至高の夢は終わらない(リメイク版)   作:ゲオザーグ

13 / 13
(こちらの方は)お久しぶりです
唐突に執筆意欲が湧きました


()群衆の喧騒

 ギガストームとカウンター・ベイトが戦ううちに通過していった各所では、数の暴力を振るい、迫りくる『機甲領域』の戦力(NPC)を相手に、進退窮まったプレイヤー勢が瓦礫に身を隠し、せめてもの抵抗とばかりに、チマチマと攻撃していた。

 

「ワヒィ~!敵さん容赦なさすぎでしょ~!」

 

「あぁもう何なのよコイツら!復活(リスポーン)の速さと相まって無限湧き(リポップ)状態な上に、雑兵ポジでも妙に手強いし!」

 

 情けない悲鳴と、自動表情(オートエモーション)で出力されたコミカルな顔に反し、隠れていた瓦礫を破壊され、背負ったバリスティックシールドで身を守りながら、得物のショットガンを抱え、這う這うの体で残る瓦礫の陰目掛け、飛び込むように身を隠す『おゲンさん』に対し、同じく自動表情(オートエモーション)で白目をむいて叫びながらも、システム補正のおかげで、構えれば自動で攻撃対象を捉え、狙撃銃(スナイパーライフル)での攻撃を続ける『アーリマン』。

 ボーンクラッシャーの様な固有名持ち(ネームド)トランスフォーマーやレッドホーンの様な大型ZOIDSならば、レベル100を超える者も多々いるが、数の暴力で攻め込んでくるヴィーコン兵達は、一律レベル95とあって、レベル100のプレイヤーからすれば、勝てることは勝てるにしても、楽勝とは言い難い絶妙な配分となっており、相手するには大分面倒な存在と認識されつつある。それが無尽蔵に迫ってくるとなれば、最早その場に留まれるだけでも、十分健闘と称せる部類だが、親玉(ガルバトロン)を討たねば先に進めない以上、物陰に隠れて(しの)いでいるばかりでは、碌に変わらないとあって、何としてでも先に進むべく、迫る壁の如く組まれたヴィーコン兵の列に穴を開けるべく撃破していくも、最前列に穴ができたところで、後続のヴィーコン兵は消えゆくその屍を踏み越えて前に進み、更にその穴を埋めるようなZOIDSの支援射撃や、レベルの振れ幅が激しい防衛ユニットやアタックドローン、TEK恐竜達の奇襲が入るため、有効打となり得ない。

 

「あぁもぉ~!助けて(うつり)先生~!」

 

「うるっせぇぞ有馬!ことあるごとに一々泣きつくなってんだろうが!」

 

 最早進退窮まりアーリマンが泣き言を叫んだ直後、積もった瓦礫の下から、それを撒き上げながら復活(リスポーン)したインフィニット・イビルが吼える。しかし双方思わず条件反射的なやり取りで、まさか成立するとは思ってなかったとあって、しばし場違いな硬直後、ようやっと理解が追い付いたことで、情報の追い打ちで余計にパニックが生じる。

 

「え、えぇえ~!?せ、先生いたの!?」

 

「クッソマジかよここにきて生徒にアバターバレるとか……」

 

「あぁ、そう言えば君、教師してるって話してたっけね……」

 

 片やついいつもの癖で呼んだ相手がすぐそばにいたことに慌て、片や隠していた『YGGDRASIL』での姿(アバター)を相手に知られ、落ち込む妙な空気に、同じく復活(リスポーン)したヘル・バーナーを除き、思わずアーリマンやおゲンさんと共に戦っていた『キヴォトス学徒連合』の仲間――(インフィニット)(・イビル)が正体を知られたくなかった彼女らの同級生や先輩、後輩も動きを止めるが、命じられたまま動くプログラムに過ぎない敵達は、そんなプレイヤー達の事情などお構いなしとばかりに進軍しており、そのうち単身で先陣を切った1体の『TEKトリケラトプス』が瓦礫を破壊しながら突進し、何人かを轢き倒して止まる。

 

「しまった、敵が攻め込んできたぞ!」

 

「やられたのは、千橋(せんばし)朱井(あかい)、それに乾夏(けんか)と加藤か……。復活(リスポーン)はともかく、この場で戦線後退はまずいって……!」

 

 袖にピン留めされた腕章のエンブレムに由来する、キャップ帽の『薔薇(スカル)髑髏(・ローズ)』と、やられた同級生が誰かを把握する、白いコートの『カット・スロート』がいち早く気付き、咄嗟にそれぞれ得物の突撃銃(アサルトライフル)とロケットランチャーで攻撃するも、原作(オリジナル)最高値に由来するレベル180のTEKトリケラトプスには、気を惹くどころか大したダメージにもならず、むしろ前足で地面を掻き、再度突進体勢に入るや、「目についたお前が悪い」とばかりに距離は多少あれど、偶々前方にいたアーリマン目掛けて走り出していく。

 

「え……ぁっ……!」

 

「何突っ立ってる!避けろ有馬!」

 

 慌てて自身も駆け出すインフィニット・イビルだが、TEKトリケラトプスを上回る巨躯とは言え、既にトップスピードまで達し、瓦礫の散らばる足場の悪さもほぼ影響しないあちらに対し、走って間に合わないばかりか背中のキャノンをブースターとするにも時間が足りず、眼前の彼女が先程の仲間達の後に続く姿を覚悟する。

 

「やれやれ。すぐ蘇るからって、若いのが散るのはあまり見ていていいもんじゃないからね。つい割り込んじまったよ……」

 

 しかしそこに割り込んだ人物が、TEKトリケラトプスの鼻先を掴んで止めたことで、アーリマンは轢かれずに済む。ほぼ全身を覆い隠すマントに幅広の円形兜で、顔どころか全身のシルエットすら掴めないが、声色からすると、高身長に反し、意外にも相手は女性のようだ。

 

「しかしエンジニアを目指すってたアンタも教師になるなんて、因果なもんだねぇ。碌な職じゃないとは教えたつもりだったが、大方一際真面目で、何かと損な役回りばっかさせられてたアンタのことだ。無理矢理就かされたんだろ?」

 

「何でそれ知って……って、アンタもしかしてバアさんか!?

 

「おや、まさかの恩師だったかい?奇妙な巡り会わせもあったもんだ」

 

 続けてやけに親し気な相手の様子に、助かった教え子(アーリマン)を背に対峙するインフィニット・イビルが思い浮かべたのは、自身が学生だった頃の恩師。教え子に続く仲間の予期せぬ再会に驚くヘル・バーナーに対し、推測を聞いた相手は、その通りとばかりに未だ掴んだままのTEKトリケラトプスを持ち上げがてら、空いた逆の手で兜をずらし、光のない黒い目を歪ませ、にやけ顔を晒す。

 

「正解~♪てっきりもう2、3話すくらいには気付かんと思ったが、存外覚えてるもんだねぇ……っと!!まぁ孫弟子とも言えそうなアンタの教え子達の前だし、とりあえず、今は『不動明王』って名乗っとくか。よろしく~♪」

 

 そのまま投げ飛ばしたTEKトリケラトプスが、後続してきたヴィーコン兵達を潰しながら転がり、消滅していくのを見届けた恩師――不動明王の、低い声に反した軽々しいほどノリの良さに呑まれたインフィニット・イビルは、「お、おぉ……」と引き気味に答えるのが精一杯だった。

 

 

 

 

 

 

 予期せぬ会合で停滞した仲間のことなど露知らずな前線では、合流したオルトゥスが機動力を活かして敵の注意を惹き、手助けをしていた。

 

『そうら、こっちだ!』

 

 今も青い装甲車から変形(トランスフォーム)した『ウォーブレイクダウン』を真横から襲撃し、左腕のレーザースライサー、『Vvc-774LS』を回転させ、その巨体を袈裟懸けに切り捨て、『ビビデバビデブ~~!』と転倒しながら発する気の抜けた断末魔の絶叫を無視し、右腕武器のハンドガン『MA-E-211 SAMPU』で攻撃された緑色の『アイアンハイド』が、気を反らしたところに横からの追撃を受け、抵抗する間もなく倒れる。

 

『さすがは、仮にも同僚ってところかな』

 

『そうね。と言っても、私自身はボイス・ボーナス(オマケ)で得ただけの他人もいいところだけど……!』

 

 オルトゥスがスティールヘイズの視線を向けた先にいたのは、右肩のプラズマキャノン、『FASAN/60E』から放熱する、どことなく似た印象の中量二脚型AC、『感染(インフェクション)』。 『キヴォトス学徒連合』でも、現実(リアル)においてインフィニット・イビルが受け持つクラスでも中心的なメンバーの1人、『マーキュリー』の外装(スキン)は、同作の特徴として公式の立ち絵が存在しない本来の搭乗者(パイロット)とは違うが、『中の人ネタ』とも言われる同一演者に由来する、キャラに関するアイテムや外装(スキン)の入手難易度や能力値(ステータス)に補正がかかる、『ボイス・ボーナス』で、この機体を獲得した。

 そうした意味では、後程別のキャラの外装(スキン)を入手し、その人物を搭乗者(パイロット)の『V(ヴェスパー).(フォー)ラスティ』に見立てたオルトゥスとは、逆のパターンともとれる。

 

『ただ、それを言うならアレは何なのかしらね。おそらく『傭兵領域(さっきの)』と同じパーツを使ってるんだろうけども、少なくとも、あんな機体とは対峙してないわよ……』

 

『もし出来合いを丸ごともらった我々と違って、パーツ単位で組み立てたとしたら、なかなかに酔狂だな。尤も、それだけ強い思い入れの提示かもしれんが』

 

 両者の話題に挙がったのは、少し下がったところから右手のガトリングガン、『AM/GGA-206』を乱射しつつ、左手のバトルライフル、『ARAGANE mdl.2』と、両肩から放つプラズマミサイル、『SU30 Jupiter』を織り交ぜての弾幕を展開するAC。

 本体部分こそ『傭兵領域』で『アインズ・ウール・ゴウン』が対峙したマグノリアの機体と同じパーツだが、青と黒のカラーリングが紫と赤になっており、青い木蓮がハート形を(かたど)った左肩のエンブレムは、ポリゴンチックな角ばった線で描かれた木蓮の花にギターを添えたものに変わり、HEATマシンガンの『Au-V-G39』が上位版の『Au-V-M05』に差し替えられ、レーザーライフルの『Au-L-K29』とCEミサイル『SU-J-A28』の代わりにガトリングガンとプラズマミサイル、そして、予備(スペア)の武装として、バトルライフルとショットガンの『AM/SGA-204』を積んだ、攻めに重きを置いて強引にどの装甲に対しても有効打を用意した結果、脚部の『L03 FreQuency』が限界寸前の積載量に悲鳴を上げる、なかなかに無理を決めた機体構成(アセンブリ)となっている。

 搭乗者(パイロット)もそれを理解してか、復活(リスポーン)用にわざと軽くダメージを受けて以降、狙われた際は瞬間的な『グライドブースト』で跳躍し回避するが、装備が弾切れして減っ(パージし)ていく度に距離を詰めていき、最後は道連れとばかりに敵の行軍に突撃し、炎をあげて転がりながら爆散を繰り返している。

 今も弾切れしたバトルライフルを投げ捨て(パージし)、HEATマシンガンを構え直して乱射しながら敵陣に突入し、ヴィーコン兵達と互いをハチの巣にしながら擦れ違った末、ガトリングの弾幕がカバーできない右側面から接近した小型ZOIDS、『レブラプター』の左右に広がる『カウンターサイズ』にすれ違い様上下両断され、ガトリングの反動でコマの如く回りながら慣性のまま地面を進む上半身が、グチャグチャになっても武装を離さなかった腕や頭のパーツを撒き散らしながら爆炎に消え、暫くすれば復活(リスポーン)して、何事もなかったかのように再度弾幕をはる。

 

『そしてそれ以上に訳が分からないのが……』

 

「あぁ、何だろうなあの挙動……」

 

 そして更に先の方では、頭部が円柱型の重厚なACが、ブースターも吹かさずに走るようなポーズでガクガクと体を揺らしながら、時折思い出した様に手足を動かしたり、体を前後に屈伸させたりして、宙を進んでいる。そして敵軍の頭上に落下して奇襲を仕掛け、ある程度片付けると再度上空に昇るや、ガクガク揺れながら浮遊して進み、復活(リスポーン)しては再度繰り返していく。

 

『少なくとも彼等のおかげで、こっちに余裕があるのは確かかしら。さっき撃ち漏らしが突入して少々乱されたらしいけど、後方の仲間が追い付くまでは、この前線の維持に徹したいわね』

 

『そうだな。混乱の中で分断され、数に任せた襲撃で、どこもかしこも自他問わず合流する余裕がない。ならば、最悪後退してでも最寄りの勢力に接触するのも悪くはないが、気心知れた味方が付近にいるなら、都合がいい。なるべく早く来るよう伝えてくれ』

 

 

 

 

 

 

 そして乱戦の最中、別の道路にて前線を押し上げていく勢力もいる。 

 

「行くぞお前等!あのふざけたエンブオーやライチュウにばっかいいとこ持ってかせるな!」

 

 激励を飛ばしつつ突き進み、足踏みから繰り出す地響きで、進行先の高架橋を崩落させ、こちらに向かっていた陸上型のトランスフォーマーやZOIDSを消す『ドン・ライノス』率いる組合(ギルド)、『センター・オブ・ジ・アース』は、ヒデブーやあ、ライチュウと同じ作品を起源とするうち、地面や岩、鋼に関する属性(タイプ)の者達で構成されており、崩落に呑まれず済み、浮上せんとするアタックドローンや、『自然領域』で対峙したヘルクレスオオカブトに似た姿に変形(トランスフォーム)して飛び上がった『インセクティコン』、より上空から奇襲しようとしていた飛行系ZOIDS、『プテラス』を、更に上空から降らせた流星群で次々撃墜し、更に下の高架橋から崩落で崩れた瓦礫を通り迫らんとする追加戦力目掛け、自ら隕石の如く降り立ち、足場としていた瓦礫ごと蹴散らした『グレモリー』も、その一員に属する。

 

「ドン!地形的にゃ仕方ねぇかもしれんけど、アタシはともかく道潰したらアンタ等も先進めないだろ!どうすんだよこれ!」

 

「そこはどうにかするさ!幸い手段はあるし、な!」

 

 敵の進撃を止めるためと言え、こちらの進路も絶ってしまったとあって、思わず強く当たってしまうグレモリーに対し、ドン・ライノスは気にした様子もなく、代わりに旋回する角から放つ電撃を、更に駆け付けた航空戦力達に浴びせ、撃墜まではいかずとも、足止めする。続く形で、フォルムこそ類似しながらも、より鋭利な印象がする紫の体躯で、左目に眼帯を付けた『ヴォーパルホーン』が、より強力な冷気を口から撃ち出し、トドメを刺していくが、引き続き迫る新手の地上戦力の進行と連動するかの如く、高架橋は徐々に直っていく。

 

「進む分にゃ助かるが、攻めてくる奴らを考えたら、一々道ごと潰してってもキリがなさそうだな……余所がどうしてるかは知らんが、引き続きこっちに突き進んでこうぜ!」

 

「そりゃいいんだけどよぉ、コンちゃんどっか行ったぞ……」

 

 そこを通って再度攻めてくる敵軍に対し、意気揚々と攻め込まんとドン・ライノスが宣告した矢先、強硬な装甲で壁役(タンク)を担いつつ肉弾戦をこなしていた『鉄鉱石(アイアンオレ)』から、欠落員の発生を告げられ、「マジかよ……」と呆れ果てる。とは言え敵は目前とあって、はぐれた仲間の捜索よりそちらの迎撃を優先せざるを得ないと意識を切り替え、改めて現存する面々を率い突撃していく。

 

 

 

 

 

 

『ゴーゴーゴーゴーゴー!このまま戦線を押し上げろ!』

 

『デカブツ共もだが、周囲の取り巻き連中も厄介極まりないぜ!真正面から物量に任せて殴りかかってきやがる……』

 

『クソォ!3機やられた!こちらインディゴ5!どこか『ビーックビックビックビックビク!感電!!』何だ今の……?とにかく、合流できる隊はないか!?』

 

 上空でドッグファイトを繰り広げる面々に限らず、地上でも複数の6脚歩行戦車、『全地()形対()応戦()術攻()撃兵器()』がヴィーコン兵の攻撃を受け止めつつ、背面のマス=ドライバー砲で反撃し、その背後で、『RX-200ファルシオン級アサルト・タンク』が、パラボラアンテナ状の主砲から放つ光線で、後方から背部のカノン砲で支援砲撃をしていた4足歩行ZOIDS――リクガメ型の『カノントータス』を停止させる間を(くぐ)る様に、2足歩行型の『全地形()対応索()敵ト()ランス()ポート()』が、瓦礫を跨ぎながらレーザー砲で攻撃し、残る歩兵達も、手にした銃器で、防衛ユニットや、TEK恐竜を仕留めていく。

 散開した前線の1か所で奮起する彼等『第332師団』を始め、各地では姿を消したファイヤーパターンのことなど知らないまま、乱戦が続いていた。

 ここまで孤軍奮闘してきたアインズ・ウール・ゴウンを含め、人数こそ450人近くと、――大半は2層カットで強制転移されてきたとは言え、決して少なくもないが、パーティー単位のような小規模でもなければ、平均で1組2、30——多くても7、80人規模の複数勢力が、事前の取り決めもなく寄せ集められた状態とあって、どの勢力も余所など気にする余裕もなく、仲間とはぐれぬ様注意しながら、迫りくる敵に精一杯のまま分断されていき、各個撃破されつつある中、他勢力を援護をしながら共闘を呼びかけ、統率しようとするプレイヤーがいた。

 

「ようやっと最前線まで辿り着けたか。戦線の維持、感謝する!各地より戦力をかき集めてきた故、貴殿らにも協力願いたい!」

 

 (きら)びやかな金の鎧に身を包み、同色の縦巻き髪(ロール)を揺らしながら『第332師団』の元に駆け付けたのは、古代中国の戦史を原典(モチーフ)としながら、その猛者達を女体化したキャラの外装(スキン)を纏った面々のギルド、『三国戦姫』のリーダー、『袁本初』。娯楽としての面白さを追求する中で、『家柄を鼻にかけた無能』と扱われていった原典の人物が、実際はむしろ本家から冷遇されながらも、飛ばされた遠方で逆境を乗り越え、本家と対等まで立身するに至ったことに感銘を受け、その名を借りたはいいが、共に遊んでいた腹心のせいで、アバターの外装(スキン)を悪しき世評の典型(テンプレート)とでも言うべきキャラにされてしまった。

 そのせいで不埒な目を向けられることも多々あれど、憧憬に留まらず、躍進を続けただけあり、富裕層の末端たる身ながら『ユグドラシル』内外問わず人心を集め、今まさにそのカリスマを発揮してみせるに値する場面で、全力を見せていた。

 

「お、おぉ……?なんかすげぇ金ピカなのが来たな……」

 

「よそ見をされるな!ついでに言えばアバターはこんなでも私は男だ!各員、魚鱗の陣を組みて敵中を突き破り、分断せよ!」

 

「ぎょ、ギョリン?何の音だそりゃ?」

 

 予期せぬ援軍に言葉を濁す『第332師団』の1人、『55555(ファイブス)』に対し、注意と共に引き連れた面々への指示を出すも、生憎と経済事情に起因する教育格差のせいで通じず、横で携帯ガトリングガン『Z-6回転式ブラスター砲』を乱射し、ヴィーコン兵達を穴だらけにしていた『ヘヴィー』は、擬音と勘違いし、見当違いな問いかけをする。

 呆れた袁本初は、どう説明しようか悩むが、そこに土煙が上がるほどの勢いで着地し現れたのは、触角の様な1対の束になった前髪と、目が陰に隠れて見えないほど彫りの深い顔が際立つ、筋骨隆々のプレイヤー。

 

「風穴を開ければいいんだろ?ならば我々『筋肉同盟(マッスルランド)』に任せてもらおうじゃないか!」

 

「うむ!我らにかかれば列を断つなど、造作もなき事!」

 

 続けて現れた、ハゲ頭の額部分に申し訳程度に髪が揃った、同じく筋骨隆々の上半身を曝け出したプレイヤーも、両手の手甲(ガントレット)を合わせ、ガッツポーズを構えて前に出る。

 『やはり筋肉。筋肉は全てを懐決する』を掲げる『筋肉同盟(マッスルランド)』は、名前の通り筋肉を称賛する面々の組合(ギルド)で、所属者はそれぞれ、自身の外装(スキン)に準じた、『豪』で始まる2文字の二つ名を有している。

 

「合わせてくれよ?『デトロイト・スマッシュ』!

 

「とくとご覧あれ!我がアームストロング家に代々伝わりし芸術的錬金術を!」

 

 ヴィーコン兵達の銃撃を意に介することなく共に構えた両者のうち、先に来た『豪衝』こと『The・パワフル』の放つ突きから生じた衝撃は、直線状のヴィーコン兵達を粉砕するだけでなく、後方から側面の大型砲で支援していたステゴサウルス型ZOIDS『ゴルドス』の足を抉って転倒させ、続く『アレックス・ルイ・アームストロング』は、名前共々原作(オリジナル)から拝借した、『豪腕』の二つ名に恥じぬ能力を万全に発揮し、叩き付けた腕を起点に、路面から自身の頭を模した石像を大量に作り出し、進行上の敵戦力を突き上げていく。

 

経緯は予想外なれど、何とかうまくいきそうだな。全軍突撃!分断された敵を各個撃破せよ!」

 

「よっしゃあ!このまま突撃……って、他の奴等どこ行った!?

 

「あー、確かカタップがお前みたいな武器持った(プレイヤー)見つけたってどっか向かって、エコーとドロイドベイトが止めに行ってたっけな……」

 

「オイオイ折角のチャンスに何やってんだ!?小隊が揃ってなきゃドミノ倒しが起きんだろうが!」

 

 突撃し、敵軍を突き破るつもりでいたところを、まさか先に空いた穴に兵を進める形になるとは思わず、頬を引きつらせながらも、折角のチャンスを逃すわけにはいかず、自身に続いてきた『三国戦姫』メンバーと、『第332師団』を率いて突撃する袁本初。そこに揚々と便乗しようとしたヘヴィーがふと冷静になって55555に問いかけると、本来連携すべき仲間の『カタップ』、『エコー』、『ドロイドベイト』が場を離れたと聞き、原作(オリジナル)では訓練生時代の隊名に引っ掛けた蔑称だったそれを『敵へ向かった前のめり』の意に変えたキャッチフレーズの不発に憤りを露にする。

 そうした方向は同じでも足並みが揃わない一団に向けて、動けないほどのダメージこそ負いながらも、幸か不幸か生き残ったヴィーコン兵達が腕の銃器を向けようとするも、そこに飛び込んできた者達に妨害される。

 

「うおあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 1人は、手にした銃を乱射しながら突撃し、途中でそれを器用に背負いながらスライディングを決め、密着すると同時にバイザー部分目掛けて拳を振るい、叩き割った筋骨隆々の軍人、『豪殴(ごうおう)』の異名を持つ『ゴリスマン』。

 そしてもう1人——と言うべきか、あるいは1「体」というべきか。振り子の要領で腕を前に伸ばし、その反動で体を前に送りながら進む途中、側頭部に付けた、縁だけの十字型の物体をアンダースローで投げて、別の場所に倒れたヴィーコン兵のバイザー部分に突き刺し、追いつくや否やそこを起点に指を突き刺し、遠心力で背中に飛び乗ると共に、メリメリと音を立ててこじ開けてみせた、『豪握(ごうあく)』を名乗る「ペッタンかべ太郎」。

 外装(スキン)元が『ゴリラ』と弄られていたことをきっかけにゴリラのことを調べたところ、逆に地上から消えた彼らに魅了され、加えて彼女がデビューする数か月前に、当時国内の動物園で最高齢だったゴリラが亡くなり、更に同園のゾウが逝去して間もなく引退発表したとあって、経緯不明ながら何故かデジタル世界に受肉して活動し、他の動物達に「いい加減こっちに連れてきてくれ」と頼まれたゾウが迎えにきたため旅だったと解釈した結果、本来小柄で貧相な体躯の少女だった外装(スキン)の外観を、「そのコスプレをしたゴリラ」に変更させたばかりか仲間内でも「奇人」と評される程演技(ロール)に熱中してしまうまで入れ込んだだけでなく、NPCとして各地の動物園で飼育されていたサル達を集める等、ゴリラを始めとした様々なサル類の熱烈な愛好家でもある。

 

「ウォッホッホッホッホホ、ホギャー!ファーギィー!」

 

「うるせぇゴリ!盛ってる暇はねぇぞ!!」

 

「半端に略すなぁ!これはチンパンジーの威嚇声じゃあ!」

 

「いつものやり取りしとるとこすまんが、今は口より手を動かした方がいいぞ。そぉら、『フライパンサンドイッチ』!」

 

 勝利の雄叫びとばかりに胸を叩くドラミングをしようとするも、変更前の影響で脱げない黒い体躯とは対照的な純白の衣服で阻まれ、バサバサと布が擦れる音しか出ないことに気づくと、腹立たしいとばかりに咆哮と共に激しく体を上下させ、断面から引き出したワイヤーや、砕けた装甲の破片を放り投げていたかべ太郎にツッコミを入れつつ、転がって駆け付けた防衛ユニットの両腕を掴んで持ち上げ、スイングと共に橋の外へと放り投げてしみせたのは、『豪権(ごうけん)』こと『超院議員』。原作ではあまり前線に出そうにない政治家の立場に反し、『乗っていた巨大兵器を撃破し、本人と直接対決になったら、むしろ乗らない方が強かった』とまで評される、見た目通りインパクト抜群な外装(スキン)元に負けず劣らずな暴れぶりを見せる彼だが、かべ太郎との応酬を繰り広げる間に、窘めつつ前方へ進み、左右からのパンチでTEKラプトルを圧砕した、『豪酔(ごうすい)』こと『ハンサムさん』に窘められる。

 

「ミサイルが来た!総員退避!どわぁああ!

 

 そうしたやり取りする仲間の前で、『筋肉同盟(マッスルランド)』の主力たる「神天王」が前線を押し上げていく。重武装で最前を走り、警告を放つも逃げきれず大きく吹き飛ばされたのは、『神殺(しんさつ)』の異名を持つ、殺戮者(スロウサー)と同じ役者が外装(スキン)元のリーダー、『ムエタイX』。即座に背負っていたロケットランチャーを射出し反撃すると、爆発を浴びた防衛ユニット達が宙を舞い、その合間を縫って狙いを定めてくるアタックドローンを、相棒(バディ)ポジションの『神兵(しんぺい)』こと『スタスタローン』が狙撃ライフルで撃ち落としていき、味方の進軍を援護する。

 

「デカブツならまだしも、生身じゃないとなれば、こちらのが有効か……!」

 

「こちらも奥の手……というより、最初期過ぎて最早死に設定同然だが……!」

 

 鍛えられた肉体より、それで軽々と扱う銃器で大暴れする2人とは対照的に、用途は違えど、それから放つ数多の技を駆使して戦うのは、奇しくも原作の掲載紙や時期、更には演者も同じとあって仲を深めた、『神拳』の異名の由来となった、自身の相伝した拳法ではなく、かつて戦った強敵(とも)が得意とした技の1つたる蹴りの衝撃波で、小型と言えヴィーコン兵とほぼ同サイズのZOIDS、『ゴドス』の足を切り裂いて見せた『マスター・ケン』と、操作画面(コンソール)から取り出したニンニクを1欠片頬張り、ヴィーコン兵とほぼ同サイズになるや、勢いよくチョップを叩き込んで後続ごと転倒させ、残った1体のヴィーコン兵の背後にまわるやその腰に両手を回し、そのまま背を反らして頭から地面に叩き付ける、『神友(しんゆう)』の称号を冠する『肉マスク』。

 

「ふぅ……まさかこんなところで、長年極めてきた奥義、『キラウエア落とし』を披露することになるとはな……惜しむべきは、折角決まっても彼に見せられないことか……!」

 

「マスク!避けろ!上からの攻撃だ!」

 

 技が決まり一息ついた肉マスクを、アタックドローンが頭上から狙う。ハンサムさんの警告に慌てて横転して避けたものの、複数のアタックドローンが集まり更に狙ってくるが、何かが肉マスクの体を駆け登り、頭頂部から跳躍してアタックドローンに飛び掛かり、各所を破壊しては次の獲物へと跳躍し、撃墜していく。何事かと足元に視線を向けた肉マスクが目にしたのは、アレックスが作った石像に手を当て、放電と共に球状の(ボディ)から腕が伸びたロボット、『仔月光(トライポッド)』を生み出していくプレイヤーの姿。

 

「ぬ!?その錬成、もしやお主エルリック兄弟の能力持ちか!?」

 

「あー、よく覚えちゃいないが、確かそんな名前だった気もするね。まあ便利ではあるのは確かだから、よく使ってるよ!」

 

 自身の創造物を素材にする相手に対し、両手を合わせてからの発動で、相手の能力が自身と同じ原作に由来すると気づいたアレックスが声をかけると、周囲に生産した仔月光(トライポッド)の改良体——本来3本腕なのを4本腕にした、名付けるなら『四本腕(クアトラポッド)』を並べたプレイヤー——白いタイツとマントに大剣(クレイモア)を背負った『刀刃会(ブレイズ)』の一員『レディ・フェザー』は、複数体の四本腕(クアトラポッド)を握手で連結させた盾と、余った腕で作った突撃槍(ランス)を構え、同様に握手でムカデの様に連結した四本腕(クアトラポッド)に跨ると、そのまま突撃していく。

 

 

 

 

 

 

 勢力問わず他プレイヤーと合流し、共同で活動できる者達はまだマシな方で、中には単身で多数の敵と対峙せねばならない、悲惨な状況に追い込まれたプレイヤーもいた。

 

「ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!」

 

 首がなく、大きな口が目立つ頭が直接乗った様な、赤いヒダに覆われた楕円状の体と、そこから下に伸びる白い骨の様な長い足に対し、腕部分を省略されたような垂れ下がった両手を必死に叩き合わせ、そこから発する衝撃波で迎撃しながら孤軍奮闘する『ガラ玉サトシ』は、風貌と攻撃手段のせいで、むしろ笑いを取っているかのようにも見えるが、運悪く一人崩落に巻き込まれ、その先から来るヴィーコン兵の軍勢に呑まれつつあった。

 

「アカンこれ全然終わらへん!いつまで戦ってりゃええんや!」

 

 幸いにも外装(スキン)元はふざけた風貌に反し意外と強く、衝撃波以外に囲まれても脱出できる跳躍力や、意外と鋭く全身刃物と評せるヒダのおかげで、辛うじて勝ててはいた。しかしいつ終わるかもしれない集団戦は、精神の消耗を招くには十分で、迫り続けるヴィーコン兵の壁に、判断を焦る。

 

「こうなったら大技いくで!結果はっ――

 

 叩く手を止めぬまま、範囲攻撃たる咆哮の如き大声から放つ更なる衝撃波で迎え撃とうとするも、放つ直前降ってきた円盤の爆発にヴィーコン兵ごと呑まれたガラ玉サトシは、失敗時に出る情けない「ハァ~ン♡」の声と共に人知れず爆炎に消えていった。そしてそこから少し離れたところでは、2人のプレイヤーがヴィーコン兵の攻撃で生じた爆発を背に逃走している。

 

「ギッヤアアアアアァァァァァ!!」

 

「Hungry!?Cu「チャッヤアアアアアァァァァァン!!」」

 

 両手と異形の頭部に角の如く伸びたチェーンソーが特徴の『ノコ助』が放つ絶叫に、やたらと流暢な英語でかつて放送されたとあるCMのワンフレーズを合わせようとした相方——、同じく無誘導爆弾を模した頭に、円柱型の爆弾が複数連なってできたスカートの『Bomb.Cute.Bomb(ボンキュッボン)』が言い切る直前、先程のガラ玉サトシ同様、上から降ってきた別のプレイヤー——複数の岩を組み合わせた球状の体に、手足と頭が付いた『センター・オブ・ジ・アース』の脱落者、「林家金平糖」の自爆に巻き込まれ、原作(オリジナル)からは考えられない無様な結末から復活(リスポーン)を待つ羽目となった。

 




できれば今回登場したキャラの元にした某Vの御仁がお迎えくるまでには投稿したかったんですが、その付近で急にガクッとやる気が失せましてね・・・
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。