一方その頃
タルラ視点
Wらと別れてからしばらく、レユニオンの格好をした暴徒の無力化をしていた。
「ふぅ……にしても数が多いな。軽く100人くらいはいそうだ」
特に誰に向けるでもなくそう呟く。かなりの数を無力化したはずだが、相も変わらずあちこちから悲鳴は聞こえる。他の仲間たちも交戦中だ。
「やはりリーダーを探すしかないかもしれないな……しかし、どこにいるのやら。通信も繋がらないせいで偵察班や狙撃班との連絡もできないから自力で見つけるしかないようだな」
しばらく歩いて周りを探してみているものの、中々リーダーらしき人物を見つけることはできない。もしかするとリーダーは元からいないか、この場にはいないという可能性もあるが、この数の統率を取るとなるとおそらくどこかにはいるはずだ。通信妨害も受けており、相手も同じ状況だと考えれば猶更だ。あるいは、彼ら全員が捨て駒ならば統率など取る必要はないのだが。
そうこうしているうちに周りの戦闘音も段々と少なくなってきていた。ある程度は鎮圧できたということだろうか。辺りを見回し、すぐ近くにいた自らの兵士に声をかける。
「ここら一体の制圧は終わったか?」
「あ、はい……ってタルラさんじゃないですか。そちらも大丈夫ですか?」
「ああ、問題ない。しかしこれだけ人数がいたというのにも関わらずやけに呆気ない幕引きだな。相手は撤退していったのか?」
「いえ、俺の見た限りだと撤退している姿は見てないですね。全員こちらを見つけたら突撃してくる感じで」
……妙だな。私たちは確か20か30人程度でここに乗り込んだはずだ。敵は見える範囲でも100人以上はいたように見えた。それなのに私たちが圧倒的に優勢で、なおかつこんな短時間で決着がつくとは考えにくい。相手がただの暴徒とはいえ3倍以上の数の差があれば押し切るのはそう簡単ではないはずだ。
「……そういえば他の仲間たちもそんなにいないですね。どこ行ったんだあいつら」
「確かにそうだな。敵も少ないがこちらの数もあまり多くないように見える。かと言って倒れている人が多いのかと言われるとそんなこともない。明らかにおかしいな」
どう考えても敵の数も味方の数も合わない。見える範囲で気絶していると思われる敵が20人程度。周りにいる仲間は10人前後。周りから聞こえる戦闘音なども考えると他の仲間たちも戦闘を終えていそうなものなのだが。
「ちょっと俺、様子見てきます。タルラさんはどうしますか?」
「ここで待っていよう。もし他の仲間がいたらここまで連れて来てくれ。私は負傷した一般市民の応急処置をしていよう」
そう言って彼とは別れた。辺りに兵士の数は少ないが、一般市民と思われる人が倒れていたり、建物の中などからうめき声や泣く声が聞こえる。今やるべきは彼らの治療や保護であり、敵の姿が見えない以上考えても仕方がない。そう結論付け、私は街の中を駆けだした。
しばらく目に入った人の応急処置を続けていると、先程話した兵士が急ぎ足で戻ってきた。
「タルラさん!……やっぱここにいますよね」
兵士は不味い物を見たというような顔で私を見てくる。流石にそれは失礼なのではないだろうか。
「どうした?幽霊でも見たような顔をしているが」
「俺からするとそんな感じですよ。だってさっき他の場所でタルラさんを見たんですから」
「見間違いじゃないのか?」
「見間違いではないです。間違いなくあなたと同じ姿でした。うっかり声をかけそうになりましたよ」
「何故偽物だと分かったんだ?」
「さっき別れてそのまままっすぐ進んでいったんですよ。そしたら広場にタルラさんがいて。一瞬話しかけそうになったんですけど、どう考えてもおかしいと思って。だってタルラさんは市民の応急処置を行うって言ってたからそんな方にいるわけないですし、先回りされたことになります。それに広場で悠々とと歩いていましたからね。そこで完全に偽物だと思いましたよ」
偽物のレユニオンに、偽物の私か……。妙にきな臭くなってきたな。
「それで、他の仲間たちは見つかったか?」
「何人かはその周りにいました。偽物に見つかるわけにもいかないので呼びにはいけなかったですけど」
「わかった。彼らを迎えに行き、その偽物の正体についても探ろう」
「了解、こっちです」
彼の案内を受け、私たちは広場の方へと向かった。
「……あれか。確かに私と似た姿をしている気がするな」
「やっぱそう見えますよね?」
私たちは広場の真ん中で悠々と歩いている私の偽物を観察していた。特に彼女は何をするでもなく、ただ歩いたり、街の様子を眺めているだけだった。
「さて、どうする?今ここを出ても私の方が偽物だと思われそうだが」
「そしたら俺から行きます。俺が他の仲間たちと話してくるんで少し待っててください」
彼はそう言って広場の方へ走っていった。偽物のタルラがいるが大丈夫だろうか。そう思いつつもしばらくその光景を眺めていたが、彼は順調に仲間と話を進め、その光景に偽物の私も気づいてはいるようだったが話の内容までは聞こえないのか、特に何を気にするでもなくふらふらとしていた。
しばらくして、全員と話を終えたらしい兵士は私の方へ戻ってきた。
「この周りにいる全員に話はしてきました。全員『言われてみればおかしい気がするしお前を信じる』と言っていたのでここでタルラさんが出ても偽物はあちらだとちゃんと分かってくれると思いますよ」
「ありがとう、助かった。それではいこうか」
私は立ち上がり、広場にいる偽物のタルラへと向かっていった。私の姿が見えるようになった途端、レユニオンのメンバーらは私の方へ走ってきた。彼らの行方を目で追うように偽物は目で彼らを追い、彼らが私の近くまで来たところでようやく私の存在に気が付いたようだった。
「なっ……なんで……」
「私の姿をして、どういうつもりだ?今回の暴動も貴様の差し金か?」
私は怒りの色を込めて偽物を睨みつける。偽物はかなり怯えているようだ。ここに私が来るのは完全に想定外だったらしい。
「私が首謀者だなんて……えっと、どうしよう」
相手は何を言おうか迷っている様子だ。いきなり攻撃を仕掛けられるよりはマシだが、敵のリーダーだと思っていたのにそうではないらしく拍子抜けだ。話している様子を見ると、私と同じ姿をしているにも関わらず一切私を真似る気がないように感じる。それだけ気が動転しているということか。
「貴様が彼らを……偽物のレユニオンを主導してチェルノボーグを襲ったわけではないのか?」
「そうだけどそうじゃないというか……私は別にトップじゃないので詳しいことは知らないんですけど……」
「だとしても君が私の姿をしていることや、それと同じタイミングでレユニオンの姿をした暴徒が現れたことを考えると関係性を疑わざるを得ないな」
彼女は少し戸惑ったり考えたりした後、静かにこう告げた。
「……そうです、私は彼らの仲間ですよ」
「そうか。では何故彼らの行動を許した?例えウルサスに怒りがあったとしても市民は関係ないだろう」
「そうですかね、彼らは私たちを見捨てたんですよ。私たちは、私たちがやられたことをそのまま返しているだけです。あなただって身に覚えがあるんじゃないですか、タルラさん」
彼女は落ち着いてきたのか、饒舌に喋りだす。彼女の言い分を理解できないわけではない。しかし、それでは意味がないのだ。
「では、どうやってその連鎖を断ち切るつもりだ?非感染者が消えた時か?」
「それは……」
偽物のタルラは言葉に詰まる。姿形こそ同じだが、内面は全くの別物らしい。
「まぁいい。彼らの仲間だと言うのなら、貴様も倒すまでだ」
「そうしたい気持ちはありましたけど……お迎えが来たみたいです」
「お迎えだと……?」
その"お迎え"は突然やって来た。彼女はまるで最初からそこにいなかったかのように、忽然と姿を消したのだった。
「……消えた?」
他の仲間たちの目からも見えていないらしく、辺りを見回している。
「警戒態勢を解くな。奴はまだ近くにいる可能性がある」
そう言いつつも、気配を一切感じられない。どうやら本当に言葉通りにこの場を去ったらしい。
その後もしばらく待ったが特に変化はなかった。完全に逃げられたらしい。
「結局情報はほぼ聞き出せず仕舞いか……」
周りの捜索を行いながら市民の応急処置も続けたが、偽物のタルラや偽物のレユニオンの足取りを見つけることができなかった。まるで嵐のように去っていった彼女のことを考えながら街を回っていると、誰かの叫び声が聞こえた。直後、空から無数の源石が降って来たのだった。
「て、天災だ!」
「不味い、さっさと脱出するぞ!」
戦闘などをしていて完全に忘れていたが天災が目前へと迫っていたのだ。今考えると、彼女も天災があるから逃げたのだろう。全員必死で天災から、降り注ぐ災厄から逃れる。最終的に私たちは死者を出すことはなくチェルノボーグからの脱出には成功したが、多くの謎を残すままとなってしまったのだった。
登場キャラ紹介
・一般レユニオン兵士
レユニオンにいるごく普通の兵士。ナイスプレーをしたものの、今後の出番があるかどうかは分からない。
・タルラ(偽物)
変装などではなく、なんらかのアーツにより姿を変えているらしい。偽レユニオン暴徒ほどの怒りはないが、この世界に絶望していることに変わりはない。