オリ主の前世関係の設定やピクルーで作成したイメージ画像など活動報告に載せました。よかったら見てください。
『しんしあの日記』
母さまに日記ちょうをもらったから さきょうからかく
わたしは5さいになった たくさんの人においわいされて うれしかった
手がみでおめでとうっていってもらえたけど お兄ちゃんもいたらいいのに
5さいになった日のきのうは 母さまにいっぱいだっこしてもらった
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メリーちゃんとソーニャちゃんとこくば*1をひろいにいった
森はあぶないから ってヨッヘンくんがついてきた
みんなでひみつのおうちを作りたいねってはなした
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おんなのこの友だちとタネを入れるふくろをつくった
しゅうかくさいでまくタネを入れるふくろを十さいになるまえのおんなのこが いちどもシーツにしたことがない白い布でつくる
シルフィたちが十さいになったとき わたしは七さいでイヴは五さい ノルンとアイシャはまだ三さい
さ来年はわたしとイヴのふたりだけでつくらなきゃいけないのかな
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ノルンはうたにあわせてからだを押さえるあそびがすきみたい
ヤーナムくんがリュートをひくとからだをたてにゆらしてよろこぶ
でもヤーナムくんがノルンばかりかわいがったから おとうとのクラレンスがおこってノルンをたたいた
ノルンはめをまんまるくしていたけど わたしが「かなしかったね、いたかったね」と抱っこしていうとないた
クラレンスもヤーナムくんにたたかれてないたから大がっしょうになった
わたしが馬こやにいた雪白をだっこしてきて
「ゆきしろがきたよ、どうしたのーっていってるよ」というと、ノルンはニャニャ!とゆびをさしてなきやんだ
「ゆきしろがいてうれしいね」というと、ノルンはわたしのかおをみながらにこにこわらった
あかちゃんはじぶんのきもちを表すことばをしらないから、まわりのこがかわりにあかちゃんのきもちを代べんしてあげるんだって リーリャがいってたからそうした
あとでクラレンスはごめんねっていってノルンをなでた ごめんなさいができてえらかったからわたしはクラレンスをほめてあげた
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アイシャをなかせちゃった
アイシャは本をひらいてよむふりをするのがすき
ふりだからほんとうはよめてないけどへウーとかダーとかこえをだしてよめてるふり
お兄ちゃんのおいてったしょく物じてんでもやろうとしたから わたしがだめっていって取りあげた
そしたらアイシャはうしろにころんであたまをぶつけてないた ごめんねってしたけどアイシャはわたしのことを見てくれなくてかなしかった
リーリャは「ルーデウスさまのものに手をだしたむすめがわるいのです」っていってわたしをおこらなくて 母さまと父さまはそのときはいなかったから わたしはだれにもおこられなかった
おこられなくてやったーってなるはずなのに ちっともよろこべなかった
かえってきた母さまにわたしのしたことをしゃべっていると とちゅうでわたしもないてしまった
母さまは「なかせたのはよくないけれど、それをかくさなかったのはいいことよ」っていってくれた
あしたはうんとアイシャにやさしくしよう
アイシャにきらわれてもわたしはアイシャがだいすき
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おね ちゃ
こめね
↑アイシャがかいた! シンシア
↑信じられない。まだ1歳だぞ? by.パウロ
↑「お姉ちゃん、ごめんね」って書いたのかしら。将来はルディみたいな天才になるかも! 成長が楽しみ by.ゼニス
↑ルーデウス様には到底およびません by.リーリャ
↑アイシャのことも褒めてあげてー! by.ゼニス
百日雪の下。
生前の私が暮らしていた村を含め、中国山地沿いの集落にはそんな言葉がある。
冬の間は百日は雪が解けないという意味である。それほど冬が長く厳しかったのだ。
ブエナ村では、樹木に緑の色がつき、小鳥のさえずりが聞こえるようになり、大地をおおっていた雪も、湖や沼の氷も解けはじめ、自然は春へと動いていた。
この地域は、生前の故郷より春の訪れが早い。
生まれてから五回目の春。
今年も冬追いの儀式が行われた。
夕焼けに染まりつつある空の下を、松明を掲げて駆けまわる。
藁で悪魔や魔物を作り、籤で松明をもつ子を決めて畑や果樹園をみんなでまわり、悪魔に見立てた冬を村から追い出すのだ。
「悪魔っ祓ーい!」
先頭を走るソマル君たちの声に続いて、私たちも「悪魔っぱーらい!」と声を張りあげた。
ソマル君ってば、早く走りすぎだ。去年魁を務めた兄は、小さい子に合わせてゆっくり進んでくれたのに。
「シンディ、腕つかれてない? 代わる?」
「セスちゃん代わってー……」
「はいはい」
「いぶがやる! いぶも持つ!」
「イヴちゃんはまだ危ないからダメかなー」
「メリーねぇねのけち」
松明をもつ係は人気の役で、私もくじが当たったときは嬉しかったのだが、すっかり腕がくたびれてしまった。火のついた松明をシルフィに任せ、ヤーナム君の弟のクラレンスと手をつなぐ。
イヴはお姉ちゃんのエマちゃんそっくりの顔をむくれさせている。膨らんだ頬を、藁で作った人形の手でつついてやると、笑顔になって藁人形を抱きしめた。
でもその人形、後で薪と一緒に燃やすんだよね。
ソマル君たち男の子とかなり距離ができたところで、立ち止まった彼らがこちらを振り返り、「おせーよ」等とぶー垂れ始める。
私もむっとして頬をふくらませた。
まだ早く走れない小さな子たちを置いて先に行ったのは、そっちだ。取り残して行くわけにもいかないから、私たちが手をつないでゆっくり移動しているのだ。
「クラレンスの面倒もちゃんとみれない人に言われたくないわよ!」
「子守りはオンナの仕事だろ!」
「弟の世話はお兄ちゃんの仕事でしょ!」
怒りを心の中で燃やしていたら、気の強いセスちゃんが言い負かしてくれた。ヤーナム君はレミ君に背中をおされ、しぶしぶ二歳のクラレンスを背負い、しがみつく小さな手に首を絞められてぐえっと舌を出した。ハンナちゃんがけたけた笑う。
弟妹のいないソマル君は気楽に松明を振りまわしている。
「ねねちゃん、つぎさ、あいしゃとおててしゅるよね? ねっ?」
「そうだね。お姉ちゃんとお手てつなごうね」
シルフィと右手を繋いだアイシャが懸命に左手をのばしてきた。
松明をセスちゃんに任せて片手が空いた今、妹の手をとらない理由はない。このかわいいお願いを断る人は非人間だ。
ノルンはお昼寝から起きてこなかったので、村の広場で母様たちと待機している。
「暗くなってきたから、みんなで固まって移動しよう。はぐれちゃった子のところには悪魔がくるよ」
シルフィが紫色になりつつある空を指さし、脅しつけるように言うと、ずっと先頭を歩いていたソマル君は「おいおい……そんなんで俺が言うこと聞くと思ってんのか?」と言い、くるりと踵を返して猛然と駆け戻ってきた。
行動と言動の噛み合わなさがおかしくて、私たちは大声で笑った。
「子供らが帰ってきたぞー」
「怪我してねえな? 全員いるか?」
日が暮れた広場に到着すると、大人たちが薪を山のように積んで待っている。
松明を薪山に投じ、パチパチ爆ぜる音と共に、巨大な炎は空を舐めるように高く燃え上がった。燃やし尽くされた後の灰は、後で畑に撒くのである。
「ノルン。お姉ちゃん、悪魔を燃やしに行かなきゃ」
「ヤッ!」
置いてけぼりにされたノルンはすっかり拗ねていた。
私の袖を握りしめ、しゃがんで動こうとしない。母様の抱っこも拒否するありさまだ。
私は冬生まれで、ノルンとアイシャは私が三歳の秋に生まれたから、妹たちはまだ一歳半である。
おしゃべりが増えてどんどんかわゆくなるノルンとアイシャ。
しかし、その反面、アレがくる時期でもあるのだ。
何もするのにもヤダとダメを主張する時期である。
ワーシカにもそんな時期があったし、イヴは三歳だけどまだイヤイヤの只中にいる。
みんなをキライになったわけではなく、人の要求を拒むことで自我を育んでいるのだそうだ。
イヤイヤがいちばん激しいのはアイシャだけれど、リーリャがいない場所だとなぜか良い子になるから、子供だけで行う悪魔祓いは無事に終えることが出来たのだった。
「最後はシンディだよ」と、駆け寄ってきたソーニャちゃんに教えられた。
「むー……」
動かないノルン。
燃やさなければいけない藁人形。
私は考え、父様を頼ることにした。
「父様、ふたり抱っこしてくださいな」
「おお。いいぞ」
父様が私を右側に、ノルンを左側に抱えた。
ノルンは私の手をしっかり捕まえたままである。絶対に離したくないという意志を感じた。
「シンディねーね、赤ちゃんみたいー!」
父様に焚火に近づいてもらうと、ワーシカとイヴに笑われたから、本当はちょっと恥ずかしかったけれど、「いいでしょー?」と勝ち誇っておいた。
「ノルンが投げてみる?」
「……ないっ」
藁人形から顔をそむけたノルンにあらあらと思いつつ、大きな焚き火の中に藁人形を投じて、私の役目は完了。
その後、「やっぱり投げたかった」という意味のことを訴えて泣きだしたノルンだったが、父様の周りをぐるぐる回って追いかけて遊ぶと機嫌は直った。
「たーしゃ?」
と、ノルンが母様を探す素振りを始めたので、「暗いから気ィつけろよ」と父様の声を背中に聞きながら、ノルンの手をひいて、焚火からやや離れた場所でオーガスタさん達と雑談をしている母様のもとに行った。
「母様、おとどけものです」
「はーい。何のお届けものかしら?」
しゃがんだ母様に、じゃーんとノルンを見せびらかした。
母様は、「まあっ、こんな所に可愛い赤ちゃんが!」と、小芝居を打って、ノルンを抱っこする。
いいなあ、ノルン。
そう思って見ていると、「可愛い郵便屋さん、ありがとう」と頬にちゅっと口をつけてもらえたので満足である。
「やっぱり娘は可愛いねえ。下の子の面倒もよく見るし」
「そうだね。最初に産むなら女だよ、エーヴ」
村長の奥さんであるオーガスタさんがしみじみと呟き、クロエさんがそれに同調した。クロエさんはソーニャちゃんとワーシカのお母さんで、エーヴさんと同じく妊っている。
「あーあ、あたしも娘が欲しかったな」
「跡継ぎを産めたからいいじゃない」
「そうだけど、流れた子が女の子だったからね、無事に生まれていれば今頃は……って寂しくもなるよ」
オーガスタさんは不安そうな顔をしたエーヴさんを見て、「大したことではないよ」と励ます笑みを向けた。
「あなたはまだ若いんだから。ダメでも次がある」
「でも、一度流れると産めなくなることもあるって……」
エーヴさんは浮かない顔だ。
オーガスタさんの考え方のほうがくよくよとしていなくて良いのだが、エーヴさんは初産なこともあって不安も大きいのだろう。
「エーヴさん、その子は大丈夫だよ」
探知以外の力は封じているから、本当のところはわからない。でも、私にはそれまで懐妊と死産を言い当ててきた実績と、それに伴う信頼があった。
エーヴさんはちょっと笑顔になった。
「そう……。シンディちゃんが言うなら、安心だわ」
「ええ、そうね。なんて言ったって、この子は神子だもの」
と、〈神子〉を強調する母様に、「さすが、長男といい貴族の血は優秀だね」と、クロエさんが苦笑した。
「やだもう、私もパウロも勘当された出来損ないよ」
恥ずかしそうに体をよじった母様に、くすくすと笑いが興る。
大人も大人で世知辛いようだ。上流階級の生まれである母様も父様も、嫌味にならないように振る舞うことを求められる。腕力がものをいう環境ではない分、母様はその機会も多い。
空気を変えてあげようと、私はクロエさんが首元に巻いているストールを指さした。
「クロエさん、そのストールかわいいね」
「ああ、ソーニャがね。機織りは最近教えはじめたばっかりだけど、なかなか器用で!」
ソーニャちゃんがお母さんのストールを作った話は、ソーニャちゃん本人から聞いている。
このまま我が子の自慢合戦になることを期待したが、「そういえば」とエーヴさんが素朴な疑問を口にした。
「ゼニスさんは機織りはできるわよね。貴族の子は機織りも習うの?」
「ううん、裁縫の手習いなら家で受けたけれど、機織りは昔のパーティメンバーに教えてもらったのよ。いつか必要になるから、って」
「冒険者だったときの?」
「そうよ。機織りは長耳族の女性に、料理は魔族の男性にね」
昔話をする母様は心の底から楽しそうだ。
「もう少し大きくなったら、あなたにも教えるからね」と、嬉しそうに言う母様に「がんばって覚えるね」と返した。
炊事機織りは女の仕事である。私もいずれできるようにならなければいけない。
「狩人さんのところはどうするんだろうね。男の格好させてたけど、娘でしょ?」
ブエナ村の狩人といえば、一人しかいない。
話題にシルフィの家が上ったので、私は足元に自生した紅花詰草をつむのに忙しいふりをしながら、耳をそばだてた。
シルフィは、最近は緑髪を伸ばして結んでいる。
服装は「こっちのほうが動きやすいから」と男の子のままだが、女の子らしくなっているのだ。
「猟は手伝わせてるみたいだよ。奥さんがミズシ女だから、仕方ない部分もあろうさ」
ロールズさんは耕地を持たないため、シルフィのお母さんは他家の農作業を手伝い、その家の炊事洗濯も手伝うが、機織りはできなかった。
習う暇がなかったのだ。教える人もいなかった。
機織りを習えず、他家の水仕事ばかりする女はミズシ女と侮蔑される。
そうなったのはシルフィのお母さんのせいではないのだから、ミズシ女と馬鹿にしてはいけない、と家で母様に言われているのだが、他の人は母様のようには考えないようだ。
「あれで本当に息子だったらよかったのにね。可哀想だけど、ミズシの子は、ミズシになるから」
「その心配はないわ」
「どういうこと? ゼニスさん」
「シルフィちゃんには、私が教えるわよ。あの子はルディにお熱だし、娘たちの面倒もよく見てくれるから、もうウチの娘同然だもの」
母様がそう言い切ると、しんと沈黙が降りた。
オーガスタさんがクロエさんと目を見合わせ、ぷっとふき出した。エーヴさんも膨らんだ腹を撫でてくすくす笑う。
「ゼニスさんったら、気が早いわァ」
「ねえ、クロエの顔見ちゃったじゃないの」
「でも良い考えだと思うわ。きっと喜ばれるよ」
おおむね賛成され、母様は「そうでしょ」とニコニコと相槌を打ち、「今度シルフィちゃんを家に呼んできてね」と私に言いつけた。
「さあ、ノルンのことはお母さんに任せて、お友達と遊んでらっしゃい。夜も外にいて良い日なんて、今夜くらいなのよ?」
「ノルンがえーんって泣いたら、教えてね」
「ええ。そのときは頼りにするわね、お姉ちゃん」
希少な日を棒に振るところだった。
私は、雑草をポイッと捨て、燃える車輪を丘からころがし、火のついた円盤を空に投げている村の若者と友達のところに急ぎ、その仲間に加えてもらったのだった。
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きょお さょきょうは冬おいのぎしきがあった
丘をころがる火のしゃりんがくらやみでだいだい色とあか色にひかってきれいだった
父さまがいってたけど、さむいくにには火ざけというおさけがあって、たいまつをもって口にいれた火ざけをふきかけると、たいまつの火がいん火してけむりみたいにふくらむらしい
それが火をふいてるみたいでたのしいんだって
おんなの子がやることじゃないっていわれたけど、わたしはおとなになったらこっそりやろうと思った
おもしろいこといっぱいあったけど、もうねむいからこれでおしまい
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ワーシカはわたしとけっこんしたいみたい
でもワーシカは、メリーちゃんとおねえちゃんのソーニャちゃんのことも好き
「わたしはだれともけっこんしないよ。ワーシカはメリーちゃんとソーニャちゃんだけとけっこんするといいよ」
というと、「シンディねーねもいっしょじゃないといやだ」っていわれた
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エリックの前がみがくるくるになっていた
かまどにちかずづきすぎて燃えちゃったんだって
エマちゃんもむかしおんなじことしたんだってモンティさんがいってた
やけどはしてなかった
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ヤーナムくんとレミくんがものほし竿をふたりでもってぐるぐる回っていた
なにしてるの? ってきいたら「どれいごっこ」っていってた たのしそうだったけどふたりともあとで「へんなあそびをするんじゃないよ」ってクララさんにおこられていた
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メリーちゃんがだいはっけん
じめんをぬらして魔じゅつでつめたくすると あたたかい日もしもばしらができる
ふむとさくさく音がなってたのしかった
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みんなでおうちをつくることにした
ほんとはだめだけど森につくる
まものが出ないように どくのある虫やカエルをあつめてびんに入れた
虫をさわった手でおしっこするとちんちんがはれるってレミくんがいうと ソマルくんがじゃああらうといいっていいかえした
シルフィはどくはカエルのおくり物だからむだにしちゃだめといったけど おうちは作りたかったからやっぱりてつだってくれた
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おまじないとのろいの字はいっしょだとおしえてくれたのはだれだっけ
フタをしたびんのなかでカサカサおとがする
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アイシャがおもしろかった
リーリャとアイシャといっしょに治りょう院ではたらいてる母さまをむかえにいったとき アイシャがきゅうにしゃがんだ
どうしたの? ってきいたら あたしきゅうに太ったからうごけなくなっちゃった っていった
つかれたからリーリャに抱っこしてほしいんだってすぐわかった
でもただ抱っこしてっていうとダメっていわれるってわかってるからいいわけをかんがえたんだと思うとおかしくて リーリャとわらった
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ソマルくんとヨッヘンくんがわたしをおんぶしてどっちがながく走れるかしょうぶした
わたしはおんぶされてるだけでらくちんだったけど二人は丘をのぼるのがたいへんそうだった
もうこんなたたかいやめにしよう! ってゼエゼエいきをしながらソマルくんが手でヨッヘンくんのちんちんをまもった
よくわかんないけどおもしろかった
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びんを家をつくりたいばしょの、いちばんふといナメラスジにうめた
こわいものにはこわいものをぶつけるといい
まものは出なくなるとおもう
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ねつになった
あたまがもやもやするからきょうはこれで終わり
……
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日記をかくのをずっとわすれていました。
だから、きょうからはお兄ちゃんに手がみをかくとおもって日記をかくことにしました。これならわすれません。
きょうおもしろかったのは、はれているのに雨がふったから、みんなで手をつないで「きつねのよめいりー!」ってとびはねてうたったこと。
あと、ひみつの家がとうとうかんせいしました。
ちいさな小やだけど、ふるいカンテラや食べものをもってきて家においておきました。
だれかが家のなかにいるときに、わざと外にでてからまた入ると「おかえり」といわれるから、そういうときはわたしも「ただいま」といいます。
友だちといっしょにすんでるみたいでたのしいです。
お兄ちゃんにもいつかきてほしいです。
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ロアの町のてんきはどんなかんじですか?
ブエナむらでは雨がふりそうになりました。
外であそんでいたら、エトさんが、
「おお雨がふるから、かえれ。」
といいました。空をみると、黒くて大きなくもがゆっくりうごいているのがみえました。シルフィが、
「ボクたちは、雨をふらせる魔じゅつなら知ってるのにね。」
というと、レミくんが、
「雨をやませることも、できたらいいのにな。」
といいました。そしたら、メリーちゃんが、
「みんなで考えてみようよ。」
といったので、そうすることにしました。
「いいこと思いついたよ、シンディ、てつだって」
とセスちゃんがいって水弾とやぎのおちちをつかって、くもができるしくみをおしえてくれました。
わたしはぷかぷかうかぶ水弾を下から魔じゅつであっためました。
セスちゃんのはなしで、みんなはくもをけす方法がわかったようでした。たしか、きゅむろにんばすっていっていたと思います。
くもがぴかって光ってたくさんあながあいて、そのあながどんどん大きくなって、くもがきえました。
はれたからまたみんなであそびました。
羊毛のしゅくじゅうのお手つだいもしました。
歌いながらたくさんたたくと布がじょうぶになるんだって。お兄ちゃんはしってた?
秋である。二十四節気をさらに細分化した七十二候の項目通り、虫
二歳になったノルンの娯楽は、この鮮やかなぶち模様の虫を見つけることらしく、葉を手当たりしだいめくっては、「テントムチ!」と叫ぶのである。かわいい。
アイシャは虫よりも土魔術や草花でつくる姉様人形のほうが好きなようで、作ってあげると、「ねねちゃん、ありやとう」とお礼を言うのだ。こっちもかわいい。
妹たちが二歳になり、私もしばらく経てば六歳になる。
去年の五歳の誕生日のときは、たくさん祝ってもらえた。
年を越した時ではなく自分が生まれた日に歳をとるという決まりには未だ慣れないものの、祝賀は嬉しいものだ。
五歳のお祝いに、母様が白紙を綴じた本をくれた。
日記帳というらしい。日々見たことや感じたことを書いてね、と言われた。
父様からはちょっと大人っぽい耳瓔珞を、リーリャからは温かい手袋をもらった。
思い出せばどんどん懐かしくなってくる。
シルフィとロールズさんからは木彫の首飾りだった。
一族に伝わるお守りで、シルフィがロールズさんに教わりながら作ったらしいが、シルフィは初めてさわる彫刻刀を使いこなせず、幾度も指先を削ったあげく、結局ロールズさんの手が大幅に加わったそうだ。
指の怪我は綺麗に治っていたが、シルフィはややしょんぼりしていた。完成まで自分で作ってみたかったらしい。
「すごく嬉しかったから、次はお兄ちゃんにも作ってあげて」とお願いしたのだ。
村の人たちからは、食糧や羊毛をもらった。私に、というより家族全員への贈り物という感じだ。
とても感謝している。お礼にブエナ村にトウビョウ様を取り憑かせようと思うくらい。
トウビョウ様には雨をつかさどる水神としての側面もあるのだ。信仰を集めれば村は私の死後も旱魃に苦しむことはなくなるけれど、扱いを誤った場合の惨事が釣り合わないので、思い直してやめた。
私が五歳になり、そろそろ六歳になることも、愛らしい妹たちの成長も、兄は手紙でしか知らない。
会えたら、話したいことはたくさんある。
正月と盆の藪入り*2に帰省してはくれまいか、と期待していたが、兄は一度も家に帰ることはなかった。この国には正月も盆もないので、藪入りの制度もないのかもしれない。
手紙を送れば返事がくる。村の家族や友人を気遣い、ロアでの日常や近況を面白おかしく綴った文面に、素っ気なさはない。
でも、わかる。兄は私たち家族を避けている。
「シンディ? 聞いてる?」
顔をのぞきこんできたシルフィに首をかしげられた。
今は、書机がある兄の部屋で、
先日みんなで協力して成功したのだが、私は理屈がよく分からなかったから、こうして改めて教えられているわけである。
「聞いて……ううん、聞いてなかった」
「こらっ」
嘘は良くないので正直に答えると、額をぱちんと指で弾かれた。
「最初から教えるね。まず、これはルディが言ってたことなんだけど、空気には水が溶けていて、空気が冷たくなると、溶けきれなくなった水が出てくるんだって。
雲の正体は、上に昇って冷やされた空気から出てきた水なんだよ。ここまでは大丈夫?」
「うん」
「このあいだボクたちがしたことは、
「どうしたの、シルフィ?」
真顔になって沈黙したシルフィ。
話を理解できていないように見えたのだろうか。話すのを途中で中断するほどに。
「……指いたい」
石頭でごめん。
薄ら涙を目にためているシルフィの指先が、淡緑色にぼんやり光った。
治癒魔術の無詠唱は、兄にも成し得なかった芸当である。
もしかしたら、ロアでできるようになっているかもしれないけれど。
私にできる無詠唱の魔術は、火と水と土の初級のみだ。
現在のブエナ村でいちばん魔術に熟練しているのは、シルフィである。そしてドベが私だ。
お兄ちゃんは才能があるのに、私にはないらしい。
神童を兄に持つのだから、少しくらい……と自分に期待していたのだが、魔力量が多いだけのドベなのである。
母様は、それでも十分すごいことよ、と言ってくれる。
火起こしは初級の火魔術で間に合うし、生活に必要な水も水魔術で過不足なく作れるのだ。
兄ほど出来なくても母様は褒めてくれるし、私も魔術を極める気はないので、これでいいと思っている。
こんこん、と扉が叩かれた。
リーリャが顔を出し、シルフィを呼ぶ。アイシャがお昼寝したので、手が空いたのだそうだ。
リーリャは、手隙の時間にシルフィに礼儀作法を教え込むようになった。
シルフィが兄のお嫁さんになるには必要なことらしい。リーリャの指導はときに厳しいが、シルフィは真面目に取り組んでいる。健気だ。
「あしゃっ、ねんね」
「そうね、アイシャがねんねしてるね」
一階の居間で、カーテシーというお辞儀の仕方を習うシルフィを見ていると、ノルンが手を引いてきて、アイシャをゆびさした。
ゆりかごのアイシャはバンザイの格好ですやすや寝ている。
生まれたときは二人寝かせても余裕があったゆりかごが、今はもうアイシャ一人でぎゅうぎゅうだ。
「ねんねしゅてるねー?」
「かーわいい!」
こてんと首をかしげたノルンの愛らしさにたまらず抱きしめたが、ノルンは抱擁の気分ではなかったらしい。「いなない!」と腕をあげて怒った。
てぽてぽ歩くノルンについて行くと、洗濯場に到着した。
「えいし」
よいしょ、と舌足らずな掛け声と共に、ノルンは洗濯済の襁褓をひっぱり出した。私は崩れた襁褓の山を積みなおし、後を追う。
ノルンは背伸びをして、震えながら玄関扉の把手に手を伸ばしていた。
「ねーちゃ、ちゃ!」
「うん、
「あーい」
玄関の扉をあけ、庭へ。
うちの家はちょっとした傾斜の上に建てられていて、そのため玄関の外には石階段が三段誂えられている。
一段一段をしゃがみながら降りたノルンは、キョロキョロ何かを探す素振りをしたあと、表情を輝かせてそちらに走っていった。
花壇の方角だ。庭の手入れをする母様と、母様にちょっかいをかける父様がいる。
「ねんね、ねんね」
「ミャウー……」
ノルンの目的は母様でも、父様でもなく、花壇のそばでくつろいでいた雪白だったようだ。
漆黒の毛皮の上に襁褓を被せ、とんとん背中をたたくノルン。
毛布のつもりらしい。
雪白の眼が、どうにかせい、と私に訴えているように見える。雪白の眼が私と母様とおそろいの碧色だったのは仔猫のときだけで、成猫になった今はハシバミ色だ。
「ノルン、雪白は毛がたくさん生えてるから、襁褓はいらないよ」
「……めッ! ゆちちよ、めんめ!」
ノルンの叱咤むなしく、雪白は襁褓をふり落とし、ずっと笑いを堪えた顔で私たちを見ていた母様の肩に駆けのぼった。
雪白はフンッと鼻息をひとつ吐き、ノルンから顔を逸らした。
先に決壊したのは父様だった。
「……グフッ、ふ、ハ、ハ!」
「そんなに面白い?」
「あ、ああ。そ、そうだよなあ? オムツも布だもんな?」
「……」
引き笑いをしながら父様はノルンの頭をぽむぽむ撫でる。
ノルンは不満顔だ。こんなに小さいのに、ちゃんと矜恃があって、自分が笑われていることがわかるのだ。
「ノルンは真剣なのに、笑われてくやしいね。悪いお父さま!」
「とーしゃま、めんめ」
ノルンを抱きしめて父様を批難すると、父様はやっぱり笑いながら謝った。父様も母様もひとしきり笑ったあと、ふと母様が言う。
「シンディ。お母さんとお父さんのこと呼んでみて?」
「母様、父様」
二人はなんとも言えない表情で顔を見合せた。
「あのね、シンディ。ノルンもアイシャも、ちゃんとした言葉を喋り始めてきたじゃない? だからこれからは、お母さん、お父さん、って呼んでほしいのよ」
「どうして?」
母様と父様じゃダメなの?
不思議に思っていると、父様が説明してくれた。
父様も母様も元貴族である。両親を最大限敬うのが当たり前、敬語を使うのが当然で、父さん母さんなんて砕けた呼び方をした日には厳しく咎められた。
自分らがかつてそう呼んでいたから、生まれた子供にも「母様」「父様」と言うように教えた。
農村でそんな呼ばせ方をさせている家はないという事に気づいたのは、初子のルーデウスが生まれた数年後。
次子――私が言葉をおぼえ始めた時期だ。
二人は一人称を「お母さん」や「父さん」に変え、軌道修正を計ったが、一度定着した呼び方を兄と私が変えることはなく、今に至るのだという。
ノルンとアイシャがハキハキ喋り出す前に、呼称の変更をきちんとさせておこう、と結論を出したらしい。
さらに、リーリャはもう使用人ではなく家族であるので、これからは呼び捨てにせず「リーリャさん」と呼ぶようにも言われた。
なるほど。
「お母さん、お父さん」
私がそう言うと、母様と父様改め、お母さんとお父さんは、ちょっと気恥しそうな顔をした。
もっと早く察してあげたらよかったな。
兄にも、二人が喜ぶ呼称を教えてあげよう。来月の手紙を出す日が待ち遠しい。
「びゃあああぁあ!」
家の方から盛大な泣き声が聞こえてきた。
「我が家のドラゴンが起きたみたいだな」
「今日は一段とご機嫌ななめね」
アイシャのあまりに烈しい癇癪は、両親に〈我が家のドラゴン〉と愛情とほんの少しの憎らしさを込めて言わせるほどだ。
ノルンを連れて家の中に戻ると、アイシャが床につっぷし、頭を抱えて絶望しているみたいな格好で泣きわめいていた。
リーリャは眉をひそめて溜息を吐き、シルフィは丸まったアイシャの背中を撫でている。
「のっ、のんねえ、のんねえがいないいい!」
「アイシャちゃん、ノルンちゃんいるよ。シンディと一緒に帰ってきたよ、良かったね」
「いないのッッ!」
居るよ。
いないことにされたノルンは我関せずで親指をしゃぶっている。
シルフィと二人かがりで亀のように縮こまったアイシャをひっくり返し、ノルンと対面させると、「ねねちゃとのんねえがあたちのこと置いてった!」と違う理由で怒って泣き始めた。
「アイシャは寝てたでしょ?」
「おこしてくれたらよかったでしょ! ねねちゃのおっちょちょちょい!」
「おっちょこちょい?」
「アイシャ! お嬢様になんて口を利くの!」
「ああああん!」
起こしたら起こしたで、睡眠を邪魔されて不機嫌になるだろう。
理不尽だが、これが自我が芽生え始めた二歳児である。
私もかつては兄の名前が「にぃに」ではないことに怒って泣いた。二歳から三歳の時期は、数々の絶望を通して、浮世が自分の思い通りにならぬことを思い知る期間なのだ。
おっちょこちょいと言われてしょげていると、シルフィが「大丈夫だよ、シンディは賢いよ」と励ましてくれた。
「はぷっ」
「ノルンちゃん?」
シルフィがびっくりした声をあげる。
ノルンが歩いてアイシャに近づき、アイシャを抱きしめ――頭をがっちり捕まえてほっぺを食みはじめたのだ。
「どうして噛んだの?」
「あいしゃがエーンなのやだだったの」
アイシャが泣いているのが嫌だったらしい。
アイシャはきょとんとして泣き止んだが、リーリャに見られていることに気がつくときっと険しい顔をした。
「もうお母さんやだ! きらい! あっちいって!」
「ええ、ええ。そうさせてもらいます!」
あんまりな言い様に立腹したリーリャが部屋を出る。
アイシャはさしぐんだまま、ちょっと開いた扉の隙間から廊下を覗いてリーリャを探す。怒って姿を消したように見えても、母親が扉のすぐそばで自分を見守っていることを知っているからだ。
「アイシャ、お母さんいた?」
「……いなかった」
あら?
シルフィが廊下をきょろきょろ見て「ほんとだ」と言う。
「どうしようか、アイシャちゃん、リーリャさん居なくなっちゃったよ」
深刻そうな声音で告げるシルフィに、アイシャは「そんなのうそだよ」と返すが、不安そうだ。
「ねねちゃん、うそでしょ?」
「うーん……」
そういう時期とはいえ、事ある毎にイヤとキライを言われるリーリャも可哀想だ。目配せを送ってきたシルフィに頷きかえして了解の合図をした。
「アイシャに嫌いって言われたから、悲しくて出ていっちゃったのかもね」
「いいもんっ」
「いいの? ほんとに?」
「あたちもう赤ちゃんじゃないの。しょれでね、りーやさんいなくていいんだよ」
二歳になったばかりの妹がとっても自立している。
ちなみにノルンは、イヤイヤがそこまで烈しくない代わりに、お母さんか私、そしてハンナちゃんにベッタリである。
「お姉ちゃんも赤ちゃんじゃないけど、お母さんは居てほしいよ。お姉ちゃんが大人になっても、ずっと」
多分、叶わないだろうけれど。
ヒトの行く末を見渡せるからといって、結果を変える力まで授かったわけではないのだ。
「リーリャさんにごめんなさいできる?」
アイシャはしばらく黙りこんでいた。
答えを待っていると、やがて大きな眼からほたほた涙が落ちる。そろそろ眼が溶けそうだ。
「……あとでぇ……」
「泣き止んだらいえるよね、アイシャは良い子だもんね」
気まずそうなアイシャの頭を撫でる。
ちゃんと分かってるもんね。
「ねねちゃん」
「なーに」
「おっぱいちょうだい」
「はい」
床に正座し、服をたくしあげるとちゅうちゅう吸いつかれた。
ついでにノルンも寄ってきて、空いたほうの胸を吸いはじめる。
二歳になり、おっぱい断ちを余儀なくされた妹たち。
しかし言葉で説得してわかる齢ではない。
お乳を飲ませろとグズっていたノルンに、お姉ちゃんのでもいい? と、試しに差し出して以来、何かと要求されるようになってしまった。それを見たアイシャも、悲しいことがあると時々要求してくる。
お乳が出なくても、咥えるだけで心が落ちつくらしいのだ。
ワーシカといっしょだ。
ぺたんこな胸を吸う赤茶と金色の頭をなでつつ、シルフィが思い出したように言った。
「ワーシカは、あの子、まだ寝る前にソーニャのおっぱい吸うらしいよ」
「ワーシカにぃちゃん、4さいなのにおっぱいなのー!?」
ぱっと口を離し、幼なじみの秘密を暴いたとばかりに嬉しそうにするアイシャを「笑わないの」と咎めた。
「アイシャもおっぱいちょうだいしたでしょ」
「あたち2さいだからいいの」
「2歳も赤ちゃんじゃないよ?」
だからね、おっぱいは飲まなくていいんじゃないかしら。
私としてはアイシャとノルンがご機嫌になってくれたらそれでいいから、二人が服の中に頭をつっこんできても拒まず好きなときに吸わせていた。
でも私は知っているのだ。
授乳ごっこを見た母様が心配そうに「将来変な子にならないかしら……」と呟いていたのを。
だから、やめたほうがいい事なのだろう。
アイシャはそろそろ言葉で説得できるかもしれない。
「2歳の子はもうおっぱいないないだよ」
と、アイシャに言うと、アイシャは父様ゆずりの翠色の目を私に向けた。
「あたちカタカタもらってないもん。赤ちゃんだもん」
少し前に、レミくんがワーシカにおさがりの玩具をあげた。
小さな馬車をひっぱると車輪が回転し、御者がカタカタと首をふる玩具だ。
同じものを欲しがって大騒ぎをするアイシャに、リーリャが言い聞かせたのだ。
あれは「お姉ちゃん」になったらもらえる玩具だから、アイシャが三歳になったらお母さんが買ってあげる、ただし、あれをもらったらもうお姉ちゃんなのだから、何でもイヤイヤしたりわがままを言うのはお終いね、と。
アイシャは納得し、カタカタが欲しいと駄々をこねることは無くなった。
カタカタをもらっていない自分は、まだお姉ちゃんになっていない。つまり赤ちゃんである。
だからおっぱいを吸っていても良い、と理屈をつけているのだ。さっきは自分で「もう赤ちゃんじゃない」と言っていたのに。
こんなに小さいのに理屈をつけて話せるのだ。
賢い。さてはこの子も前世の記憶が……。
いや、だとしたら私のぺったんこな胸は吸おうとしないか。
生前の記憶がまだらにある私が二歳だったときは、こんなにぽんぽん喋れていなかったし、会話もここまで成立していなかった。アイシャはすばらしく賢いのだ。
グレイラット家の子供は二極化される。
神童であるほうと、そうではないほう。
アイシャは兄に次ぐ我が家の神童だ。生まれたのが日本であれば、将来は高等科どころか、帝国大学まで進学できたのかもしれない。
「できの良い兄妹にはさまれちゃって、苦労しそうだねー?」
「ぱいぱい」
そうではないほうの子供である私は、仲間のノルンに語りかけた。
「ねーね、こっ」
お姉ちゃん、抱っこ、と舌足らずに両腕を上げるノルンをみると安心する。
アイシャを一度退かしてノルンを抱っこしようとすると、ムッとしたふうにしがみついてきたアイシャがノルンのおでこを押しのけた。
「のんねえ、おさないでよ! あたしがいちばんだからねっ」
「ぎゃーん!」
「あわ……」
押しあい頭つきあい。
余波が私にもおよんで参っていたら、シルフィがノルンのほうを引きとってくれた。
いつの間にか戻ってきたリーリャが疲れた顔で私からアイシャを引き剥がした。
「喧嘩する子は一緒に遊ばせませんよ!」
と、一喝。
リーリャが私の肌着とブラウスを下ろして胸をしまいながら、アイシャを叱った。
「やだああ! のんねえと遊ぶのお!」
「お姉ちゃんとは遊べなくていいの?」
「いくない!!」
大の字になって泣きわめくアイシャだったが、
「アイシャ、リーリャさんに何て言うんだっけ?」
私が言うと、床に仰のいて泣いた顔のまま叫ぶように言った。
「ごめんなしゃああ! お母さん! ごめんなしゃい!」
「この子は……もう……」
「ゆるして! お母さんゆるしてよう!」
アイシャは膝をついたリーリャに小猿のようにしがみつき、リーリャは呆れたような、満更でもなさそうな顔でアイシャを抱きしめた。
アイシャはくすんくすん泣きながらリーリャの胸に顔をこすりつけた。
私のおっぱいとは遊びだったのだろうか。
むしろリーリャのおっぱいが本命で、妾がわたし……?
「の、ノルン……お姉ちゃんのおっぱい好き?」
「ぱっぱいー」
ノルンにおそるおそる訊ねると、ノルンはにこにこ笑って私のぺたんこな胸をぽふぽふ叩いたのだった。
夕暮れ時。
機織りや礼儀作法の手習いを終え、家に帰るシルフィを途中まで送ることにした。
ときどきすれ違う村人たちと挨拶を交わし、見つけた山査子の実を摘み食いしながら歩くうちに、いつもの丘が見える所にさしかかった。
「お見送りありがとう。ここまでで良いよ」
「……」
もうお別れか。
また明日会えるけど、ちょっと寂しい。
毎日のように遊んでも、一日の終わりに必ず来るお別れをやや寂しく思った私は、シルフィといる時間を引き伸ばすためにこんなことを口にした。
「ねー、どうして自分のことボクっていうの?」
「そういえば、なんでだっけ?」
シルフィは立ち止まり、きっかけを記憶から探るように視線を右上にさ迷わせ、「えーっとね」と語り出した。
「ボクね、ルディと友達になる前は、誰ともちゃんと関わったことがなかったんだ。
初めて友達になったルディが、ボクと喋るときは一人称が〈俺〉なのに、お父さんと喋るときは〈僕〉だったんだよ。なんで言い方を変えるの? って訊いたら、ルディは、相手によって変えないと失礼になるからって」
「お兄ちゃんの真似してたの?」
衝撃の事実である。女の子は〈私〉でいいのに。
「失礼なことをしてみんなに嫌われたくなかったから、それ以来、外では自分のことをボクって言うことにした。
今では女の子は〈私〉って言うのが普通だってわかるんだけど、なんか、癖になっちゃって……変えた方がいいかな?」
「どっちでもいいよ。どんな言い方でも、私はシルフィのこと好き」
「えへへ……」
シルフィが照れたようにはにかんだ。
「シンディはさ、他の子はソーニャちゃんとかヨッヘンくんとか呼ぶのに、ボクだけ呼び捨てなのはどうして?」
「やだった?」
「ううん、ただなんでかなって」
「お兄ちゃんがいちばん言う名前がシルフィだったから、呼び捨てがうつったのよ」
性別を勘違いしていたためか、それともシルフィに飛び抜けて魔術の才能があったためか、彼女に特別目をかけていた兄はよくシルフィのことを話題にした。
他の子と同じように、最初は「ルフィちゃん」とか「シルフィちゃん」と呼んでいたのが、兄の呼称がうつって私まで呼び方が「シルフィ」になったのだ。
「ボクたち、たくさんルディに変えられてるんだね」
にへっと笑うシルフィはうれしそうだ。
「ずっと仲良しでいようね」
目の前から現実感が薄れていく錯覚をおぼえた。
生前はこういう風に言ってくれる友人はいただろうか。
いなかっただろう。私がトウビョウ持ちの家系だったからだ。
今は異なる。飢えを知らず、トウビョウ様の力は隠され、明日も明後日もしあわせな今日の続きだと信じていられる。
「うん、約束ね」
それから私たちは地上に映る影法師を動かして遊んで、本格的に暗くなる前に互いに手をふって別れた。
石ころを蹴りながら帰ると、家に着くころには空は真っ暗だった。井戸の水で手を洗ってから家に入る。
「ただいま! 聞いて母様、さっきシルフィとさ、」
「あら。あらあら」
「なあに母様」
母様ったら、驚いた顔してどうし……あっ。
「お母さん!」
「ふふ、そうよ、思い出してくれてありがとう」
「忘れちゃってごめんねー」
謝りながら抱きつくと、額に口をつけられ、もうすぐ夕飯だから座って待っているように言われた。
「お母さん……お母さん……」
ぶつぶつ復唱しながら、椅子の座面から雪白を退かし、ノルンとアイシャの台を用意してやる。座高を調節するための台だ。
父様が不自然に私の視野に入り、しきりに自分を指さしてきた。自分も呼べということか。
わかったよ、という意味の笑みを浮かべ、言葉を発する。
「父様」
「おっと、焦らすじゃねえか」
「え?」
「え? 本気で忘れてるのか?」
思い出した。お父さんって呼ぶのだった。
お父さんは拗ねた顔でノルンを抱き上げ、椅子から離されたノルンは「まんまあああ!」とテーブルに手を伸ばして怒った。
このまま遠い所に置かれて、自分だけ夕飯を食いっぱぐれると思っているのだろう。
「あのねお父さん、シルフィとずっと仲良しでいようねーって約束したの。それがうれしくて呼び方変えたの忘れちゃったよ」
「忘れちゃったかあ。じゃあ仕方ないな」
「したかたないよ」
あら?
いま「仕方ない」って上手く言えてなかった気がする。
まあいいか。失敗を恐れるな、って前に兄が言われてたもの。
「お母さん、お父さん……」
何年も母様父様と呼び続けていたから、変えると違和感がつきまとう。
新しい呼び方に馴染めるよう努めるが、しばらくは呼び間違えてしまいそうだ。