さて。そもそもだが、外宇宙だか前世だか異世界だかのX氏の魂と、この世界の皇塚桔梗の魂が悪魔合体して生まれた『桔梗少年』の今世における目的は『好みのタイプの女の子を囲って面白おかしく暮らす』という、三流WEB小説の主人公めいた欲望一辺倒なものである。
その目的を考えれば、彼は女を傅かせ、侍らせ、身の回りの雑事などを放り投げていても良いはずなのだ。だがしかし、此処最近、諸葛芳子という劇物*1の世話を焼く*2上で、一層闇深く変質を遂げた彼の欲望は、『好いた女性の一切を支配する』という危険な領域にまで足を踏み入れつつあった。
無論それは、ともすれば女性の自由意志を奪う行為に繋がりかねない外道の路。だが、『可哀想なのは抜けない』と強く主張する
と、なれば、どうなるか。桔梗がまず選択したのは『胃袋を掴む』『外堀を埋める』の2点を同時に満たす方法だった。
「はい、LIMEで言ってたみんなの分のお弁当。重箱でごめんね? 仲良く分けて食べてくれたら嬉しいな」
なんてセリフと共に、諸葛芳子に託されるのは、3段の重箱。それを遠目に眺めて『昔の運動会じゃねーか』とツッコミを入れる伊藤さんは全くもって正しいという他ないだろう。
————桔梗少年の口ぶりと、普通の日の昼飯に1人で食う量ではない事を加味すれば、当然誰か他のメンバーの分も含む筈。であれば誰が?
などと思考を巡らす美少女達のとんでもない視線の中、いそいそとその弁当を囲見始めたのはクラスでも選りすぐりの『ルックス微妙戦隊*3』。あんまりにもあんまりな状況にクラスがざわつくのも当然だろう。
だが、桔梗少年が別枠で取り出したお弁当を手に尾花茅子*4の元へと向かったことで、教室内の騒めきは一層激しくなった。
————いやなんでこのメンバー?
なんて思考は当然のこと。だが当然すぎてちょっと突っ込めないその空気感の中で、声を上げる勇者が1人。
「皇塚お前、やっぱあれか。女の好みに癖あるタイプ?」
「まぁね。自覚はあるよ」
「ほーん。全校生徒の8割が泣くなこりゃ」
「あはは、そんな大袈裟な」
尾花茅子との席の近さを活かして近寄ってきた桔梗少年相手にそんな言葉を交わすのは、先程も突っ込んでいた伊藤。『メンタル超合金か?』などとクラスメイトたちが驚愕する中で、「いやーマジでストーカーとか気をつけろよ。……あ、尾花と食うなら私の席使えよ。私購買行くからさ」と去っていった彼女のクラス内カーストが一気に跳ね上がったのはいうまでもない。
なお、真実としては伊藤嬢が『結構変態*5』なだけで、桔梗少年の現状が性癖と合致しており大満足しているというオチなのだが、そんな個人的な性的嗜好がクラスメイトに伝わる訳もなかった。
閑話休題。
さて、そんなこんなはともかくとして、今日の桔梗少年は尾花茅子と昼食を共にするつもりではあるのだが。
「茅子ちゃん、あーん」
「はひッ、あ、あー……んぐ……」
「あはは、喉に詰めない様によく噛むんだよ?」
「んも……味がしねぇッスよ……」
「あれ!? マジで? ちょっとごめんね、んちゅ*6……ん? ちゃんと味してるよ?」
「んん゛ッ!? ち、ちげぇッス、緊張で、その……」
などと言って青い顔をしている通り、当然茅子には中々食事どころの環境ではない。ほぼ全クラスメイトの衆人環視の中でマトモに飯の味を感じられる奴などまぁ居ないだろう。それが陰キャなら尚更だ。
だが、それを受けての桔梗少年の選択は、場所を移すことでも、あまり見ないでくれとクラスメイトに頼み込む事でもなかった。
「あー、なるほど? じゃあそういうの気にならなくしてあげるね♡」
鈴蘭のように美しい笑みを浮かべてそう告げる桔梗少年。それに対し『なんだかマズイ』と茅子が認識するよりも、桔梗少年の行動の方が早かった。
茅子の顎先を軽く掴み、クイっと上を向かせてからの、強烈なキス。まるで触手の様に蠕く舌先が茅子の口内を這い回り、のたうつ肉蛇が茅子の頬を押し伸ばす様が周囲からも十二分に窺えるそれは、口付けというよりは口腔陵辱と呼ぶべき行為だ。
当然、そんな真似をされた茅子は口腔粘膜全体を超弩級の性感帯に変えられ、脳内麻薬の飽和溶液と化した彼女の脳脊髄液が終わりのない連続絶頂を彼女に齎し、その精神を軋ませる。
そして、様子を見ているだけのクラスメイトたちですら、手にしていた箸を取り落とし、ポカンと間抜けに開いた口から涎を垂らして『軽い絶頂』に至るほどのドスケベキスが続いたのはきっかり1分。
つぅ、と涎の橋を掛けて離れた唇。茅子のそれが痙攣と共に涎を垂れ流している一方で、終始彼女を圧倒していた桔梗少年の唇は淫らな笑みを浮かべ余裕を見せている。
だが、桔梗少年の行為は、むしろここからが本番だった。
おもむろに茅子用の弁当を頬張り、しっかりと咀嚼した桔梗少年は、そのまま茅子へと口付けて、その口内に自身の唾液で粥状になった食物を送り込み始めたのだ。
当然、茅子も正気であればそんな恥ずかしい行為には全力で抵抗しただろう。だが、快感に呑まれた今の彼女では『これ、もののけ王*7のやつ』とオタク回路を辛うじて動かすのが精一杯。そして周囲のクラスメイトたちも、『これもうセックスじゃん』と思いながらも、それを指摘するよりこのドスケベ劇場を観る方が忙しくて声が出ない。
そんな静かな時間が続く事暫く。弁当を最後までしっかりと口移しで茅子に喰わせた桔梗少年は、滅茶苦茶に肌ツヤが良くなった満足げな笑みで、愛する側室へと問いかけた。
「どう? 美味しかった?」
その問いに、放心して自我を溶かしている茅子ではなくクラスメイトたちから『ご馳走様でした』の声が上がり、桔梗少年が首を傾げる事になったのは、他人事としてみれば間抜けな光景だっただろう。
その後、正気に戻った*8クラスメイトたちが『そう言えば自分の分の昼食を食べていない』事を思い出した事で、休み時間を半分過ぎた教室内は俄かに騒がしくなり、次第にスケベな雰囲気は霧散していくことになる。
ついでに言えば、購買から帰ってきた伊藤さんが『うわっ、メス臭ッ、換気しろ換気! つか何があった?』などと告げた事で『物理的にスケベな空気』も無事教室から解き放たれ、午後の授業で気まずい事にならずに済んだ一幕もあったりしたのだが、これはまた別の話。
ただ、それら全てのドタバタの中でも茅子が正気に戻らず、結局午後の授業の予鈴まで放心していたのは、いうまでもない事だろう。
なお、そんな彼女のズボンはすっかりと染みていたのだが、それを指摘する心無い者はクラスに居らず、彼女の『バレてないっすかね……?』という怯えた心は無事守られたのは一つ良い話なのかもしれなかった。
まぁ、伊藤嬢と桔梗少年を除いたクラス全員*9が染みているので誰も自爆したくなかっただけだったりはするのだが、それは言わぬが花というものだ。
好きなキャラクター
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皇塚桔梗
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粟草紀子
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尾花茅子
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河原撫子
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袴田藤子
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萩原久仁子
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諸葛芳子