今回は視点移動が多いですが章の締めなので許してください
タルラ視点
「……タルラ?おい、タルラ……聞いてるのか?」
「ん?ああ、すまない。少し考え事をしていた」
私は、クラウンスレイヤーと共にスカルシュレッダーからの連絡を待っていた。
「お前でも考え事をするのか」
「当たり前だ。私を何だと思ってるんだ?」
「精密機械……とか?」
「あのな……」
そんな風に思われていたのか……心外だな。
「それだけお前の指揮や作戦は正確なんだよ。だから作戦中に考え事をしてることに驚いただけだ。何か気になることでもあるのか?」
「いや……作戦については問題ない。別のことについて考えていた」
「そうか……で、話は聞いていなかったと」
「すまない」
考え事というのは、ドクターのことだ。一応フロストノヴァに見張りを頼んだし、問題はないと思うが……彼女を疑うわけではないが、問題が起きないかどうか不安でならない。具体的に言うならば、ロドスからの襲撃が起きないかどうかが心配だ。あの後、ロドスがどこへ行ったのかは知らないが……ドクターの回収を試みようとする可能性は高いだろう。そうなると、拠点の残存勢力で防衛ができるかどうかは怪しい。ただ、向こうからの連絡もない。ただの杞憂で済みそうだ。
「まあ私の話も大したことじゃない。スカルシュレッダーの父親については話しただろう?」
「セルゲイだったか?お前たちが殺したという話だったが」
「そうなんだが……その、な。そこで選択を誤ったんじゃないかと思ったんだ」
「どうしてだ?後悔しているのか?」
クラウンスレイヤーはため息をつく。
「別に後悔はしてない。だが、他にもっとやりようがあったように感じてな。私はともかく、スカルシュレッダーには悪いことをしたと思っている」
「そうだな……とはいえ、過ぎたことを気にしても仕方ないんじゃないか?」
彼らの事情は知っている。その上でレユニオンに引き入れた。他にも似た事情を抱える人はいるから、彼らの事情が特別というわけでもないと私は思ったのかもしれない。私自身のことに関しても、あまり人に言えたことじゃないしな……。
「そう……かもな。ところで、スカルシュレッダーからの連絡はまだか?随分遅い気がするが」
約束の時間から10分ほど過ぎているにも関わらず連絡が来ない。何かあったのかもしれない……そんなことを考えていると、通信が入った。
「こちらスカルシュレッダー。タルラ、聞こえているか?」
「ああ、問題ない。何か問題があったか?」
「そうだ……ミーシャは見つかったが、他の連中に連れられてる。どうやら近衛局のクソ共に渡すみたいだぞ、アイツら」
「ということは近衛局に連れられてるわけではないんだな?」
「あのマーク……なんて書いてあるんだ?ロドス……か?」
「ロドス?今確かにロドスと言ったか?」
「ああ。ロドス……そうだ。ロドスと書いてある。思い当たる節があるのか?」
ロドス……ああ、またここでもロドスか。厄介だな……どうしてここにロドスがいるんだ?もしかすると、彼らの目的もミーシャなのか?しかし……目的がわからない。何故彼らもミーシャを確保する必要があるんだ……?
「ある……が、特に深い関係はない。そうだな……私が1人で近衛局の足止めを行う。スカルシュレッダーはそのままロドスを強襲しろ」
「了解だ」
スカルシュレッダーとの通信はそこで切り、今度はWと通信を繋げた。
「W、聞こえているか?」
「何かしら?タルラ様直々にご命令とはありがたい限りね〜」
「そういうのはよせ。……ロドスだ。近衛局にミーシャを引き渡そうとしているらしい」
「はぁ、またロドスなの?」
Wは呆れたような声を出す。それはこちらも同じ気持ちだ。
「スカルシュレッダーによるとな。お前には引き渡された場合の保険として引き渡し場所の特定とその後のミーシャの奪取を頼みたい」
「あー……えっと、戦力の分断くらいはしてくれるわよね?流石にロドスと近衛局全員を相手にやれる自信はないわよ」
「そこまでの無茶はさせない。お前が相手にするのは近衛局の一部だけだろう」
「ならいいわ。って言っても、まずは探すところからよね〜。はぁ、面倒だわ……」
「悪いな。では頼んだぞ」
Wとの通信を切る。クラウンスレイヤーはそれを待っていたかのように話しかけてくる。というより、本当に待たせていたのだが。
「作戦だな?私は予定通り、スカルシュレッダーの援護と自分の用事を済ませに行くが」
「ああ。進展があれば通信で連絡をくれ」
「当然だ。それじゃ……またな」
クラウンスレイヤーは足早に去っていった。さて……私も役目を果たさないとな。それに、ついでと言っては何だがフェイゼとも会える可能性もある。まぁ、今回は敵としてだろうが……話し合える機会でも設けられるといいのだが。
チェン視点
「何、あちらも襲撃だと……?」
「はい。たった1人にやられているらしく……」
「馬鹿な!たった1人相手に手間取るなど……となると、こちらに応援を回すこともできないか」
「そうなりますね」
私は酷く焦っていた。ようやく確保対象を見つけたと思っていた矢先に襲撃を受けたのだ。その上、待機していた筈の隊員達も襲撃されている。それに、あちらはたった1人に足止めされているとのことだ。焦らない方がおかしいだろう。
「隊長さ〜ん、そんな話し合いをしてる余裕なんてないんじゃないかしら〜?」
「クソッ……」
"W"と名乗った人物がこちらを煽ってくる。当然、そんな安い挑発に乗るほど落ちぶれてはいないが……かといって、無視できるほどの力量の差があるわけでもない。
「は〜、めんどくさいわね〜。どうして私がこっち側なのよ……」
「愚痴を漏らすとは随分と余裕があるようだな、W」
「あ゛?なんでアンタがあたしの名前を呼ぶのよ。そんな気安い関係じゃなかったと思うんだけど」
「さっき自分で名乗っていただろうが」
「はぁ〜?あたしはアンタの後ろにいる子に名乗ってあげただけなんだけど」
私の後ろにはミーシャがいる。彼女も心配だが、今はWを警戒しないといけない。ミーシャの確認せずに静かにWを見据える。
「ではお前がわざわざ名乗る必要はなかったな。ミーシャは渡さん」
「……ぷっ。あっはは!」
Wは今の私の言ったことが可笑しかったのか急に笑い出した。
「何?ミーシャを渡さないって?じゃあ後ろを確認してみたらどう?」
「は……?」
念の為に後ろを流し目で確認する。しかし、そこには誰もいなかった。
「彼女は……ミーシャはどこだ!?」
「上よ、上。だからせっかく助けられるチャンスをあげたのにそれを棒に振るだなんて……ほんとお馬鹿ねぇ、隊長さんは」
上を見上げると、レユニオンの兵士がミーシャを抱えながらビルの壁を登っていた。まさか上から奇襲されていたとは……。
「それじゃもう二度と会わないことを祈るわ、じゃあね」
「おい、待て!……チッ、逃げ足の早いやつだ」
Wを追おうとしたが、それよりも先にミーシャだ。一刻も早く対処しなくては、何があるかはわからない。まずはロドスへ通信をするべきだろう。
アーミヤ視点
「ミーシャさんが、連れ去られた……?」
スカルシュレッダーとの戦闘中に突然チェンさんからの連絡が入り、何とかその内容を聞くことはできましたが……状況としてはかなり悪い方向へ向かっているようです。
「すまない、こちらの過失だ」
「……今、彼女はどこに?」
「分からない。現在調査中だ。そちらの手は空いているか?」
「いえ、こちらも戦闘中なもので……」
「そうか。では戦闘が終わったら改めて連絡してくれ」
チェンさんは通信を切りましたが……どうやら敵も退いていくようです。
「覚えてろよ、ロドスのクズ共が……次に会う時が、お前らの最期だ」
このタイミングで撤退……もしかすると、私たちは足止めされていたのでしょうか?
「……敵が退いていきますね。罠でしょうか?」
「いえ、どうやら目的は私たちではなくミーシャさんだったようです。チェン隊長から連絡が入りました。……ミーシャさんはレユニオンに連れ去られたと」
「えぇ〜?私たちの仕事の意味は〜?」
「うるさいぞ、エクシア。静かに聞いていろ」
「ええと……現在地は調査中とのことです。もう一度通信をしますね」
改めてチェンさんに連絡をし直します。すぐにつながるといいのですが……。
「こちらチェン。もうそちらの戦闘は終わったのか?」
「はい……どうやら私たちの足止めが目的だったようです」
「そうか。こちらの待機していた隊員も足止めをされたようだ。相手はかなり入念な準備をしていたらしい」
「そうですか……。これからの行動はどうすればいいですか?」
「一時待機。ミーシャの居場所が分かり次第連絡する。いいな?」
「はい……質問してもいいでしょうか?」
「なんだ?手短に頼む」
ここで聞かなければ今後二度と機会がないかもしれません。それに、ここまで近衛局やレユニオンがミーシャさんに固執するとなると、それ相応の理由があるはずです。
「チェン隊長、やはりミーシャさんの秘密について教えていただけないでしょうか。このままだと互いの信用にも影響を及ぼします。その情報があれば、こちらもより正確な対応をできるのですが」
「……それを伝える義務はない」
「ですが」
「話はそれだけか?通信を切るぞ」
「待ってください、どうか話を……」
何とか話を聞こうとしましたが、そのまま通信を切られてしまいました。
「ミーシャさん、大丈夫でしょうか……」
ぽつりと零した私の声は、静かに虚空へ消えていきました。
登場キャラ紹介
・クラウンスレイヤー
実はここで初顔出し。タルラと出会い、少し変わったが過ぎたことは変わらない。みんなのおもちゃ
次から起死回生です。