ケルシーの考察ってもはや物語の補足だと思うんですよ
ケルシー視点
アーミヤと別れてからしばらく、私はドクターの件について考えていた。
(────アーミヤにはああ言ったものの、私にも確証があるわけではない。ただ1つ引っかかるのは、何故彼らがドクターが石棺にいることを知っていたのかということだ。そして、如何にしてドクターを石棺から出すことに成功したのだろうか。アレは専門的な技術がなければ起動すらままならず、万が一にでも失敗すれば大きな問題を引き起こす。彼らがそこまで知っていたかどうかは定かではないが、もし知っていたとしたらそのリスクを冒してまでもドクターを石棺から出す必要があったというのだろうか。逆に知らなかった場合は、猶更石棺から出すことができるとは思えない。我々ですら失敗のリスクを背負っていたというのだ。それをどうやって彼らが成功させたのかが不思議でならない)
「石棺……か。あまりいい思い出がないな」
私は溜息をつく。今こうして起きてしまったことについて考えていても仕方がない。目先の問題の解決の方を優先しなくてはならない。
「目先の問題と言えば……レユニオン」
レユニオン。正式名称はレユニオン・ムーブメント。感染者による、感染者のための組織。
(今回の暴動にはあまりにも謎が多い。今までのレユニオンの動向を見る限り、ここまで過激なことを行う集団ではなかった。少なくとも、多くの非感染者の目を集めることは避けていたはずだ。しかし、今回のチェルノボーグでは、多くの市民を虐殺し、破壊の限りを尽くしたようだ。ここまでが彼らの狙い通りだと言うのならそれはそれで驚きだが……少なくとも、突然こうも変わってしまうことは極めて珍しいケースと言える。だからこそ、他の可能性も考慮しなくてはならないだろう。例えば、人数が増えすぎたことにより目の届かない範囲が増え、ストレスを爆発させた兵士が暴動を起こしたケース。あるいは、幹部等が兵士を連れて離反し今回の暴動を起こしたケース。しかし、前者に関しては否定できるだろう。何せリーダーが直々に作戦に参加していたというのだから。レユニオンのリーダー、タルラ……彼女の考えが変わりでもしない限りはこのようなことは起きないだろう。後者は確実にあり得ないとは言い切れないが、それも違うだろう。タルラ達はドクターの回収を目的としていたようだ。ならば、偶然にも離反した幹部と目的地が合致でもしない限りはあり得ない話となるだろう。或いは、全く別の組織がレユニオンを偽って暴動を起こした……か。今やレユニオンは大きな組織となっている。特にウルサスにはその名が知れ渡っていることだろう。それを危惧したウルサス政府などが今回の暴動を起こしたとしても不思議ではない。もし今回の暴動をレユニオンが起こしたとなれば、ウルサスのみならず、他の国にもそのことが伝わるだろう。そうすれば、ウルサスにとっては都合のいいように事が運ぶだろうな。となると、やはり今回の暴動はウルサスが……?しかし、いくらあのウルサス政府とはいえ、市民をただ虐殺するという愚行を冒すとは思えない。結局、真相は分からないままだろう)
様々な考えを頭の中で巡らせたが、決定的な証拠がない以上、どうすることもできない。さらに大きな問題が起きないうちに証拠を集めておきたいところではあるが、それを時間が許すかどうかは分からない。
「そして、龍門と……」
(龍門。感染者差別が激しい都市でもある。恐らく、今回のチェルノボーグでの暴動もいち早く察知したことだろう。ましてや、レユニオンの次の目的地が龍門ということで、厳重な警備体制が敷かれているはずだ。それに、チェルノボーグからの難民も押し寄せてくることとなる。今頃彼らはそれに手を焼いているだろう。ロドスとしては、龍門と協力をして次の暴動が起こるのを阻止したいところだが……果たして上手く行くだろうか。そして、レユニオンがもし分裂しているとするのなら、今龍門に向かっているのは一体どちらなのだろうか。暴動を起こした側か、暴動を起こしていない側なのか。或いは、両方同じなのか。もし、これで暴動を起こしていない側のレユニオンが龍門へ向かっており、暴動を起こした側は今も虎視眈々とどこかで画策しているのかもしれないと思うと不安になる。もし、他の場所で次のチェルノボーグとなってしまった場合、我々の信頼を落とすことになるだけでなく、完全に後手に回ることとなる。今回は運良くその場に居合わせることができたが、次はそう上手くいくとも限らない。改めて警戒態勢は万全にしておく必要があるだろう)
「あとはアーミヤだな」
(アーミヤ。一時的に彼女を落ち着かせることはできたが、このままドクターが救出できない状況が続くと彼女に大きな負担がかかるだろう。ドクターのいないここ数年も彼女は辛そうにしていた。どうにか押しとどめていたが、結局ドクターを回収する機会が訪れてしまった。そして、それは失敗した。ドクターが現状生きているであろうことは救いだが、それが長く続けばいつ体調が悪化するかも分からない。本来、ドクターはこの環境に耐えられるほど強くはない。だからこそ服用薬や防護服が必要だったのだが、それがない中だとどれだけ活動できるのかは予想ができない。ドクターは、慢性的な持病を抱えているのと同じような状態なのだ。ドクター自身の事を考えても、近いうちに救助をしないと手遅れになる可能性も考えられる。そして、それはアーミヤも同じだ)
「やはりドクター……君がいないといけないらしい。それか、私達は君の救出など、最初から考慮しなければ良かったのかもしれないな」
それは地獄への片道切符だったのかもしれない。しかし、既に我々は歩み始めた。引き返すことはできないのだ。例え何があろうとも。この先に絶望しかないと知っていても、既に歩みを止めることはできない。
チェルノボーグ襲撃から1日が経過した頃、龍門にいるオペレーターから連絡が届いた。
「ケルシー先生、聞こえますか?」
「あぁ。そちらの様子を教えてくれ」
「今のところ問題ありません。ウェイ長官とも無事連絡がつきました。明日には会えるかと」
「了解だ」
私は通信を切る。ロドスは、新たな戦いへ身を投じようとしている。そして、多くの思惑が龍門で交錯することとなるだろう。戦火を止めなくてはならない。強い意志を持ったものもいずれ戦いをやめなくてはならない。その時は、おそらく目前へと迫っているのだろう。
次回から相思相殺に入ります。