塚家』なるグループLIMEは、月曜日に新メンバーを加える事で本格始動し、桔梗少年を大いに喜ばせる事になるのだが、それはまた別の話。
好きなキャラクター
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皇塚桔梗
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粟草紀子
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尾花茅子
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河原撫子
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袴田藤子
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萩原久仁子
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諸葛芳子