貞操逆転男性希少世界性癖屈折美少年   作:黒山羊

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30癖目 粟草紀子のお熱い木曜日③

「昨日自分で言っといてなんだけどさ。桔梗くん良くOKしてくれたよね、今日の予定」

「どうして?」

「いやぁ、だってさ。朝からまぁその、全身運動して、学校終わったらまた今度も全身運動じゃん? 体力的にさ」

「僕は可愛い子の為なら体力が無尽蔵に湧いてくるから平気平気」

 

 なんて会話を交わす2人は現在、水の中に居た。

 

 桔梗少年的には先週、紀子が赤っ恥を晒した*1一件以来となる市民プール。春先故に人が少ないこの施設は、粟草紀子にとってホームグラウンドと呼べる場所である。

 

 文字通り『水を得た魚のよう』に軽やかに水中を踊るその姿は、さながら人魚。ピッタリと肌に張り付く競泳水着を見に纏い、イキイキと泳ぐその姿は桔梗少年でなくとも『美しい』と感じるだろうと思えるほどに魅力がある。

 

「スポーツウーマンの身体って良いよね。鍛えられた肉体には野生的な機能美を感じるというか、カッコいいというか……」

「え。桔梗くん、マトモな感性もあったんだ」

「その言い方だと、僕にマトモじゃない感性があるみたいに聞こえるよ紀子ちゃん」

「そう言ってるじゃん」

「そんなバカな」

 

 なんて気楽な戯れ合いは、カップルというべきか、友人というべきか、境界の曖昧な思春期特有の空気感を帯びたモノ。

 

 自分の抱く感情が肉慾なのか恋心なのか、或いはもっと別の何かなのか。そんな悩みを抱きがちなお年頃の2人だが、桔梗少年はその存在の特異性から『自らの欲望』を良く理解しており、悩んでいるのは紀子だけ。

 

 だからこそ、今日の紀子は『自分が自分らしく居られる場所』で、様々な角度から桔梗少年と向き合ってみたのだ。

 

 私室で何もかもを曝け出した自分、学校での自分、好きな事に全力なプールでの自分。

 

 そしてその結果得られたのは、自分が抱いているのは「肉慾でもあり恋心でもあり、かつ友情でもある」というまぁ当然の結論。

 

 まず肉慾だが、桔梗少年のような極上の美少年を前にして子宮が疼かない女はきっと百合趣味*2に違いない。そして当然紀子は異性愛者なので、そりゃあもう桔梗少年相手に熱烈なリビドーを抱いているのだ。

 

 そんな思いの丈と溢れる情欲をぶつけたのが朝の一件。そこで桔梗少年が見せた反応がドン引きでも軽蔑でもなく受容と紀子以上の熱い欲望の迸りだった時点で、紀子としては充分に報われた気になっていたのだ。

 

 だが、過剰なドスケベ美少年成分の摂取によって『賢者モード』に到達した彼女の内側には、未だなお燃える感情が存在していた。その感情の赴くままに桔梗少年を求め、学校でも四六時中ついて回っていたのが今日の昼間、学校での紀子だったのである。

 

 一丁前に彼女面で伊藤嬢を威嚇し、同じ妻同士である芳子や茅子、撫子といった『家族*3』にすら嫉妬を抱いてしまうほどの独占欲。それに名を与えるならば、『執着』だろうかと悩んでいた紀子に対し、答えを与えてくれたのは、他ならぬ桔梗少年だった。

 

「紀子ちゃん、今日は好き好きオーラ全開の恋する女の子って感じで一段と可愛かったね♡」

 

 なんて、下校中に蕩けるような甘い声で耳打ちしてきた彼により、名付けられたその感情の名は恋心。こんなに熱くてドロドロして胸を刺すようなモノがそんなに愛らしい名前で呼ばれて良いのかと愕然とした紀子だが、成る程どうしてその名付けはストンと腑に落ちた。

 

 先人曰く、恋とはオチ(堕/落)るもの。ならば、その正体が堕落した醜悪な感情でも、おかしくはないのだろう。

 

 なんて、中学2年のあたりで患った病が再発しそうな感想を抱きながら、『性欲猿と言われがち*4な思春期女子にも一応そんな情緒があるんだなあ』と自分ごとながら感慨深くなってしまったのがつい1時間ほど前のこと。

 

 そして、先程プールに到着してしばらく水遊びに興じていた紀子の胸に湧き上がったのは、恋と性欲以外の感情。純粋に『遊ぶのが楽しい』というその気持ちは、思春期を迎える遥か前に、何も考えず友人達と泳いでいた頃と同じ『友愛』の情だった。

 

 それはまるでパンドラの箱の底に残った希望の如く僅かで細やかな物ではあるが、確かに紀子に残った尊い感情。

 

 男の子を相手にすれば情と欲で滅茶苦茶になってしまいがちな思春期女子にも純真な気持ちが残っているのだと確かに主張するそれは、紀子にとっては心地良いもので。

 

「桔梗くん、ありがとうね。本当に」

「どうしたの急に。お礼を言うのはむしろ僕じゃない? デートのセッティングしてもらって楽しく過ごしてるだけだよ僕」

「そんな事ないし。普通の男の子はそもそも私なんかと遊んでくれないじゃん」

「まぁ紀子ちゃんにモーションかける男がいたら僕が殺すから、それはそうだね*5

「またまた〜*6

 

 などと、照れくさいのか気安い会話の中で感謝を伝える紀子と、そんな彼女に激重感情を向けている桔梗少年。

 

 気の向くまま、プールが閉まる直前までたっぷりと水遊びを楽しんだ2人は心地よい疲労感に包まれて、今日一日を終えることになるのだった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 なお、可愛い恋人の水着姿で密かにフルチャージされていた桔梗少年のドスケベ波動砲が紀子の下宿で10連射されることになるのは、疲れてバスで居眠りする紀子はまだ知らない話である。

*1
漏らした

*2
要はレズビアン。男性希少世界故に結構多い。

*3
この世界では竿姉妹は2親等の姻族として扱われる為マジで家族。

*4
一説には平均で週に30回は右手のお世話になるとされている

*5
満面の笑み

*6
なお冗談ではない模様




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