十二月七日 未明
司令室
提督 「そろそろ時間だな。」
栗林 「提督、出撃可能艦隊の出撃用意ができました。」
提督 「分かった。」
話は三日前に遡る。
提督 「由利島作戦ですか?」
軍令部総長 「そう。今偵察機の情報によると由利島周辺が敵の中規模泊地になっているらしい。他の鎮守府にも協力を頼んだんだけど、他の影の艦隊との戦闘でそれどころじゃないらしいんだ。だから呉鎮守府の君たちに作戦をお願いしたいんだ。いいかな?」
提督 「うちの鎮守府は出撃可能ですが、資材の問題が…」
軍令部総長 「ああ、それなら大丈夫。資材やその他の支援はしてあげるから。」
提督 「はあ、それなら…」
軍令部総長 「それじゃ、よろしくね!決行日は三日後だから。」ブツッ…
提督 「…………」
栗林 「相変わらず面倒くさい人ですね。」
提督 「父さんは何を考えてあの人を後継者にしたんだろう…。」
栗林 「まあ、いいと言ってしまってはもう遅いですし決行するしかないですね。」
提督 「そうだな。それじゃあ編成を考えるか…」
執務室
長門 「新しい作戦ですか?」
提督 「そうだ。由利島の敵泊地の強襲作戦らしい。」
栗林 「偵察機の情報によると敵泊地には多数の戦艦郡が確認されております。」
十六夜 「戦艦が多いんですか?」
栗林 「そうですね。あと泊地なので停泊しているものだと思います。」
提督 「だから軍令部総長は強襲したほうが効果的だと思ったのか…。」
長門 「しかし、強襲とは言ってもあの泊地の防衛ラインはかなりのものですよ。」
十六夜 「確かに。駆逐艦や軽巡がうろついてるからね。」
響 「通常の艦隊だと泊地に突入するのは困難じゃないのかい?」
栗林 「なので泊地突入を容易にするために…」
提督 「どうするんだ?」
栗林 「航空攻撃を行います。」
提督 「なるほど。航空攻撃なら敵に気づかれにくい。それに艦隊の損傷も少なく済むな。」
長門 「確かに戦艦に次いでかなり強力な攻撃ですからね。」
十六夜 「それじゃあ早く編成を決めよう!」
こうして三日間、俺は秘書艦と栗林とともに編成を考えた。(金剛は臨時の秘書艦なのでこのときはいない)
決まった編成案はこれだ。
第一機動部隊 第二機動部隊 第三機動部隊
旗艦 赤城 旗艦 飛龍 旗艦 翔鶴
加賀 蒼龍 瑞鶴
吹雪 白露 雪風
夕立 時雨 陽炎
利根 那智 摩耶
筑摩 足柄 鳥海
第四機動部隊 第一護衛艦隊 第二護衛艦隊
旗艦 蒼永 旗艦 金剛 旗艦 出羽
大永 比叡 伊勢
暁 榛名 日向
響 霧島 川内
雷 最上 神通
電 三隈 那珂
空母を中心にした海上打撃部隊と、哨戒中の敵艦隊を殲滅する海上制圧艦隊からなる合計三十六隻の連合艦隊だ。
そして、今作戦が開始されようとしている。
栗林 「全艦隊、出撃用意。」
放送で栗林の声が響く。
赤城 「ついに反撃が開始されるのね。皆さん、気を引き締めていきましょう。」
加賀 「もちろんよ、赤城さん。」
大淀 「作戦開始まで、3…2…1…」
栗林 「作戦開始です!全艦隊、抜錨!」
栗林の号令により、マルゴーマルマル、全艦隊が由利島泊地に向け出撃した。
提督 「ここから由利島泊地までどれくらいかかる?」
栗林 「呉からは44.2キロも距離がありますから、約24ノット(時速44.2キロ)で一時間ですね。戦闘もありますから帰港時刻は軽くヒトヨンサンマルあたりでしょう。」
提督 「そうか。最初の大規模作戦だ。気を引き締めていかないとな。」
一時間後
由利島沖
赤城 「作戦海域に到着しました。これより艦載機の発艦を開始します。」
加賀 「準備ができ次第攻撃隊を発艦させてください。」
飛龍 「分かりました!」
瑞鶴 「よし、アウトレンジで決めたいわね!」
蒼永 「攻撃隊、発艦始め!」
まずは蒼永たち、第四機動部隊から第一次攻撃隊が発艦を開始した。続いて第一機動部隊、第二機動部隊、第三機動部隊の順に発艦を開始した。攻撃隊の総数は軽く450機を超えていた。
由利島泊地
数隻の影の艦隊の艦艇郡が哨戒任務にあたっていた。
軽巡二十型 「コチラ軽巡二十型。泊地内ニ以上ハナイカ?」
旗艦である軽巡二十型が哨戒中の駆逐十六型に連絡を送る。それに駆逐十六型は軽巡二十型に返信を送った。
駆逐十六型 「コチラ駆逐十六型。泊地内ニ以上無シ。」
軽巡二十型 「ソウカ。コノママ哨戒ヲ続ケr」
潜母700型 「緊急打電!我、敵艦隊発見ス!」
突然、潜母700型から緊急の打電が軽巡二十型に打ち込まれた。
軽巡二十型 「ナンダトッ!?全艦戦闘態勢…」
即座に軽巡二十型が艦隊に連絡を送る。
しかし、遅かった。
赤城所属の攻撃隊の指揮官機がすでに赤城に入電をすませていた。
赤城 「指揮官機より入電、トラ・トラ・トラ!」
加賀 「我、奇襲ニ成功セリ、ね。」
赤城所属の空母雷撃隊は停泊中の戦艦にたいして攻撃を開始した。
停泊していたのは、主砲51糎連装砲を四門装備した超大和型大型戦艦、”戦艦百十型”である。戦艦百十型は敵襲に気がついたのか主砲で迎撃を開始した。しかし、所詮焼け石に水である。次々と戦艦百十型に魚雷が命中していく。
由利島では影の航空団が迎撃準備を行っていた。そこへ、急降下爆撃隊が攻撃を開始した。九九式艦上爆撃機が急降下爆撃を開始する。影の航空団は離陸することすら叶わず、次々と九九艦爆の餌食となっていった。
戦艦百十型 「こちら戦艦百十型。現在敵攻撃隊の攻撃を受けている。前衛哨戒艦隊は何をしている!」
軽巡二十型 「コチラ軽巡二十型。敵ノ艦隊ハ確認デキズ!航空攻撃ニヨリ我ガ艦隊ハ壊滅セリ…!」
潜母700型 「コチラ潜母700型。我、艦載機搭載セズ。攻撃隊発艦不能!」
戦艦百十型 「おのれ…」
こうして由利島泊地を占領していた影の艦隊は壊滅。生き残った艦艇も撤退を開始し、攻撃四十八時間後には呉鎮守府により海域が開放された。
赤城 「上々ね。」
加賀 「そうですね赤城さん。」
蒼永 「そうですね。念の為第三次攻撃隊を発艦させておいて正解でしたね。」
そうなのだ。作戦当初は二次攻撃で作戦を終了させる予定であったが、栗林の提案により、念の為索敵も兼ねて第三次攻撃隊を発艦させたのだ。
大淀 「提督、作戦が終了しました。」
提督 「各艦の被害は?」
大淀 「数機の艦載機のみです。」
提督 「そうか。戦果はどうだ。」
栗林 「赤城さんからの入電によると、戦艦八隻、軽巡、駆逐艦数隻、基地航空隊300機以上撃破とのことです。」
提督 「大戦果だな。だが、油断してはいけない。」
長門 「そのとおりですね。」
今回は奇襲であったからこその成功だ。それにこちらの被害が皆無と言うわけではない。これから戦闘はより激化していくだろう。気を引き締めていかないとな…。
正面海域のある島
??? 「影浦提督、由利島泊地が敵艦隊に強襲されたようです。」
影浦提督 「…そうか。まあ薄々来る気はしていた。泊地の艦隊に撤退命令を出せ。」
??? 「了解しました。」
影浦提督 「そろそろこの”鎮守府”が見つかるのも時間の問題だ。発見される前にやれることをやる。」
??? 「発見されたときはいかがなされるつもりですか?」
影浦提督 「その時はその時だ。今は目の前にあることを考えろ。」
??? 「はい、分かりました。」
影浦提督 「そして呉鎮周辺に潜母700型を派遣して偵察をさせろ。」
??? 「了解しました。」
呉鎮守府
提督 「今日はお疲れ様。各自ゆっくり休んでくれ。」
赤城 「はい。ありがとうございます。」
提督は赤城たち空母に礼を伝えていた。赤城たちが去ると、提督は私室に入っていった。
提督 「…はあ。」
ため息をつく。これで影の艦隊に正式な宣戦布告ができたのだ。明日からは今までのように散発的な戦いではなく、かつての深海棲艦との戦いのように想像を絶する戦いが待っているだろう。一体、何人の艦娘が無事でいられるだろうか。轟沈しなくても深手を負えばそのまま除隊に追い込まれることだってある。
提督 「影の艦隊の物量はとんでもない。…短期決戦しかないな。」
俺は短期決戦で影の艦隊を殲滅すると決めた。
もう奪わせない。大切なモノを…。
次回 定めの軛
遂に影の艦隊に正式な宣戦布告を行った呉鎮守府。短期間で勝利を刻めるか?