時勢を抜きにしても、ただでさえ労力のかかる子育て――それも2人目となれば、苦労もより増そうなものを、見捨てることなく育ててくれた両親にも、邪見に扱わず、世話を焼いてくれた兄にも、感謝しかなかった。
だからこそ、仮にも身内たる義弟の自分が、何の助けも答えも用意できなかった兄嫁の嘆きに、一応は
『悪いわね。私が持ってないものを、あっさり手放そうとするのが、見るに堪えなかったの。だからアンタも来なさいな。私の求める黄泉への旅路に』
だが彼女は、兄のおまけに過ぎない様な身の自身さえ、拾い上げた。ただ義姉妹や姪と合わせた、己が持ちえなかった、『家族』の
ギガストームとカウンター・ベイト、巨大ロボット怪獣2体の激闘は、周囲を巻き込む大規模なものになっていった。殴り倒され、地に伏せた拍子に床版を突き破り、叩き付けられた橋台は圧し折れ、橋上にいた他プレイヤー達を崩落に巻き込む。更には付近に散乱する崩れた瓦礫や、転倒した車などに限らず、運悪く付近にいたプレイヤーやNPCさえも、あるものは何でも使えとばかりに文字通り振り回され、殴りつけられたり、蹴り飛ばされたりと、悲惨な目に遭わされている。
「てりゃあっ!」
「もらった!」
「え!?ガハァッ!」
「グゲェッ!っの野郎!」
現に、ドロップキックを放ってきた女性キャラ
一方下顎にかち上げを叩き込まれ、後退するカウンター・ベイトも、踏み砕いた瓦礫を蹴りつけると、そこから必死の様相で顔を出したプレイヤーが巻き込まれ、直撃して横転したギガストームの足元に転がり落ちる。
「アイデデデデ……この世は闇じゃ暗闇じゃ……分不相応とは思いながらも、ノリに任せて挑みはしたが、因果応報とはこのことかいね……」
そして文字通り踏んだり蹴ったりな有様を嘆いていたところを、泣き面に蜂とばかりに、ギガストームの起き上がりがてら周囲の瓦礫ごと掴まれ、駆け寄るカウンター・ベイト目掛け、散弾の如く撒かれる。
「え、わ、ギャ~~~!」
絶叫と共にカウンター・ベイトへと飛んでいく、『国民的』と称される程の人気と知名度を誇り、何度も演者を変えてアニメが放映されてきた作品の主人公――青い大頭と寸胴、短足の
「ここまでの殴り合いでHPが4割削れたとはな……最強怪獣の
「ハッ、こちとら『
奇しくも件のたっち・みーがすぐ側で戦っているとは知らないカウンター・ベイトが、かつて自身が成し得た功績を誇ると共に、攻めあぐねて向かい合っていたところに、ギガストームを援護すべく、上下に並んだ車輪と、その側面から腕が伸びる独特な風貌をしたトランスフォーマー、『デモリッシャー』が駆け付け、上の車輪を叩きつけようと振り下ろす。しかしその寸前、十字状の体躯の中心にある顔面を砲撃され、怯んでバランスを崩し、後退したところを、追い打ちとばかりに突撃してきた下出人の振り回す光刃を食らう。
『君もここにきていたのは意外だったが、久しいな戦友』
「ハッ!それはお互い様ってとこだな。こんなデケェ祭り開くって聞いときながら、無視して
切り刻まれた顔面から粒子を流しつつ、仰向けに倒れ撃破されたデモリッシャーから飛び退き、カウンター・ベイトの隣に並んだのは、青と黒のカラーリングに、細身の体躯が際立つロボット。その正体は『傭兵領域』のベースとなった作品から、10年の時を経て発売されたシリーズ作に登場した機体、『スティールヘイズ』。そしてそれを駆るプレイヤー、『オルトゥス』は、カウンター・ベイトが
『うわぁ!?オルトゥスさんも来てたんですか!っと、お久しぶりです、グレイブヤードさん』
そこへ更に駆けつけたのは、スティールヘイズとは対照的に、白を基調とし、サイズが半分ほどしかない機体。こちらの『ランスロット』の
「おう、久しぶり。今はカウンター・ベイトって改名しててな。今度からはそっちで呼んでくれ」
『
「『壁越え』の再現、ってか。それもそれで熱いが、テメェ等の気持ちだけ受け取っとくぜ。アイツもアイツで、腹に抱えてるもんがあるみたいだしよ……」
そう言って顔を向けた先のギガストームは、特に不満を持った様子ではないが、さすがに相手が増えるかもしれないとあってか、警戒を怠らず、それでいて後方の兵力を嗾けようともしてこない。相手が一騎打ちをお望みなら、それに応えるだけの自信と余裕はあるらしい。
『なるほど、それは残念だ。ならば引き続き、後方の連中を抑えさせてもらいに行くとするよ、戦友。健闘を祈る。うまき、代わりなんていうのは失礼かもしれんが、手伝ってくれるか?』
『そのつもりでいたんで、こっちとしても助かります。初戦敗退だって、これでも
共闘を断られこそすれど、想定はしていたとあって、即座に切り替えたオルトゥスは、うまきを連れてギガストームの横を低空飛行で通り過ぎていく。そして控えていたNPCの中央に陣取っていた、名前の由来である鼻先の角だけでなく、全身が赤く塗装された重武装のZOIDS、『レッドホーン』を翻弄しつつ、護衛も兼ねた周囲のNPC達も殲滅していくのを尻目に、ギガストームは再開の合図とばかりに咆哮を挙げながら突撃していき、カウンター・ベイトを、先程ファイヤーパターンを突き落としたボーンクラッシャーよろしく組み付いて転落していく。