曇りそうな雰囲気出てきたなぁ…
アーミヤ視点
気が付くと、私はロドスの艦内にいました。自分の部屋で寝ていたようです。でも、私はさっきまで何を……。
「ドクター……」
私はそう口に出して思い出します。ドクターはレユニオンに連れていかれました。最後にドクターを背負っていたサルカズの女の人に攻撃しようとして……横からの攻撃に気が付けず、そのまま壁にぶつかって意識を失っていたみたいです。もうロドスの艦内にいるということは作戦は終わったのでしょう。
私は状況を確認するために部屋の外に出ます。ただ……扉を開けようとした私の手が、微かに震えていることに気が付きました。おそらく、ドクターの安否が心配なのでしょう。もっと言えば、ドクターがロドスにいるだろうと思っている反面、もしドクターがロドスにいなかった場合を考えると、それが異様に怖くて……ドクターがいないなんて、そんなことあり得ないはずなのに。
「無事に目が覚めたようで何よりだ。では、今回の作戦の顛末について私は君に話さなければならないな。今から私の部屋に来ることはできるか?」
部屋を出てすぐにケルシー先生から連絡が来ました。どうやら私が部屋から出たことを確認して、連絡をしてくれたようです。
「わかりました。すぐに向かいます」
そう返事をして、ケルシー先生の部屋へと向かい始めます。その足取りはとても重いものとなりました。ロドスのリーダーとしては、絶対に聞かなくてはならない話であるのは確かです。でも、私個人としては聞きたくない話でもあります。ドクターがロドスに戻っているのならいいですが、もし、万が一でもドクターが……ドクターが……。
「ドクター……」
そうして色々と考えながら歩いているうちに、いつの間にかケルシー先生の部屋の前まで来てしまいました。
「ケルシー先生、来ました」
「アーミヤか。入ってくれ」
ケルシー先生に促され、私はドアを開けます。その先にいた先生の顔はとても暗く、その瞬間に私はドクターがロドスに帰ってきていないことを理解してしまいました。
「アーミヤ、とりあえず座ってくれ。体調は大丈夫か?」
「私は大丈夫です。でもドクターは……」
「……君が気絶したと思われる時間帯より後のことを話そう。石棺に向かったオペレーターらはレユニオンのリーダーであるタルラにしばらく足止めされた後、彼女が突然撤退したのでそれを数人が追いかけた。彼らがタルラの後を追っていると、突然前方から大きな音が聞こえたらしい。恐らくはこの時に行われた攻撃で君は気絶したのだろう。そしてその直後にドーベルマンが君を発見し、応急手当をした。その後も彼女が君をロドスまで運んできた。後で彼女に礼を言っておくように。それ以外のオペレーターは石棺に残っていた他のオペレーターを待ち、全員が集合した後に建物の外へと出た。その後は特にレユニオンと交戦することはなかったようだが、チェルノボーグからの脱出中に天災に見舞われ、脱出がやや遅れた。とはいえ死傷者はいなかったのは幸いと言えるだろう。今の部分で何か質問はあるか?」
「あの、ドクターは今どこにいるんですか?」
「分からない。ただ、レユニオンが攫っていったことは確かだ。恐らくは今頃レユニオンの拠点で捕虜として扱われているか、既に殺されているだろう。私の見解を述べるならば、石棺から出すほどの技術があり、尚且つオペレーターらの目撃証言を元に考えるとドクターから情報を引き出すのが目的であり、少なくともすぐに殺されることはないだろうと言える。現時点では生きているだろうな」
「そう……ですか」
ドクターは、本当にレユニオンに攫われてしまったみたいです。でもなんでドクターが必要だったんでしょう?確かあの人……あのサルカズの女の人が必要だと……。
「先生、レユニオンの幹部らしき人と少し話したときに、彼女は『私もドクターが必要だ』と言っていたんですが、どうしてでしょう?レユニオンがドクターを必要とする理由はないような気がするんですが……」
ケルシー先生は一瞬だけ考え込む素振りをして、すぐに顔を上げました。
「彼女の特徴を教えてくれ」
「えっと……サルカズで、頭に赤くて大きな角がありました。髪は銀色に近い色で……武器は爆弾を使っていました」
「そうか。彼女か……」
先生は難しそうな顔をしながら考え込みました。先生が長く考え込むことはあまりないのですが、今回はかなり長く悩んでいる様子でした。
「他に彼女は何か言っていたか?」
「えーと、他には特に何も」
彼女の言葉で特に記憶に残っているのは『まるで盗人じゃない』という言葉でしたが……先生には言えませんでした。私たちは確かに彼女からドクターを取り返そうとしていましたが、奪おうとはしてないはずです。そもそも、ドクターの居場所はロドスにあるんですから、奪うも何もただ家に帰ってくるだけで私たちは何も悪くないじゃないですか。なのに……。
「アーミヤ?顔色が悪いが大丈夫か?」
「……大丈夫です」
「くれぐれも無理はしないでくれ。今回のことは残念だが、またドクターに接触する機会はあるはずだ。私としてもドクターにこのまま死んでもらっては困る」
「そうですね……ケルシー先生、1つ聞いてもいいでしょうか」
「どうした?」
「私たちは……本当に正しいことをしているのでしょうか。ドクターは、本当にロドスに帰ってくるのがいいんでしょうか」
私は、そんな質問を口にしていました。先生なら正しい答えがわかるのではないか、と。でも、正しい答えよりも、否定して欲しいという気持ちの方が強かったかもしれません。
「難しい質問だな。ドクターが望むのなら、ここにいるべきだろう。しかし、もしもの話ではあるが他の集団の方が馴染む場合もあるかもしれない。周りは引き止めるだろうが、本人にとっては自分の居心地のいい場所にいるのが一番だろうな」
「……」
「つまりだ、アーミヤ。私が言いたいのはドクターにロドスへ帰って来たい気持ちにさせればいいという事だ。一番居心地のいい場所をロドスとすれば、自ずとロドスに留まるだろう。そもそも君が心配したところで、ドクターはロドスに戻ってくるはずだ。必ずな」
ドクターの帰って来たい場所に……。
「そう……ですね。少し元気が出ました。ありがとうございます」
「それは何よりだ。しかし、少しは自分の体にも気を遣って欲しいところだ。次の目的地の龍門まではまだ数日かかる。その間の1日は休みに充てることを勧めておこう」
「考えておきます。それよりも、次の目的地はどうして龍門なんですか?」
龍門と言えば、龍門幣の名前にもある通りかなり大きな都市です。そして、感染者に厳しい都市でもあります。
「レユニオンの次の目的地が龍門だと判明した。今回のチェルノボーグでのレユニオンの暴動も当然知っていると思うが、それが次は龍門で起こる可能性が非常に高いというわけだ。それを事前に止める。当然そこにドクターがいれば救出も行う予定だ」
「……!わかりました!」
今度こそ、ドクターを取り戻すチャンスが訪れるようです。今度こそは必ずドクターを取り戻してみせます。だから待っていてください、ドクター。
「……話はこれで終わりだ。龍門での行動や作戦についての会議は後日行う。今日はゆっくり休んでくれ」
「わかりました。それでは失礼します」
そっと扉を閉じ、私はケルシー先生の部屋を離れ、自分の部屋へと戻ってきました。
(ドクター……ちゃんと、帰ってきてくれますよね?)
ドクターが帰ってきた後のことを考えてみると、少しだけ明るい気持ちになれました。きっとドクターは帰ってきてくれるはずです。きっと。
登場キャラ紹介
・ケルシー
話がそこまで回りくどくないが、長いのは相変わらず。本人が思っている以上に内心ではドクターのことを心配している。