話の構造が複雑化してきてる……かもしれない。
ラヴァ視点
とりあえずレユニオンの奴らは撒けたらしい。アーミヤ達もミーシャの容態が悪くなったとかで止まってるし、一旦休憩だな。
「いや~、屋上通るのは大変だったな。まさかあんなルートを通るなんて、やっぱペンギン急便って発想がぶっ飛んでるな」
「でも敵も普通に追ってきましたけどね……もう地上から行っても変わらなかったんじゃないですか?」
「大体の敵は地上にいただろうし、大変だったとはいえ戦闘の数で言えばそんなだっただろ?」
「確かにそうかもしれないですね!……向こうは大丈夫でしょうか」
ビーグルはアーミヤたちの方を見やる。ミーシャは……ここからだと遠目であまり見えないけど、あまり状態がよくないっぽいな。寝かされてるし、息も荒いみたいだ。
「ま、アタシたちはアタシたちのできることをやりゃいい。どうせ処置は向こうが全部やってくれるんだしな。それに向こうの心配をするより、自分の心配をした方がいいんじゃないのか?ビーグル、戦闘で結構攻撃受けてた気がするんだが」
「ハイビスちゃんが治療してくれたので平気です!ねー、ハイビスちゃーん」
「はい……それが私の役目ですから。それに今の力じゃ、これが限界みたいですからね」
相変わらずハイビスは元気がない……いや、元気がないというより、ただ落ち着いた雰囲気なだけかもな。って言っても前までのハイビスと全然違うし、ほんと何があったんだか。
「ハイビス、なんかあったのか?なんというかその……妙に落ち着いてるけど」
ハイビスは少し考えこんだ後、苦笑しながらこう答えた。
「心配しなくて大丈夫だよ、ラヴァちゃん。ただ……ちょっと悪い夢を見ただけっていうか」
やっぱおかしいな。前までの子どもっぽい感じじゃない、大人びた雰囲気を醸し出してる。確か昨日会った時は……いつも通り"健康食"を食べさせようとしてきたな。うん、明らかにその時とは違う。
「夢で何を見たんだ?アタシがこういうのもなんだけど……お前らしくないぞ」
「でも……本当にただ悪い夢を見ただけなの。それ以外には、なーんにもない」
「だからその夢だよ。何を見たんだ?」
「……言わなきゃダメ?」
「いや、絶対じゃないが……アタシだけじゃない。他のみんなも心配してるんだぞ。アタシはともかく、他の奴らにはもっと頼ってもいいんじゃないか?」
ハイビスは順々にA1のメンバーの顔を見る。各々の顔を見るたびに表情が変わってたが、いまいちどんな感情なのかわからない。ビーグルとフェンを見たときは悲しそうな表情だったくらいで、クルースとアタシを見たときは普通の顔だった。なんだ?あいつらなんかしたのか?ほれみろ、2人とも変な表情してるぞ。
「ハイビス……?」
「えっと……うん。そうだね、仲間だもんね。あんまり正確には覚えてないから、覚えてる範囲で話すことになるけど、いいかな?」
「ああ。なんだ?」
ハイビスは深呼吸をして話し始める。アタシたちは息を呑んでハイビスの次の言葉を待った。
「えっと……ね?ほんとに、全然覚えてることがないの。ただ、確かに覚えてることがいくつかあって。……夢の中で、アーツで人を傷つけたの」
「ハイビスが……?」
ハイビスのアーツは確かに治療以外にも使える。が、本人がそれを嫌がって使わないって話だったはずだ。アタシもそれには納得していた。ただ、そのハイビスがアーツで人を……?
「あとはなんかあるか?」
「えっと……夢の最後の方で外勤任務に行ってたの。あんまり覚えてないけど……すごく悲しいことがあった」
「ふむ……」
外勤任務なんて今のアタシたちには一切関係のないことだ。ただ、外勤任務となると少人数で行動することが多いな。だからなんだという話ではあるけど。それに悲しいことがあったってなんだ?
「他になんかあったか?」
「んー……あ、ドクターの執務室によく行ってたのは覚えてる。あそこだけはずっと変わらなくて……」
「……ドクターって誰だ?」
「……え?」
ハイビスはアタシの顔をまじまじと見る。いや、そんなに見られても知らないものは知らないんだが。
「ドクターって言うと、確かチェルノボーグのドクター救出作戦の、あのドクター?」
フェンが横から口を挟んでくる。ビーグルもクルースもうんうんとうなずいている。アタシが知らないだけだったらしいな。
「チェルノボーグのドクター救出作戦……そこでドクターがロドスに来たんですよね」
「いや、確かドクターの救出には失敗したんだよ。レユニオンに連れ去られたって」
そういや話を聞いててなんとなく思い出してきたな。数日前にチェルノボーグまで行って、そこでレユニオンが暴れてて……で、レユニオンの次の目的地が龍門だから先回りして来た……みたいな感じだったか?だからこんなにレユニオンのやつらがいたのか。おかしいとは思ってたんだよ。
「ドクターが……レユニオンに?でも……誰が、何故?」
「そこまでは私にもわからない。アーミヤさんとかに聞かないとかな。答えてくれるかはわからないけど」
「みんな、本当に何も覚えてない……いや、私が夢を見て勘違いしてるだけだよね。うん」
ハイビスはそれで自分を納得させるつもりっぽいな。ま、本人がそれでいいならそれでいいんだけどさ。
「ケルシー先生に相談したらどうかな?そういうことにも詳しいだろうし」
「……ケルシー先生はいるんですね。この任務が終わったら行ってみます」
ハイビスの件については一区切りついたみたいだな。アタシも何がなんだかよくわからない。占っても結果が曇ってるというか、見れないし。アーミヤたちは……まだ時間かかりそうだな。
ハイビスカス視点
ふぅ……この目で見たことを色々と話したけど、やっぱりみんなは知らないみたい。それに……全部を話したわけじゃない。というより、殆ど覚えてる。ヴィセハイムでの一件が終わった後、ロドス号に戻って休んでたら……昔に戻ってた。いや、正確には私の知ってる"昔"とは違うし、こっちが現実みたいだけど。まず、ドクターがいない。私の知ってる中だと、ドクターはずっとロドスにいたはず。チェルノボーグのドクター救出作戦でロドスに戻ってきたみたい。ここだと、そこが違う。
そもそも、私が見たのを全部夢で済ませていいのかもわからない。私からすると今の方が夢のようなに感じる。だって、フェンちゃんもビーグルちゃんも生きてるし、クルースちゃんもラヴァちゃんも昔と同じだし。でも……確かに、私はここでの記憶もある。改めて思い返すと、記憶がまるで2つあるみたい。ここの記憶と、夢で見た記憶。大体は同じだけど、少しずつ違う……。
でも、逆に言えば、この夢の記憶を生かせばこの先を変えられるかもしれない。フェンちゃんとビーグルゃんを助け……そもそも今からならあの事件が起きないようにすることもできるのかも。
「隣、座ってもいいかな?」
「わっ……あ、どうぞ」
急にフェンちゃんが話しかけてきたからびっくりした。でも……長らく忘れてたけど、フェンちゃんはいつもみんなのこと心配してたもんね。そりゃ、今の私のことは心配か。
「その……ハイビス、大丈夫?」
「うん、平気。今は落ち着いたから」
「なんというか……昨日までとは雰囲気変わったけど、それも夢のせい?」
「多分……そう」
多分というか確実にそう。逆にあんなのを見て変わらない方がおかしいし。
「そっか。私も心配してたんだけど、珍しくラヴァもすごくハイビスのこと心配しててさ。もしかして仲直りしたの?」
「あー……して、ない」
夢の中ではした。時々嫌がられることはあったけど……でも、昔よりはだいぶ関係がよくなったと思う。でも、ここだとそういうわけじゃない。なのに心配をしてくれて……もしかしたら、もっと早く気づいてあげればよかったのかな。
「んー……そっか。ハイビスも多少元気が戻ってきてるみたいだし良かったよ。何か相談したいことがあったら、私ならいつでも聞くから」
「うん……ありがとう」
フェンちゃんは立って今度はラヴァちゃんの方に話しかけに行った。昔から隊長って感じで頑張ってたよね……。うん、なんか懐かしいな。
思い返すと、いいことも悪いことも含めて、たくさんの出来事があった。でも、なんか私はずっと張りつめているというか、必死だったというか……それで、あまり周りを見ていなかったのかもしれない。でも、今からなら。今からなら、それも変えられる。だから……うん、今回のミーシャちゃんのことも含めて、私の力で変えていこう。今の私になら……きっとできる。
実質ハイビス強化入ったわけなんですけど、アーツユニットとかの問題もあって戦力的にはあんま変化ないです。悲しいね