百合アニメの主人公に転生したけど『カリスマ』使えないかもしれない   作:星宮ひまり

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 捏造設定が、ありまぁす! ……今更か。
 この辺にぃ、月一程度とか言って先月なんも更新しなかったやつがいるらしいっすよ。嫌だねぇ……。



レストア・is・何?

 

 

331:主人公のイッチ

 今日の夢結先輩のコーナー

 夢結先輩「梨璃、レストアを倒しに行くわよ」

 

332:名無しの転生者

 おー

 

333:名無しの転生者

 レストア……ってなんだっけ?

 

334:モノホンお嬢様

 レストアード……損傷を受けながらも生き残ったヒュージが、ネストに戻って修復された個体のことですわ

「何度か戦闘を生き延びているから通常より手強い」と百由様がアニメ三話で仰っていた奴ですわね

 

335:名無しの転生者

 あー、ってことは時間的にもアニメ三話?

 

336:主人公のイッチ

 わからぬ(知識がほぼ/Zero)

 

337:モノホンお嬢様

 恐らく、三話辺りですわ

 ただ、人間関係はかなりズレていますが……

 

338:名無しの転生者

 そういや三話の奴って、夢結様が暴走する奴だっけ?

 

339:名無しの転生者

 確かそのはず

 

340:主人公のイッチ

 そうなのん?

 

341:名無しの転生者

 レストアの体に刺さったCHARMを見て、美鈴様を思い出すんじゃなかったっけ?

 

342:名無しの転生者

 あったねそんなシーン

 

343:名無しの転生者

 神宿りが梨璃によって解けるやつ

 

344:名無しの転生者

 だがこの世界で梨璃はイッチ……大丈夫なんすかね?

 

345:名無しの転生者

 知らね

 

346:名無しの転生者

 わからね

 

347:モノホンお嬢様

 ……そもそも夢結様が、神宿り状態を制御できていそうなので、暴走しないかもしれません

 

348:名無しの転生者

 は?

 

349:名無しの転生者

 え?

 

350:名無しの転生者

 なんで?

 

351:名無しの転生者

 アニメの感動シーンは?

 

352:名無しの転生者

 メンタルボロボロお姉様はいったいどこへ??

 

353:名無しの転生者

 梨璃の付け入る隙は?

 

354:主人公のイッチ

 ひでえ言い方だぁ

 

 

 

 

 わたしは、()()先輩のことを全然知らない。

 だが、シュッツエンゲルの契約を交したのに、よくわからないままではいられない。

 

 ――ホント、あの夢結が、な。

 ――百合ヶ丘屈指のルナティックトランサーの使い手……。トランス状態では、リリィ相手にも容赦しないとか。

 ――夢結様は、甲州撤退戦でご自身のシュッツエンゲルを亡くしている。

 

 わたしは、(かえで)さんや転生掲示板の皆と違って、原作の知識がほとんどない。アニメ一話だけ見たことがあるが、その記憶もほぼ薄れている。

 だから、現実の彼女をよく見て、その人柄を知り、能力を知り、ゆっくりと仲を深めていく――その決心を固めて。

 

「ふふ。()()は軽いわね……」

「えー……」

 

 どうしてこうなった、とわたしは夢結先輩の膝の上に座りながら呟いた。

 

「きぃぃいいいっ! 手が早すぎますわ! そして梨璃さんもチョロすぎますわ!」

「とりあえず写真撮っておきますね。リリィ新聞のコラムにでも載せます」

「おー、仲が良いな。(まい)も嬉しいゾ!」

 

 ハンカチを噛み千切ろうとする楓さん、カメラを構える()()さん、そして――。

 

「あ、わたしは(よし)(むら)Thi(てぃ)・梅。夢結と同じ、二年生だゾ!」

「あ、どうも、吉村先輩。(ひとつ)(やなぎ)梨璃と申します」

「梅で良いゾ、梨璃!」

 

 快活に笑う少女――梅先輩に、ぺこりと頭を下げる。

 

「それにしても、あの夢結を二日で落とすとはなぁ」

「梅、二日ではないわ。初日から虜だったもの」

 

 キリッとした声でおかしなことを言う夢結先輩。

 梅先輩はぽかんとした顔をした後、堪えきれない様子で笑い出した。

 

「まったく、どうなっていることやら……」

「おかげでリリィ新聞が有名になったので、非常に助かりました!」

「ちびっ子一号はたくましいことで……」

「本当にわたしが一号だったんですか!?」

 

 楓さんは何やら憂慮することがあるのか思案顔を作っている。

 転生者仲間であり、原作をよく知っている彼女とはちょくちょく隠れて話をしているのだが、彼女曰く、どうやらこの世界のベースと思われるアニメ版のストーリーと、夢結先輩の行動がかなりズレているらしい。楓さんは夢結先輩も転生者なのではないかと疑っているようだが、直接夢結先輩に問いかけることは躊躇われた。

 

「ん……やはり出力は戻っているわね」

「夢結先輩?」

「なんでもないわ」

 

 先輩は小さく首を振って、わたしをぎゅっと抱き締めると、ゆっくりと膝の上から降ろした。

 

「さて。――レストアを、倒しに行くわよ」

 

 直後、警報が響き渡った。

 

 

 

 今日の()()は、レギオンに所属していないフリーランスのリリィが集められているため、わたしは当然ながら、夢結先輩や楓さん、梅先輩も参加していた。ただし、実戦経験のない二水さんは見学として後方に配置されている。

 

「……ん? わたし、初陣?」

「そうですわね。ただ、梨璃さんは入学式の日の戦闘がありますので、実戦経験ありと判断されたのでしょう」

「あー……」

 

 スレを立てた初日、夢結先輩と楓さんと一緒に、逃げ出した生体標本のヒュージ相手に戦ったアレが、実戦としてカウントされていたのか。

 わたしは、CHARMラグナレクの柄を握りながら、小声で楓さんに問いかける。

 

「……これも、アニメにあった話なの?」

「ええ。掲示板でも言いましたが、三話でレストアのヒュージと戦うシーンがあります。日にちまではっきりとは覚えていないので、明言しにくいのですが……」

 

 なら、夢結先輩はどうして「レストアを倒しに行く」と言い切ったのだろうか?

 それも、警報が鳴る前に――。

 

「行くわよ、梨璃。……楓さんも」

 

 夢結先輩はわたしたちに一声掛けると、CHARMを携えて跳び出した。マギによって強化された足は凄まじい跳躍力を生み出し、一息でヒュージの足下まで跳んでいく。

 

「は、はい、夢結先輩!」

「あ、一応わたくしも戦力にカウントされているのですわね」

 

 背後から小さく聞こえる二水さんの「頑張ってくださーい」という声援を受けながら、わたしたちは遅れながらも追いかける。

 目標のヒュージは、遠くから見たときは丸っこいシルエットだったが、その背にいくつかの棘を生やしていた。初日に戦った小型とは比べものにならないほどの巨体。押し潰されたらひとたまりもないであろうそいつは、マギを噴かしてわずかに浮力を生み出していた。

 先んじてヒュージの足下へ辿り着いた夢結先輩が、一閃。痛みか、マギ噴射機構を破壊されたのか、ヒュージが奇妙な悲鳴を上げながら全身を右へ傾ぎ落下する。

 わたしと楓さんは飛び上がり、ヒュージの目に向かってCHARMを突き出す。だが、ヒュージは腕に相当するであろう部位を割り込ませてきた。魔力の乗った刃はヒュージの腕の外殻にひびを入れたが――それだけ。

 

「かったいですわね!」

「頑張って削るしかないゾ!」

 

 悪態を吐く楓さんとともに、わたしは一度後ろへ下がる。

 入れ替わりに梅先輩が飛び出して棘へ刃をぶつけた。甲高い音を鳴らして、棘の先端が宙を舞う。

 反対側から夢結先輩も飛び上がり、棘を斬り飛ばす。果たしてどれほどのダメージが入っているのかは定かではないが、今は通る部位から攻撃していくしかない。

 

「棘程度なら……っ!」

「ちょん切ってやりますわ!」

 

 わたしも先輩たちに倣って、楓さんと一緒に背の棘に向かって刃を振るう。先ほどよりも多く魔力を受け取ったラグナレクが唸るような音を立てた、ような気がした――。

 

「ぜ、ぁぁあ――ッ!!」

 

 横に振り抜いた刃は、想像していた抵抗もなく、ヒュージの棘を易々と斬り裂いた。

 ヒットストップがないと気持ち悪い、などとゲーム脳全開なことを口の中で呟いて、勢いを殺すために近くの棘へ刃をぶつける。連続でも衰えない威力は棘を根元から斬り飛ばし、その中身を表出させた――。

 

「――CHARM」

 

 現れた中身に、楓さんが苦々しげに呟く。

 ヒュージの棘は、反撃効果を期待したスパイクでもなく、ただのエネミーデザインでもなく――突き立った無数のCHARM。

 

「こいつ、どれだけのリリィを……!」

 

 梅先輩は険しい顔で呻いた。

 

「リリィの体の一部とも言って良いCHARMが、ヒュージの背にある。……アニメ通りですわね。胸くそ悪い」

「楓さん……」

「失礼しましたわ。……さて、これを見て、夢結様はどう反応するでしょうか」

 

 ヒュージが小型ミサイルのようなものを発射したのを目の端で捉え、わたしと楓さんはヒュージの背の上から飛び降りる。

 梅先輩と夢結先輩は反対側へ退避したようだ。その際、夢結先輩はついでとばかりにシューティングモードで七発魔力弾を放っていたようで、わたしたちを追ってきたミサイルを撃ち抜き空中で爆発させる。

 

「……凄まじい腕ですわね。それに、焦っている様子もないですわ」

「夢結先輩は、原作ではレアスキルを暴走させる……んだっけ?」

「ええ、アニメでは。ただ、この様子だと――」

 

 楓さんは言い切らずに口を閉じた。

 刹那――噴水のように吹き上がるマギを、幻視した。

 そのマギの噴出は、髪を一房白く染めた夢結先輩からだった。

 血のように赤い眼でヒュージを睨み、跳躍。一瞬にしてヒュージの外殻へ到達した先輩は、叩き付けるようにCHARMを振り下ろす。

 

「……神宿り」

「それって……レアスキルの、暴走?」

「いえ、本来神宿りとはCHARMのマギとの共鳴状態のことを指すのですが……似たようなものでしょうか。もっとも、制御できているあちらと違い、ルナティックトランサーの暴走は非常に危険なのですが……」

 

 夢結先輩の荒れ狂うような戦闘を見て、楓さんはそっと唇を噛んだ。

 この戦闘に参加する他のリリィたちは、夢結先輩の攻撃に巻き込まれないよう、距離を取っての射撃に従事している。いくつもの弾丸は、しかし夢結先輩に当たることはない。リリィたちの射撃の腕もあるが、先輩が全て見えているかのように回避するのだ。

 

「やはり、夢結様は制御できているようですわね。ただ、髪色がマギに染まるのは暴走の証拠なのですが……それも一部ですし。よくわかりませんわね」

 

 前世の知識も、あまり当てになりませんわね、と吐き捨てると、楓さんはCHARMを構えた。

 

「さて、わたくしたちも参加しましょうか。夢結様のマギが切れてもいけませんし」

「う、うん」

 

 わたしも楓さんと並んでCHARMを構え、マギの弾丸を撃つ。正直、射撃は得意ではないし、ミリアムさん曰くラグナレクは近接戦闘特化のためこのような距離を取った戦い方は向いていない。

 それでもなんとか夢結先輩に当てないようにしながら、ヒュージにダメージが与えられるよう狙って撃つ。外殻が硬いので、駆動部に覗く比較的柔らかい部位に当てているが、相手の生命力を削っているような感覚は薄い。

 ゲームみたいに、HPが見えたら楽なんだけどな……なんて考えながら、わたしの横で優雅にCHARMを()る楓さんに尋ねる。

 

「ところで、アニメではどうやってコイツを倒したの?」

「梨璃さんと夢結様が百合の力を爆発させるのですわ」

「は?」

 

 なんか意味のわからない戯れ言が聞こえた気がしたので聞き返すと、楓さんはうっとりとした表情で説明する。

 

「正確には、お二人で愛……もとい、マギスフィアを作るのですわ。原理はちょっとよくわかりませんけど、それはそれは美しい光景でして……」

「え?」

「まぁアニメの演出なので、現実では同じようにはならないでしょう。このまま夢結様が力押しするのが楽なのでしょうけど」

「う、うーん、そっかぁ……」

 

 というわたしたちの会話が聞こえたのではないだろうが、ヒュージの頭上で飛び回りながら嵐のようにCHARMを振るっていた夢結様が、わたしに向かって叫んだ。

 

「梨璃、来なさい!」

「え、……は、はい!」

 

 呼ばれたので失礼します楓さん! と言い残して、わたしはラグナレクをブレードモードに切り替えながら飛び上がる。マギによって強化された跳躍力は一秒と掛からずわたしを夢結先輩の隣まで送り届けた。

 ヒュージの体の上で着地したわたしと夢結先輩は、ヒュージが発射するミサイルのようなナニカを体表に着弾するよう誘導しながら並んで走る。

 

「梨璃。全力でマギを籠めて、ヒュージを斬ってみなさい」

「え……どんなに頑張っても、この馬鹿でかいヒュージを斬り倒すのは無理があると思うんですが?」

「問題ないわ。あなたの今の最大出力を、戦闘状況下で確認しておきたいだけだから」

「そういうことなら……わかりました、先輩。やってみます」

 

 ぐっとCHARMを握る手に力を込め、頷く。すると先輩はふっと笑って、

 

「良い子ね。――あなたに降り注ぐ攻撃はわたしが全て払い除けるわ。だから、心置きなく、全力を出しなさい」

「はい」

 

 わたしは足を止め、CHARMへマギを送り出す。イメージは、やっぱりゲームの話だけど、攻撃ボタンを押しっぱなしにしてチャージ攻撃をするような。

 ()()()()()がマギクリスタルを満たす。溢れたマギが空気中に溶けきらず燐光となって幻想的に彩る中で、わたしはさらに魔力を注ぎ込む。

 まだ、まだいける。

 爆発音が耳を掠める。夢結先輩がヒュージの攻撃を撃ち落とし、或いは斬り払った音。

 

「安心なさい。あなたには、傷一つ付けさせない」

 

 夢結先輩の声が、わたしから焦りを拭い去る。

 ラグナレクが震える。普通のCHARMなら過剰な魔力量にマギクリスタルが悲鳴を上げる頃。だが、わたしの愛機はまともではないらしい。耐えてみせる、或いはもっと寄越せとばかりにわたしから魔力を吸い上げていく――。

 

「――っ」

 

 だから、先に限界を迎えたのはわたしだった。

 食いしん坊め、と口の中で呟く。

 そして、貪欲にマギを喰らうラグナレクを、渾身の力を込めて振り下ろす――。

 刹那。

 ヴヴン、と。エンジンが掛かるような重低音。ラグナレクが唸り声を上げたのだと、錯覚した。

 

「ッ、全員退避――!!」

 

 先輩の鋭い声。

 直後、――閃光が爆ぜた。

 視界が白紫に呑まれる。全身を突き抜ける衝撃。聴覚はすでにキーンという耳鳴りに支配されている。

 世界が、マギに塗りつぶされたような。

 でも、手の中のラグナレクだけは、確かにわたしにその存在を伝えてくる。

 ――失敗、した?

 マギの暴発。こんなことも起こるんだ、なんて場違いな暢気な思考が過ぎって。

 

「――梨璃!!」

 

 最後に、わたしの名を呼ぶ声を聞いて、意識は白紫に染まった。

 

 

 

 声が、聞こえる。

 

 ――守れなくて、ごめんなさい。

 ――わたしが、弱かったから。

 ――知っていながら、変えることもできず、ただその記憶に救いを求めていたから。

 

 声が、聞こえる。

 

 ――どうして。

 ――でも、あなたがいるなら、どうにかできるかもしれない。

 ――そう、信じているわ。

 

 声が、聞こえて。

 

 ――あなたなら。

 ――私の信じるあの人なら、きっと全てを変えてくれる。

 ――そんな気が、するんです。

 

 声が。……声が?

 

 ――私は諦めてしまったから。

 ――それでも、あの子が、そしてあなたたちが諦めないのなら。

 ――私には、それを願うことすら、許されないかもしれないけれど。

 

 声が、囁く。

 

 ――今は、これだけ思い出せば良い。

 ――続きは、そのうち。

 ――さあ、起きて――。

 

 ……。

 …………。

 ………………――――――。

 

 

 

「梨璃っ!」

 

 先輩の声が、わたしを現世に引き戻す。

 

「……、あれ?」

 

 呆然と呟く。

 視界に一杯に広がる夢結先輩の顔は、濃い不安と焦りの色に塗りつぶされていた。

 だんだんと全身の感覚が戻ってくるに連れて、少しずつ現状を理解する。

 わたしは、夢結先輩に抱きかかえられていた。

 周りには、何やら思案顔の楓さんと、心配そうな顔の二水さんと、わたしのラグナレクを抱えて奇妙な表情を作るミリアムさんと、ニヤニヤわたしたちを眺める梅先輩……。そして、名前は知らないが、共にヒュージに立ち向かっていた百合ヶ丘のリリィたち。

 

「ヒュージ、は……?」

「倒したわ。あなたの攻撃で、ね」

「え……」

 

 なんか自爆特攻みたいでしたね、などと茶化したら怒られる気がしたので、

 

「ちょっと失敗しちゃったんですけど、なんとかなって良かったです」

「良くないわよ!」

 

 結局怒られてしまった。

 夢結先輩は、振り絞るような声で続ける。

 

「良く、ないわよ…………いえ、これはわたしの責任ね」

「そんなことは、ないです。わたしが、マギを使うのが下手だったから……」

 

 言いながら、わたしは夢結先輩の腕から降りる。

 地面に足を触れさせると、ふらりと頼りなく体が揺れた。倒れかけるわたしを、すぐさま夢結先輩が抱き締めて支えてくれる。

 

「……指示したのはわたしだわ。シュッツエンゲルとしての監督責任もある。だから、わたしのせいよ」

「ち、違いますよ。これはわたしが下手くそだったのが悪くて……」

「あなたを失うところだった。守るって、誓ったのに。約束したのに。……また、失ってしまうところだった」

 

 ――夢結様は、甲州撤退戦でご自身のシュッツエンゲルを亡くしている。

 

 先輩の噂が、脳裏に蘇った。

 先輩が過去に大切な存在を失っていて、また同じように誰かを失うことを、恐れている。そういうことなのだろうか。

 わたしが先輩の大切な存在になっているとも取れる状況に、嬉しいような、困惑するような、不思議な感覚を味わって。

 ――なぜだか、何かを勘違いしているような気がして、首の裏辺りに針を刺したような痛みを覚えた。

 

 

 

 ヒュージ討伐から五時間。

 楓・J・ヌーベルは、夜の自室で思考する。

 

「……梨璃さんのラグナレクは、どこかおかしいですわ」

 

 普通のCHARMなら、あんな爆弾じみたマギの爆発なんて起こせない。よしんば起こせたとして、無事では済まないだろう。マギクリスタルは破砕し、機体はバラバラに砕け散っているはずだ。

 そうでなければおかしい。事前にダメージを与えていたとはいえ、あのマギの爆発は、ラージ級のヒュージを吹き飛ばしたのだ。

 ならば爆心地にいた梨璃が無事なことも異常なのだが、リリィはマギで防御を堅められるのでまだ理解できる。いや、ヒュージを吹き飛ばす爆発をもろに喰らって生きているのはとんでもないことなのだが、初日の戦闘以降も何度か梨璃の異常な戦闘力を目にしたため、わりとありえることではないかと考えていた。……とはいえ、こっちはこっちで調査すべきかもしれない、と楓は脳内のメモ帳に記載しておく。

 

「一度、しっかりと調べるべきかもしれません」

 

 携帯端末を取り出し、番号を打ち込んだ。

 前世の知識と認識に振り回される転生者の夜が、静かに()けていく……。

 

 






 楓・事案・ヌーベル、動きます!
 実は一話分書いて、いやこれ三話で出す話じゃねえわ、と後に回した話があったり。たぶん次回は手直ししたそれになります。閑話みたいなものなんですが……。

◆一柳梨璃
 某狩りゲーの大剣の溜め攻撃をイメージしていたら、王の雫みたいな感じになってビビった。

◆白井夢結
 マギスフィア作ってくるくる飛ぶやつはなかったが、結局今回も最後に梨璃を抱き締めた。

◆楓・J・ヌーベル
「むむむ、梨璃さんが妙な女の電波を受信している気がしますわ……!」

◆二川二水
 今回の戦闘を見て、梨璃さんよく無事でしたね……と思うと同時、梨璃さんの傍にいるとネタが尽きないです! とテンションを上げた。

◆ミリアム・ヒルデガルド・V・グロピウス
 百由と一緒に後方で見ていたが、途中から銃撃に参加していた。戦闘後のラグナレクを眺め回してバチクソ興奮した。

◆吉村・Thi・梅
 ホント、あの夢結が、な。
 夢結の変化を嬉しく思うと同時、余計に心配になった。


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