百合アニメの主人公に転生したけど『カリスマ』使えないかもしれない 作:星宮ひまり
ふと続きが浮かんだので書いてしまった。
余裕が生まれたら書くかもしれない……いや、うーん、でも月一程度になりそう。つまり続かない。
252:主人公のイッチ
今日の夢結先輩のコーナー
夢結先輩「梨璃、シュッツエンゲルの契りを結ぶわよ」
253:名無しの転生者
草
254:名無しの転生者
展開が早すぎィ!
255:名無しの転生者
夢結様がシュッツエンゲル契約を迫るのか……
256:モノホンお嬢様
きぃぃいいいいっ! 許せませんわ!
わたくしの目が黒いうちは、抜け駆けは許しませんわーっ!
257:名無しの転生者
コイツなんでこんなに原作に近い性格してんだ……?
258:名無しの転生者
原作キャラ憑依転生勢は基本的に魂の性質が近い人間だってばっちゃが言ってた
259:名無しの転生者
ばっちゃ=転生神
260:名無しの転生者
あの女神をババア呼ばわりとか、正義の雷落とされるぞ
261:名無しの転生者
へー、俺らを転生させたのって女神なんか
初めて知ったわ
262:名無しの転生者
まぁみんながみんな神に会ったわけじゃないし……
263:主人公のイッチ
ところでシュッツエンゲルってなんぞ?
264:名無しの転生者
えぇ……
265:名無しの転生者
そこからかい
266:名無しの転生者
説明しよう! シュッツエンゲルとは!
267:たかなほを見守り隊隊長
シュッツエンゲルとは、上級生が守護天使として下級生を導く、それはもう素晴らしい制度です!
学年間の交流を重視する校風である百合ヶ丘女学院では、この疑似姉妹の契りを通して下級生をリリィとして、そして人間的にも指導することを推奨しています!
そして、この制度の美しいところはなんと言ってもリリィ同士の関係性が――
268:名無しの転生者
めっちゃ早口になるじゃん
269:名無しの転生者
こいつも原作とっきーと魂が似てるってことか……
270:名無しの転生者
いやただオタクなだけだろ(辛辣)
271:名無しの転生者
というか、アニメで梨璃からシュッツエンゲル契約を迫ったのがイレギュラーなんじゃなかったっけ?
272:名無しの転生者
ほ?
273:名無しの転生者
あー、そういや本来は上級生から声を掛けるものなんだっけ?
274:モノホンお嬢様
そうですわね
本来は上級生が声を掛けてシルトにするもの……なのですが、まぁ、そこが梨璃さんと夢結様の素晴らしい関係で……いやいやでも今はわたくしの勝率の低下が問題に……ぐぬぬ
275:名無しの転生者
なんだこいつ
276:名無しの転生者
なんだこの……なに?
277:名無しの転生者
元はただのアサリリオタクだったんでしょ
278:主人公のイッチ
んで、それを結ぶことのメリットは?
279:名無しの転生者
別に利益不利益で結ぶものじゃないんで……
280:名無しの転生者
お前、百合アニメの擬似姉妹契約って聞いて全てを察しろよ(辛口)
281:名無しの転生者
草
282:名無しの転生者
>>280 は無理があるとしても、優秀な先輩のシルトになることはイッチにとっても良いことだと思うぞ
283:名無しの転生者
一部うるさい同級生がいるだろうけど
284:モノホンお嬢様
あら、誰のことかしら
285:名無しの転生者
(わかってんじゃん……)
286:名無しの転生者
(自覚してるってことじゃん……)
287:モノホンお嬢様
わたくしは別に、梨璃さんと夢結様がシュッツエンゲル契約を結ぶこと自体は反対しませんわ
同じ世界に転生者が多い以上、アニメと同じ流れになるわけがありませんけれど、夢結様のルナティックトランサーの暴走を止めるためには、梨璃さんの存在が必要なわけですし
288:名無しの転生者
そーか
289:名無しの転生者
自分の欲望に振り回されてるわけじゃないのね
290:名無しの転生者
……ん? でも、梨璃っつうかイッチのレアスキルはちゃんとカリスマなの?
291:原作にわか系転生者@ラーメン好き
基本的に原作と同じレアスキルだと思うよ
ソースはあたし
292:たかなほを見守り隊隊長
わ、わたしも原作と同じ『テスタメント』でした
293:モノホンお嬢様
わたくしも『レジスタ』でしたし、きっと梨璃さんも『カリスマ』を持っているはずですわ
……いつ発現するかは、ちょっとわかりませんけど
294:名無しの転生者
ほえー
295:名無しの転生者
アニメだと梨璃のカリスマが覚醒するのって……後半?
296:名無しの転生者
力自体は序盤からそれなりに出てた希ガス
297:主人公のイッチ
ようわからんけど、先輩が一対一で訓練してくれるってこと?
298:名無しの転生者
なんだこいつ
299:名無しの転生者
なにこの……え、お前戦闘面しか頭にないの?
300:名無しの転生者
ホントにユリスキーなんですか!?
301:主人公のイッチ
>>299 そもそもリリィって、ヒュージと戦うためにいるのでは?
>>300 別にGLジャンルが特別好きって訳ではないんやが……
302:名無しの転生者
その通りだけど、その通りだけどさぁ!
303:名無しの転生者
これが多感なお年頃の女子……?
304:名無しの転生者
TS転生者なので……
305:名無しの転生者
草
306:名無しの転生者
転生者は肉体年齢にかなり引きずられるはずでは……?
307:名無しの転生者
>>306 個人差があるで
308:モノホンお嬢様
……まぁ、強くなるのは良いことですわ
夢結様がこの世界でもお強いのは事実ですし……梨璃さんに必要かは微妙なところですが……彼女の技術を教えて貰うのは確実にプラスになると思います
309:名無しの転生者
楓・事案・ヌーベルが夢結様の手助けを?
妙だな……
310:名無しの転生者
こいつが真面目だとなんか嫌だな……
311:名無しの転生者
ひでえ言われようで草
312:名無しの転生者
>>309 アニメでも結局敵に塩送ってたでしょ!
313:名無しの転生者
根はいい人なので……
314:名無しの転生者
普通に良い人だって言ってやれよ……
315:名無しの転生者
普段の言動が、ね
316:名無しの転生者
草
317:名無しの転生者
まぁ仕方ないね
「シュッツエンゲルの契り、か……」
この学校では特別な意味を持つらしい言葉を、わたしは舌の上で転がした。
「まったく、強引な方ですわ。何も知らない
優雅に紅茶を嗜みながら、
――入学式の日。掲示板での初コンタクトと校門での唐突な抱擁、そして脱走したヒュージを相手に共闘してから、彼女はずっとわたしにひっついている。わたしが『アサルトリリィ』という作品の(アニメ、ゲームでの)主人公だから……というのが最初の接触の理由だろうが、それ以降は彼女自身の意志でわたしに付き纏っているらしい。本人が言っていた。「単純接触効果って意外と強力なのですわ」と。
「はわわ、どうしてわたしはこのお二人と同じテーブルでお茶を……」
と、某国民的RPGのスライムの如くぷるぷる震える可愛らしい少女は、
入学式の前に少し話した後、同じクラスだったこともあって、積極的に話しかけて仲良くなった。TS転生して十五年経ち、ある程度異性――今世では同性――との交友に慣れてきたとはいえ、全くの初対面である女の子に話しかける度胸はない。ゆえに、一度向こうから話しかけてくれた彼女を逃すまいとした結果である。
カタカタ震動が伝わるテーブルから密かに自分のティーカップを避難させながら、わたしは首を傾げる。
「どうしたの、二水さん。わたしたちのテーブルに震度3が発生してるよ」
「ひえっ、すみません! うぎゃッ」
ガツン、と一際強い衝撃。膝をぶつけた二水さんが涙目になる。いちいち挙動が可愛い。
「ちょっと、落ち着きなさいな。どうなさったのです? ……いえまぁ、あなたが挙動不審なのはわりといつものことですが」
「え、わたしそんな風に見られていたんですか!?」
がーん、と効果音が鳴りそうなほど衝撃を受ける二水さん。この子、面白いな。可愛い(n回目)。
「むむ、何やら別の女に
何やら意味のわからないことを呟いて眉根を寄せる楓さんを放って、わたしは二水さんに問いかける。
「楓さんがこんなナリして凄い人ってのは聞いたけど、そこまで緊張することないんじゃないかなぁ。実体はこんなのだし……」
「辛辣じゃありませんこと? でも、それも良いですわ!」
「うん、ちょっと黙っててね、楓さん」
にっこり笑ってみせると、楓さんはテーブルに突っ伏した。遺言は「天使の笑顔であり悪魔の微笑ですわ……」とのこと。永遠に寝ててくれ。
威嚇するつもりはないので、殺気を引っ込めて二水さんに顔を向ける。すると、二水さんはやや引き気味の姿勢になった。どうして……?
「あの楓・
二水さんは持ち歩いているタブレット端末のスリープを解除すると、画面をわたしに見せてくる。この世界だと貴重なんだよね、この手の(現代っ子にとっての)生活必需品って。……二水さんどうやって手に入れたんだろ……。
「あの、ですね…………わたし、調べたんですよ、梨璃さんのこと! 理事長代行が直々にスカウトした謎の新入生で、つい最近まで一般人だったにもかかわらずユニークCHARMを与えられた超期待のリリィだと!」
液晶画面から立体映像として浮かび上がったのは、電子化されたわたしの3D体と、事細かな情報群。生年月日、出身地、血液型といった基本情報から、この百合ヶ丘学園に入学するに到るまでの十五年間の軌跡が事細かく。……どうしてそこまで詳しく記録されているのか。怖すぎる。
「……そういえば、梨璃さんのCHARMは百合ヶ丘の主流武器であるグングニルでもダインスレイフでもない、特別なものでしたわね」
「
「ええ……?」
これまでに何らかの特別な活躍をした覚えはなく、ゆえに二水さんが緊張するような人間ではない……のだが。
確かにわたしのCHARMは学校から送られてきたものだったが……招待状の返事を出したら、制服と一緒に送られてきたため、ただの初期支給品だと思っていた。二人の話を聞くに、どうやら違うようで…………あ、でも確かに、似た形のCHARMは見たことなかったな……。
というか……例えCHARMが特別だとしても、わたし自身は特別な存在ではない、はずだ。『アニメの主人公』という要素はあくまで前世の知識を持つものにしか意味がなく、そもそも原作と同じ流れになるとは限らない――原作ときっちり同じ世界などあり得ない。ある作品と非常に酷似した異世界……それが転生者たちの言う『原作有りの世界』なのだから。
「カタログ上はユグドラシル社製の第三世代CHARMとされているがの。ただ、禁忌指定されて以降ほぼ用いられなくなったB型兵装……その発展・進化技術を試験的に採用されている、などと噂されておるぞ」
声は、後ろから飛んできた。
振り向くと、ものすごい毛量のツインテールが特徴の『のじゃろりっ子』――工廠科でありながらリリィでもある少女、ミリアム・ヒルデガルド・
「あ、ぐろっぴさん」
「ちびっ子二号ですわ」
「なんじゃお主らその呼び方!?」
「もしかしてわたしが一号!?」と驚愕する二水を他所に、わたしは首を傾げた。第三世代だとかB型兵装だとか、よくわからない。まだリリィやCHARMに関する知識は勉強中なのだ。つい先月まで一般人だったのだし。
ちなみに「ぐろっぴ」という呼び方は、工廠科の誰かが言っていたのが
「ご、ごめんなさい、グロピウスさん」
「む、堅苦しいから名前で良いぞ」
「ありがとう、ミリアムさん」
TS転生してから身につけた処世術『とりあえず困ったような笑顔でお礼を言う』を実行し、なんとか事なきを得る。百合ヶ丘の人は優しいのでなんとかなる。わたし、あんまりコミュ力高くないんだよな……。
「それで。どうしたのです、ちびっ子二号?」
片目を瞑って問いかける楓さんに、ミリアムさんはげんなりとした顔になる。それから一度大きな溜息を吐くと、腰に手を当てながら言った。
「んむ。今、学院内を駆け巡っている噂……孤高のリリィ
「へ、へぇ……」
思った以上に自分の存在は広まっていたらしい。夢結先輩のせいで。……CHARMの影響? 知らね。
「それ、CHARMを調べたいだけでは?」
楓さんのジト目を受けて、ミリアムさんは「かかかっ」と快活に笑った。ちみっこのじゃろり少女は手近な椅子を持ってきて座ると、テーブルに並ぶ楓さんの用意した菓子を一つ摘まんで口に放り込む。
「ん、うまっ。……わしは工廠科じゃからな。そりゃ、未知のCHARM……それも新世代の技術が詰め込まれている、なんて話を聞いたら、突撃したくなるものじゃ」
「新世代……?」
ハテナを浮かべるわたしに、ミリアムさんは「うむ」と頷いて、続ける。
「第五世代……と、仮に呼んでおるが、第四世代すら未だ煮詰まっていない現状で、新たな段階に進むとはなかなかにユグドラシル社も侮れんのう」
「むむむ……お父様……グランギニョル社も技術研究は続けていますが、新世代を冠するほどのものはできていませんし……」
「って、待ってください! 梨璃さんのCHARMにB型兵装の技術を用いているって、本当ですか!?」
声を上げた二水さんに対して、CHARMに詳しい二人のリリィはやや表情を暗くした。相変わらず、わたしは自分の
すると、話に付いていけないわたしを気遣って、楓さんが解説を入れてくれる。
「B型兵装、BERSERKシステムというのは、デュエル世代……今の三年生から上の世代が扱うCHARMに標準搭載されていた機構ですわ。色々仕掛けはあるのですが……梨璃さんにわかりやすく言うと、一撃でラージ級を屠るレベルの
「捨て身……」
――
強力な代わりにリスクの大きい両刃の剣。禁忌指定された、とミリアムさんが言っていたから、恐らく被害が多くて忌避されるようになったのだろう。
わたしがなんとなくでも理解したと判断し、ミリアムさんが話を続ける。
「その、発展技術だと思うがな。そのまま使うには、レギオンにすら参加していない梨璃に渡すのは問題じゃろうし」
「アレを使うには、レギオンにアーセナルか『Z』のレアスキル持ちが所属している必要がありますものね」
「でも、梨璃さんは新入生で……しかも四月になるまで一般人でした。そんな梨璃さんにあのCHARMを渡すなら、せめてどこかのレギオンに受け入れる準備があると思うんですけど……」
疑問を呈して唸る二水さん。
ミリアムさんは少し考えた後、こう言った。
「発展技術……と言ったが、実際どの程度研究が進んでいるのかはわからん。防御を完全に捨てる弱点をきちんと克服できたのか、あるいは――」
そこで区切ったミリアムさんを引き継いで、楓さんが言い切る。
「――梨璃さんに何かあるか、ですわね」
「わたし……?」
「ええ。ラグナレクは梨璃さん専用のCHARM。あなたの何かが期待されて渡された……と考えるのが自然ですわね。ただ、最近まで一般人だった梨璃さんに何を見出したのかは……」
言って、楓さんは一瞬だけ目を見開いて硬直した。
――何かに気づいたが、ここで言うべきではないと判断した。
憶測だが、そんな雰囲気だった。
楓さんは一つ咳払いをして切り替える。
「……とにかく。ここで話しているだけでは何もわかりませんわ」
「うむ。ゆえに――行くぞ!」
待っていたとばかりにミリアムさんは立ち上がる。……残っていた菓子を高速で口に突っ込みながら。
その様子に、わたしは二水さんと一緒に首を傾げる。
「どこに……ですか?」
「決まっておろう! 訓練室へ、じゃ!」
「……CHARMのことを調べるなら、工廠科の工房にでも行った方が良かったのでは?」
「まぁ
二水さんの問いに、ミリアムさんはそう答えた。
「それに……どうせなら、メインの噂の方も気になってのう」
「そ、それは確かにわたしも気になります! あ、わたしカメラ使うので、流れ弾が飛んできたら守ってくださいね!」
「ええ……なんじゃおぬし、変わっとるのう……」
興奮気味な二水さんと、彼女に呆れるミリアムさんの会話を遠く聞きながら、わたしは微妙な顔でCHARMを構えていた。
学院内にある訓練所。申請して即座に許諾され、待機時間もなく突入したわたしは、なぜか合流した
美しい黒髪に、冷たい表情の少女。
だが、わたしに向けられた目だけは、どこか妙な熱を持っている。
「ええと……夢結先輩。合図は、どうします?」
わたしが問いかけると、CHARMを構えた夢結先輩が、少し離れた位置にいる楓さんを見て言った。
「そうね……楓さん。お願いできるかしら」
「……ええ。わかりましたわ」
頷き、楓さんは一つ深呼吸を挟むと、凜とした声で言い放つ。
「――始めッ」
合図と共に飛び出したのは、夢結先輩だった。
――こういうのって普通、先輩が受けて後輩の実力を試すものじゃないの!?
口の中で毒づきながら、わたしは縦に振り下ろされる刃を弾いて反らす。魔力の燐光が火花として散り、わたしたちの顔を照らす。
先輩はすぐさま下段から斬り返すが、わたしは先輩の横に回るようにして回避。同時、横薙ぎにCHARMを振るうが――先輩はさすがの反応速度で地を蹴ると、ラグナレクの刃をギリギリの位置で躱してみせた。
二、三と続けて斬り付けるが、先輩は全てスレスレの距離で回避を成功させる。ミリ単位で攻撃を見切る――これが上位リリィの実力かと、戦慄するばかりだ。
「え……梨璃って、外部受験組じゃよな?」
「は、はい。梨璃さんはほんの少し前まで一般人だったと、確かに調べが付いています」
「二水さんの情報収集は少々グレーゾーンな気がしますが……本人もそう言ってましたし、間違いないはずですわ。ですが、入学式の日の戦いぶり……そして今の模擬戦を見て、とても初心者などとは言えませんわ」
外野の声を遮るように、魔力の刃をぶつけ合う。
互いのマギが弾け、混じり、不思議な色を見せる。外から見ればただの幻想的な光景で、けれど渦中のわたしはその濃密な魔力に酩酊感を覚えていた。
いや――違う。
研ぎ澄まされ、時間が引き延ばされたような感覚。体がいつも以上に動く。全能感。或いは――。
「――ッ」
飛来する三つの魔力弾を斬り落とす。シューティングモードからすぐさまブレードモードに切り替える手並みは見事で、本来は生まれるはずの隙が先輩にはない。――いや、例え変形の隙を狙ったとしても、先輩は素晴らしい体術を見せてくれただろう。そんな予感がする。
「行くわよ、梨璃」
言って、先輩が魔力を
黒曜石のような輝きを持つ夢結先輩の前髪が一房、白く染まった。片目が血のように赤くなる。
「あれは――」
「――神宿り。ルナティックトランサー、ですわね」
楓さんの声が耳に届いて、わたしはCHARMを握る手に力を込めた。
転生掲示板での、
これが、暴走状態……なのか?
だが、先輩の目に、狂気は見えない。いや、違う。最初から正気なんてない。ずっと、
爆発的な魔力が、わたしへ急接近する。
重厚な魔力の刃を、わたしは瞬間的に魔力を沸き熾して受け止める。
「ぐ……ッ」
「ただ出力を上げて受け止めるだけじゃ駄目よ。確かにそのCHARMは近接戦闘に優れた
鍔迫り合いの状態で先輩はそう囁くと、言葉尻と共に力を増す。急激に強くなった力にわたしは力での対抗を諦め、先輩のアドバイス通りに刃を反らした。滑るように降りていくCHARMがやけにゆっくりと見えて、――「良いわよ、梨璃。でも、追撃に備えなさい」、先輩の声にはっとする。
強烈な打撃が、わたしを横へ吹き飛ばした。
「――あぐッ」
空中で、体勢を立て直す。打撃――夢結先輩の蹴りが、わたしの横腹に突き刺さったのだ。そして、マギの乗った体術攻撃はわたしの体を軽々と吹き飛ばしたのである。
先輩は、すぐさま次の攻撃を繰り出していた。五つの射撃。わたしの五体を正確に撃ち抜くそれを、なんとか身を捻って回避する。
――体勢が、崩れた。
不自由な空中で無理な動きをしたせいで、わたしはこれ以上、上手く抵抗できない――。
だが、トドメはなかった。
代わりに、夢結先輩はふっと笑って。
「ここらで終わりにしましょうか」
CHARMを降ろした。
訓練室の床で何度かバウンドし、勢いを殺す。四回目の接地で完全に止まると、わたしはその場に座り込み、深く息を吐いた。
痛みは、そこまでではない。
ただ――やはり、訓練が必要だな、と思った。
勘だけを頼りに戦うなんて、マンガの主人公ではないのだ。わたしにできるわけがない。
ラグナレクを置いてぼうっと考えていると、目の前に白い手が伸びてくる。わたしの目の前まで歩いてきた夢結先輩が、手を差し出したのだ。激しい運動の直後だというのに冷たいその手を取り、引っ張り上げてもらう。
「わ、っとと」
勢いが付きすぎて、わたしは正面から先輩に飛び込んでしまった。夢結先輩はそれを予期していたかのように――或いは狙っていたのか――わたしを受け止めると、素早く背中に手を回して抱き締めてくる。
そして、わたしの耳に、その形の良い唇を近づけて――。
「梨璃は、強くなりたい?」
「え……はい」
「そう。……なら、わたしが強くしてあげる。何があっても、誰が相手でも、死なないように。わたしの、シルトになりなさい、梨璃」
それは、祈りのようだった。
それは、懺悔のようだった。
わたしにはわからない、万感の想いが籠もったそれに、ただわたしは――「はい」と、頷くだけだった。
「――って、いつまで抱き締めているんですの!」
「次号のリリィ新聞の表紙が決まりました! 百合ヶ丘のエース白井夢結様と、謎の新星
「おおぅ……なんというか、情熱的じゃのう…………今のうちに梨璃のCHARMを弄ってもバレないじゃろうか」
前回の後書きのネタバレ情報から少しずつ変わる可能性もあります。タブンネ。なのでそのうちあの情報は消すかもしれぬ。
CHARM周りの設定はフィーリングで感じてください。原作設定に添えているかは微妙。調べながら書いてるけどよくわからんし……。
◆一柳梨璃
色々なジャンルをそれなりに楽しんでいた程度のライトなオタク。
◆白井夢結
上級生がシュッツエンゲル契約を持ちかけるのは普通のことなので問題ない、などと供述しており……。
ルームメイトの秦祀は驚くと同時、安堵の表情を浮かべていたという。
◆楓・J・ヌーベル
「ぐぬぬ、どうしてアニメみたいに手助けしたわけでもないのにこうなるんですのー!?」
◆飯島恋花
時折掲示板に出没する。
原作通り相澤一葉によってヘルヴォルに選ばれ、メンバーも(実は順位が微妙に変動しているのに)同じでビビっていたが、佐々木藍が可愛くて生きる活力を得ている。
◆土岐紅巴
時折掲示板に出没する。
原作通りグラン・エプレに選ばれ、メンバーも同じで毎日が幸せ。ただ、実力を付けないとまずい……とやや危機感を抱いている。
◆二川二水
自分の発行した週刊リリィ新聞が話題をさらってテンションぶち上げ状態。梨璃と一緒にいれば有名どころのリリィの情報が得やすいという打算が一ミリほどあったが、結局普通に友人として一緒にいる。
◆ミリアム・ヒルデガルド・V・グロピウス
ぐろっぴ。ほぼアニメ通りだが、工廠科の転生者がぐろっぴと呼んだため広まってしまった。隙を見て梨璃のCHARMを弄ろうとしている。