??? 「安心して、あなた達は私達が守るわ。」
第六駆逐隊と影の艦隊との間に現れた、二人の艦娘。二人とも弓道着のような上着を着用しており、手には旧陸軍の使用していた九九式小銃を握っている。
響 「あなた達は、一体…。」
響がそう尋ねると、一人が口を開いた。
??? 「挨拶が遅れてごめんなさい。私は本日付で呉鎮守府に着任した正規空母の蒼永です。」
黒髪の空母艦娘、蒼永は答えた。
??? 「お姉さま、早く挨拶を済ませないと敵が回復します。」
蒼永 「そうね。この娘は大永。私の妹よ。」
蒼永が軽巡二十型に向けて小銃を撃つ妹、大永の紹介をした。
暁 「なんで暁たちがここにいるって…」
蒼永 「提督からの指示です。」
雷 「司令官…から?」
大永 「そうよ、提督が”あいつらのことが心配だ、護衛を頼めるか?”って言われたからよ。」
響 「司令官が…。」
すると、駆逐十六型が叫び声をあげながら沈んでいった。大永の放った流星艦攻の雷撃が命中したのだ。
軽巡二十型 「オノレ、ヨクモ我々ノ計画ヲ邪魔シタナ…。」
そう言いながら蒼永たちを怨念のこもった目で睨みつける。
暁 「ひぃ!」
暁たちは軽巡二十型の気迫に、思わず後ずさった。
しかし、蒼永たちは冷や汗一つかかずに言った。
蒼永 「あなた達の目的はわからないけど、私達の仲間を傷つけることは許しません!」
蒼永はそう言い切った。
軽巡二十型 「…ダマレ、ダマレダマレダマレェ!!」
軽巡二十型がそう叫びちらし、蒼永に向けて砲撃を行った。
しかし、蒼永は難なく主砲弾をかわしていく。そして九九式小銃を放ち、艦載機を発艦させる。
放たれた銃弾は、瞬く間に彗星艦爆へと姿を変えた。
軽巡二十型 「クッ、コザカシイ真似ヲ…!」
唯一生き残った軽巡二十型が、上空に向けて弾幕を張る。しかし、彗星艦爆は弾幕を回避し爆弾を投下した。
軽巡二十型 「………ココマデカ…。」
バァーーーーン!!
爆発音が響いた。…煙が晴れた頃には、軽巡二十型の姿はなかった。
暁 「…………。」
響 「…………。」
雷 「…………。」
電 「…………。」
全員があっけにとられていた。
暁 「すごい…。」
暁がそう呟いた。
そのとおりだ。本当にすごかった。まさに航空母艦だ。力だけでも一航戦に匹敵するかもしれない。
大永 「あなた達、大丈夫?」
見とれていたら、大永がそう話かけてきた。
響 「私と電は大丈夫だよ。暁と雷が…。」
雷 「もお〜、雷は大丈夫なんだから!」
電 「雷ちゃん、そう強がらなくていいのです…。」
蒼永 「とりあえず皆大丈夫そうね。よかった。」
蒼永がそう言うと、大永が口を開いた。
大永 「それで、さっきのが例の”影の艦隊”?」
暁 「そうよ!遠征中に急に潜水艦から攻撃を受けたのよ!」
雷 「その時は被害はなかったけど、その後に四隻の影の艦隊が現れて…」
響 「交戦していたら、航空攻撃を受けたんだ。」
大永 「航空攻撃?私達が来たときには空母なんていなかったけど…。」
そうこう会話をしていると、蒼永が五人に声をかけた。
蒼永 「とりあえず、話は鎮守府に帰ってからにしましょう。いつまた影の艦隊が襲ってくるかもわからないので。」
大永 「そうですね、お姉さまの言う通り鎮守府に戻りましょう。」
響 「そうだね。ふたりとも中破しているわけだし。」
こうして、六人は呉鎮守府に向け航行を開始した。
その頃、呉鎮守府では。
栗林 「提督、空母蒼永の艦上偵察機彩雲から連絡です。”我ガ艦隊、影の艦隊ヲ四隻撃沈破ス”です。」
栗林が報告すると、提督は窓の外を眺めながら答えた。
提督 「そうか。遂に本格的に動き出したようだな。」
長門 「そのようですね。」
栗林 「近いうちに大規模攻撃をしてくるとは思っていましたが、まさかこの早さで攻撃を仕掛けてくるとは予想していませんでした。」
提督 「そうだな。こちらも交戦体制を整えておかないとな。」
提督がそう言った途端、大淀が言った。
大淀 「提督!追加で連絡です。交戦した艦隊は第六駆逐隊のようです。被害状況は二隻が中破の模様です。」
栗林 「中破ですか…。かなり骨のある敵だとみました。」
長門 「そうですね。これは長い戦いになりそうですね。」
このような会話が本庁舎の執務室で行われていた。
ヒトナナサンマル
艦隊が鎮守府に帰投する時刻だ。
呉鎮守府では、だいたいの艦隊はこの時間帯に帰投する。そして、今ちょうど第六駆逐隊と蒼永、大永の第六航空戦隊が帰投した。
栗林 「提督、第六駆逐隊と第六航空戦隊がただいま帰投しました。」
提督 「そうか、分かった。被弾した艦はすぐに入渠させろ。そしてそれが終わったら…」
栗林 「補給ですね。」
さすが栗林。俺の考えていることを全て把握している。五年間一緒に仕事をしただけあるな。
トントントン
扉を叩く音がした。おそらく第六駆逐隊の報告をしにきた響だろう。
提督 「入れ。」
俺がそう答えると、予想通り響が部屋に入ってきた。
響 「失礼するよ、司令官。」
提督 「遠征お疲れ様。暁たちはどうした?」
響 「今、入渠しているよ。中破していたからね。」
提督 「そうか。もう下がっていいぞ。」
俺がそう告げると、響は部屋を後にした。
現時点では影の艦隊と交戦して生還できる確率はかなり低いと栗林は話している。生きて帰ってきただけでも今は大戦果だ。
もし、蒼永と大永が間に合わなかったときのことを考えると思わず身の毛がよだった。
そこへ、栗林がある資料を持ってやってきた。
栗林 「提督、影の艦隊の艦級が記述されている資料を発見しました。」
提督 「そうか。もう見つかったのか。」
栗林 「はい、みてみましょう。」
俺と栗林は一緒に資料を覗き込んだ。
㊙影ノ艦隊 艦級
艦隊防空型大型駆逐艦 駆逐十六型 約400隻
艦隊防空型大型軽巡洋艦 軽巡二十型 約200隻
艦隊護衛型大型重巡洋艦 重巡二十一型 約100隻
超大和型大型戦艦 戦艦百十型 約12隻
空母殲滅型巡洋戦艦 戦艦七十型 約15隻
伊七百型特殊大型潜水艦 潜母七百型 約300隻
高速大型魚雷艇 雷艇甲/乙型 約700隻
俺は言葉を失った。栗林も同じようだ。
提督 「多すぎる…。」
資料にはとんでもない数値が記載されている。この数は世界の鎮守府の艦娘の総数を遥かに上回っている。
栗林 「そのとおりですね…。我々人類が対処できる数ではありません。」
魚雷艇の数だけでも当時の米海軍駆逐艦の生産数に値する。
栗林 「かつての帝国海軍がこれほどの艦艇を生産したとは驚きました。」
提督 「問題は、やつらが一体どこから出現しているかだ。今唯一分かっている海域はここの鎮守府の正面海域だ。今のところ佐世保鎮守府にも舞鶴鎮守府にも影の艦隊は確認されていない。」
栗林 「つまり今、影の艦隊と交戦することができるのは、ここの呉鎮守府だけですね。」
提督 「そうだな。だから新鋭艦を今日”三隻”迎え入れたんだ。」
栗林 「三隻?蒼永さんと大永さんの二人だけじゃないんですか?」
提督 「ああ、実はもう一人いる…。超大和型戦艦四番艦の…」
その途端、演習場の方向から耳をつんざくような射撃音が聞こえた。
栗林 「っ!?なんですか今の音は?」
提督 「演習をしているようだな。少し見に行くか。」
演習場
演習場には、長門と金剛、そして蒼永と大永、見かけない一人の艦娘がいた。
長門 「目標、一斉射で撃沈判定…。なんて火力だ…。」
金剛 「本当デース!さすが超大和型Batorusixtupuデース!」
??? 「いいえ、私はまだまだこれからです。影の艦隊も出現し始めているので頑張っていきます!」
蒼永 「さすが。あなたらしいわね。」
??? 「蒼永さんも一緒に頑張りましょう。」
提督 「どうだ。演習は終わったか?」
長門 「提督!はい。今演習は終了しました。」
提督 「射撃音が執務室まで届いていたぞ。さすが超大和型戦艦の四番艦。これからよろしく頼むぞ、”出羽”。」
提督がそう言うと、菊紋の髪飾りをつけた艦娘、”出羽”は微笑んで答えた。
出羽 「はい!頑張ります!」
呉鎮守府に新たな仲間が増えた瞬間だった。
その頃
鎮守府正面海域のある島
??? 「提督、今日鎮守府正面海域にて我が水雷戦隊が敵の艦隊の攻撃により壊滅状態に陥りました。」
?提督 「…とうとう奴らも攻撃を仕掛けてきたか…。やはり軽巡旗艦の水雷戦隊には荷が重かったようだな。」
??? 「この先はいかがなされるつもりですか、”影浦提督”。」
影浦提督 「…引き続き深海棲艦は一つずつ確実に沈めていけ。奴らの対処はその後だ。そして念の為、正面海域に魚雷艇郡と潜水艦隊を派遣しろ。」
??? 「了解しました。」
戦いの火蓋が、今切られた。
次回 奇跡の駆逐艦と不運の重巡
投稿が遅れてしまい、大変申し訳ございません!
正月の準備やPCの不調により、なかなか執筆がすすみませんでした。楽しみにしていた方、本当にごめんなさい!
(次回もオリキャラ投下します。)