響 「司令官、私を秘書艦にしてくれないかい。」
提督になってから三ヶ月近くがたつ頃、響からそう言われた。
俺はようやく心を持ち直すことができた。だからといって十六夜がいないとやっぱり落ち着かない。その状態で響に今のように言われた。
提督 「秘書艦に、か?」
響はうなずいた。
うちの鎮守府では補佐官を合わせて最大五人を秘書艦にできる”五人制”を採用している。今は十六夜がいないから空席ができている。
提督 「別に構わないが、どうしてだ?」
響 「実は…」
と言い響は言葉を止めた。そして周りを見回した。
どうやら、他人には知られたくない内容のようだ。
提督 「響、今の時間帯は執務室には誰も来ないし栗林も朝の見回りに行っているからしばらく帰って来ない。」
俺がそう伝えると、響は安心したのか続きを言った。
響 「実は、司令官の事をもっと知りたいんだ…。」
提督 「俺の事を知りたい?」
響 「うん。初めて会った時から司令官のことが気になっていたんだ。」
提督 「そうか。でも、なんでそれで秘書艦になろうと…」
響 「秘書艦になったら司令官の一番近くに居れると思ったからだよ。」
なるほど、確かに俺の周りにいるやつは俺のことを知り尽くしているからな(栗林は特に)。
提督 「そうか、分かった。それじゃあ”非常任秘書艦”の席が空いているからそこにはいってくれ。」
響 「分かったよ。」
こうして響は俺の非常任秘書艦となった。
この日からだろうか。響のことを気になりだしたのは。まあ、最初に会ったときから「なんだか不思議な雰囲気の娘だな…」と思っていたけど、今思うと響は十六夜とは違う何かを持っているのかもしれない。
響が秘書艦になってから五日後
提督 「ようやく終わった…。」
栗林 「提督、こちらも終わりました。」
響 「司令官、こっちも終わったよ。」
提督 「そうか、ありがとう。」
響は最近秘書艦になったばかりなのに、仕事が徐々に早くなってきた。
そういえば響はもう少しで大規模改装を行うようにと海軍省から通達が届いていたな。
栗林と長門が部屋から出ていった後、俺は話を切り出した。
提督 「なあ、響。」
響 「なんだい、司令官。」
提督 「海軍省から、お前を改装するようにと通達がきたんだ。」
響 「改装?私はもうそれくらい練度があるのかい?」
提督 「そうみたいだな。前提督が話している中では、かなりの戦力になっていたと聞いたぞ。」
響 「そんなことないよ…。」
提督 「いや、少なからず俺はそう思っている。確かにお前は遠征にいくことが多いが、戦闘力はなかなかある。」
響 「……」
提督 「そして、”相手を思いやり助けようとする力”をお前は持っている。」
響 「そうかな…。」
提督 「そうだよ。俺がお前を秘書艦にしたのもな、そういうところがすk…」
響 「?」
提督 「…それじゃ、”工廠”で待ってるぞ。」
そう言って俺は部屋を後にした。
あぶねぇ。思わず”好き”って言うところだった…。まあ、確かに響に好意を寄せていないと言ったら嘘になるけどな…。
とりあえず、工廠で待ってるか…。
響 「そういうところが…///]
思わず私は顔が熱くなっていくのを感じた。司令官が私のことを”好き”と言ってくれた?
だとしたら、すごく嬉しい…
なんだろう、この気持ちは。私は愛とか恋とかはどんなことか分からない。もしかして”好き”っていう感情は今の気持ちなのだろうか。
工廠
明石 「へぇ〜、とうとう響ちゃんも改二になるんですね。」
提督 「そうなんだ。改装されたらどんな姿になるんだろうなあ。」
栗林 「資料によると、ロシア語で”信頼できる”と言う意味のВерныйになるようです。」
提督 「栗林、いたのか…。」
栗林 「はい、南部十四年式拳銃の手入れをしていました。」
??? 「あっ、蒼海提督!」
提督 「あっ、長谷川さん。」
この人は、長谷川 正。ここの鎮守府駐屯陸軍連隊の連隊長を務めている人だ。
長谷川 「工廠に来るとは珍しいですね。どうしたんですか?」
提督 「いや、少し艦娘の改装をしようとですね。」
長谷川 「そうですか。それは海軍省からですか。」
提督 「まあ、そういったほうが正しいですね。」
ガチャ…
響 「失礼するよ。」
提督 「おっ、来たか響。」
明石 「そうですね。それじゃ改装を始めましょう!」
そうして改装が開始された。
改装開始から30分後
明石 「改装が終了しました。」
提督 「おーい、響。どうだ?」
そう言いながら、扉を開いた。
響 「あっ…。」
するとそこには、青みがかった銀髪の少女がいた。
提督 「…えっと、響…だよな?」
響 「そうだけど…。」
栗林 「さすが大規模改装。性能だけでなく外見も大きく変わっていますね。」
Верный 「ひび…Верныйだ。信頼できるという意味の名なんだ。」
提督 「呼びづらいから俺は響って呼ぶからな。」
響 「うん。私もそっちのほうがしっくりくる。」
こうして響は、改二…Верныйとなった。
三日後
執務室
提督 「栗林、最近の深海棲艦の動きはどうなっている?」
栗林 「例の”影の艦隊”が現れてから、目撃が激減しています。今のところ影の艦隊に目立った動きはありません。」
提督 「そうか。引き続き監視を続けてくれ。」
栗林 「分かりました。」
そう言って栗林は部屋を後にした。
今までの出来事をまとめるとこうだ。
俺が着任して一週間後に深海棲艦の迎撃に向かったところ、影の艦隊に遭遇。撤退を開始するも十六夜が…。
そして影の艦隊が深海棲艦を攻撃している光景を、他の鎮守府の艦娘が目撃している。目的は不明。あの栗林だって頭を抱えている。
影の艦隊、か…。そういえば俺が子供の頃、じいちゃんがそんな艦隊があるって話していたな。(じいちゃんは元軍令部総長)
確か、”影浦”とかいうやつが提督をしていたって話していたな。
「ワン!!」
犬の鳴き声で、我に返った。
犬…?
まさかと思い振り返ると、一匹の柴犬がいた。
提督 「なんだ。”ポチ”だったか…。」
ポチは俺が提督育成学校から飼っている犬だ。最近まで俺の自室にいたが、とうとう外に出てきたか…。
「ワンッ!!」
尻尾をフリフリしている。どうやら遊んでほしいようだ。ちょうど執務も終わったし遊んでやるか…。
ガチャ…
響 「司令官。遠征の報告書まとめてきたよ。」
提督 「おっ、そうか。遠征お疲れ様。」
「ワン!!」
響 「司令官、犬飼ってたのかい?」
提督 「ああ、ポチっていうんだけどさっきようやく俺の自室から出てきたんだ。」
響 「そうなんだ。かわいいいね。」
そう言って響はポチの頭を撫でた。ポチは嬉しそうに身を捩っていた。
深夜
提督 「明日は南西諸島海域の視察か…。深海棲艦は確認されていないといえ、慢心してはいけないな。」
長門 「そうですね。もう誰も失いたくありません…。」
提督 「…安心しろ。皆同じ気持ちだ。」
長門 「はい…。それでは私はここで。」
提督 「ああ、おやすみ。」
長門を見送り、俺は寝る準備を始めた。明日に備えて早く寝ないとな…。
夢を見た。家族を失った時の夢だ。できれば思い出したくない。しかし、この夢は定期的にみてしまう。
目を覚ました。この夢を見た後は寝付きが悪くなる。
提督 「今何時だ…」
??? 「マルサンマルマルをちょうどまわったところだよ。」
提督 「そうか、もう少し…って、響。」
響 「なんだい、司令官。」
提督 「なんで俺の自室にいる。」
響 「なんだか苦しそうな声がしたから、入らせてもらったよ。」
提督 「だからって添い寝はな…。」
響 「…駄目だったかい?」
提督 「…分かった。もう寝るぞ。」
響 「うん。おやすみ司令官。」
こんな風に、添い寝されるのは何年ぶりだろうか。そんなことを考えながら、俺は眠りについた。
次回 帰還
次回 急展開!?
驚きの展開が繰り広げられる。