貞操逆転男性希少世界性癖屈折美少年   作:黒山羊

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8癖目 こいつら交尾したんだ!

「皇塚くん、昨日大丈夫だった!?」

 

 登校直後、そんな声を掛けてきた美少女(だれかさん)に対し、桔梗少年の反応は「何が?」という実にそっけない一言だった。

 

 もちろん、その脳裏に浮かんでいるのも「コイツ誰だっけ?」という完全に興味の無い思考。彼の狂気じみた洞察力は地味子と芳子ちゃん*1にしか適応されず、そもそも脳が美少女(その辺の奴)に思考を割くことを拒んでいるせいもあって全く勘が働かないのだ。

 

 だが、名も知らぬ美少女*2の次なる発言で、漸く桔梗少年にも彼女が何を聞いているのか理解ができた。

 

「いや、皇塚くんがクズ子に連れ回されてるの見たって子いっぱい居るから心配でさぁ。変な事とかされてない?」

 

 無邪気にそう問うてくる言葉に込められた感情は、此処には居ない諸葛芳子に向けられた侮蔑と、美少年たる桔梗少年へと向けられた軽薄な劣情。

 

 そして現在桔梗少年に話しかけている美少女の周囲にいる取り巻き達も同様の気配を放っている。

 

 なるほど、彼女達はどうやら諸葛芳子と『同中』らしい。

 

 そう察した桔梗少年の脳は芳子ちゃん関連のデータと認識するや否や1テラ量子ビットを有する量子コンピュータよりも高速かつ並列で思考を回転させ始めた。

 


 

案1:今すぐこのカス共を破壊する。

→却下。芳子ちゃんは大天使(プリティピュアピュアエンジェル)なのでそんな事は望まない。

 

案2:羽虫を気にしても仕方ないので無視する。

→却下。ムカつくし芳子ちゃんに矛先が向かいうる。

 

案3:このゴミ共を死ぬ程煽った上で心を圧し折る。

→採用。内容は臨機応変且つ柔軟に即応性を保って決定する。

 


 

 この間約0.01秒。脊髄反射よりも早く結論を出した彼の脳髄は、怒りの焔で以って言葉の剣を鍛え、害意によって研ぎ澄まし、戦端を開いた。

 

「変な事って?」

「その、ほら。……セクハラとかさ。本当に大丈夫だった? 皇塚くんカッコいいから変なの寄ってきちゃうじゃん?」

「ああなんだ。そういう? 大丈夫大丈夫、心配しないで」

「あ、そうなんだ。でもレストランでさ、ほら、クズ子にセクハラされてたって噂になってるじゃん」

「ん? そうなの? 付き合ってるんだし、キスとかセックスぐらい普通じゃない?」

「……え?」

「いや、だから、付き合ってるんだからキスとかセックスぐらい普通でしょ? 昨日もゴム無くなるまでハメまくったし。……いや、無くなってもシたからゴムあんまり関係ないか」

 

 そう言いながら、あくまで表情はクールに、しかし「コイツは何を言ってるんだ?」と言外に伝える様に片眉をあげて首を傾げて見せる桔梗少年。

 

 寝てもないのにNTR(ネトラレ)被害者の様に脳を灼かれて石化した名も知らぬ美少女達にとってその態度は余りにも冷たく、勝手に抱いていた慕情を粉砕されたショックで血の気が失せている者まで居る始末。

 

 一昨日の自己紹介で植え付けられた恋心を容赦無く粉砕されるその姿はあんまりにもあんまりだが、桔梗少年からすれば愛する人の悪口*3を言われた正当防衛の結果、相手の心が死んだだけなので何も気にしていない。

 

 その上で彼女達に『なんだコイツら』という視線を容赦無く浴びせてから自分の席に戻った桔梗少年。そんな彼を皆が遠巻きに見つめる中、教壇側の扉から登校して来た人物によって、更なる騒めきが教室に巻き起こる。

 

 サラリと艶のある黒髪、控えめなレースがあしらわれた白いブラウス。そこに濃紺のプリーツロングスカートを合わせた楚々とした装い。おおよそ今までの印象を覆す姿で現れた『諸葛芳子』その人は、まさにこの教室における渦中の人だ。

 

 桔梗少年と仲良く登校した彼女が、登校直後にちょっとお手洗いに寄っていた関係で桔梗少年より若干遅れて教室へとやってきたのである。*4

 

 痩せぎすの身体やギョロリと大きな黒洞々たる瞳、乱杭歯の覗くへの字の口元はそのままだが、余りにもイメチェンしたその姿は今までの怪物然とした印象を一気に『顔に難はあるが1人の女の子』という認識へと引き上げている。

 

 しかし何より彼女が注目されているのは『桔梗少年と同じシャンプーの香りが漂う髪』や、『首筋に幾つも残る赤黒い吸引性皮下出血(キスマーク)』、そしてどことなく彼女から薫る『桔梗少年の残り香*5』に依る部分が大きい。

 

 ————この2人、本当に付き合って、セックスしてるんだ。

 

 最高最悪のタイミングでそう強く認識させられたクラスメイト達の中にはいよいよ卒倒するものまで現れる始末。心身ともに大人に近づいてはいる女子高生達だが、流石にまだ濃厚なNTR(寝取られ)WSS(私が先に好きだったのに)と言った被掠奪的恋愛模様は刺激が強すぎた様である。

 

 だが、その反面。自分の容姿に『あんまり自信がない』女生徒達にとって、諸葛芳子の存在はある種の救世主的側面を持っている。

 

 ————私にもワンチャンあるのでは? 

 

 そう考えた彼女らの脳裏に浮かぶのは、あの『諸葛芳子』をここまで変えてしまう桔梗少年との刺激的な逢瀬を『自分が』楽しむ妄想だ。

 

 幸か不幸か、昨日の桔梗少年と芳子ちゃんによる『パフェ口移し食べさせ合い』の光景は『【朗報】とんでもない痴男さん見つかってしまう』なるタイトルでSNSに隠し撮りが出回っており、妄想の為のオカズには事欠かない。

 

 絶望と希望、現実と夢想。相反する状況に二極化した教室の空気は朝のHRを越えても消える事なく残り続け、その日の1-Aには終始奇妙な空気が漂い続ける事になったのだった。

*1
地味子とは別腹

*2
そもそも同クラスだっけ? というレベル

*3
なお前世視点では『クラスの不潔な容姿の陰キャがレストランで美少女に性的奉仕をさせていた』という状況なので心配されて当然ではある

*4
なお『垂れてきた物』は無事にナプキンで止まって事なきを得た模様

*5
ほのかに薫る栗の花のにほひ

好きなキャラクター

  • 皇塚桔梗
  • 粟草紀子
  • 尾花茅子
  • 河原撫子
  • 袴田藤子
  • 萩原久仁子
  • 諸葛芳子
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