百合アニメの主人公に転生したけど『カリスマ』使えないかもしれない   作:星宮ひまり

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 前回の更新から二ヶ月も経ってる? ……おお、時の流れとはまことに恐ろしいもので……(謎の言い訳)。
 すみません、感想返信すら止まっていました。滅茶苦茶遅くなりましたが返していきます……申し訳ない……(というか誰も話を覚えていないのでは? ボブ訝)。

 ちょっとした小話的なお話。……小話レベルの文字数じゃないけど。
 捏造設定強めです。まぁ転生者複数の時点で……今更か……。



わたしのCHARMが唯一無二の激レア武器な件について

 

 

406:主人公のイッチ

 今日の夢結先輩のコーナー

 夢結先輩「梨璃、あなたのCHARMを詳しく調べるわよ」

 

407:名無しの転生者

 最初の時と違って真っ当だ……

 

408:名無しの転生者

 前も別にぶっ飛んでいたわけでは……いや原作勢からしたらぶっ飛んでたのか?

 

409:名無しの転生者

 アニメ勢からしたらぶっ飛んでた

 

410:名無しの転生者

 舞台版はわかんにゃい……

 

411:名無しの転生者

 小説版は夢結様からじゃなかった?

 

412:名無しの転生者

 うんにゃ……一応前に梨璃が「夢結様とシュッツエンゲルの契りを結ぶのが夢」って言ってたはず

 

413:名無しの転生者

 みんな記憶あやふやだな

 

414:名無しの転生者

 しゃーないやろ前世とか人によっちゃウン十年前のことなんだ

 その作品の制作者とかならともかく、数あるうちの一つだったオタクたちが細部まで全部覚えているのは無理がある

 

415:名無しの転生者

 制作者でも無理やろ……お前は中二時代に書いた自作小説の設定を覚えているのか?

 

416:名無しの転生者

 ぐっ

 

417:名無しの転生者

 どうして黒歴史を掘り起こそうとしたんですか??

 

418:名無しの転生者

 ヤメロー

 

419:名無しの転生者

 大ダメージだな、ヨシ!

 

420:名無しの転生者

 無差別爆撃はやめるんだ!

 

421:名無しの転生者

 話を戻すけど、なんでイッチのCHARMを調べるの?

 梨璃って標準的なグングニルだったよな?

 

422:名無しの転生者

 実はグングニル・サマーだったりして

 

423:名無しの転生者

 年中水着で戦えと申すかお主……

 

424:モノホンお嬢様

 いえ、梨璃さんのCHARMは原作と違い、梨璃さん専用のCHARMでしたわ

 

425:名無しの転生者

 は?

 

426:名無しの転生者

 ひ?

 

427:名無しの転生者

 ふ?

 

428:名無しの転生者

 主人公特権……ってコト!?

 

429:名無しの転生者

 わ……!

 

430:名無しの転生者

 これがイッチのチート能力ですか?

 

431:名無しの転生者

 掲示板転生者にチート能力はない定期

 

432:名無しの転生者

 そんな定期はない定期

 

433:名無しの転生者

 きちんとはひふへほ続けてくれなくてワイ悲しい

 

434:モノホンお嬢様

 銘はラグナレク

 開発したユグドラシル社が表向き公開しているスペックは「近接戦闘を重視して製作された、第三世代高級CHARM」程度のものでしたわ

 ただ、グランギニョルの情報網で調べたところ、第五世代CHARMの構想の一つである自立型AIシステムと、B型兵装の発展技術を用いているそうです

 根幹となるマギクリスタルも通常のものと違うようですが……詳しくはわかりませんでしたわ

 

435:名無しの転生者

 ほへー

 

436:名無しの転生者

(何もわかっていない顔)

 

437:名無しの転生者

 つまり……どういうことだってばよ?

 

438:主人公のイッチ

 強い! 凄い! 高い! 以上!!

 

439:名無しの転生者

 草

 

440:たかなほを見守り隊隊長

 そんな簡単に済ませて良いようなものではない気がするのですが……

 

441:モノホンお嬢様

 きゃーっ!

 梨璃さんかわゆすですわぁ!

 

442:名無しの転生者

 えぇ……

 

443:名無しの転生者

 あ、そっか

 とっきーって中学までアーセナルだったんだっけ

 

444:たかなほを見守り隊隊長

 正確にはその勉強中でしたので、本職の方々にはとてもではないですが敵わないですよ

 

445:名無しの転生者

 転生者inの状態でもその辺りは同じなのか

 

446:名無しの転生者

 で、なんでユニークCHARMなんて送られてるの?

 

447:名無しの転生者

 他の転生者が発注したんじゃね(適当)

 

448:名無しの転生者

 ありえそう……

 

449:名無しの転生者

 つかイッチたちの世界、転生者多過ぎじゃねw

 

450:名無しの転生者

 その世界で前世の記憶を呼び起こせたのが少数なだけで、実際にはそれなりにいたりするぞ転生者

 

451:名無しの転生者

 前世の記憶思い出せないなら転生者の意味ないじゃん

 

452:名無しの転生者

 それはそう

 

453:主人公のイッチ

 >>446 百合ヶ丘のスカウトを受けた一週間後に学校から送られてきたから、学校側になんか思惑があるの……かも? わかんね

 

454:名無しの転生者

 ふーん

 

455:名無しの転生者

 ……ん?

 スカウトを受けた?

 

456:名無しの転生者

 お前受検じゃないんかい!

 

457:名無しの転生者

 原作と違って「夢結様を追って」ってわけじゃないのはわかってたけど、まさかスカウトとは

 

458:名無しの転生者

 学院からのスカウトってことは、イッチのCHARMを用意したのが学院側というのは確定か?

 

459:名無しの転生者

 理事長が転生者なんでしょ(適当)

 

460:名無しの転生者

 百合ヶ丘を実質的に運営してるのって理事長代行の方だった希ガス

 

461:名無しの転生者

 じゃあそのイケオジが転生者なんでしょ

 

462:名無しの転生者

 草

 

463:名無しの転生者

 麻婆豆腐食ってそうな声の人やんけ

 

464:名無しの転生者

 申し訳ないが愉悦部は帰ってくれないか

 

465:名無しの転生者

 ここは百合の園なんで……

 

466:名無しの転生者

 まぁイッチはTS転生者なんだがw

 

467:名無しの転生者

 今は女の子なんで……

 

468:名無しの転生者

 ところで、CHARMの世代とかよくわからんのやけど、どういうことなの?

 

469:名無しの転生者

 えらい勢いよく舵切りましたね

 

470:名無しの転生者

 そっちが主題だったんだからもーまんたい

 

471:モノホンお嬢様

 CHARMの世代は、大雑把に言うと、

 

 第一世代:剣型、銃型といった決まった形を持つ基本のCHARM。現在でもサブウェポンとして使用される

 第二世代:剣と銃の変形機構を搭載した、現在最も使用者の多いCHARM

 第三世代:第二世代を進化させ、特殊な変形や機能を搭載したCHARM。量産機というよりはカスタム機

 第四世代:実験段階のCHARM。戦闘エリアの拡大と、レギオンに頼らない単騎での戦闘を目的としている。脳、精神とリンクした遠隔操作を可能とするが、現段階では消耗が大きく精神崩壊のリスクさえ抱えている

 第五世代:ほぼ妄想でしか挙がらない。コアの超大型化や別駆動、自動判断AIシステムの搭載などが考えられているが、確定的なものはない。

 

 といった感じですわね

 

472:名無しの転生者

 はえー

 

473:名無しの転生者

 ひえー

 

474:名無しの転生者

(やっぱりわかっていない顔)

 

475:原作にわか系転生者@ラーメン好き

 なんだっけ、確か後ろの世代ほど少人数での戦闘を主題としているんだっけ?

 

476:たかなほを見守り隊隊長

 戦闘の激化によるリリィの数の減少から、満足にレギオンを組めないガーデンも増えていますので、その解決のためにそのような風潮が生まれたようです

 

477:名無しの転生者

 ふえー

 

478:名無しの転生者

 へえー

 

479:名無しの転生者

 合いの手が適当で草

 

480:名無しの転生者

 だってわからんし……

 

481:名無しの転生者

 使い手が一番わかるでしょ

 そーゆーことでイッチ、どんな感じ?

 

482:主人公のイッチ

 高火力! 一撃必殺! 紙装甲!

 でもすっごい戦いやすくて好き

 

483:モノホンお嬢様

 ――ッッッ!!!!!!

 梨璃さんの「好き」戴きましたわぁ!!

 

484:名無しの転生者

 オメーには言ってねえだろ

 

485:名無しの転生者

 なんか特殊な機構とかないん?

 

486:主人公のイッチ

 んー、特にはない……かな?

 

487:モノホンお嬢様

 詳しくはちびっ子二号や百由様と調べた結果が出てからですわね

 

488:名無しの転生者

 ほえー

 

489:名無しの転生者

 あ、はひふへほが揃った

 

490:名無しの転生者

 くっだらねえw

 

491:相澤一葉@周回中

 梨璃さんがCHARMの機能を使いこなせていないことはわかりました

 恐らくアニメ終了後からラスバレ開始の間に、高嶺様が()()()()()()を装って接触すると思いますので、その前に仕様書を送りつけるようにしますね

 

492:名無しの転生者

 は?

 

493:名無しの転生者

 なんか新しい原作キャラ憑依転生者増えてるw

 

494:原作にわか系転生者@ラーメン好き

 は? え?

 ちょちょちょ一葉ってやっぱり転生者だったの!?

 

495:相澤一葉@周回中

 はい、恋花様

 隠していて申し訳ありません

 

496:原作にわか系転生者@ラーメン好き

 いやあんまり隠せてなかったけど……

 

497:相澤一葉@周回中

 本来であれば梨璃さんが夢結様に接触する前に掲示板に接続するつもりでしたが、今回のファイアウォールは少々厄介だったようで……やはり基準世界の時間が進むごとにあの神の能力も成長するんですかね?

 

498:名無しの転生者

 は?

 

499:名無しの転生者

 チョットナニイッテルノカワカラナイヨ-

 

500:システム

 不正な接続を確認しました

 セキュリティ面の問題を解決するため、このスレッドは消去されます

 新たなスレッドを立ててください

 

 

 

 

「ちょっ、(かず)()、あんたどういう……!」

 

 強制切断された転生者掲示板から意識を引き戻し、あたし――(いい)(じま)(れん)()はレギオンリーダーである(あい)(ざわ)一葉に強い語調で問いかける。

 突然叫び出したあたしのせいで、エレンスゲ女学院トップレギオン『ヘルヴォル』のレギオンルームに、異様な沈黙が落ちた。

 

「どうしたの、恋花?」

「どうしたんです、恋花さん?」

「恋花ー、おなかすいたのー?」

 

 (よう)()()()(らん)の言葉にはっとする。

 転生関連の話を、彼女たちの前でするわけにはいかない。

 

「場所を変えましょう、恋花様」

「……うん」

 

 冷静な一葉の提案に頷いて、三人に断りを入れると、あたしたちは部屋を出る。

 レギオンルームから少し離れて、人気のない場所まであたしを誘導すると、一葉は振り返ってこう切り出した。

 

「まず、私が転生者なのは事実です。ですが、掲示板転生者ではありません」

「はあ? でもあんた、掲示板に……」

「掲示板転生者だけがあの掲示板に接続できる、というのは誤りですよ」

 

 頭の中にはてなマークが浮かぶ。

 転生掲示板に接続できるから、あたしたちは掲示板転生者と分類されるのだ。

 転生者は大まかに分けて三種類いて、あたしたち『掲示板転生者』の他には、チート級のトンデモ能力を貰った『チート転生者』、神様の力ではなく人間(精霊や悪魔などの場合もある)が魔法やら超科学やらで転生を実現させた『はぐれ転生者』が存在する。

 掲示板に接続できる能力をチート能力と考え、『神様転生』と『人力転生』とで分ける考えもあるが……それは置いておいて。

 

「掲示板に接続できるなら、掲示板転生者なんじゃないの?」

「正確には、正規の接続を可能とするのが掲示板転生者ですね」

「はー……あ、んんん? ってことはあんた……!」

「はい、非正規の接続です。そも転生掲示板は神へ昇格した()()()が運営しているのですが、その術式とアクセスポイントを知っていればハックすることも可能なんですよね。といっても普通の人間には難易度が高すぎるので、私の『多元思考』が大いに活躍しているのですが――」

「いや待って待て待て待てぇーい!」

 

 なにか色々とぶっとんだ情報がぽろぽろ出てきた気がして、あたしは強引に一葉の説明を遮る。

 一葉は首を傾げて、「どうかしましたか、恋花様?」などと言ってくる。なんだこいつ……? あたしたちと同じ世界出身じゃないのか……?

 

「いえ、前世は同じ世界ですよ」

「ナチュラルに思考を読むなっ!?」

「わかりやすかったので……」

 

 少し困ったような顔をする一葉に、あたしは一度大きく溜息を吐く。

 

「……で? あんた、イッチ……(ひとつ)(やなぎ)さんに仕様書送りつけるとか言ってたけど、どういうこと? まさか、あんたが一柳さんのCHARMを作ったの?」

「……恋花様って()()さんに対して『苗字プラスさん付け』でしたっけ?」

「あたし、ラスバレほとんど覚えてない」

「そうですか。……いえ、私もかなり記憶が薄れているので、恋花様が梨璃さんをどう呼んでいたのかは私も覚えていないのですが……」

 

 それはさておき、と一葉は一つ咳払いして切り替える。

 

「話を逸らしてすみません。ええと、私が一から梨璃さんのCHARM……ラグナレクを作ったわけではありません。ただ、ラグナレクに搭載する特殊機構については、力を貸しました」

「特殊機構……? なに、変形でもするの? ってCHARMは変形するのが基本か」

 

 第二世代以降は基本的に変形する。ラスバレに出てくるCHARMも、ほとんど剣と銃の二つのモードを持っていた……はず。アプリではビジュアル以上の意味はなかった気がするけど。

 

「梨璃さんのラグナレクには、私のチート能力『多元思考』の一部を付与しています。表向きは、(かえで)さんが言っていた自立型AIシステムに偽装していますが」

「は……?」

「要は超性能の自立思考型AIが仕組まれているんですよ、ラグナレクには」

 

 それは……つまり、アーセナルの妄想トークに登場する第五世代の構想を、実現せしめた……ということだろうか?

 困惑するあたしに、一葉は人差し指を立てると、「恋花様にもわかりやすく言うとですね」と噛み砕いて説明してくれる。

 

「ファンタジックでSFな、もはや人間としか思えないAIですよ。アニメに出てくるようなやつです。私はそれを、『妖精さん』……は却下されたので、『アルフ』と名付けました」

「ほ、ほわー」

 

 思わず変な声が出た。

 アニメに出てくるような、人と見分けが付かないAI……長門○希とか東雲○のとかユ○とかア○スとか、そういうやつだろうか? ド○えもんは人に見えないから除外する。

 

「でも、その超絶AIが搭載されているとして、なんか凄いことがあるの?」

「超絶AI……まぁいいです。――そもそも恋花様、ラグナレクの設計思想がどういうものかわかりますか?」

「いや……わかるわけないでしょ。実物見たことないし、イッチの説明はアホの子だし」

 

 なんだよ「強い! 凄い! 高い!」って。

 一応「高火力! 一撃必殺! 紙装甲!」の方から考えることもできるが……なんだろう、バ火力装備ってことだろうか? ゲームならともかく、現実で使うにはピーキーな性能だと思う。

 

「すみません、そうでしたね。いえ、梨璃さんがアホの子という部分は否定しますよ。可愛らしいことは同意しますが」

「は? なに楓・J・ヌーベル(モノホンお嬢様)みたいなこと言ってんのよ」

「失礼しました。……ラグナレクの設計思想は、『単騎で戦い抜くこと』です」

 

 ――掲示板でも話題になったが、CHARMは世代を追うごとに少人数戦闘への適性を高めようという考えが強まっている。それはリリィの全体数の減少により、地域によってはレギオンを組むほどの人数的余裕がなくなっていることもあるが――それ以外にも、恐らく、こういった思惑がある。

 英雄が必要なのだ。

 どこの誰が言い出したのか。原作がどうだったかはわからない。ただ、一対一を制するデュエル世代が過ぎ、レギオン単位での戦闘が行いにくくなる将来を見て、「単騎で多数を圧倒する英雄」の誕生を望む声がにわかに湧き出した。

 だが、それは――。

 

「一柳梨璃に望むのは……間違いじゃない? だって、あの子は先頭に立つエースじゃなくて、皆を奮い立たせるタイプの主人公じゃん」

「それは、原作の話です」

 

 言い切る一葉の瞳は、目の前のあたしを見ていなかった。

 

「……いえ、梨璃さんも同じ素質を持っていますよ。ですが、彼女はAZ(アタッキングゾーン)の適性が抜きん出ています。その本来の戦闘能力は、恐らく全てのリリィと比べても勝っているでしょう。保有魔力(マギ)量こそ()()様には劣りますが、アレは()()()()()()()ですからね。()()()()()()()()()()()()()()()()

「?」

「彼女は、最前線で全ての敵を切り倒す――どんな相手でも、それを実現してみせるでしょう。そのための補助として自立思考のAIを組み込みました。AIは戦場の様子を分析し、使用者に状況報告・戦術提案を行えます。それこそ優秀な司令塔(コマンダー)のように、柔軟に作戦を切り替えながら、最適解を導くでしょう。今はまだ梨璃さんに合わせて学習している段階のようですが……。また、マギクリスタルも特殊であり、搭載したOSも従来のものより高速でありながら複雑な計算を可能としているため、超高速戦闘であっても高威力の攻撃を繰り出せるはずです。これらのスペックを持ったCHARMがあれば、梨璃さんは凄まじい戦果を成すでしょう。まさに鬼神の如く――」

「ちょっと、一葉?」

「……どうかしましたか?」

「いや……わっけわからんわ」

 

 CHARMのスペックが云々は、本気でわからない。というか、実際に触ってみなければわかりようがない。

 イッチが強いというのは、彼女(彼?)の側に居ながら掲示板にも顔を出す楓の反応からなんとなく察していた。

 でもそれはあくまで「原作と比べて」という程度であり、とても英雄として物語るには足りないだろう。まして、実力主義のエレンスゲ女学園で序列一位(トップ)を戴く相澤一葉には、到底及ばないだろうと。

 だが、一葉はまるで一柳梨璃(イッチ)が最強であるかのように語った。

 原作主人公に対する憧憬だろうか。いや、違う気がする。もっと別のものを見ているような――。

 あたしはある予感を覚えて、深く考えずに口を開いた。

 

「あのさ。一葉はイッチの戦う姿、見たことがあるの?」

 

 あり得ない。

 そもそもラスバレ(アプリ)開始前に相澤一葉と一柳梨璃の間に面識はないはず。それに、一柳梨璃(イッチ)は百合ヶ丘で初めて戦いを経験したはずだ。戦闘映像が出回っていて、それを一葉が目にした……という可能性もない。

 だからあたしの問いには、「そんなわけないじゃないですか」と返ってくるはずで――。

 

「はい、ありますよ」

 

 はっきりと、そう言った。

 

「ど……どこで?」

「それは……いえ、まだ言わない方が良いですね。いずれ教えます」

「はあ?」

「ところで恋花様、お願いをしても良いですか?」

 

 話を強引に断ち切った一葉は、真剣な表情でこう言い出した。

 

「もし掲示板に掲示板転生者以外の人が接続しようとしたら、教えてくれませんか?」

「えっと……それはあんたみたいな?」

「はい。非正規の接続者です。不正閲覧だけでも、運営はわりとすぐに対処してくれますからね。システム対応がされたら、その時の状況を詳しく説明してください」

「はあ……別にあんたは掲示板見られるんだし、自分でやれば良いんじゃないの?」

「私も不正接続で弾かれますよ。二回目なので、閲覧すらできないと思います。……いえ、それは良いんですよ。ただ、掲示板に接触したかどうかを知りたい人がいるので」

「はあ」

 

 よくわからないが、不正接続が起こったとシステムがアナウンスしたら、直近の書き込み状況を教えれば良い……ということか。

 なぜ一葉がそんなことを知りたいのか、あたしには理解できない。ただ、彼女の張り詰めたような顔を見て、こくりと頷いていた。

 あたしが肯定したのを見ると、一葉はほっと一息吐く。しかしすぐに表情を作り、口を開いた。

 

「……私の話はなるべく出さないようお願いします。特に、(くれ)()さんに聞かれても、できれば私がチート転生者だというのは誤魔化してください」

「は? なんでとっきー……()()さん?」

「……それ、みんなの前ではやらないでくださいね。恋花様は迂闊すぎです」

「すまぬ……すまぬ……ってそうじゃなくて」

「ああ、はい。紅巴さん自身に何か思うところがあるわけではないですよ。ただ、それが高嶺様に伝わるようなことは、できれば避けたいので」

「は?」

 

 今日何度目かもわからないあたしの聞き返し。今回籠もっていた感情は、困惑と、一ミリほどの苛立ち。

 それを察してか、一葉は申し訳なさそうな顔を作った。

 

「杞憂だったら良いんですけどね。不安要素は、()()()()()、これ以上増やしたくないでしょうし」

「どういうこと? というかあんた、さっきから意味わからんこと連発して――」

「すみません、あまり詳しく説明するわけにはいかないんです」

 

 あたしの言葉を遮って、一葉は捲し立てるように続けた。

 

「アニメの範囲は問題ありません。ですが、ラスバレのストーリーは、正常に始まるとは限らないんです。……いえ、何を正常とするかなど、誰にも設定できるものではありませんが……原作を基準とするなら、絶対にその通りにはなりません」

「そりゃ……これだけ転生者がいれば、同じようにはならないでしょうよ」

 

『ヘルヴォル』に二人、『グラン・エプレ』に一人、そして『一柳隊(ラーズグリーズ)』に二人……いや夢結様転生者説が事実なら三人か。アプリの主要人物だけでもこれだけ転生者が混じれば、原作ストーリーの通りに全てが進むわけがない。というかエレンスゲには他にもちらほら転生者っぽい人がいるし、なんならあたしの序列は原作と違って九位だったりするし。

 ともあれ、あたしが把握できるだけでもこれだけ原作と相違点があるのだ。仮に――絶対にあり得ないことだが――全ての転生者が原作通りになるように演じたとしても、原作のストーリーを完璧になぞることなど不可能だろう。

 

「とはいえ、原作通りに進まないことを疎んでいるわけではありません」

 

 あたしの思考を切り捨てるように、一葉はそう言い放った。

 

「私が、そして()()が忌避していることは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()です」

「……、そりゃ、知らない流れは不安だろうけどさ。『原作のストーリーを間近で見たいのにそうならないのが嫌』って訳じゃないなら、どういうことなの? まさか、未来でも知ってるとか?」

「当たらずとも遠からず……いえ、今は良いでしょう」

「は? なに、未来予知とかタイムリープとか、そういう話なの?」

「今は話すべきではありません」

 

 半ば冗談で予想を口にしたあたしに、一葉は毅然と告げる。

 

「……などと、意味深ムーブは個人的に嫌いなのですが、すみません。詳しくは、役者が揃ってから。あるいは、時が来たなら話します」

「なにそれ。わっけわかんないわ」

 

 頭が痛くなってきた。

 情報量が多い割に、子細に理解できることが少なすぎる。

 ……とはいえ、少しだけ、あたしにも見えてきたことはある。

 意味わからないことばかり……というか、『重大な謎を抱えているムーブ』をする一葉の言動は半分以上理解できないのだが、なにやら原作のストーリーにはない問題があるようだ。

 そして、一葉がチート転生者であることは、他の転生者……特にグラン・エプレの(みや)(かわ)高嶺には知られてはいけないらしい。

 ……ううーん、やっぱりよくわからん。

 

「……ねえ、なんか不安なことがあるなら、他の人に相談したらどうなの? 何事も報連相は大事でしょ。あたしたち、同じレギオンの仲間なんだから」

 

 これは、原作の一葉もよく言われていた……気がする。あれ、どうだったっけ? マジでラスバレの知識抜けてきてるな……。

 とはいえ、目の前の存在は転生者なのだから、原作の相澤一葉とは違う。それでも、伝えなければいけないと思った。

 

「転生者絡みなら……イッチは自分のことで精一杯だろうけど、楓さん(モノホンお嬢様)にでも頼ってみたら? 掲示板での様子を見る限り、それなりに頼りになりそうだし」

「いえ……あまり不安要素を……」

「あーもうっ!」

 

 なんだこいつ原作の相澤一葉と同様に一人で抱え込んでしまうタイプか!? なんとなくそんな気がしてたけどさ!

 はあぁ、と大きく溜息を一つ。

 あたしは腕を組んで、目の前の一つ年下――あくまで今世の年齢の話――の少女に、先輩の威厳をたっぷり見せつけてやることにする。

 

「わかった。あんたはチート転生者だってバレたくない。特に宮川高嶺には。そして、アニメとラスバレのストーリーの間に何か問題が起こる。ってことでオーケー?」

「え……えっと、はい、そうです。……あの、恋花様?」

「あんが他にも何か抱えてて、未来だか何だか知ってて不安があって……って予想はできても、ホントのところはあたしにはよくわかんない。まだ教えてくれないみたいだし」

 

 やれやれ、と左手を腰に当て、首を振ってみせてから、

 

「――でも」

 

 ふっ、と。安心させるように笑みを浮かべる。

 思うところがあって鍛えに鍛えて、元来の自分(あたし)らしくもなく沢山学んで。その結果、原作よりも序列を上げたあたしは、きっと、一葉の力になれるはず。

 だから――。

 

「他の誰にも相談できなくても、あたしが力になる。……意味はわからんかったけど、色々聞いちゃったし」

「恋花様……」

 

 想像通り、偉大なる先輩の言葉に感動した後輩ちゃんが、尊敬の眼であたしを見て――。

 

「その流れ、どのくらい練習したんですか?」

「………………前世の記憶が戻ってから、毎日寝る前にコツコツと」

 

 だって、相澤一葉と飯島恋花の関係って、ここぞというときに飯島恋花がカッコイイ先輩っぽく振る舞うじゃん!!

 ――という魂の叫びは、辛うじて心の中だけに留めておいた。

 

「顔が赤いですよ、恋花様」

「うるさいうるさいっ!」

「でも、――ありがとうございます」

 

 

 





 チャーミィ……? 知らんな。

 実は最初に考えていたのは叶星に転生した人を主人公にしたお話で、その次に恋花に転生した人を主人公にしたお話を考えました。でもアニメの話かっ飛ばすのもなぁ、と思ったので最終的に梨璃に転生した人が主人公になりました。
 ……いや、日の出町の惨劇についてもっと詳しく情報が出ないと書けない、ってのが実情なんですが。そのわりに一葉を転生者にしていますけど、それはともかくとして彼女の正体はラスバレ三章で明かされるんですかね……?(などと思いつつも、時間がなくて三章をまだほとんど読めていないので本当にどうなっているのか確認できてないです。申し訳ナス)
 なお叶星主人公の話は暗くなりすぎるからやめました。

 ちなみに転生者たちの転生時期はある程度ズレがありますが、一番多く知っていてもラスバレ二章までの設定です。だからグラン・エプレの追加メンバーとか諸々は誰も知らぬ。……掲示板の名無し転生者で、前世とほぼ同じ現代に転生した人なら確認できるので、そこから指摘する人が出るかもしれない……が予定は未定。

 次回はイッチに視点が戻ります。いつ投稿できるかは……んにゃぴ(早めに頑張ります)。


◆一柳梨璃
 転生特典は『ラグナレク』だった可能性が微レ存……などと本人は考えていたが、勿論違う。そもそも掲示板転生者は「掲示板に接続できる能力」以外に外付けの能力はない。

◆白井夢結
 ラグナレクについて、イッチから「百合ヶ丘に入学が決まったときに学園から送られてきた」と聞いて困惑中。百由に調べさせればなにか掴めるはず、と考えている。

◆楓・J・ヌーベル
「ッ、梨璃さんを狙う不届き者の気配を感じましたわ!」

◆土岐紅巴
 確実にグラン・エプレに入りたかったので、知りうる限り原作通りの土岐紅巴になるように過ごしてきたオタク。さすがにアーセナルとして活躍できるレベルにはない。

◆飯島恋花
 序列九位、原作では十三位。
 原作通りにヘルヴォル加入後、言動の端々から一葉を転生者だと疑っていたが、この度カミングアウトされることに。
 好きなキャラはヘルヴォルのメンバー、特に相澤一葉が好きだった隠れオタク(擬態は完璧だった、と本人は思っている)。一葉と恋花の原作の関係性で、頼れる先輩……というか一葉の欠点を指摘できる先輩、という感じが好きだったので、それができるようにちょこちょこ練習していた。……一葉には見抜かれていたが。

◆相澤一葉
 掲示板には接続できない。……が、チート能力の応用で接続可能。
 コテハン:相澤一葉@周回中
 序列一位、原作一位。
 前世はイッチの友人で、前前世はイッチの仲間だった。
 チート転生者。能力は『多元思考』、ざっくり言えばものすごく沢山かつ高性能な並列思考ができる。作戦指揮は凄いが、魔術的処理がCHARM任せなアサリリ世界ではたぶん無意味。よくある魔法使い的な存在が居る世界なら超活躍したかもしれない。
 ……といいながら、第五世代CHARM構想の『自立型AI』を超ハイレベルで実現できるとんでもない能力(正確には『多元思考』の一部を切り取ってラグナレクに搭載した)。やりようによっては電子世界にすら思考を飛ばせるので、現実的なレベルでは一番のチート能力。
 アニメ、ラスバレは履修済み。ただし幾度もの繰り返しの影響でかなり記憶が怪しい。
 実は梨璃の前前世からの信者の一人。転生掲示板を作った転生者のことも知っている(作中には出てこないけど)。この世界を終わりのない時の迷路にしてしまった高嶺をどうしようかと模索中。
 狙い通り、とはちょっと違った気がするけど、恋花様が協力者になったのでヨシッ!
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