鈍色の銃は射抜かない   作:諸喰梟夜

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明けましておめでとうございます …今年は忙しくなりそうで…執筆が息抜きとして機能したらいいな…



全貌は少しずつ

 

【ハリカ】

 

『これはパンデモニウム・ソサエティもティーパーティーも知らないことだけど、あなたには伝えておいた方がいいかもしれない』

『アビドスの捨てられた砂漠…あそこで、カイザーコーポレーションが何かを企んでる』

 ヒナさんが先生に伝えていった情報。私はその場に居合わせたから勝手に共有されてたけど…

 

「カイザーコンストラクション…カイザーコーポレーションの系列ですか!?」

 アビドス自治区の土地の多くが、カイザーのものになっている。そんな衝撃の事実に、何やら気まずい雰囲気で入ってきた先生たち四人も、地籍図…土地の所有者も確認できる地図を覗き込んで唖然としている。

 そして大将のお見舞いに行っていた二人によると、柴関ラーメンにもずいぶん前から退去命令が出ていて、近々店を畳む予定があったらしい。砂漠に埋もれた地域から、まだ無事な地域まで、カイザーの手が伸びている?

 …というか待って、アビドス高校って砂漠に埋もれた本館があるの?初耳。

 

「で、ですがどうしてこんなことに!?自治区の土地を取引だなんてそんなこと、できるはずが…」

「いったい誰がこんなこと…」

「…アビドスの生徒会、でしょ」

 聞き慣れない低い声。その出所は…ホシノさんだった。

「学校の資産の議決権は生徒会にある。それが可能なのは普通に考えて、その学校の生徒会だけ」

「…はい。その通りです。取引の主体は、アビドス前生徒会でした」

「学校が手放した、ってこと?」

「嘘でしょ…!?」

「それぞれの学校の自治区は学校のもの…あまりにも当たり前の常識です。あまりにも当たり前すぎて、借金の方にばかり気を取られて…気づくことができませんでした。もう少し早く気づけていたら…」

「…ううん、アヤネちゃんが気に病むことじゃないよ」

 いつものトーンに戻ってきたホシノさんは、けれど寂しげな声で。

「これはアヤネちゃんが来るよりも…対策委員会ができるよりも前のことなんだから」

 …そうして、最後の生徒会に所属していたというホシノさんの話が始まった。

 

「…では、なぜ前の生徒会はカイザーコーポレーションにアビドスの土地を売ったのでしょう?」

 前生徒会長とホシノさんの二人っきりだったという前生徒会。さすがに限界過ぎると思ったけど、これまでのでっかい数字の数々を考えるとまあ…ね?となってしまう自分がいる。感性…壊されちゃったね…。

「最初から裏で繋がってたとか?」

「いえ…それは違うと思います」

「そうだね~私もしっかりとは関わってないからただの憶測だけど…ちゃんと学校のことを思って頑張ってた人たちだと思うよ。たぶん、最初はただ借金を返そうとして…だったんだろうねぇ」

「はい。当時、すでに借金は膨れ上がっている状態でした。…しかし、こんな土地に高値が付くはずもなく、少なくとも借金自体を減らすまでには至らなかった…」

「それで繰り返し土地を売ってしまう負の循環に…という感じでしょうか…」

「…何それ、おかしくない?最初からどうしようもないっていうか…」

 セリカちゃんの言う通り。よほどの切り札がなければ出口がない状況が完成してる。…こういうのって、…でも…。

「…そういう()()もあるよね」

「先生?」

 思わず横を向いたら目が合った。いつにもまして真剣な目。…そんな顔されたら何も言えない。

「言い方を気にしてる場合じゃないでしょ。…アビドスは、悪質な罠にはめられたのかもしれない」

 

「お金を貸したのも…カイザーコーポレーション…それなら」

 新しく判明した情報。おそらくこれで、ピースが揃った。はじめからかなり太っ腹な投資をしてくれたのだろう…あとで返済に困窮させるために。土地を売ることを提案したのも恐らくはカイザーローン。そうやって…

「…アビドス自治区は、ゆっくりとカイザーコーポレーションのものになる」

「だいぶ前から計画してた罠だったのかもね…それこそ、何十年も前から…」

「何それ…ただただカイザーコーポレーションの奴らにもてあそばれてるだけじゃん…!生徒会のやつらどんだけ無能なの!?こんな詐欺みたいなやり方に騙されてなければ…」

悪いのは騙す方だよ、セリカちゃん

「っ…」

 激昂してるところ悪いけれど、食い気味に遮らせてもらった。単に言い返したくなっただけじゃない。元生徒会役員のホシノさんがここにはいるから。…本人は思ったほど気にしてない様子だったけど。「僕も、ハリカと同意見だよ」という先生の言葉を受けて、セリカちゃんは思いっきり視線をさ迷わせた。

「…わ、私も分かってるわよ!たまにゲルマニウムのブレスレットとか買ったりするし、下手したらここの誰よりも分かってる!悪いのは騙す方だって!…でも、悔しい…どうして?ただでさえ苦しんでるアビドスに、どうしてこんな酷いことを…」

「…分からなくていいですよきっと。わかってしまったら、人の心なんてありません

「お~ハリカちゃんが怒ってる。…まぁ、困ってる人って、切羽詰まりやすくなるからねぇ…」

 指摘されて口を押さえた。言い過ぎたかも…と思ってたら、ホシノ先輩はなんだかしみじみとした口調で独り言のようにつぶやいた。

「切羽詰まると、人はなんでもやっちゃうものなんだよ。…ま、よくある話だけどね。それだけのことだと思うよ」

「…そうですね」

 切羽詰まると人はなんでもやる。脳裡に浮かんだのは九島家の末っ子。…対面したことはないけどね。

 …そして考えるに、生徒会がなくなったことでいよいよ学校の土地を奪うためにヘルメット団を雇った、ということ。…つまり、カイザーの狙いは土地のほう?…そうなるとまた疑問が浮上するんだけど。

「アビドスの自治区は、ほとんどが荒れ地と砂漠、砂まみれの廃墟になっているというのに…」

「確かに…こんな土地を奪ったところで、何か大きな利益になるとは思えませんが…」

「…砂漠と言えば…先生」

「あぁ、そうだ。実は、ゲヘナの風紀委員長が気になることを言っていたんだ」

 

 

「何がなんだかわからないけど、この目で直接確かめた方が早いでしょ!?」

 …ヒナちゃんさんから来た情報を伝えたあと、そんなセリカちゃんの発言で今後の方針が決まった。それはそうとなんかめちゃくちゃいじられるセリカちゃん。ずいぶんと可愛がられてる。私も可愛く思えてきたからわかるけど。

 それで、準備ができ次第アビドス砂漠へ赴くことが決まった。

 

 …決まったんだけど…。

「…これは…」

「…ホシノ先輩のバッグの中から見つけたの」

 先生を呼び止め、私にも同行を許可してくれたシロコちゃんが見せてくれたのは…ホシノ先輩の、対策委員会からの退()()()()だった。

「…勝手に取り出すなんて、手癖が悪いですよ」

「う…ん。悪いことだとはわかってる。というか…バッグを漁ったこと自体は、ホシノ先輩にはバレてると思う。でも…ホシノ先輩があそこまで長い時間席を外すこと、今までなかった。それに、風紀委員会からあんなに追い詰められて、先輩が来ないなんて……それが、どうしても引っ掛かって」

 シロコちゃんは、最初は歯切れ悪そうだったけれど、次第に強く訴えるような口調に変わっていった。表情はあまり変わっていないように見えるけれど、瞳が震えている。普段のクール(でヤバい奴)な彼女とは印象が違って…もともとあまりなかった怒る気も、すっかり失せてしまった。

「…確かに、私も妙だなとは思ってました。いくらなんでも行動的すぎるけど…それで、先生…どうします?」

「…とりあえず、保留にしておこう。一旦これは秘密で。いたずらに悩みの種を増やすべきじゃない」

「わかった…」

「煮えきらないようにも思えますけど、そうですね…」

 ただでさえ問題が多い。そのうえシロコちゃんの言う通り、ホシノさんは何か隠し事をしてる。…そういえば、ノノミちゃんも含めて気まずい空気で戻ってきたのはこの件なのか?…ノノミちゃんに聞けばわかるかな。

 

 

 

 

 





・ハリカ
当初思っていたよりも大規模な話になってきて茫然とした
セリカの怒りが伝染するなど

・アヤネ
調査も得意な後方支援担当。

・セリカ
柴大将からの情報に誰よりもショックを受けた
とかく火が点くのが早い

・シロコ
ここまでいろいろと日頃の行いの悪さが目立つクール(でヤバい)ガール

・ノノミ
今回は出番控えめ
このあとハリカが話しかけに行った

・ホシノ
やはり何かを抱え込む先輩

・先生
あくまで冷静な大人

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