レユニオンと往くテラの大地   作:青影

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 そろそろ起死回生に移ります。




約束

 

 

ドクター視点

 

 

 

「それでは、私は一旦他の者の様子を見てこよう。ドクター、話を聞いてくれたことに感謝する」

「いや、私も色々と話を聞けて助かった。また会ってくれるか?」

「あぁ、喜んで」

 

 随分とマドロックと話し込んでしまった。結局、話す人がいなければすることもないから、誰かと話している時間は私からするとありがたい限りなのだが……と、また誰か来たようだ。

 

「……」

「……」

「……君たちは?」

 

 片方は白髪の少年。こちらの様子を伺うようにこちらを見ている。もう片方の少年は青黒い髪をした少年だ。こちらを睨むように見てくるが、目付きが悪いだけのようにも感じる。

 

「メフィスト……俺から話した方がいいか?」

「う、うん……お願い」

「わかった。……お前がドクターか?聞いていた様子と随分違うな」

 

 白い髪をした少年……メフィストと呼ばれた彼が私に用があるようだが、人見知りしているみたいだ。代わりに青黒い髪をした方の少年が私に話しかけてきた。

 

「確かに私がドクターだが……聞いていた話と違う、とは?」

「Wが『残虐非道で人の心がないようなヤツ』と言っていたからな。研究者としては優秀かもしれないが、人としてはまるでなってないと」

「そう……なのか?すまない、以前の記憶がないんだ。記憶喪失というやつらしい」

「……そうか。他の奴らが言ってたのは本当らしいな。とすると、ここに来た意味がないが……どうする、メフィスト?」

「え、えっと……どうしよう」

 

 もう既に何度も目にした光景だが、やはり記憶喪失というのは不便でならない。一刻も早く以前の記憶を取り戻したいところだ。

 

「と、とりあえず話すだけ話してみよう。何か、わかるかもしれないし……」

「そうだな。というわけだドクター。記憶がないお前に聞くのも悪いかもしれないが、力を貸して欲しい」

「私にできることなら」

「ああ。……っと、すまない。自己紹介がまだだったな。俺はファウスト。こいつはメフィストだ」

「メフィストです……。よ、よろしくお願いします」

 

 白い髪の少年がメフィスト、青黒い髪の少年がファウストか。よし、覚えた。

 

「よろしく。それで、何が聞きたいんだ?」

「そうだな……まず、お前はアーツのことについてどこまで覚えている?」

「殆ど覚えていないが……さっきマドロックと話している時に少しだけ聞いた。源石を媒体とする力だとか」

「まあ……おおよそその認識でいいだろう。それで、人によってアーツが違うというのも知っているか?」

「……なんとなくは。強さ……と言っていいのかはわからないが、同じ系統のアーツでも人それぞれ力量が違うのも聞いた」

「そこまでわかっていればいいだろう。それで問題なのが、こいつのアーツだ」

 

 そういってファウストはメフィストを見やる。メフィストは相変わらずオドオドしているが。

 

「どんなアーツなんだ?」

「俺も実際に使っているのを見たのは数度しかないからわからないんだが……自分で説明できるか?」

「えっと……うん。僕のアーツは、粉を飛ばして鉱石病に感染してる人の再生力を上げたり力を強くしたりできるんだ。でも、その代わりに理性を完全に奪うから、タルラ姉さんにもファウストにも使わないようにって言われてるし、僕も使いたくないけど……でも、僕も2人みたいに戦いたいんだ。だから、あなたにいい使い方を教えて欲しくて」

「……というわけだ」

「なるほど……諸刃の剣どころの話ではないな」

 

 不可逆的な変化をもたらすものは得てして避けられやすいものだ。ましてや、理性を奪うなんてものはできるだけ使いたくないだろう。それこそ、使用者が人格破綻者でもなければ。とはいえ、デメリットを考慮しなければ非常に強力な能力でもある。それこそ……。

 

「人以外には使えないのか?」

「……使えるよ。でも、僕の命令を完全に聞いてくれるわけじゃないから、その場その場でしか使えないし……」

「事前準備をするか、環境依存になるってことか。その上、次以降の戦いにそのまま持ち越せるわけでもない、と」

 

 相手次第、戦場次第となると、とことん扱いが難しくなる。命を削って使うことになることを考えると、費用対効果に見合っていないだろう。

 

「普段はどうしてるんだ?」

「えっと……医療班として治療をしたりしてるよ。アーツユニットを使えば、普通の治療もできるから……」

「アーツは一人一種類なんじゃないのか?」

「原則はな。ただ、こいつみたいな特殊なタイプのものはアーツユニットを使うか自分の体の源石を使うかで変わるらしい。俺もよくわからないが、メフィストの能力の根本は治療系のアーツってことなのかもな」

「だ、だけど……僕には治療だけしかできない。タルラ姉さんみたいに敵を倒す力があるわけでもないし、ファウストみたいな仲間を支援できる力があるわけでもない。僕も2人みたいな力が欲しいんだよ……」

「そうだな……そういうことなら、私にもできる話がある」

「ほ、ほんとに!?」

「もちろん。君が望むような話ではないかもしれないけどね。────まず、戦場には様々な役割がある。先鋒、前衛、狙撃、術師、重装、補助、医療、指揮、後方支援……おおまかに分けるとこんなところだろう。これらは、戦場において全て欠かせない役割を持っている。どれかが欠けてもいけない。他で補うことができるとしても、それぞれにそれぞれの専門分野がある。……特に医療は肉体的な支えになるだけでなく、精神的な安心感も与えることができる。つまり何が言いたいかというと……敵を倒すだけが戦いではないということだ」

 

 メフィストは、私の言葉を何度も咀嚼して理解し、自分のものにしようとしていた。私が何を伝えたいのか、彼は余すところなく全てを飲み込もうとしていたのだ。

 

「────敵を倒すだけが全てじゃない。味方を守るのも戦いの内……そうですよね?」

「そういうことだ」

 

 メフィストは、幾分かすっきりしたようで、ここに来た時よりは晴れやかな表情になった気がする。

 

「ただ、アーツのことに関してはまだ考察の余地がありそうだ。私も時間がある時に活用法を考えてみよう」

「……お、お願いします」

「ありがとう、ドクター。……メフィストのあんな表情は久しぶりに見た。お前のところに来て良かった」

「また私にできることがあったら言って欲しい。私にはこれくらいしかできないからね」

 

 ファウストの顔がやや暗くなる。何か不味いことを言っただろうか……?

 

「メフィスト、先に戻っていてくれ。確かこの後は講義の時間だろ?」

「あ、そうだった。そ、それじゃ……ありがとうございました」

 

 メフィストは一礼をして、いそいそとこの場を去っていった。ここに残ったのは私と、何かを悩んでいる様子のファウストだけだ。

 

「どうかしたのか?彼がいると話しずらい話でもあるのか?」

「……ああ。本当にドクターは鋭いな。メフィストのことで少しな」

 

 彼はそう言うと、メフィストの過去について話し始めた。

 

「アイツは歌を歌うのが好きでな。昔は俺によく聞かせてくれた。ただ、鉱石病に感染させられた時に……喉に病巣ができて歌を歌えなくなった。今でこそ元気に振る舞ってはいるが、昔は酷いもんだったよ。なぁ、ドクター……アイツがまた歌えるようにしてくれないか?……無茶な頼みだってことは分かってる。だが、メフィストは俺の大切な友人だ。アイツの夢が鉱石病に潰されたのだって俺に原因がある。その責任を取りたいんだ。だから俺ができることだったら何でもするから……考えてみてくれないか」

 

 ……ファウストの願いを聞きたいのは山々だ。ただ、それがどれだけ難しいのかも彼にはわかっているはずだ。今の私にその願いが叶えられるかもわからない。ただ、夢や希望が鉱石病により踏み躙られる現状は変えたい。それが人為的なものであろうと、そうでなかろうと同じだ。

 

「わかった、できる限りは尽くそう。ただ、どれだけ時間がかかるかはわからないが……」

「いや、その言葉が聞けただけで十分だ」

 

 この大地はそれぞれが持つ事情など関係なく災害を振り撒く。多くの人は、そんな中でも夢を持ち続けられるほど強くはない。夢を諦めざるを得ない時が来るかもしれない。ただ、再び夢を持とうと足掻くものもいる。人の弱さとは、大事なものを失うと道を見失うことだろう。しかし、人の強さは、そこから立ち直ることができることだ。例えこの大地がどれだけ恐ろしいものであろうと、私たちが歩みを止めない限り道は続いていくのだ。

 

 






登場キャラ紹介


・メフィスト
 えっ誰……?な人。話の中でも触れられていた通り、アーツの使用を禁じられていたので心が荒んだりせず割と真っ当に育った。イメージとしてはタルラと出会った頃からそのまま成長した感じ。


・ファウスト
 ほぼ変わらず。メフィストのことでの心労は減ってそう。

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