貞操逆転男性希少世界性癖屈折美少年   作:黒山羊

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7癖目 イチャイチャ脳破壊デート

 僕の彼女は可愛いなぁ♡

 

 などと実に幸せな事を考えている桔梗少年(異常性癖精神異常者)が、彼女こと諸葛芳子ちゃんをおめかしさせて街に繰り出したのは、昼下がりのこと。午前中のみの健康診断日故か街にはチラホラと学生らしき少女達の姿もあり、平日の昼間には珍しい若々しい活気が満ちている。

 

 そんな中、桔梗少年に恋人繋ぎで『連行』されている芳子ちゃんの目は露骨に死んでいた。

 

 下着も衣類もすっかり新品に仕立て上げられた彼女の装いは、春先に相応しい明るめベージュのチュニックと黒地のデニムホットパンツに紺色のカラータイツを合わせた無難なモノ。足元がクロッグシューズなのが惜しいところだが、靴については今日の買い物予定に含まれているのでそこは気にしないべきなのだろう。

 

 何より今まで着ていたボロボロのジャージとTシャツよりは絶対に身綺麗なのだから、そこを気にしているわけではないのだ。

 

 問題なのは、シチュエーション。とんでもない美少年と『P〇kém〇n』のヒド〇デ似の顔面ギリギリ女が恋人繋ぎなどしているのだから、周囲の人々の視線の圧が半端では無いのである。

 

 まさに四面楚歌。出発前のポヤポヤした気持ちは既に急速冷凍の後フリーズドライされ、パッサパサに乾涸びた。

 

 だが、そんな状況でも繋がれた手だけが、辛うじて彼女の精神をギリギリのラインで安定させている。周囲の冷たい視線の向こうに燃えたぎる嫉妬の焔を感じる事でどうにかこうにか自己を肯定し、芳子は舌を噛み切らずに済んでいるのだ。

 

 そんな彼女の精神状況については、当然ながら桔梗少年も知るところ。だが、この気狂い野郎がその辺の配慮をするかと言えば、否である。

 

————トロトロに蕩けてるのもカサカサに乾涸びてるのも可愛いとか無敵か? 

 

 などとふざけた事を考えながら、彼女が落ち込み過ぎそうになれば繋いだ手に軽く力を込め、時折他人とすれ違うのを口実に肩を寄せ合っては彼女をドギマギさせて、その心がグラグラと揺れる様を愉しんでいるのである。

 

 人心を玩弄するその行動は、鬼畜の所業と言うのも生温いゲスの極み。だが悲しいかな、芳子ちゃんの方はそんな外道の内心を露知らず、心細さの中で桔梗少年だけを頼りにし続けた結果、彼への依存度を高めつつあった。

 

 その状況もまた桔梗少年には筒抜けなのだから、この狂人(主人公)が昼食の店を迷っている様に振る舞いながら市井の美女美少女(守備範囲外のメス)共に『可愛い』恋人を見せびらかして周るのは自明の事。

 

 結局、本気で芳子ちゃんのメンタルが軋み始めるまで御披露目デートを続行してみせたその精神は歪み切っているという他ないが、彼が真に屈折しているのは、ここまで彼女を追い詰めておきながらも同時に全力で彼女を気遣っていると言う点だろう。

 

 さりげなく車道側を歩き、周囲に気を配り、細やかに反応を拾い上げながら会話を弾ませ、最終的に彼女が今最も食べたい料理を割り出してピタリと当ててくるその気配り。

 

 この世界においては逆エスコートとでも言うべき振る舞いではあるものの、今こうしてリーズナブルなファミレスに入ってからも、ソファ席を勧め、手荷物を預かり、お冷を手早く汲んでくるその様は、シンプルに『大切にされる喜び』を諸葛芳子に感じさせている。

 

 だが、その上で彼は1番店外からよく見えるガラス張りの角席を選んで彼女を周囲の視線に晒し続ける事にも余念がないのだ。

 

 実に捻れた愛情。それを向けられる芳子の精神が徐々に捻れていくのはもはや不可抗力であり、お冷を汲む僅かな間でも『彼氏』と離れれば、彼女の心は世間の寒さに凍えてしまうようになっていた。

 

 故に、彼女の依存心は自らに『桔梗少年に対する積極性』を強いるのだ。たった数時間でもはや捨てられては生きていけないまでに心を蝕まれたその姿は、この世界の女に言わせれば『情け無い』*1ものなのだろう。

 

 だが、ダメなのだ。餌付けされた野生動物が元の野生には戻れないように、ドブの様な人生を生きていた者が夢のような人生を一瞬だけでも味わってしまえば、もうドブでは生きて行けないのである。

 

 だからこそ、芳子はどうにかこうにか無い知恵を絞って桔梗少年に媚を売る。

 

「桔梗くん、さ。その、私に何か、ほら。して欲しい? 的な。なんかこう、その、ある? あはは……はは……」

 

 が、まぁ、なんと言うべきか。彼女の名誉の為にフォローするならば男子と喋る事自体が生まれて初めてに近いので*2こんなどうしようもない台詞でも最大限の努力の結晶なのである。

 

 だが、それを知った上で最高で最悪な返しをするのが彼女の眼前に座る悪魔めいた存在なのだ。

 

「じゃあこのデラックスストロベリーパフェ食べさせ合いっこしよっか♡ 口移しで♡」

 

 などと言って艶かしく『あーん』と口を開けて舌先をチロチロさせてみせるドスケベ過ぎる桔梗少年。そのあられも無い姿は店の内外にいる女達を魅了し、嫉妬の視線が芳子へと突き刺さる。

 

 だが、そんな状況下で、芳子の背筋に走るのは、恐怖よりもゾクゾクとした快楽だった。

 

 その事に疑問を感じて少しばかり考えれば、元々特待生になれる程度に優秀な彼女の地頭は容易に答えを見つけ出す。

 

 ————私は醜い。他の人達は美人。でも()()()()()()()()()()()

 

 そんな闇の興奮が彼女のうちに芽生え、そして今それを自覚した瞬間、彼女の下腹はギュンギュンと背徳の喜びに脈動する。

 

 彼女が『完全に堕ちた』のは、今まさにこの瞬間。

 

 性癖が捻じ曲がっている少年と、彼に性癖を捻じ曲げられた少女。すっかり似合いのカップルとなった2人は淫蕩な笑みを浮かべて見つめ合い、細やかで幸せな幸せな昼餐会を存分に楽しんで、デザートの食べさせ合いもしっかりと完遂する甘い時間を過ごしていく。

 

 その後に待ち受ける買い物デートやディナーですら、今の芳子にとっては純粋な楽しみへと変わっており、死んでいた目は闇を一層深くした黒々とした奈落の様なモノへと変わり果てて、彼女のギョロ目は愛しい桔梗少年だけを映す深淵の水鏡と化して、乱杭歯の口元にはニマニマと歪んだ笑みがこびりつく。

 

 そんな彼女の瞳をしっかりと見つめる桔梗少年もまた、整ったその相貌にニッコリと笑みを浮かべ、自身への依存度を増す可愛い恋人へと言葉を紡ぐ。

 

「やっぱり芳子ちゃんは可愛いねぇ♡ やっぱり僕の1番目の彼女は君に決めて良かったよ♡」

「……1番目?」

「うん。芳子ちゃんが僕の本妻のつもりなんだけど嫌だった?」

「ッ、ううん! 嬉しいな、えへ、へへ……ウェヒ」

 

 それはさながら障害馬術の騎手の如き、絶妙な手綱捌き。「貴女の他にも彼女を作るよ」と伝える事で釘を刺しつつ、「貴女が1番だよ」「結婚しようね」と伝える事でメンタルの崩壊を抑制。他者を意に介さないレベルの深淵に堕ちるその直前で調整を掛け、彼女の認識に『妾』の存在を挟み込むことで他者への意識を残させる匠の技。

 

 その結果再び桔梗少年以外の人々を映す様になった芳子の瞳はしかし、致命的な色眼鏡を内蔵し、他の女を『桔梗少年が気にいるかどうか』というフィルター越しに眺める様になってしまっている。

 

 そして、その歪んだ眼力に店員の美少女に冷たい対応で淡々と接する桔梗少年*3が映る事で、彼女の笑みはより一層凄絶なモノへと変化した。

 

 桔梗少年を軸に置く限りにおいて、諸葛芳子は数多の美少女を優越する。その事実が彼女の中で育つ闇の性慾をスクスクと育み、『2人きりの世界』に堕ち掛けていた彼女は桔梗少年の誘導通り『桔梗少年に重依存しつつ他者を内心見下して悦に浸る』歪んだ陰キャへとその存在を変質させていく。

 

 そんな彼女の様子を手に取るように観察しながら、桔梗少年はパフェのクリームを口に含むと、今日何度目かの甘いキスを芳子と交わし、互いの舌でクリームを混ぜ合わせる『食べさせ合い』で彼女の心身に『アメ』を与え、更にその依存心を強化する。

 

「芳子ちゃんと食べると美味しいねぇ♡」

 

 などと言って彼女の唇から溢れたクリームを舐め取る彼は、徹頭徹尾悪魔の様な美少年として店中の女性の脳を破壊しつつ、存分に恋人との逢瀬を楽しんでいる。

 

「楽しいなぁ♡ ふふふ♡」

 

 と微笑む彼は或いは、本当にこの世に降臨した悪魔なのかも知れなかった。

*1
女らしくない根性無しなので

*2
一回だけ『キモ過ぎるから慰謝料』と言われて有り金を財布ごと取られたことはある

*3
タイプじゃ無いので塩対応

好きなキャラクター

  • 皇塚桔梗
  • 粟草紀子
  • 尾花茅子
  • 河原撫子
  • 袴田藤子
  • 萩原久仁子
  • 諸葛芳子
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